ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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其の四

 シグレはましろと赤ん坊を連れてできるだけカバトンから距離を取るためにひた走る

 しかし、ましろはやはりソラのことが気掛かりらしく、シグレに問い掛ける。

 

「シグレちゃん、やっぱりソラちゃんを助けに戻った方がいいんじゃないかな?」

 

「ソラ殿は、拙者を信じてましろ殿と赤子を託したのでござる。その想いを無下にはできぬでござるよ!」

 

 できることなら、今すぐにでも引き返してソラに加勢してやりたいと何度葛藤したことか。しかし、ましろと赤ん坊を安全な場所まで送り届けることが最優先事項。

 歯痒さを堪えつつ、ソラから託された約束を果たすべく走り続けた。だが、

 

「見つけたのねん!」

 

 思わぬ事態。カバトンとランボーグが先回りをして行く手を塞いでいた。そして、そこにソラの姿は無く、シグレは悪寒を感じ取った。

 

「ソラ殿はどうした!?」

 

「あんなYOEEE奴、とっくにケチョンケチョンにしてやったのねん!」

 

 ソラが敗北した。嘘だと思いたいが、彼女がこの場にいないことがそれを物語っている。

 更に追い討ちを掛けるようにどこからともなく黒頭巾の集団が現れ、シグレたちを取り囲んだ。

 

「痛い目に遭いたくなかったら、その子を渡すのねん!」

 

 今、この場でましろと赤ん坊を守れるのは自分以外にいない。ソラとの約束に誓い、シグレは決意を固める。

 

「ましろ殿、下がっているでござる」

 

 シグレはカバトンらと対峙し、「ハルサメ」を抜刀する。

 

「ましろ殿と赤子には、指一本触れさせはせぬ!」

 

 多勢に無勢であろうが退くことは決して許されない。ましろたちを必ず守り通す。例え、この身が八つ裂きにされようとも。

 黒頭巾が数人、刀を抜いて襲い来る。シグレは冷静に敵の動きを見極め、そして刃を振るう。

 一人目は袈裟斬り。次の一人は胴切り。その次は真っ向斬り。また一人、また一人と斬り捨てていく。斬られた黒頭巾らは体が墨汁のような液状になって破裂した。奴らは人の姿をした別の何かだったようだ。

 時代劇(さなが)らのチャンバラ合戦が繰り広げられる。ましろは目の前で起こっていることがドラマの撮影などではなく、紛れもない現実だと痛感する。

 

「ランボーグ、一気に片付けてしまうのねん!」

 

 カバトンの指示で、ランボーグが巨体を揺らしながら接近。シグレは怯むことなく突撃していく。連続で斬撃を与えるが、元がショベルカーなだけあって体の硬度が高く、まったく刃が通らない。

 ランボーグが右腕のショベルをシグレ目掛け振り下ろす。シグレは生身の体とは思えない反射速度で飛び退き、回避する。そこから目一杯の脚力で疾走し、地を蹴りランボーグへと跳躍する。

 

「せいやぁぁぁぁぁぁ!」

 

 刃を大きく振り上げ、渾身の一刀を繰り出す。

 ランボーグも左腕のショベルを突き出し、刃とぶつかり生じた火花が弾け散る。直後━━。

 

 ビキッ、バキン!

 

 「ハルサメ」の刀身が小枝のように真っ二つに折れてしまった。

 

「なっ!?」

 

 信じ難い事態にシグレは動転し、一瞬の遅れを招いてしまう。

 ランボーグの右腕がシグレの体に直撃し、激痛が襲う。

 

「ぐあっ!」

 

 殴り飛ばされたシグレは硬いコンクリートの上を転がり倒れるのだった。

 

「ウヒャヒャヒャ、無様なのねん! 調子に乗ったからそうなるのねん!」

 

 右手に握る折れてしまった「ハルサメ」が絶望的な現状を表していた。だが、シグレの闘志はまだ消えてはいなかった。

 シグレは痛みで苛まれる体を無理やり起こし立ち上がる。

 

