パンドラの箱の底に、本当に希望があるのか? 作:あばばばばb
草原に倒れていたミサキと共に、SAOの最初の街から、次の街へ移動した。
ミサキを見つけた夕方から、更に夜は更けた。辺りは暗く、空には満点の星が煌めている。
ミサキ、そして俺ことキリトは、ゲーム始めたばかりの初心者であっても手頃に泊まれるNPCが経営している宿を見つけ、泊まることにした。
当然、男女であるため、部屋は別に取ったが、ミサキのことを話し合うために、キリトの部屋にミサキが来ていた。
「ミサキ、あんたは、どうしてあそこにいたんだ?」
俺は、ミサキに、なんで敵がPOPする草原倒れていたのか?を聞いていた。
「…わからない。」
ミサキは、顔を下を向いて、困惑した顔に染まっていた。
「えっと、茅場の宣言聞いたよな?」
俺が草原に来る前にあった、プレイヤーなら誰でも知っている茅場の話をしてみることにした。
ミサキには、黄緑のプレイヤーカーソルが出ている。人間ではないと疑うようで大変失礼だが、イベント関係のNPCではなくプレイヤー…だと思う。
「ええ、聞いたわ。聞いた瞬間、立ってられなくなって、それで気づいたら草原にいたの」
「そうなのか…『電車に乗ってて…』とか起きた時言ってたけど、それって何か…」
「ごめんなさい、分からないの。夢を見てた気がするの…ちょっと自分でもよく分からないけど」
俺の考えの中で、どこか腑に落ちない。何が腑に落ちないのだ?と聞かれると、難しいのだが…とりあえず、これ以上聞いても、事の進展は難しそうだ。
「この後、どうする?俺と行動するか?宿のチェックイン時のメニュー操作の手際の悪さを見るに、SAOのプレイ方法教えて貰わないと難しいだろ?」
ミサキは、チェックインする時に、メニューを上手く開けなかったりしていた。何を操作するのにも難儀していた。というか、どう見ても、フルダイブ系のゲームをプレイしたことが無い完全初心者である。
そんなミサキが、この後、1人で武器やアイテムを買ったりモンスター狩ったりアイテム使ったり…と出来る予感がしない。
「えっ…いいの?」
下を向いて目を伏せがちでいたミサキの顔が、ぱやぁっ!明るくなり、俺に顔を近づけてくる。
「お、おう。大丈夫だ」
「はぁっ…よかったぁ…心細かったよぉ…」
ミサキは、心底安心したような顔をし、俺にドーンと抱き着いてきた。
そう、抱き着いて、来たのだ。抱き着いて。
「うわぁあー!なんだ!」
俺は、びっくりして思わず、引きさがりミサキを剥がそうとする。
「も~~、いいじゃん!もっとだ!」
ミサキは抵抗し、これでもか!と力を込めて、更に抱き着いてきたのだ。
---
ミサキから出会ってから、半月が経った。
ゲームが始まってから600人近くの人間が、自殺または何かしらの形で死んでいた。
ミサキとは、SAOがリリースしてデスゲームが始まったあの日、出会ったあの日から、ずっと行動してた。
ミサキは、クラインと違い誰かと来ていた訳ではないようで、俺とペアで行動することになり、俺とミサキの間には、半月経っているのもあって、確かな信頼関係が生まれていた。
SAO攻略の話になるが、1層の攻略は、俺含めてまだ誰も出来ていないが、俺とミサキは2日前にボスの部屋を見ることに成功した。
ミサキは、その日の内に『ガイドブック』と呼ばれるベータプレイヤーたちが中心となって作成されている無料配布本に、記載するように手配をしてくれていた。
そして、今日、そんな俺たちの苦労を末に、『第一層ボス攻略会議』が、行われる。
俺たち、会議の参加者は、会場となる古代ローマの建築物を彷彿させる場所に来ていた。
会場には、予想以上の30人を超える人が集まってきていた。
「はーい!みんないいかな?始めさせてもうらうよ」
青い髪をした明るい雰囲気をまとった男性プレイヤーが、会場の壇上に当たるようなところで、声を出す。
「俺の名前は、ディアベル。気持ち的にナイトしてます!」
どうやら、この人が、この会議の主催者のようだ。
「皆が、もしかしたら、知っているかもしれないが、つい2日前ボスの部屋を発見した。という報告が上がった。」
『ああ、知っている』という声もあれば、『マジ!?』という声も、会場の参加者から上がった。
「そこで、俺たちは、この会議を通じて1つの攻略団体として、第一層ボスを倒そうと思う!」
確かに、個人や数人程度では、ボスの攻略は難しいだろう。出来たとしても、非常に時間が掛かることが予想できる。
「そして、SAOというゲームはクリアできるだ!ということを、街で待っている皆に伝えなきゃいけない!それが俺たちの義務だろ!」
『そうだ!』と言う形で、賛同するように拍手などがディアベルに送られる。
その通りだ。このゲームはいつかは終わらせなければならない。その契機として、まずは第一層の攻略を始めなければ何も始まらない。
隣にいるミサキも、同意しているのかディアベルに、にこやかに拍手を送っている。
「おっけおっけー!じゃあ、6人から成るパーティーを作ってくれ」
えっ!!!???
