脳の破壊された上司と爆散するワンコ女の話   作:ここに文字を入カ

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(転-1)なんか落ちてた回


|第28話|メアリは拾った

 

【巨星墜つ】首長死すとも派閥は死せず

1:無記名投票ですわ ID:xcKDiHCg4

【同時襲撃】派閥本部に押し入り、一方で同時刻に辻斬り

https://bluearchive.jp/fankit/guidelines

 今ここに俺が来なかったか!?

 

2:無記名投票ですわ ID:ByrKqyg+k

 組織犯ってだけだろ

 

4:無記名投票ですわ ID:8sqajMBqj

 こんだけ有名なら模倣犯出てもおかしくない

 

6:無記名投票ですわ ID:v8YBu3HL7

 庭園の撮影に来てた新聞部がウキウキで報道してんの笑う。なに生中継してんだよ

 

7:無記名投票ですわ ID:c8inuVdgY

 人命救助のために突入ですわ!!!プライバシー保護のため負傷者は撮影はせず、そのときに紙でも写しときますわ!!!え、不正な書類!?どういうことですの!?オラ、なんぞゆうてみんかいワレェ!!!

 

10:無記名投票ですわ ID:zFd/thF6V

 あんまりな大根芝居に腹抱えてる。グルだろこんなん。

 

11:無記名投票ですわ ID:3PGl86nI6

 色んな傾向あるよな。派閥関係なく嚙みついてる狂犬タイプと、特定派閥を潰しにいってる猟犬タイプと、戦闘苦手民を追い込んでる牧羊犬

 

14:無記名投票ですわ ID:PsacaJXEd

 >>11

 好きな事例だけ取り出して語る傾向になんの意味があるんだ?

 

17:無記名投票ですわ ID:3PGl86nI6

 >>14

 分類せず五十音にでも並べてろよ痴れ者が

 

18:無記名投票ですわ ID:xcKDiHCg4

 誰かのれよ

 

21:無記名投票ですわ ID:xcKDiHCgA

 今ここに俺が来なかったか!?

 

22:無記名投票ですわ ID:xcKDiHCg4

 何だとwww

 

24:無記名投票ですわ ID:fI3oX5aI8

 IDクリソツで草

 

27:無記名投票ですわ ID:xcKDiHCgA

 バッカヤローそいつがイッチだ!俺に化けてスレを立てたんだ!でっかい図体してゴミみたいなスレも見破れんのか、穀潰し!

 

29:無記名投票ですわ ID:qJUQcCdIY

 追ええええええ

 

 

 

 

 

 

 霧に包まれた街の路地にコツコツとアスファルトを叩く音が響く。そんな己の足音の他に遠方のサイレンや銃声の雑音が耳に届く。濃霧は街灯の光をぼんやりと拡散させ、視界は狭まい。ヒヤヒヤとした感覚は張り付いて不快だ。

 

「…………先輩?」

 

 ふと、霧の向こうにぼんやりと人影が浮かび上がる。目を凝らすと、やがてそれがメアリであることに気づく。「どうしてここに?」足音もなく揺れる影は、荒らげた息を抑えこんで声を発する。歩み寄り、「無事か?」と努めて柔らかく問いかける。

 

 一瞬、安堵の息をついた。しかし、話しているうちに次第に違和感が募り始める。会話はどこかぎこちなく、顔をよく見ると、その表情はぼんやりとした霧の中に沈んでいて、顔を塗りつぶした写真のようだ。目が合った瞬間、背筋に冷たいものが走った。

 

「怪我でもしてるのか?」問いかけるが、返事は遅れがちで、しかも笑みが不自然に広がる。その笑顔に込められた感情が、どこか違う、何かが違う。

 

「ねぇ、先輩」

 

 脳内に警鐘が鳴り響く。霧が一層濃くなり、メアリの姿がゆっくりと白色に埋もれて消える。

 

「勝負しましょうよ」

 

 真っ白な世界に響く声はどこから発されているか分からない。

 