「何のこれしき・・・・・・。拙者はまだ、戦えるでござる!」

 

「武器も無いお前に何ができるというのねん?」

 

「例え剣が折れようとも、拙者の心が折れぬ限り何度でも立ち上がって見せるでござる!」

 

「だったら、二度と立ち上がれないように心をベッキベキにへし折ってやるのねん!」

 

 シグレは折れた「ハルサメ」を置き、両手を構え臨戦体勢を取った。その時だ。

 

「止めなさい!」

 

 大声がした方へ一同が振り向くと、そこにはソラの姿が。しかし、傷だらけの体にフラフラとした足取りで相当なダメージを負っているようだった。

 

「あなたの相手は、わたし・・・・・・」

 

 尚も立ち向かおうとするソラであったが、ついに倒れてしまった。

 その弾みでソラの手帳がカバトンの足許に転がっていき、カバトンはそれを拾い上げる。

 

「『わたしのヒーロー手帳』? 何じゃこりゃ?」

 

 手帳を開くと、スカイランドの文字でこう記されていた。

 

『空の上を怖がっていたらヒーローは務まらない』

 

『ヒーローは泣いている子供を絶対に見捨てない』

 

『絶対、ヒーローになるぞ!』

 

「ヒーロー? ギャハハハハハハ!」

 

 内容を読んだカバトンは(わら)い飛ばした後、手帳のページをズタズタに引き裂き始めた。

 

「力の無い奴は、ガタガタ震えて、メソメソ泣いていればいいのねん!」

 

 ソラが大事だと言っていた手帳が無惨に破り捨てられていく。

 その愚行を目の当たりにしたシグレは膨れ上がった義憤(ぎふん)を爆発させる。

 

「もう勘弁ならぬでござる! 人の夢を嘲り笑って何がおかしい!」

 

「おかしいに決まってるのねん。YOEEE奴の下らない夢ほど愉快なものはないのねん!」

 

 カバトンは残った手帳の表紙をソラへ向かって投げ付け返した。

 ましろの腕に抱かれる赤ん坊が再び泣き出しそうに顔を歪ませた時だった。

 

「大丈夫。パパとママのところに・・・・・・、お家に帰ろう」

 

 ソラは赤ん坊を安心させようと微笑みながら優しく語り掛ける。

 彼女の許に無傷のページが一枚落ちており、それを見るや力を振り絞って立ち上がる。

 

(相手がどんなに強くても、正しいことを最後までやり抜く。それが━━)

 

「ヒーロー!」

 

 ソラはその胸中に何にも屈しない熱い心をたぎらせた。

 すると突然、ソラの胸から青い光が飛び出し、それは形を成して羽根ペン状のアイテム・ミラージュペンとなった。

 

「ぷいきゅあぁ~!」

 

 今度は赤ん坊が叫ぶと、紫色の光が放出され、ソラの許へ飛んでいく。

 光を受け取ったソラの手元には、空色の小さなアイテム・スカイストーンが。

 

「ヒーローの出番です!」

 

 決意を新たに、ソラは叫んだ。

 

「スカイミラージュ! トーンコネクト!」

 

 ソラは(あた)かもアイテムの使い方を知っているかのようにミラージュペンの羽根部分を広げ、スカイミラージュへと変形。スカイストーンのツマミを押し、スカイミラージュに装填する。

 

「ひろがるチェンジ! スカイ!」

 

 バーサライタに「SKY」の文字が浮かび、ステージ状の異空間でソラは変身する。

 

「きらめきHOP! さわやかSTEP! はればれJUNP!」

 

 髪型は前髪の一部と毛先がピンクの差し色の入った水色のツインテールとなり、翼を模した髪止め、青と白を基調としたワンピースドレス、ハートマークの付いたフィンガーレスグローブ、白いロングソックスに青いのシューズ。最後に外側が青色で内側が赤色のヒーロー然としたマントを左肩に羽織り変身を完了させる。

 

「無限にひろがる青い空! キュアスカイ!」

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