脳の破壊された上司と爆散するワンコ女の話   作:ここに文字を入カ

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先生この時結構危うかったんじゃねという妄想
第2回追試回(下)


第10話 我々調査隊はゲヘナ奥地へ向かった

「“急がないと……”」

 

 補習授業部のためにも、ここまで送ってくれた美食研究会とフウカのためにも、何としても補習授業部を試験会場に送り届けてなければならない。それなのに自分が遅れたり、いないことで不都合を生じさせるなんて、あってはならない。それに加えてナギサのあの発言が気になる。まだ何か罠が、仕掛けがあるかもしれない。

 

 懸命に足を動かし、腕を振る。大の大人の全力疾走。日頃の運動不足だとか、疲れといった言い訳は浮かんだ瞬間に切り捨て、ひたすら生徒を思って走る。

 

 懐中電灯で前を照らすと、立ち並ぶ見るからに空き家の寂れた家々、ツギハギの道路、崩れた塀に折れ曲がった標識と電灯電柱。試験会場はまだ先だ。

 

 到着時間を予測していると、とある交差点にさしかかる。異常がなければそのまま通り過ぎるし、今までと同じ状況ならばそもそも暗くて異常を発見できない。立ち止まった。要は異常を検知したのだ。

 

 青の強い暗闇の世界を、懐中電灯の黄色で切り開いて進んで来た。しかし、目前には赤が強い世界がある。明かりが灯っている。その色は白色灯のような電気と文明の色ではなく、原始的に揺らめく炎の赤。燃ゆる木のパチパチと爆ぜる音、いくつも聞こえる話し声。深夜、ゲヘナ、廃墟というだけで危機を察知し頭の中に警鐘が鳴る。不良、温泉開発部、風紀委員会、何いるか分からないが、鬼が出るか蛇が出るかしてくれた方が助かる。

 

「あ?なんだオメぇ?」

「“こんばんは”」

「おばんです……じゃねぇんだよ!」

 

 どうしようか悩む間に相手が出てきてしまう。

 たむろしていたのはどうやらスケバンの集団であった。策を思いつく前に見つかってしまい、先手を取られてしまう……。

 

「どうしんだテメェら?んぁ?……へぇ、こりゃどうもキチンとした大人がどうしてこんな所へ?」

 

 現れたリーダー格と思しき生徒は私を認識すると白々しく挨拶をしながら近づいてくる。手で何か仲間に指示をしながら。

 

「“この先に用事があって、行かなきゃいけないんだ”」

「この先ぃ?この先なんてにゃ……」

「にゃんも」

「リーダー、そこで止めたら私らはツッこむしかないです」

 

 リーダー格の少女は紅潮する顔を抑えながら「あーうー」と唸りしゃがみこむ。周りの少女たちが顔を見合わせてどうしようかと話し始めるとスクッと立ち上がり

 

「この先なんて何もないぜ?それこそ廃墟ばっか。そんな所に一体何の用なんです?それに──」

「再開した」

「続行なんですねw」

 

 再び話し始める。周囲から声がヒソヒソと聞こえる中の断行。手放した流れをもう一度手中に収めるため聞こえる一切を無視して声を張り上げる。囲まれてしまったな……。

 

「アタシらみたいな危ないヤツらのきゃ──」

「きゃいーんw」

「おぉっといけません、2回目!2回目です!リーダーは退場!」

「かなりキツそうですねぇ、酷くないといいんですが……」

 

 

「連絡が入りました、どうやら仕切り直しのようです。」

「“最初からやり直しってこと?”」

「みたいです」

 

 走り去ってしまったリーダーの子をからかうように実況解説を始めた2人によると登場時まで巻き直しすらしい。

 

「こんばんはからで」

「“うん”」

 

 最初に話しかけてきた子のみを残し、囲っていた他の子たちは皆戻っていく。ホントに一からやるようだ。それならば

 

「“こんばんは”」

「おばんです……じゃねぇよ!ってあれ?」

 

 律儀に頭を下げるのでこちらも首を下げつつ通り抜け、十字路の左右に待機していた子達に手を振る。

 交差点から離れるにつれて照度が減り、懐中電灯だけが頼りになる。闇の割合が大きい視界はなんとも不安で怖い。

 だが、行かねばならない。赤色の世界を背に走り出した。

 

「どうしんだテメェら?んぁ?……んぁ?……あ!?」

 

 頬を叩いて気合いを入れ、勇んで飛び出たリーダーは眼前の光景に面食らう。そしてたじろぐ周囲とともに見渡し、走り去る連邦生徒会所属の白い背中を見つける。

 

