脳の破壊された上司と爆散するワンコ女の話   作:ここに文字を入カ

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屋内戦闘SS 攻撃力&会心ダメージUP
確定未来回
アンチヘイト注意


第15話 何も知らない 桐藤 ナギサ さん(17)

 

 

──―コンコンコンッと扉が叩かれ、気味が良い音が部屋に響く。

 

「……紅茶でしたらもう結構です。」

 

 ノックのみの伺いに応答する。給仕は断ってある、それゆえ護衛から合言葉が返ってくるはずだった。しかし返答はなく、不快な音を立てて扉が開く。

 

「……可哀想に、眠れないのですね。」

 

 月光に照らされて姿を現したのは見知ったティーパーティーの白い制服ではなく、桃色の長髪を揺らすセーラー服を着た少女──―浦和ハナコであった。

 

 慌てふためいてドタバタと机を叩き、普段ならしない大声を出したかのように声を張り上げる。襲撃者の名を叫ぶ。

 

「う、浦和ハナコさん!?あなたがどうして、ここに……!?」

「それはこのセーフハウスをどうやって知ったのか、という意味ですか?それはもちろん、全て把握しているからですよ。合計87個のセーフハウス、そしてそのローテーションまで……ふふ♡」

 

 例えば……今のように心から不安な時は、この秘密の屋根裏部屋に隠れるということも♡

 

「なっ……!」

 

 背筋が凍り、思わず悲鳴が漏れる。

 

 その返答は想像以上の最悪なものだ。嘘だと言えなかった。でまかせだと言えなかった。ピタリと言い当てられて言葉が口から出なかった。

 

 信じ難いことだが、眼前の人物……浦和ハナコならば可能であると感じる。浦和ハナコは桐藤ナギサにとって最も縁遠く、未知の人物、つまり脅威である。

 

 彼女を欲してティーパーティーやシスターフッドなどの各派閥が引き入れようと彼女に接触し、交流を持った。しかし突如として奇行に走り、素行不良の烙印を賜ったかと思えば進級後はわざと成績不振のフリをし続けた。

 言い換えるなら独自の情報網を持つトリニティ最高峰の頭脳が組織の枷なく自由になっていたということ。

 

「動くな。」

「……!?」

 

 密かに動かしていた左手がはたかれ、持っていたスイッチを落としてしまう。

 声をかけられたことで音もなく背後に回っていたもう1人の襲撃者に気がつく。ハナコが正面から来たのは注意を引くためだったのだ。

 

「あぁ、もちろんここまでの間に警護の方々は全員片付けさせていただきました。だからこそこうやって堂々と来たわけですが。」

「白洲アズサさん、浦和ハナコさん……まさか!“裏切り者”はひとりではなく、ふたり……!?」

 

 厳重な警護をくぐり抜けてセイアのもとまでたどり着ける。白洲アズサの技量、戦闘力なら十分に可能であると報告されていた。そしてその報告が正しかったと静まり返った扉の外が証明している。

 

 このふたりが組めば暗殺を完璧にこなしてしまえるだろう。

 

 しかし、自分たちはあくまで駒に過ぎず、命令した指揮官がいる。ハナコはそう語り、指揮官の正体を明かす前にと質問を投げかける。

 

 ここまでやる必要はあったのかと。

 

「補習授業部のことです。ナギサさんの心労は、よく分かります。ですがこうして“シャーレ”まで動員して、何もここまでやる必要は無かったのではありませんか?」

「それは……」

 

 どうだろうか?

 

 これがもし内通者を探し出すというだけならハナコの言うとおり必要はない。自身も初めはトリニティ内だけで完結させるつもりでシャーレを利用する気はなかった。

 しかし、最終的にはセイアが殺されているのだから徹底的にやるべきだというミカの意見に納得し、採択した。決して長短を考えず、軽率に決定した訳ではない。

 

「最初から怪しかった私や、アズサちゃんは仕方ありません。ですが……ヒフミちゃんとコハルちゃんに対しては、あんまりだと思いませんか?」

「……」

 

 愚問だ、思わなかったわけがない。

 

 こんな汚れ仕事の片棒を担がせた挙句に一方的に条件を変えられ、虐げられる環境に入れる。

 普通の学園生活をおくる善良で温厚な生徒を、正義に憧れて志す健気な無辜の生徒を。

 ハナコやアズサについても同様だ。それどころかふたりの不可解な言動はトリニティの抱える問題……生徒会が未熟であることに起因してる。

 ハナコは権力と利益で肥えた権謀術数の世界に疲弊した結果、アズサは義憤に駆られた高潔な勇気の結果。判明した時は吐き気がした。

 私はどうして守り、愛し、支え、共に歩む仲間である後輩たちを疑い、必死になって叩いて埃を探しているのかと。

 

「特にヒフミちゃんは……ナギサさんと、仲が良かったじゃないですか。どうしてこんなことをしてしまったのですか?ヒフミちゃんがどれだけ傷ついてしまうのか、考えなかったのですか?」

 

 全員が違うように見えた、全員がそうであるように見えた。分かるのは自分が正常ではないこと。

 

