脳の破壊された上司と爆散するワンコ女の話   作:ここに文字を入カ

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※対立・アンチ・ヘイト注意
イオリもアコも大好きなんです。なんで僕は推したちを争わせているんだ?つらい……苦しい……これが人生なんでしょうか。

タワーディフェンス回


第22話 楽しかったぜ!お前との和解ごっこ!

 

 

 

 この光景を前にしたとき、何を思ったのだろう。

 

「その子を離せ、裏切り者ども!」

 

 その背中はあまりにも寂しく、小さい。

 

「よくも……よくも委員長の願いを踏みにじってくれましたね、トリニティ!」

 

 やめてくれ。

 

「のこのこと現れて、なんのつもりですか!?」

 

 怨嗟の声を、敵意のまなざしを受けるその人は、本当に、ずっと、願っていたんだ。

 傷も疲労を誤魔化しながら何年も頑張っていたんだ。少しづつ連邦生徒会長や風紀委員長みたいな仲間を増やして、ようやく見えたゴールが全部壊れてしまったんだ。

 

「……意図してココにたどり着いたわけではありません」

 

 ナギサ様の口からでた言葉は響くというより、重力で口から落ちてきたかのようだった。

 

「立てますか?」

「は、はい」

 

 背負っていた風紀委員の少女を降ろす。しかし両者の手には銃が握られたままであり、依然として緊張は続く。

 

「……ヒナさんは?」

「何をぬけぬけと……!」

「本当に知らないのです」

「……意識不明の重傷で運ばれた」

 

 銀鏡イオリの掠れた返答に、ナギサ様は言葉を紡げなくなる。そして甘雨アコが語る。

 

「委員長は平和だ、和解だと宣ったあなたたちを信じました。だから、風紀委員会もあなたたちを信じて委員長とともに日夜働き続けました。」

 

 何も差し込めず、喋らせてしまう。

 

「ですが、これが委員長が得たものです!ミサイルと亡霊と敵!和解などありもしなかったと、全部無駄だったと──」

 

 それは糾弾なのか、それとも代弁なのか。関係者全ての内のどこかにある思い。

 ひとたび口から出てしまえば止まることなく、次々と出てしまう。

 

「──エデン条約なんて夢を見せるだけの詐欺だったと、それだけが分かったんです!」

 

 右手が動く。歯止めも効かずに動く。首謀者をトリニティと決めつけてズケズケと語る者を撃ち抜くために。

 

 しかし、銃を向けることは叶わない。白い翼が前を遮ってしまった。

 

「……天雨アコさんでしたね。風紀委員会はどうして飛空船で脱出しなかったのですか?」

「できるはずないでしょう!?いつの間にかあんなものを浮かべて喜んでいる万魔殿(たぬき)の事なんて、風紀委員会(私たち)は知る由もないのに!」

 

 なるほど……なるほど……と力なく二度呟やいて、ゆっくりとナギサ様は右手の拳銃をしまう。

 

「なんのつもりだ」

「……争う理由がありませんから」

 

 あぁ、そうだ。貴方はそうだ。眼前の人物たちが同志の成れの果てだと分かり、被害者たちであると分かり、撃てなくなってしまう。

 

「信じてもらえないかもしれませんが、本当に今日は条約に調印するためだけにここに来たんです」

 

 万魔殿はアリウスと手を組んでいた。

 

 ゲヘナをゲヘナとしてみていた。だが、その実態は風紀委員会()万魔殿。しかも、そこに連結はない。

 

 だから、万魔殿はゆうゆうと飛空船で逃げ、一方で風紀委員会は直撃を喰らい、甚大な被害をこうむっている。

 

 意味が分からない。

 

 仲が悪くとも同じ学園で主戦力だ。それを容赦なく捨て駒にし、トリニティを潰すために手を組む?突如現れた自分たちを不倶戴天の敵と定めている奴らと?

 

「私は撃ちません。撃たれてもそれで構いません。むしろ私の首で済むのなら安いものです」

「意味がわかりません!」

「おふたりが立ちはだかっている理由と同じですよ。この子は、今日ここに来たトリニティの生徒たちは全て私に連れられてきただけです。」

 

 やめろ。そんなことをしてみろ。なにもかも捨てて残りの人生すべて墓守に費やしてやる。

 

 だから庇わないで、隠さないでくれ。声を上げさせてくれ、守らせてくれ。

 

「責任を問うというのならば……どうか、私だけにしてください」

 

 沈黙が重い霧のように立ち込める。

 

 あらゆる音が遠くなり、コチラを見定めるふたりだけが異様に鮮やかにで詳細に写る。

 

 一瞬にも永遠にも感じられる沈黙のなか、相手の返事を、審判を待ち続ける。

 

 頭の中で様々な思いが交錯する。決裂したとき、己を止める人はいない。ならばこの人を守るために私はあらゆる手段をとるだろう。

 

 深く息をつく音が聞こえた。

 

「いいよね?アコちゃん」

「……仕方ありません。トリニティの陣地はあちらです。早くあの大砲を止めてきてください」

 