「抜けた抜けた抜けたぁ!1人抜け出しもはや独走状態!20、30と差はぐんぐん広がるぅ!」

「いや~完全にフリーでしたね。見逃さなかった相手に拍手です」

「うるせぇ馬鹿共!とっとと追いかけろ!コケにしやがって、ぶちのめしてやる!」

 

 待機していたメンバーに喝が入り、追撃戦が始まった。

 

 

 

 /01

 

 

 

 左に右にジグザグに曲がり、時はミレニアム製懐中電灯のスーパーモードを起動したり、自爆機能を使って道を切り開いたりして何とか逃げきろうと、会場までたどり着こうとした。

 

「“ごめん、急いでるんだ”」

「知らねぇなぁ!」

 

 抵抗と努力は無駄であったか、意味の無い徒労であったか。そうであったかもしれない。だが、そうなるとしてもしない理由にはならなかっただろう。

 

 いつ間にか景色は少し変化し、マンションであったり立体駐車場、企業事務所のビルなどが多くなっていた。もっとも雰囲気は変わらず、劣化したプラスチック、錆びた鉄、苔むしたコンクリートであふれている。どの建物も明かりはなく高層建築を示す赤色灯すらなく、形容するならば死んでしまった街だ。

 

「ちょろちょろ逃げやがって」

「ホント。リーダーのボーラが当たんなかったら絶対無理っした」

「捕まえてどうすんだったっけ?」

「さぁ?カツアゲじゃない?お金もってそうだし」

「八つ当たりって聞いてたんだけど。でもそっちのがいいね」

 

 他のメンバーも追いつき、すっかり囲まれる。かつ自らは組み敷かれて転がった状態。詰みといっても過言ではないかもしれない。縋るように、打開できるよう妙手がないか探すように地から見上げる。

 

「連邦生徒会は大忙しらしいからなぁ。フッかけたら面倒くさがって大金出してくれるかもなぁ?温泉開発部がうろついてるわ、風紀委員どもが張ってるわでロクでもない一日かと思ったけど、ツイてる日だったみたいだなぁ!」

「パフェ!ケーキ!プリンアラモード!

「ホロサイト試したかったんだよね」

「なぁ!なぁ!なぁ!」

 

 ざわめく各員。各々の持つ照明が笑いとともに揺れる。

 見上げた先のこちらを覗き込んでいるリーダー格の子の笑う顔──のさらに先

 その姿を捉えられたのは奇跡か必然か。

 

 横に(そび)えていたマンションの屋上、月を背負った少女。ヘイローと同色のエメラルドの輝きした双眸がヘルメットのバイザーが下げられることで隠れる。

 

「“あ”」

 

 感嘆符なのかそれとも危ないだとかを言おうとしたのか宙を舞った少女に思わず声が漏れる。どうしたらよいか、判断というより反射で受け止めなければと思う。しかし、拘束されて自由に動くことができない。せいぜいが立ち上がろうと身を縮めて丸くなること。落ちる少女をただ見ることしかできない。

 

 重力に引かれるまま下へ下へ加速していくその少女は銃口を向けていた。

 

 

 

 /02

 

 

 油断しきっていたスケバン集団は少女に気がつくことができなかった。

 フルオートで弾をばら撒いてドラムロールのようなけたたましい銃声を鳴らし発砲炎と共に落ちてくる少女。

 

 完璧な奇襲、慌てふためくスケバンたちに着地した少女はしなる鞭の先のごとく、飢えた獣のごとく獰猛に凶暴に飛びかかる。

 

 勢いそのままに立ち直りの早かった者を蹴り飛ばす。手近な所にいた者へ攻撃対象を変えると、相手の腕の中にまで入り込み、腰の拳銃を抜いて喉に撃つ。グエッと間抜けで凄惨な声。

 

 その少女の横っ腹を刺そうと誰かが銃を向けた。避けられない。そう思った。

 

 消える。少女が消滅したとかそういう意味ではない。見えなかった。動体視力と認識速度の埒外に踏み込んだ脅威的加速で少女が避けたのだ。

 

 少女に当たるはずであった弾は喉を抑えるスケバンを襲いノックアウトさせる。

 

「なっ!?」

「バカヤロウッ!!!松本ぉ!誰を撃ってる!!!」

「アホみてぇに撃つんじゃねぇよ当たんだろうがぁ!」

「ふざけんな、なんなんだよコイツ!?」

「相手は1人なんだからとっとと──」

 