「……そう、ですね。ヒフミさんには悪い事をしたかもしれません……。」

 

 だから善良で賢い人に判断して欲しかった。先生やヒフミのような人に。だが、それは死刑執行人に任命しているのと同じだ。自分の役目を誰かに与えて不幸になる人間を増やしたのだ。

 

「ですが、後悔はしていません。全ては大義のため。」

 

 後悔してはいけない。補習授業部は必要だった。そうでなければならない。トリニティのために、巻き込んだ者のために、弔いのために、友人のために。

 確かにここまで苛烈な抑圧をすることになるとは思っていなかった。補習授業部が合格条件を満たすことなど無理だと思っていたから。しかし信じられないことに彼女たちは努力を積み重ね、やってのけようとした。

 焦ったのは私だ。恐慌状態に陥って補習授業部という箱を押さえつけ続ける。でも正しことのはずだから。ひねり続けた頭が最善だと判断したから。これが正しくなければ私は何のために友人たちを巻き込んで強権を振りかざしているのか。

 

「……ふふっ♡」

 

 ハナコはナギサの返答に笑みを浮かべるが、その瞳は決して笑っていない。

 

「その大義は大切な後輩に友人を探らせ、危険な任務に付かせるほどのものなんですか?」

 

 そう言うとハナコはあるものを取り出し、投げ渡す。

 

「これは……っ!?」

 

 年季の入ったホルスター、櫛井メアリのホルスター。1週間前に連絡が途絶え、消息不明になっていた自分を慕う愛しい後輩の身につけていたもので間違いがなかった。

 

 血の付いた紙片を掲げられる。

 

「ナギサさん宛の手紙もあります。窮地であったのか短く走り書きで『ナギサ様に会えてからずっと幸せでした、どうかお元気で』と。メアリちゃんは最期もあなたへの感謝と無事を祈っていましたよ」

 

 身体が震え、指が震え、口も喉も動かなくて、言葉がでなかった。

 

「ではあらためて私たちの指揮官からナギサさんへ、メッセージをお伝えしますね。」

 

「『あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様との友情ごっこ』……とのことです♡」

「……っ!?ま、まさか、ということは……!?」

 

 特徴的な笑い方、遠慮がちでたどたどしい話し方、瞬時に指揮官が誰かを理解した。同時にその強烈なメッセージが、手紙が杭となり身体を串刺しにした。

 

 それはつまり疑惑全ての肯定。補習授業部は裏切り者たちの巣窟であり、ティーパーティーの命を狙っていると。

 それはつまり阿慈谷ヒフミは裏切り者である肯定。あの会話も、あの表情も、あの仕草も、あの味も、あの香りも、何もかも!何もかも!!何もかもが!!!全部全部すべて嘘と欺瞞の虚像であったのだと。

 

 やはり……私は……間違って…………なかった……が……ま……。

 

 正しさを担保された。それなのに苦しくて、苦しくて息ができない。嘘だと叫んで拒絶したくてたまらない。だってそれは想像し続けた最凶最悪最低の真実。そうでないと、そんなはずがないと、口先から吐いた言葉と裏腹に信じたかった真実は口先通りの悪夢であったのだ。

 

 背後から響く指が引鉄にかかる音。ただ歯を、食いしばる。銃声が鳴り響いて道を、手段を誤った報いを受ける。

 

 弾倉丸ごと1本浴びせられた痩身は羽根を散らして机に倒れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……まだ、やるべきことがある。

 

      まだ、眠る時ではない。

 

まだ、死ねない

 

 羽を振り回して机上にあったコーヒーカップを襲撃者にぶつけ、()を全力で行使しながら銃を抜く。

 

 しかし、アズサは警戒を解かずにリロードをしていた。先に撃てるのは構えていたアズサであるのが当然だ。

 

 だが、発砲はほぼ同時。それどころかナギサの方が僅かに早い。

 

「「……っ!!」」

 

 被弾する双方。しかし、明暗が別れる。流れのまま翼を閉じて盾にしたナギサはアズサの攻撃を無理矢理とはいえ耐え、アズサは不幸にも利き手に被弾する。

 

 ナギサは弾道が逸れた瞬間にアズサの手、寸分たがわぬ場所を撃ち込み、一瞬で接近して蹴り飛ばす。

 

 その技はかつて早撃ちで成り上がった不良である野犬を正面から打ち倒したものであり、覚悟を決めきった彼女は瀬戸際で最高の冴えをみせた。

 

 今、ナギサを突き動かしているのは気合と根性、義務感、怒り、そして友情と親愛である。

 

「裏切り者は3人!阿慈谷ヒフミさん、浦和ハナコさん、白洲アズサさん!」

 

 叫ぶ、聞こえているはずだ。

 

 引くにひけないなら進むしかない。八方塞がりでも突き進んで死中に活を求める。泥と血を勲章として握りしめる。そうやってきたのを今更変えられない。同じ夢を描いた先輩や同志、そして友たちの汗と血と命に報いなければならない。私が、私たちの勝ち筋を捨てて諦めることはできなかった。