6人!?おれ、俺は…いや、俺にはミサキがいる。だが、あと4人。ど、どうしたら。
ミサキも会場内に知り合いがいないのもあって、困っているようだ。俺は必死に会場内を見渡し、左右に頭を振って、あぶれている奴がいないか探す。
いた!いや、1人だけだが、俺とミサキの2人だけよりかはマシだろう。
ささっさーー!と1人だけになっているフードを被った人に近づく
「あんたもあぶれたのか?」
「あぶれてない。皆がお仲間同士だから遠慮しただけ。あなたもあぶれてないようだけど」
「そうなのか、俺たちと組まないか?今、俺とコイツだけなんだ。1人だけだと攻略できないだ。今回だけの暫定でいいからさ」
コイツ、とミサキに手を向ける。向けられたミサキはひらひらと手を振っている。
フードを被った人は、コクン。と首を縦に振った。同意ということだ。
パパっとフレンド申請を送る。自分のステータスにフードを被った人のステータスと名前が追加された。
≪Asuna≫…アスナ?女性か?
「よし、これでいいかな?」
ディアベルが様子を見て、パーティー結成の談を終了させて、次の話をしようとする。
「おい!!!ちょっとまてや!」
いきなり、会場の外側から金髪の男が現れ、壇上に登る。
「ワイは、キバオウというもんや!」
「ボスと戦う前に、言いたいことがある!この中に、死んでいった600人ほどに謝らなきゃぁいけねぇヤツらがいるとは思わねぇのか!」
キバオウは、怒声で言う。
「君の言う、ヤツら…というのは?」
ディアベルは、冷静にキバオウに対峙する。
「ヤツらっていうのは!元ベータテスターのヤツらだ!あいつらは、このゲームを見捨てて消えよった!あいつらは上手い狩場やらなんやら独占して!上手い蜜ばっか吸いよって!このなかにもおるはずや!」
会議参加者の空気が一気に冷え始める。
「あいつらのアイテムや武器やらを吐き出してもらわんと、パーティーメンバーとして命はあずけられん!」
思わず俺の息が詰まる。俺もベータテスターだ。俺は…
「発言良いか」
体格のいい男が、静かに手を上げ、発言の可を求める。
「俺の名前は、エギルだ。キバオウさんよ。アンタは、ベータテスターが動かなかったからビギナーがいっぱい死んだ。と言いたい。そして、その賠償・謝罪しろということだな」
エギルと名乗った男は、キバオウに近づき、キバオウはエギルの体格に怖気づいたのか引き下がる。
「お、おう!そうや!」
「アンタも、この道具屋で配布している『ガイドブック』は、知っているな」
「それがなんや!」
キバオウは、それがなんだと。エギルに詰め寄る。
「この『ガイドブック』は、ビギナー向けにSAOの解説をするためのもので、ベータテスター達や攻略が早い上位プレイヤー達が作っている。そして、この会議の元になったボス部屋の情報は、この最新の『ガイドブック』から来ている。アンタが、これを作ったベータテスター達を批判するなら、アンタは、この会議に参加する資格はないと思うがな」
エギルは、お前がいるべき場所は、ここではないとエギルに諭す。
会場の一部からは、『エギルさんが言う通りだ』『俺もガイドブックに助けられたんだ』と声が上がり、キバオウは、エギルだけでなく会場の雰囲気に押され、少しずつ怖気づいていく。
「くっ!」
キバオウは、居ても立っても居られなくなったのか、会場から逃げるように去っていった。
「もう、次行っていいかな?」
ディアベルが、様子を見て、次へ話題を飛ばす。
「この会議の発端となった最新のガイドブックの情報によると、ボスの名前は、≪イルファングルザ・コバルド・ロード≫。それと取り巻きの≪イルファングルザ・コバルド・センチネル≫というのがいる。武器は斧とバックラー。ベータ時代の情報によると、四段にあるHPのバーの最後まで赤くなると、武器を『タルワール』に持ち替えて攻撃パターンが変わる。とされている。しかし、ボス部屋でボスと対峙して武器を確認した者によると、ベータ時代の『野太刀』に似た武器を持っていたとのこと。」
ボス攻略の話になった。そう、この武器『野太刀』の情報については、俺とミサキによる情報だ。
俺が居たから、ベータ時代の『タルワール』ではないことが確認できた。
「そのため、元ベータテスターであっても攻略には、充分に注意してくれたまえ!ベータと違い、今は復活という手段は存在しない!慎重に行動するように!」
ディアベルは、警告を強くし、注意を促した。
「これで、今日のボス攻略会議は、終わりになる!これで異存はないかな?」
出席者からは、『おう!』という言葉が上がる。
「それじゃあ!解散!」
ディアベルは解散と、会議の終了を告げる。
出席者は、各々と席を離れたり、グループ仲間で話し合い始めたりする。
俺も、ミサキ、アスナと移動を…と思ったが、アスナが一足早く席を外して行ってしまった。
ミサキが動き始めた。と思った時には、既に遅かった。
どうやら、アスナは、なかなか気難しい人物のようだ。