 顔面に平行に眼前に拳銃がある。その銃口は隣の奴に向いていて攻撃対象であることは確定的に明らか。だけどこちらへの攻撃の意思を明確に確実に感じる。

 

「ちょ」「は」

 

 発砲。眼球を襲う高速高圧ガス。リボルバー特有のシリンダーとマズルの隙間から漏れるガス。それを文字通り目前から浴びせられる。

 

「痛ってぇぇえええ!!!」

 

 リーダーの叫び、悶え苦しむ様は周囲を恐慌状態に陥らせるには十分過ぎた。

 

 浮き足立つ集団、遮二無二な銃撃。同士討ち、的確に入れられたクリティカルな一撃、立っている者がどんどんと減っていく。

 

 ただ1度の被弾すらなく、無慈悲に蹂躙する様は風のようだった。感じることができるのに掴むことは決してできず、花や木の葉を吹き飛ばし、雨雪を叩きつける。

 緩急を使い分け攻撃を躱しすり抜け、懐に飛び込み殴る撃つ。また1人沈んだ。また一人、また一人、あと一人。

 

「ぶっ殺してやる!」

 

 腫れた目と涙をこぼした跡がある。戦闘不能状態であったため捨て置かれていたリーダー。それ故に背後をとることができた。銃口は少女の背を捉えている。瞬間的といえど絶対的な有利。

 

 響く銃声、倒れ地に転がる音。

 立っているのは一人。

 

 ヘルメットの少女は倒れたリーダーの子にもう1発撃ち込んだ後、手にしていたリボルバー、そしてストラップで下げていたアサルトライフルのリロードをする。

 

 振り返り、撃つ。紙一重の回避とともに繰り出された早撃ちは天性のものだけでなく、膨大な練習と訓練による熟達した芸術であった。体に染み込ませ自身のものとした汗と時間の結晶、そう読み取れたのはキヴォトスにおいてなお卓越した技であったからだ。

 

 そんな者が何故こんな所にいるのか、肩で息をするこの少女の正体は……口にするべきではないのだろう。

 

 

 

 /03

 

 

 

「いんや~災難だったッスねぇ」

「“助かったよ”」

「困った時はお互い様ってやつッスよ!」

 

 あの後現れたもう1人の少女、リサは完全に口を閉ざしたヘルメットの少女の分までよく喋ってくれた。

 

「“君たちはどうしてここに?”」

「ん〜まぁ、正直なところ今のヤツらと一緒ッスよ。外出禁止令聞かずに外出したら温泉開発部はいるわ風紀はいるわでにっちもさっちもいかなくなった間抜けなヤツら。」

「“大変なんだね”」

「そうなんすよ~だから何とかこの辺を抜け出したいんス!」

「“多分だけど今ならどっちも居ないんじゃないかな”」

「マジッスか!?じゃあ急がないとッスね!姐さんもそんでいいっスよね?」

 

 こくりと頷き意思を示したヘルメットの少女。

 

 2人は私と進行方向が同じなようで力を貸してくれた。なんにせよ道を急ぐ身には非常にありがたかった。

 

「“ふたりとも、無事でよかった。”」

 

 2人のおかげでその後はつつがなく進むことができ、ヒフミたちと合流することができた。しかし2人はいつ間にか朝靄のごとくいなくなっていた。

 

 

 

 /04

 

 

 

 試験会場が爆破されたのを確認して周りの温泉開発部を始末する。そしてブルドーザーを拝借。

 

「時間はどっちかというと敵だ、急げ急げ」

「へいよッス。うぉ、デッカ」

 

試験会場に倒れていた補習授業部を手早くブルドーザーに積む乗せて脱出開始。建物をブルドーザーでぶち抜きダイナマイトを投げて破壊しながら最短距離を進む。

 

「川に向かってその後はどうすんスか?メカジキ君は3人までしか乗れないッスよ」

「補習授業部をボートに乗せて川に流す」

「さっきからずっと思うんすけどあんまりにも酷くないっスか?」

「川流しじゃないよ流石に。下流で待機してるヤツらが拾ってくれる。目が覚める頃にはトリニティ行きのバスの中さ」

「じゃあアタシらもそれに乗って?」

「じゃないんだなそれが。ボートはAIが操縦してくれるから放っておいていいらしい」

 

 温泉開発部の本隊と風紀委員会がいつまでもやり合ってくれる訳じゃない。銀鏡イオリ率いる対テロリスト部隊とまともにかち合うとなれば、先生たちに陣地を破壊された温泉開発部では勝ち目がないからだ。