 

 囮として最低限の責務は果たした。だが、別に倒してしまっても構わないのだろう。

 

 この部屋にいるのはとどのつまり仲間の仇であり、敵たち。しかし、自身は満身創痍で打ち倒すことは難しい。ならばこの襲撃の結末はステイルメ(引き分け)イトと行くしかない。

 

 床に取り落としたスイッチを、起爆スイッチを見つけ、走る。押せば部屋中に隠された爆薬が見境なく牙を剥く。そうなれば──―

 

「そこまでです、ナギサさん」

 

 しかし、悪あがきもここまでだった。先にたどり着いたハナコに掠めとられ、代わりに銃弾を受ける。

 

「ここまで……です……か」

 

 とうに限界を迎えていたためか身体は簡単に倒れ、意識が霞む。

 

 悔しい、怖い、だが不思議なことに僅かな安心がある。馬鹿なことにあのふたりが待っていてくれていると心のどこかで考えているらしい。

 

 あぁ、でも、あの子を一人にさせてしまう。どうしてもそれは心残りだ。眠る気はなかったのに。

 

 床からは机の裏に貼り付けた電話が見えた。

 

 

 

 /01

 

 

 

 

「ごめんなさい、ミカさん。あとは──」

 

「ナギちゃん……?」

 

 返事はない。

 

「もしもし……ねぇ……」

 

 返事はない。

 

「ナギちゃん!!!」

 

 何度声をかけても返事ない。

 

 想定外の事態、それはアズサの独断専行。ありえない事のはずだった。命令されれば躊躇なく人を殺してしまうような四面四角の操り人形が自発的に動いた。秘密裏に命令が下っていた可能性は入念にアリウスにサグリを入れて潰していたはずなのに。

 

 正義実現委員会に待機命令を飛ばした直後にかかってきた電話からは既に襲撃され、囮となって情報を伝え続けるナギサの声が聞こえ、それが今途絶えた。

 

 なんで、どうして、どうしよう、死んじゃう、まだ間に合う、どうしたら

 

『目標を確保。近距離で5.56mm弾が丸々1弾倉分当てたから、1時間くらいはこのまま気を失ってるはず。』

 

 アリウス側の無線から流れたアズサの声。告げられた内容は本隊との合流をはかろうとするものだった。

 焦ったままの頭は思い付く、アリウスを使おうと。アズサは標的を連れて合流する、その時こそナギサを奪う最大の機会だ。

 

 そのように思い至りすぐさまアリウスに行動開始の命令を下す。

 

 一方、もう一人ナギサからの電話を聞いていた者がいた。怒りで毛を逆立てる犬がいた。

 

 心労はよく分かる……?

 

 何が分かるというのか。お前はさっさと逃げたというのに。逃げた奴に残り続けた奴の気持ちが分かるのかよ。

 相手の気持ちとか、必要不要を問うならわざわざ嘘ついてまで傷つけたのはなんでだよ。

 叱責できるくらいの考えがあったのなら、言いに来てくれれば良かったじゃないか。

 古巣(サンクトゥス)すら一切信じずに一人勝手にセイア様のこと調べてたお前がどの口で『仲が良かったじゃないですか』って不思議そうにしてんだ。

 

 あぁ、そうだな、何もかも嘘だったもんなぁ!ハナコ!

 

 演技ならなんだって言えるよな、騙してると気分が良くて笑っちまうよなぁ!理解できるよ、分かるよ、同意するよ!

 

 ナギサ様を助けるには、どうしたら、どうしたらいい……!?

 

 ……そうか、まだあるじゃないか、ひとつ。

 

 深夜でも変わらずいつも頑張ってくれている愛と平和の公認団体が……!

 

 

 

 /02

 

 

 

 黒の長髪、黒のセーラー服を着た大人しそうな華奢で小柄な背中を見て思う。

 

 正義実現委員会といえばキヴォトス最大級の学園であるトリニティにおいて一大勢力を築く巨大組織。所属生徒数もキヴォトスの上から数えた方が早い。それだけ多くの生徒を抱えている。

 

 その中でひとりが少し不幸な目に合っても、ひとりくらい居なくなってもバレないだろうか?

 

「流石にうちの子たちに手を出したら容赦できないっすよ。」

 

 バレる。

 

 手を挙げて振り向いた先、正義は隣にいた。

 

 穏やかに細めた双眸、細身の身体、穢れのないぬばたまの翼と髪。こんな時でも君なら動いてくれていると思っていた。異常事態に真っ先に勘づくほどほどという名の適当適宜の命綱。

 

「探してたよ、イチカ」

「私たちもっすよ、メアリちゃん」

 

 どうやら俺は身に覚えのない嫌疑がかけられているようだが、それも丁度いい。俺も含めた裏切り者の話をしよう。コウモリ野郎の言葉を聞いて欲しい。

 

 

 

 /03

 






ネクストコ●ンズヒーント!!!




ここにいるやつ皆ナギサ様の身柄目当て

         の段



みんなもモモフレゲットじゃぞ~
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