ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM 作:MOZO
「助けてくれー!」
突如として背後から悲鳴が聞こえ、三人が振り向くと見覚えのある豚顔の怪人が大量のハンバーガーを貪っているではないか。
「うめー! パワーがみなぎってくるのねん。これだけ食べれば━━」
豚顔の怪人がソラたちに気づき、互いに存在を認識する。
「ザブトン!」
「トンカチ!」
「どっちも違うのねん! カ・バ・ト・ン!」
「そんなことはどうでもよい。銭も払わず、盗み食いをするなどけしからんでござる!」
「どうでもよくないのねん! 一度戦った相手の名前くらい覚えておくのねん!」
ましろとシグレに名前を間違われるだけならまだしも、ついでのように扱われカバトンは怒り心頭。
「ええい、あのガキンチョはどこだ!」
「まだエルちゃんのことを諦めていないんですか!?」
予想はしていたが、誘拐までする輩が簡単にエルを断念するはずがない。
「どのような目的があれど、お主のような悪党に渡すはずがないでござろう!」
「まぁいい、昨日のお礼をするのが先だ。ボコボコにしてネチネチ聞き出してやるのねん。カモン! アンダーグエナジー!」
カバトンの手から黒いエネルギーが湧き出し、近くの自動販売機に吸い込まれ、ランボーグと化した。
「ランボーグ!」
自動販売機のランボーグはペットボトルのミサイルをソラたちに狙って発射。
ソラはましろの手を取り攻撃を躱していくが、今度はクロボーズがいきなり現れて彼女たちの逃げ場を狭める。
ましろはソラが握っている手がまた震えていることに気づく。如何にプリキュアに変身できると言えど、未だに恐怖を消し去ることができないのだ。
と、シグレが勇敢にも二人を庇うようにして前へ出る。
「露払いは拙者に任せられよ。ソラ殿はソラ殿にしかできぬことをやるでござる!」
シグレは近くの工事現場に設置されていたカラーコーンを繋ぐポールを蹴飛ばし掴むと、刀の代わりに構えるのだった。
「未熟です。憧れのあの人の背中は遥かに遠い・・・・・・」
今の不甲斐ない自分が、あの日の勇姿に追い付くことができるのか不安に駈られてしまう。
だとしても━━。
「でも、今はヒーローの出番です!」
ましろ、それとエルを守らなければ。シグレに励まされた通り、今の自分にできることを全力で果たすのみ。
ソラはスカイミラージュにスカイストーンを装填する。
「ひろがるチェンジ! スカイ!」
ソラはきらびやかな青いコスチュームを身に纏い、キュアスカイに変身する。
「無限にひろがる青い空! キュアスカイ!」
スカイはましろを抱え上げ、一気に跳躍。ビルの屋上へ避難させた。
「ソラちゃん、気をつけて・・・」
「はい!」
ましろに見送られ、スカイはランボーグへ急行。放たれるペットボトルをすべて叩き落としながら、胴体に一撃を食らわせた。
そしてシグレも、クロボーズら相手に大立ち回り。多勢であるもののポールを振るい敵を叩きのめしていく。
一体のクロボーズが飛び掛かろうとした瞬間、シグレはポールの握りを逆手に変え、先を右斜め下に下ろす。
「スカイランド剣術。二の型━━」
シグレは左足を踏み締め、ポールを勢い良く振り上げる。
「
ポールが直撃し、上空へ打ち上がったクロボーズは花火の如く黒い液状になって破裂する。
この「昇天薙ぎ」という技。相手が男性であれば、確実に急所に命中するということから名付けられたものらしい。
所変わって、スカイも戦闘を優勢に持ち込んでいた。
「ランボーグ、取って置きだ!」
現状を打破するべく、カバトンはランボーグに命令。巨大なペットボトルのミサイルを出現させそれを発射させた。
