ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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其の二十三

 調理をするに(あた)って、まずヤーキターイがどんな料理かを知る必要がある。

 ヨヨに頼み、ミラーパッドでヤーキターイを見せてもらう。それは魚を形どった焼き菓子のようだった。

 

「へぇ~、魚の形をしてるんですね」

 

「そうそう、形はこのようなものでござった」

 

「これって、わたしたちの世界のたい焼きだね」

 

「確かにヤーキターイはたい焼きに見た目は似てるけど、たい焼きとは味が少し違うと思うわ。生地にはプニ小麦。餡にはプニの実を使うみたいよ」

 

 スカイランドが異世界とは言え、物や文化は不思議と僅かに酷似している。ならば、似たようなものを作れるはず。

 

「じゃあ、試しにこっちの材料でたい焼きを作ってみるからツバサくん食べてみて」

 

 ツバサの思い出の味を再現するべく、ましろは早速たい焼きを作る。生地の材料を混ぜ、(これまた何故かあった)たい焼きメーカーに生地を流し、つぶ餡を入れて挟みしばらく待ったら、出来立てのたい焼きが完成。

 ヤーキターイと同じ味かツバサが試食をする。三人にジーっと注目されながらツバサはたい焼きを一口かじる。

 

「どうかな!?」

 

「どうですか!?」

 

「どうでござる!?」

 

 三人が期待する中、ツバサはじっくりと味わって━━。

 

「美味しいです!」

 

「ということは!」

 

「ヤーキターイと同じ味かな?」

 

「それは・・・・・・」

 

 好感触を得たかと思ったが、ツバサは表情を曇らせる。いくら形が似ていても、丸っきり同じなどと簡単な訳ではない。

 

「でも美味しかったですし、十分ですよ!」

 

「ううん、ここからがスタートだよ。ツバサくんから教えてもらえば、ヤーキターイが作れると思うんだ」

 

 こうなることは想定内。ましろはツバサの記憶を基にヤーキターイの味に近づけようとしていた。

 

「この、たい焼きなるものも美味でござるな。外はサクッと、中は熱々ふんわり、豆の餡の甘味が口の中を優しく包み込む。渋い茶とよく合うでござる。ズズズー」

 

「だよね。・・・ってシグレちゃん、いつの間に」

 

 ちゃっかり緑茶と共にたい焼きを堪能するシグレにましろの乗りツッコミが冴え渡る。

 気を取り直し、ヤーキターイ作りを再開。ツバサが言うには、生地の食感はほぼ同じだが、中身の餡が違うとのこと。一同は粉まみれになりつつも楽しみながら調理していき、カボチャやサツマイモ、カレーにチーズと様々な変わり種の餡の入ったたい焼きをいくつも作った。

 ヤーキターイと近しい味のものがあるのか、ツバサが一口ずつ確かめていく。

 

「ヤーキターイと同じ味のものはありますか?」

 

「すみません。やっぱり・・・・・・」

 

 せっかく作ってくれたのだが、合致する味のものは無かったようだ。残念そうな三人をツバサが励ました。

 

「でも、全部美味しいです!」

 

「じゃあ、まだまだチャレンジだね!」

 

 しかし、ましろは諦めようとせずツバサのために何としてでもヤーキターイを作ろうと意気込むのであった。

 

 * * *

 

 一同はヤーキターイ再現の食材を買うべく河川敷を歩いていた。

 

「蜂蜜とカスタード、オレンジとか果物も良いかも。あとは・・・」

 

「シャケです! 思い付くものは全部買いましょう!」

 

「であれば、梅干しも試してみるでござる!」

 

 それはもう、ソラとシグレが食べたいものなのでは。と、ましろは内心思っていた。

 

「もう時間も無いし、それで上手く作れればいいけど・・・。うん、きっと作れる!」

 

「ありがとうございます。ボクのためにソラさんやシグレさんとこんなに頑張ってくれて」

 