 逸れることのなかった銃口は下を向く。

 

「……ありがとうござ──

 

 ナギサ様が飛ぶ。

 

 細身の体は宙に浮いて、羽根を散らす。

 

20mmの弾丸が爪弾いた消しゴムのようにナギサ様を吹き飛ばす。この問答の最中、狙撃への警戒なんてできているわけがなかったのだ。

 ナギサ様を抱きとめた冷たい土の上、真っ白になりゆく意識の中で轟く銃声を聞く。

 

 

 

 やりやがったな。

 

 

 

 

 /01

 

 

 

「すみ……ません、重い……でしょう?」

「いいえ。むしろ役得です」

 

 手近な場所に飛び込んだ結果、再び地下。暗い中、ナギサ様に肩を貸して歩く。

 

「歩かなければならない……のに、力が……」

「大丈夫です。でも、そうですね、背負うので乗ってください」

 

 半ば引きずる形であったから、おんぶの方がいいだろう。

 

 背中にある重みがこの人の命を感じさせてくれる。だが、この方にのしかかっているモノの重みまでは分からない。

 

「ごめんなさい」

「お気になさらないでください。昔、ゲヘナへ外遊していた時だって──」

「こんなことになってしまって……ごめんなさい」

 

 でも、その声に滲み出ているものを感じとることはできる。

 

「期待させてしまって、巻き込んでしまって、失敗してしまって……ごめんなさい」

「どうしたんですか?」

「夢見てしまったから……私が愚かだったから……」

 

 耳元の声は、震えていた。

 

「あれほど気をつけるように言われていたのに、信用するなと嫌になるほど聞かされたのに、有頂天になって警戒を怠って、蝋の翼で太陽へ飛ぶようにここへ来ました。あろうことか皆さんまで巻き込んで」

 

 首元に雫が落ちる。

 

「融和のために尽力しくれた方々がいました。ゲヘナにもヒナさんを始めとして何人もいます。連邦生徒会長はエデン条約という“形“まで作ろうとしてくださり、セイアさんも承認してくださって、本当に実現してしまうかもしれないと思いました」

 

 涙も言葉もとめどなくこぼれ落ちる。溜め込んでいたものが堰を切ったように流れでる。

 

「なのに私は、託されたモノや人の思いを恣意的に使ったんです。トリニティのためやミカさんのためなんてことも言いました。正当化して、私のしたことはヒフミさんたちを虐げ、メアリさんに友人の監視をさせることです」

 

 どんな言葉をかけたらよいのだろう。ただ聞いているだけで抱えているモノが軽くなるならどれだけでも聞きます。でも、私はあなたが間違えたとは思わない。

 

「その末に迎えたのが今日です。条約も、条約のためにと行ったこと全てが無為になりました」

「でも、アリウスのせいです」

「失敗したことに変わりはありません。」

 

 挽回も難しい。だって万魔殿は仲良くする気などほとほとなかったから。事態が収束すれば厚顔無恥にトリニティの非難をしてくるだろう。アリウスはトリニティだから首謀者はトリニティとまで言ってくるかもしれない。

 

「私は幻想に多くの人を巻き込んで……皆さんの青春を棒に振っただけなんです」

 

 信じたのに、期待したのに。仲間だった者からはなんと言われるだろうか。

 

「セイアさんの問いは、信じて進むことができるかを聞いているのかと思っていました。でも違ったんです。」

 

 信頼、期待、疑問、非難、中傷。かつて受け取った声すべてが責め立てる。

 

「セイアさんは楽園などあったところで、追放された私たちは楽園に入ることなどできないと教えてくれていたのです。」

 

 傍観していた者からはなんと言われるだろうか。どういった経緯があったのか、どれだけの努力があったなど関係なく、失敗したことだけ取りただされて責められるかもしれない。

 

「私が何もしなければ、ミカさんはあんなことにならなかったんです。こんなことになって、ティーパーティーが失墜すれば、ミカさんに悪いイメージが付きまとってしまう。聴聞会だって不利になります」

 

 だけど、誰があなたを一番責め、許さないのか。それはナギサ様自身だ。

 

「ごめんなさい……許してください……」

 

 ねぇ、ナギサ様。私は口が下手で、気の利いたことは言えないし、あなたのことを理解できているなんて言えません。

 

「……なら私は許します。他やナギサ様がどうであれ、私はあなたを許します。怒ってすらいません。」

 

 だけど、あなたの味方です。1人だけでも、絶対にあなたの傍にいます。もう立ち上がることができなくても、見捨てたりしません。

 

 少しでいい、僅かでいいから、私はあなたの支えにならないだろうか。

 

 

 

 /02

 

 

 

 いったいどれだけ歩いただろうか。行先のあてもなく地下をずっと歩いて、何時間も経つような気がする。

 

 洞窟を抜け、カタコンベを抜け、地下道を抜け、またよく分からない教会のような場所まで来た。

 