「……自分の状態がわかっているのか?」

「学園の連中はみんな歯ごたえがなくて、数に入りませんよ」

「そうじゃない」

「おかしいことは分かりますよ。とにかく楽しくて、面白くて、だんだん理性も見境もなくなっていってる。さっきも関係ない子を撃ちそうになった。なんなんですか?なんなんですかね?大丈夫なんですか?私、止まれるんですかね?」

「わかった。来い、止めてやる」

 

 霧が晴れる。雲の影のような色の髪と犬耳、怪しく揺らぐ緑のヘイロー、外套で隠れた成長途中の華奢な体躯、にんまりと笑った顔。

 

 出現したメアリ、それ以外は霧の中、霧なのだ。まるで自身とメアリだけをくり抜いたように霧が晴れている。

 

 つまりこの霧は自然現象ではなく、神秘。操っているのは言うまでもなく、対戦相手。

 

「合図はコレで」

 

 負けるはずがない、ひと月前までは。

 

「せーのっ」

 

 だが、今は──天秤が揺れている。

 

 

 

 /01

 

 

 

 ここならいいだろう。

 

 ヘイローの消えたスオウ先輩を道路脇の安全な場所に移す。

 

 弾丸や薬莢の回収は……いらない。いつからか消えてしまうようになった。

 

 やたらと傷が痛い。左半身を引きずる。

 

 利き腕が残ってよかった。勝ったのは運だ。間違いなくまぐれ。2度目があれば敗北必至。それでも勝ちは勝ちだ。

 

「うぁ⋯⋯はは……」

 

 多分、私は笑ってる。笑ってるんだと思う。

 

 先輩の安全を確保した後、つたう汗と血を拭って私は霧に溶けた。

 

 

 

 /02

 

 

 

 静かな午後、街の喧騒から離れた場所にある隠れ家的なカフェ。緑に囲まれたテラス席では、微かに風が葉を揺らし、パラソルの作る心地よい影の下にはテーブル。向かい合って座るふたりの手元に置かれたカップからは、湯気が立ちのぼりかすかに空気を温めている。

 

「さて……例の件だが、結果が出た」

 

 友人はいつもと変わらぬ落ち着いた調子で切り出した。彼女はカップを持ち上げ、少しずつ紅茶を口に運ぶ。視線は眼前の風景に向けられているようで、しかしその奥ではこちらの反応を鋭く観察しているのがわかった。

 

「どうでしたか?」

 

 発した声には自覚できるほどの焦りと不安、それを上回る期待が混ざっていた。

 

「所感を述べるなら、残念だ」

 

 彼女の冷静さがかえって緊張を煽る。テーブルに置かれた封筒を受けとると、数枚の文書と写真がはいっていた。文書には見覚えのある名前があり、くどくどと文字が並べられている。一枚ずつ軽く目を通し、目的の内容を探す。

 

「私からも伝えておこう」

 

 一見ねむたげな目には計り知れない叡智の光が隠れている。

 

「部活会館の事件で犯人が用いた銃は、データベースに登録されている櫛井メアリの銃であった」

 

 風が強く吹き抜け、テラスの端に置かれた植木がざわつく。言葉では語られない緊張が漂う。

 

「君が持っていた弾とは不一致、部活会館ものとは担当者いわくメーカーからして違うとのことだ」

 

 落胆を隠しきれないでいると、それを見て彼女は薄く笑ってブロンドの尻尾を揺らす。

 

「これは連邦生徒会の友人からだが……」と意味深に続けた彼女は青い封筒を取り出す。

 

「連邦生徒会とヴァルキューレのデータでも君の提出した弾丸と櫛井メアリの銃は一致しなかったそうだよ」

 

 すべてを見抜いた、見てきたというような彼女の態度はどこか他人事にも感じる。しかし、それは超越的なまでの俯瞰した視点を持っているため。読み解けばそこには優しさも配慮も正義もなにもかもがある。

 

「ほかにも何かあればいつでも言ってほしい。可能な限りの手助けを約束しよう」

「本当にありがとうございます」

「思いきりやるといい」

 

 彼女は再びカップを取る。

 

「ナギサがいると思うと高等部が楽しみだ」

「もしかしておわかりですか?」

「政界に来るのだろう?」

「はい。来年からもよろしくお願いします、セイアさん」

 