 パーティーを立案し、ヤーキターイまで作ってくれるましろにツバサは改めて感謝を伝える。

 

「お礼なんていいよ。わたしは、ただツバサくんにヤーキターイを食べて喜んでもらいたいだけで」

 

 ましろは謙遜(けんそん)するが、誰かの幸福を願う彼女の優しさは紛れもないもの。そのことを出会ってから近くで見ていたソラとシグレがよく理解していた。

 

「思い出します。わたしたちもここに来たての頃、ましろさんにスカイランドをイメージしたくもパンを作ってもらいました。それがすごく嬉しくて。ましろさんの料理は食べた人を笑顔にする不思議な力があるんです!」

 

「あの時、今は遠く離れてしまったスカイランドの景色が瞼の裏に浮かぶようでござった。ましろ殿が拙者たちを思う気持ちが詰まった優しい味がしたでござる」

 

「そんなことないよ。でも、もしそうだったら嬉しいな!」

 

 ソラとシグレからの称賛に照れるましろは、幼い日の自分を思い返した。

 

「わたしが初めて料理をしたのはね、お仕事で疲れているパパとママにおにぎりを作ってあげようと思ったからなんだ」

 

 無論、あの頃のましろは料理初心者で上手く握れず失敗。泣いてしまった苦い記憶でもあるが、その後に両親と握ったおにぎりの味は特別なものだったことを覚えている。

 

「もしかしたら、わたしにとってのヤーキターイみたいなものかも」

 

 ましろのその言葉を聞いたツバサは何か核心たるものに気付いた。

 

「ボク・・・、気づきました。ボクはヤーキターイを食べたかったんじゃなくて━━」

 

「カ~バや~きいも~♪ ホラホラ、甘くてホッカホカ。美味しいのね~ん!」

 

 向こうで季節外れの石焼き芋の屋台を引き、変装しているつもりのカバトンが呼び込みをしているが、今は無視をすることに。

 

「ツバサくん、教えて?」

 

「本当に食べたかったものって?」

 

「それは・・・」

 

「ちょいちょいちょ~い! 聞いてんのか!? 美味しい焼き芋なのねん!」

 

 ツバサが重要なことを言い掛けようとすると、カバトンが拡声器を使って叫び声と被せてくる。

 

「今大事なところなので後にしてください! カバトンなんか気にしないで、話を続けて」

 

 ソラはカバトンを完全無視。

 

「美味しい焼き芋なのねん!」

 

「ごめん、ちょっと静かにしてて!」

 

 ましろに至ってはカバトン静粛するよう要求。

 

「だーかーらー! 美味しい焼き芋なのねーん!」

 

「しつこいでござるな! 商売なら他所でやるでござる!」

 

 鬱陶さを覚えたシグレが叱責する始末だ。

 

「ぐぬぬぬ~! せっかく屋台も借りて良い芋を仕入れたってのに!」

 

 ぞんざいに扱われ、カバトンは沸々と怒りをたぎらせる。

 と、屋台の屋根に座り、焼き芋を肴に酒を飲むニャシュランの姿もあった。

 

「焼き芋じゃあ酒の当てにならねぇかぁ。なぁ、干し芋とかあるかい?」

 

「んなもんあるかー!」

 

 こちらの苦労も知らずに飲んだくれる同業者にも苛つき、我慢の限界だった。

 

「石焼き芋屋に化けてお前らを油断させる作戦だったが、こうなりゃ!」

 

 カバトンは被っていたほっかぶりを脱ぎ捨て、いつもの強行手段に出る。

 

「カモン! アンダーグエナジー!」

 

 右手の付いた地面から黒いオーラが噴出。焼き芋を包み込んだ。

 

「ランボーグ!」

 

 焼き芋は左手に砲台を備えたランボーグへと変貌する。

 

「邪魔しないで(ください)(ほしいでござる)!」

 

 空気を読まないカバトンに四人も耐えかね、ミラージュペンを握り変身するのだった。

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