飛来するペットボトルをスカイは両手で掴み、停止させる。
「受け止めた!?」
驚くカバトンを他所に、スカイはペットボトルをブンブン振り回し始めた。
「大回転プリキュア返し!」
スカイはランボーグ目掛け、ペットボトルを投げ返す。反射された自身の放った攻撃をまともに受ける。怯むランボーグの隙を突き、スカイは大技を繰り出した。
「ヒ~ロ~ガ~ル~スカイパーンチ!」
パンチが決まり、ランボーグは白く変色する。
「スミキッタ~」
ランボーグは浄化され、元の自動販売機へ、壊れた場所も元通りに直っていった。
「ひぇ、カ・・・・・・カバトントン!」
敗北を期したカバトンは黒い煙と共に退散。クロボーズも何処ぞへ撤退していくのであった。
変身を解いたソラにシグレが歩み寄る。
「さすがはソラ殿。あっぱれな勝利でござった!」
「シグレさんが励ましてくれたおかげです!」
勝利を分かち合う二人。そこへましろが合流すると、ソラの手を掴んだ。
「二人共、ちょっと来て」
訳も分からず手を引かれるソラ。その後を付いていくシグレであった。
* * *
ましろに連れられて来たのは、前日に彼女たちが出会った場所の近くにあった『Pretty Holic』。店内に入ったましろはある棚の前に立ち止まる。
「良かった、まだ売り切れてなかった」
それは、ましろが買いたいと思っていた可愛らしい手帳だった。
ましろはその内の一冊を手に取ると、ソラへ差し出した。
「どうかな?」
「どうかな・・・・・・って?」
「これ、ヒーロー手帳の代わりにならないかな? 発売前から情報をチェックして、お小遣い貯めてたんだ。でも、今これが必要なのはわたしじゃなくてソラちゃんって気がするから。ね、プレゼントさせて!」
前々から自分が欲しいと思っていた手帳であったが、それをソラに譲ろうというのだ。
「ダメです、貰えません!」
せっかく貯金してまで欲しかったものを自分なんかが受け取れないと、ソラは遠慮する。
しかし、ましろは尚も手帳をソラへ差し出す。
「・・・・・・どうして?」
「本物のヒーローを見ちゃったから、かな?」
ましろにとって、ソラが憧れた人と同じく彼女は自分のヒーローというべき存在。それはましろなりの応援する気持ちなのだ。
そんな彼女の想いが伝わったソラは快く手帳を受け取った。
「それから、シグレちゃんにはこれ」
ましろがシグレに手渡したのは、滴の形のクリアパーツが三つ並んだヘアピンだった。
「拙者にもよろしいのでござるか?」
「折れちゃった刀の代わりにはならないかもしれないけど、友達の証に受け取ってほしいな」
互いに違う世界に生きる者。そんなことが些細に思えるぐらい、シグレは友人からの贈り物に胸の奥が暖かくなる。
「かたじけない。大切にするでござる!」
ソラ、ましろ、シグレ。生まれた場所は違えど、三人の友情は確かに芽生えていた。
「さてと、次はおばあちゃんに頼まれたものを買わななきゃ。えーと、ローズオイルとシナモンスティックはいいとして、問題は干したカエルなんだけど・・・・・・」
「あっ、思い出したでござる!」
シグレは徐に風呂敷の中を物色する。中から取り出したるは、カラカッラに干からびた丸ごと一匹のカエルだった。
「拙者、保存食に干したカエルを持っていたでござった!」
「ひぇっ・・・・・・!?」
茶色く
「それ、食べるの・・・・・・?」
「見て
「今は遠慮しとく・・・・・・」
「良かったですね、ましろさん。これでお使いもバッチリです!」
「う、うん・・・・・・・・・・」
呑気そうに喜び合うド天然なソラとシグレ。そんな彼女たちに、ましろはただ苦笑いをするしかなかった。
原作第2話部分終了です。
次回は原作第3話部分です。