 いつの間にか首にかかる腕の力は抜け、ナギサ様は眠っていた。気を失ったと言うべきなのかは知らない。

 

 運良く小部屋を見つけたので、ここをキャンプ地とする。簡単にベッドを作り、ナギサ様を寝かせた。

 

 道中、アリウスの物資をかっぱらったから……もともとトリニティ(うち)のだったや……しばらくは大丈夫だろう。

 

 脱出は、せめて地上が落ち着いてからにしよう。

 

 もしもの時のためのバリケードの材料を集めに付近を探索していると、少し離れた場所には大きな像があった。赤いローブと、大きな光背が特徴的で自身の5倍ほどある。

 

「……。」

 

 軽く祈っておこう。気分的に。ユスティナかアリウスかは知らないが、祈りに教義も会釈違いもないだろう。

 

 

 

 /03

 

 

 

 足音が聞こえた。()を使っているから、自身の足音は一切しないのに。

 

 この先でうちのご主人様が死ぬほど疲れて寝ているんだ。起こさないで欲しいんだけど。

 

 いつの間にかユスティナ聖徒会がアリウス共がたむろしている。それに気がつけなかったのが運の尽きだったな。

 

 倒しても倒しても続々と増援が来る。このどん詰まりにいったい何があるというのか。

 

 ひーふーみーよー……まだまだいる。うわぁ、団体様のお着きだ。

 

 リロードをし、垂れた血を拭い、最後のひとつとなった飴をなめる。軽くなった弾薬箱から持てるだけの弾薬を補充する。

 

 仕上げとばかりにポーチから取り出した瓶に口をつける。キラキラとラメを混ぜ込んだみたいに輝く紫色の液体は、舌を凍らせるような感触と蜂蜜のような甘さを伝える。

 

 ちょっとすると目眩がして、その代わりに際限なく力が湧いてくる。薄弱な神秘も、これで少しはマシだろう。

 

 来いよド畜生ども。

 

 

 

 /04

 

 

 

 完成した“教義”、ヒエロニムス

 

 古聖堂の地下に突如として現れた人工天使は、先生によって打倒された。

 

 現在は先生の指揮のもと、古聖堂に取り残されている者の救助、行方不明者の探索がゲヘナとトリニティの合同で行われている。

 

 だが、薄暗くて気味の悪い地下の教会にいる者たちもいた。

 

「なんでそんな大事なものをこんな所に……」

「しょ、しょうがないじゃない!あんなのと戦ってたら落としても気がつかないわよ!」

「わっ!」

「ヒャァァァァ!!?」

「くふふ~♥アルちゃん驚きすぎ〜」

「社長、うるさい」

「ご無事ですかアル様!!??」

 

 便利屋68は、ライトを手にしてアチコチを隅々まで探していた。

 

「あ!見つけ……グレネードのピンじゃない……」

 

 光を反射したのは見当違いの代物。ぬか喜びだったと落ち込んでいると……

 

「そういえばこの通路、まだ探してないわね。」

「アルちゃん、さっきそこ入ったの?」

「入ってないけれど、爆発の余波で飛ばされてるかもしれないわ」

「なら探してみようか」

「えぇ……って薬莢?」

 

 倒れた柱によって陰になっていたが、通路を発見する。入ってみるとそこには大量の薬莢をはじめとした、戦闘の跡があった。

 

 先程の戦いには、多数のユスティナ聖徒会も召喚された。誰かがここで戦っていてもおかしくはない。

 

 うっかり地雷が残っていることもある。4人は警戒しながら奥へと進む。すると──

 

「!」

「だ、誰かいます!」

 

 血まみれで倒れている少女を発見する。

 

「大丈夫!?しっかりしなさ──!?」

 

 すぐさま駆け寄ると、少女は瞬く間に上体を起こし、アルに拳銃を構えた。垂れた鈍色の前髪の下に、緑色の敵意の瞳が透ける。

 

「……ゲヘナ」

「……私たちは便利屋68。先生の依頼であなたを助けにきたの」

 

 銃を構えられたことで、今にも逆賊を討たんとばかりにいきり立つハルカを抑えながら対話を試みる。

 

「信用できないなら引鉄を引いても構わないわ。でも、撃たれたところであなたを助けることに変わりはないから」

 

 一瞬、彼女の耳と尻尾がピンと立つが、臆せず近寄る。

 

「それに、戦いはもう終わったわ」

 

 1歩、また1歩と進む。怖がらなせないようにゆっくりと。

 

 少女の纏う雰囲気は変わらず、歩を進めるごとに視線の鋭さは増していくように感じる。

 

 だが、引鉄は引かれない。

 

 それどころか、アルがしゃがんで目線を合わせる頃にはトリニティの生徒は「……わかった」と言って目を閉じる。銃は床へ落ちていた。

 

 力の抜けた彼女を抱きあげると、彼女は「奥に」とだけ言い残してヘイローが消えた。

 

 

 

 

 /05

 







ナギサ様が見つからなかったのは、誰かがどこかへ隠していたからではないかという妄想。
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