 それでも温泉開発部が戦うのは時間を稼ぐ裏で開発してしまおうという算段だからだろう。俺たちは温泉開発部が作ってくれた手薄な今を使ってコソコソ作業する。

 

「そもそも俺たちの分の席はないそうだ」

「まぁメカジキ君がいるからいいッスけど」

「ここでちょっと現場判断なんだけどな、先にメカジキ君のとこ行っててくれないか?」

「え?姐さん一人で大丈夫ッスか?」

「問題ない。というか当初の計画では1人でやる予定だったんだから」

「なんか最近酷使されまくってるスね」

 

 俺もそう思います。

 

 それと先程から度々リサが言うように今回の作戦が酷いというのは正直同意する。人道とか倫理的に酷い。まぁよくあることではあるが。でもナギサ様の好みじゃないはずだ。トロッコ問題のレバーを引いただけでああなってる方なのに。

 

 それにもしも発覚した時のリスクとリターンが見合っていない。

 

ナギサ様はこの作戦で何を期待しているだろうか?

 ゲヘナ過激派を見分けることだ。だけどそんなのはアクアリウム襲撃の時にできただろうし、そんな簡単に尻尾を出すような奴ならとうに情報局が掴んでいるはずだ。

 裏切り者が逃げだしたりすること?それにしたって何もゲヘナじゃなくていいはずだ。

 

何かしらメッセージを伝えたいとしたら?

 ゲヘナに対して条約を履き違えるなとか部下の手網を握っとけとかか。他は先生に対する示威行為やローラー完遂の意思表示。

 補習授業部全体の意志をくじくためとかは?体裁とか建前を重視するナギサ様がそんな事意図しているだろうか。

 

成功の末にナギサ様にとって何の得がある?

 ゲヘナの足並みが揃う?それなら何のための風紀委員長と手紙でやり取りしていたんだ。

 ゲヘナの力量を測る?ナギサ様は昔からずっと融和派なのに強行偵察なんかするか。というかあの人なら風紀委員会と正義実現委員会の合同演習みたいなことしでかすだろ。

 

 じゃあ、別の誰かにとって都合がいい?ゲヘナに損があることを喜んでゲヘナがぐちゃぐちゃな事が嬉しくてゲヘナを出し抜けることが幸せな奴?

 

 よぎったバニラのような甘い香りを振り払う。何を考えているんだ。何を考えているんだ!以前もそうだ、ナギサ様にご報告している時*1にもくだらない憶測を飛ばしやがって。

 

 あぁ、分からない、分からないな。

 パテル派に対ゲヘナ一撃論とかいう空論を大真面目に謳う連中がいたっけな。ソイツらが計画立案に口を挟んできたんだ!そうだ、そうに違いない!

 

 でも、もしも……もしもそうなら。

 想定していた最悪以上の最悪が訪れるなら。

 疑心暗鬼の闇の先は地獄の釜であるのなら。

 

 先生、貴方が言ったっんだ。ナギサ様を救ってみせてくれよ。

 私は魔法なんて使えないから。

 

 

 

 /05

 

 

 

 補習授業部を乗せたボートが無事に出発して川を下っていくのを確認し、自身も撤退すべく移動する。

 

「はぁ……」

 

 足が進まない。トリニティに戻った自分はもしかしたらパンドラの箱を開けなければならない。でもやらない訳にはいかない。自分はシュガーポットの一員で護衛隊隊員でもあるから。

 

「や、悩んでるみたいだな」

「まぁな」

「ところで外出禁止令がでていることは知ってるか?」

「知ってる」

「この辺りで大規模な戦闘があったことは?」

「知ってる」

「じゃあ同行してもらっていいか?」

「断る」

 

 目が眩むようなまばゆい光が俺を照らす。一般人が持っているようなライトではない、それこそ正実なんかが使用するような探照灯の強い光。

 

「そうか、大人しくしてくれた方が楽なんだがな」

「事情があるから」

 

 前方、後方と俺を取り囲むようにゾロゾロと並ぶ集団。

 

「じゃあ覚悟しろ、規則違反者め!」

 

 銀鏡イオリの号令を合図に風紀委員会との戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 風紀委員たちによる一斉射撃、それよりも早く銀鏡イオリに向かって飛びかかるように走る。

 この数と優秀なスナイパー相手に射撃戦なんか挑んだら勝負にもならない。なら数の利を活かせない状況に、狙撃の長所が活かせないように、突っ込むより他はない。

 

 動揺しつつも的確にこちらの眉間を狙った銀鏡の一撃。なるほど噂に違わぬ技量だ。初見でこの加速に対応してきた。だが、こっちも毎回対応してくる相手に何度も遊んでもらっている、既に対策済みだ!