 人目の届かぬ茶の席、天使たちの密会は平穏無事に終わりを迎えた。

 

 

 

 /03

 

 

 

 セイアの体調を慮って短時間で済ますはずが、思いのほか長居してしまった。

 

「今にも降り出しそうですね……」

 

 流れくる暗雲を見てそう思わずにはいられない。すぐに嵐が来るだろう。幼なじみからも予定をズラす旨の連絡が来ている。

 

 家路を急ぐが、8分目ほどでポツリと顔に一滴の雫。降ってきた。

 

 最初の一滴のあとは堰を切ったように大粒の雨が落ちてくる。瞬く間にひっくり返したバケツを被ったようになってしまう。

 

 だが、ここまで濡れるともういいかとも思ってしまう。街灯の光が広がった水面に写ってどこか幻想的だ。都市という人工物の塊の中、雨音という自然の音しかしないのも悪くない。

 

 ひどい雨だがあの子は大丈夫だろうか、濡れて風邪をひいてはいないだろうか。

 

 ふと、視界の端に入ったものが気になった。公園、公園の東屋。もしかしたら雨宿りしている人がいるかもしれないが、一時的にあそこへ避難しようか。

 

 そして、駆け込んだそこには先客がいた。雨に濡れた土くれのようにベンチで眠ってるのは……

 

「……メアリさん?」

 

 

 

 /04

 

 

 

 目覚めた時、メアリは心地よい暖かさに包まれていた。ふんわりとした毛布をどかし、体を起こして周囲を見回す。木目の美しい天井、やわらかなベッド──全く身に覚えのない場所、気を失う直前の記憶との断絶。

 

 服もいつの間にか着替えさせられていて、乾いた柔らかいものに変わっていた。

 

「……」

 

 背中にふたつの穴が開いている。翼がある者用の服だ。

 

 ふわりと鼻をくすぐる穏やかな甘い香りに気づく。どこか懐かしさを感じさせる、優しい香り。

 

「……っ!」

 

 記憶が呼び起こされるが、答えは頭痛にかき消される。

 

 恐る恐るベッドから足を下ろし、慎重に部屋の扉を開ける。廊下も薄暗いが、奥の方から光が漏れている。光に向って進むと、かすかな音が耳に入ってきた。

 

 パキパキと何かを割る音、木の床がきしむ音。その音に交じって、今度は甘い香りが漂ってきた。ミルクとチョコレートのほっとする香りだ。

 

 鼓動が速くなる。知っている誰かが作っているのかもしれない。期待が不安と交じり合う。逃げ出すわけにもいかず、進んでいく。やがて、キッチンの入口にたどり着いた。淡い光に包まれた空間が広がり、暖かな灯りがテーブルを照らしている。

 

 一瞬、ためらいながらも、意を決して足を踏み入れた。

 

「……!メアリさん、お気づきになられましたか」

 

 そこにいた人物は知っていた。私を見て安心してくれた顔をさも、真っ白な翼も、プラチナの髪も、優しい香りも、知っていた。

 

「ナギサさ──

 

 

 /05

 

 

 

「?」

 

 言いかけて、急に固まったメアリ。どうしたのだろうか、どこか悪いところがあるのだろうか。そんな疑問の答えは、メアリの目が何を捉えてるものにあった。

 

「あ」

 

 ガスコンロ、小鍋を温めていた火を見て固まっている。慌てて消すと同時にメアリがへなへなと膝をつく。

 

「大丈夫ですか!?」

「大丈夫、大丈夫です。すみません、実は、少し火が、苦手で……」

 

 口ではそう言っていても体は正直なようで、動転して真っ青になった顔で座りみ、ツギハギな言葉を並べる。

 

 ひとまず深呼吸で息を整えさせ、リビングのそふぁに座らせる。人心地つく一役となって欲しいと、作っていたホットチョコレートを渡す。

 

 メアリはマグカップとこちらを交互に見て飲んでいいか思案したあと、おずおずと口をつけ、ビクッと熱さに驚く。もう一度口をつけ、一言こぼす。

 

「……おいしい」

 