 

 思い切り踏み込んで体勢を変えて避け、そのまま宙を舞う。風紀委員たちからの射撃が俺の後ろを交差する槍のように過ぎていく。

 

 取った。リボルバーから放たれた2発は銀鏡に命中し、弾き飛ばす。

 

 これだけの統率力なら人質に有効だろう。そう目論んで倒れた銀鏡に近づく。

 

「っ!?」

 

 棘の付いたストックが頭めがけ振られ、咄嗟に屈んで避ける。

 嫌な予感がし、近くに居た風紀委員を掴んで盾にしようとするが、コッキングの音にこれまた嫌な予感がして跳んで離れる。眼前から鳴った風切り音が弾丸の通過を伝える。

 

 起き上がり、こちらを突き刺すように睨んでいるのは銀鏡イオリ。

 

「なにするんだ……!」

「そこらのチンピラなら今のでひんのびてるんだけど……?」

「風紀委員を舐めるな!」

 

 ああもうこれだから有名人相手は嫌なんだ。

 

 先程のような初見殺しはもう通用しないだろう。しかも、相手の技量からして足が少しでも止まった瞬間に頭にぶち込まれる。スタミナが切れたら終わる。それまでになんとか押し切るしかない。

 

「避けるな!」

「そっちこそそんな長物持って転げまわるな!」

「お前だってそうだろ!」

 

 いつの間にか風紀委員たちは俺たちを囲う柵のように少し離れて並び、その中心で銀鏡と一騎打ちのような形となっている。

 

 お互いに撃っては避けて、撃っては避けてを繰り返す機動力にものを言わせた戦い方、僅かな隙があれば撃ち、それを察知し避け、フェイントとブラフで相手の弾切れを誘発させる。

 

 俺はいつも通りのスタイルだけど君はスナイパーだろ!?なんで付いてこれんだよ!?

 

 今のところこちらは無傷、あちらは数発被弾と優勢……ではない。当たっても怯まず挫けず止まらない。リボルバーもアサルトライフルも両方使っている。だが、削りきれず、凌がれる。となれば不味いのはこちら。

 

「あぶっ」

「かなりキてるみたいだな!」

「うるさいな!」

 

 焦り、体を反らした回避は無理な体勢を作ってしまい、誤魔化すように撃つ。だがそれは

 

「6発目!」「しまっ」

 

 弾切れを見抜いた銀鏡の攻撃を体勢の崩れていた俺は避けきれない。

 

 

 

 

 

「私の勝ちだな」

「……そう、だな」

 

 意識がトんでいた。状況からして一瞬だろうが。風紀委員たちのあげる歓声が聞こえる。周囲の景色は変わらない。ただ下から眺める形になった。そして、勝負の行方は決定した。だが

 

「……なんの音だ?……!?」

「来た」

 

 試合の行方はどうかな!?

 

 突如、容赦のない7.7mm弾の雨が降り、風紀委員に混乱が走る。

 銀鏡イオリの注意が逸れた瞬間に蹴り飛ばし、ここまで隠してきた切り札に、ダイナマイトに火をつける。

 

「姐さん、無事ッスか!?」

「満身創痍だド低空!」

 

 ダイナマイトを投げつけ、もうひとつで風紀委員の包囲に崩し、そのまま脱兎のごとく走り抜ける。

 

 地面に擦るような超低空で突っ込んでくる機影。

 迫るエンジン音にプロペラの音、そこに混じるタイヤの走行音。前後入れ替る俺とメカジキ君

 

「飛ばせ!」

「逃がすか!」

 

 

 

 

 

「ふぅ~ここまで来たら大丈夫ッスかね~。いや~メカジキ君が穴だらけになっちゃたっス」

 

 …………。

 

「アレ?姐さん?」

 

 振り返り、後部座席を見る。座席からは脚が飛び出ていた。

 

 さらに覗き込むとそこにはヘルメットのバイザーが割れ、ヘイローが力なく明滅するメアリがいた。

 

「当てて……くるよな。でも、」

 

 飛び乗る瞬間をぶち抜くってどうなってんだ。

 

 モニョモニョとなにか言い残し、ヘイローがプスンと消えた。

*1
第8話:その時灰色の脳細胞がゲーミング7色に輝く。




戦闘描写分からない……。
次回 とっ捕まるワンコ
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