 どうやら口にあったようだ。頬に赤みが戻り、表情も明るくなった。うれしい限りである。

 

「……?……!」

「どこか痛むところが?」

「いえ、むしろ楽に……?」

 

 なにかペタペタと頭を触っている。なんともないと言うとおり怪我もなく、耳がピコピコ動いているだけだ。

 

 精一杯息を吹きかけ冷まし、夢中で飲んでいる姿になんだか言い知れぬ庇護欲が湧く。ちょっと熱かっただろうか。

 

 マグカップが空になって一息ついているメアリに声をかける。

 

「お風呂にしましょう。服はまだ乾いていないので、申し訳ありませんが私のものを着てください。この嵐では買いに行くこともできないので……」

「へぁ?」

「寮ほど大きくはありませんが、ふたりで入れるくらいの大きさはありますから、一緒に入りましょう。久しぶりですね」

 

 

 

 /06

 

 

 

「疲れていて気分ではないかもしれませんが、髪も傷んでしまいますから」

「あ、あの……」

 

 何か言いたげにおどおどしているメアリ、あぁそういえば言い忘れていた。彼女にとって重大なことだ。手を引いて廊下を行き、戸を開けて部屋を見せる。

 

「メアリさんの銃や身につけていた物は、雨で傷んでしまうかもしれないと思い、勝手ながら整備さていただきました。革のものは拭いてから干しています」

「あ、ありがとうございます」

 

 包んだ新聞紙を使ってホルスターが干されていた。内部まで早く乾かす、かつ、型崩れしないようにするためだ。テーブルにはメンテナンスキットとともに小さな自動拳銃とリボルバーがふたつ。

 

「コートなどはこちらに」

 

 その隣の部屋にはメアリの緑のコートをはじめ、いくつもの洗濯物が干されている。

 

 廊下の突き当たり、上履きをぬいでぺたぺたあるいて扉の中へはいる。

 

 髪飾りをとって髪をほどく。鏡台にしまう。カランカランとベルトを外す。

 

「その、やっぱり……」

「タオルと着替えです」

「……はい」

 

 タンスから取り出して渡す。

 

「そちらにある瓶は美容クリームやヘアオイルですから、お風呂上がりに使ってください。あぁそれと、端にあるのは洗濯用の塩素ですので気をつけてください」

「……わん。」

「?」

「……おまじないです」

「ふふっ、古い建物ですので、一部の扉の建て付けが悪くなっているのでお気を付けて」

 

 脱衣場の扉はすっかり閉まっている。扉についた汚れは歳月によって落ちなくなったもの。逆にいえば歳月を語る勲章……とはいっても、部品の取り換えをしたばかりのため見た目と裏腹に軽く開くけれど。

 

 ブラウスの1番上のボタンをぷつりと外す。その下、さらにその下もぷつりぷつりと。襟元がゆるみ、前がひらく。首から胸元、肩から腕、素肌に触れた空気が冷っこく、一方で服は熱をこんなにも保持していたのかと気がつく。

 

「服は洗濯機の横のカゴに入れておいてください」

 

 洗濯ネットに畳んでブラウスを入れると、うじうじしていたメアリも観念したようだ。

 

 1年近く会っていなかった彼女の髪は長くなり、耳にだってピアスホールが空いていた。変化はもちろん服の下も。

 

 下ろしたズボンを跨ぐ下着姿のメアリ。己より一年と半分幼い体ははかなげに感じる。それでも記憶よりも背が伸びて、未熟な色っぽさがではじめた体。狭い肩幅、肋骨のなだらかな凹凸、弓のような緩い曲線を描く背、思わず触れた腹部。やわらかな触感、しかしビクッと硬くなる。そこには思いのほか筋肉の弾性的固さがある。密度高く詰まった感触に、運動部の生徒のようだと思った。

 

 ちょっと安心した。

 

 食うに困っていたり、ひもじい思いをしていたりはしなかった。傷もない。

 

 髪型を変えたり、オシャレをするくらいの余裕はあったようだし、弾薬や医薬品などの装備も悪くない。

 

 カイザーPMCは彼女をキチンと従業員として扱っていたらしい。

 

 

 

 /07

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