脳の破壊された上司と爆散するワンコ女の話 作:ここに文字を入カ
「やめえ、くだぁっ!さぃ……!?」
「わしゃわしゃ~☆」
負け犬のポーズ☆というわけでどうも、櫛井メアリです。
もうね、気持ちよくてね、尻尾が止まんねぇの。ヤバいわ、ミカ様。もうこれさえあればなんもいんねぇや。
「やっぱり速いね~、今日こそ当てれると思ったのに」
「まっけぇまし……たぁ!からぁっ……!」
俺の勝ち、なんで勝てたかよく分からん。ほな、帰ります。
とはいかないんすよねこれが。
何言ってるかと言いますと、まず速さ。俺のが速いんすよ。
開幕の早撃ち、コレは絶対に負けない。そっからの動いて撃って、ヒットアンドアウェイの殴り合い体育館。これもね中々自信あるんすよ。
けどね、俺、体力ないんす。そのうちバテて足が止まるんですね。
最初の元気なうちに押し切れたらいいんですけど、攻撃が毛ほども通んないんですわ。
しかもこっちは低防御低HPで実質オワタ式、もうね、俺ね、逃げる、脱走するわ。
なんてこと許されず、今回はなんと足を踏まれてのベタ足ゼロ距離ファイト。
リボルバーの6発 vs サブマシンガンの30超のフルオート
もうダメだ……おしまいだァ……。
ズタタタタタタタと5億年近く続いた気がする音と痛みを耐え、撃ちきったかな?と目を開けたら、マガジンが横に付いてるのをいいことにこっちに銃口向けたまま「カチャン!」トラウマなるってその音
カチャンカウンターの貯まる音を聞きながら……皆まで言わずとも後はお分かりですね。
「ひぁっ……にぁっ!だっ!?め!」
「お、この辺がいいのかな」
そういうことで、ミカ様に腹を差し出して敗北服従ご褒美タイムです。負けて恥を晒しています。ハナコのこと言えねぇな。
「ねぇ、メアリちゃん」
「はい、いかがされましたか、ミカ様」
「……わーお、あの状態から切り替えられるんだ」
仕事はちゃんとやらないとナギサ様に怒られますから。暴力衝動も発散されて落ち着いてますし。
あ、やめてください尻尾は見ないでください。そいつまだ切り替わってないです。
「メアリちゃんだよね?補習授業部の担当って」
「はい、ナギサ様より拝命しております」
「やっぱりそうなんだ」
早く裏切り者を見つけたいですね。
え、補習授業部の様子?もちろんお教えしますよ。俺たち
「他にはナギちゃんなにか言ってた?」
「パテル派の装備の貯蔵と購入に関してですね。気持ちは分かるけれど締結目前だから控えて欲しいって感じでした」
うへへ、ミカ様の翼さわらしてもらっちった。動いたから整えるって名目だから触り放題だぜ、ふへへ。いい匂いする……。羽毛もらっとこ。
「あと、ナギサ様は何も言いませんでしたが、カタコンベの調査と弾薬やレーションの消費量、盗難被害数、補充量。違和感があります。去年よりも格段に治安が悪化しているとはいえ」
「へぇ、ちゃんとお仕事してるんだ」
「主な仕事相手は情報部、保安部、あとは身内と内部ですから」
なんか変なことしてる奴がいたら首長に伝えるのがお仕事。暴走しそうなやつは抑えてもらわないとね。
ただ、俺はナギサ様のとこの子。ナギサ様に頼まれたことも調べるし、分かったことはなんでもナギサ様にベラベラ話す訳ですが。
「昔みたいに色んなトコ襲ってるかと思ってたよ」
「こうやって発散させてもらってますから」
「今も嫌いなんだ」
相変わらず大嫌いですね、ゲヘナ。分母はどんどん増えるのに良い奴は片手で収まりめったに増えず。今日も今日とてろくでなし共がトリニティにやってくる。
「元過激派のメアリちゃんは条約のことどう思ってるの?」
「どっかで破綻する、上手くいくと思えないって感じですね。まぁ、仕事なので頑張りますが」
手一杯の風紀委員会、寝る間はある正義実現委員会。負担割合、情報共有と情報漏洩、装備弾薬の不統一。
なにより、双方の枢軸人員たちが抱える不信。
これらを解決するほどの力も時間も足りていない。しかも、ナギサ様は残された時間は少ないと焦っている。
「メアリちゃんがコソコソやってるのは?なに?」
「コソコソするのが仕事なので」
「戦車とか廃棄の銃がまるごと行方不明になってるじゃん。メアリちゃんがやったよね?」
なぁんでバレてるんです?あ、いえ、一体なんのことかよく知りませんが、とある生徒を襲おうとしてに見事に逃げられた奴らがいるそうです。
「あ、ナギサ様は関係ないです」
「てことは横領?」
「よくあることですよ」
「それで、なんでやったの?」
今の絶対に私見て笑ってくれたよ!ファンサ、ファンサだ!
じゃねぇよ、俺としっかり目を合わせてからニコッはどう考えても「はぐらかそうとするなよ、駄犬」じゃん。怖ぇ~逃がしてくれねぇ~。
クーデターは凍結したし、世論誘導も私刑もやめたし、誓って悪いことに使うつもりないから見逃してくれ……。
「反省と備えです。襲撃を察知できず、セイア様の居所と警備をすっぱ抜かれていた俺ら能無しの」
ミカ様からの追及はここで終わった。
/01
生徒が下校して人の少なくなった校内、傾きはじめた日が射し込む小さな一室。
「始まりましたね、補習授業部」
「えぇ、十中八九引き受けて頂けると思っていましたが一安心です」
あまり大きくないテーブルに椅子が2つ。テーブルには当然のように紅茶と菓子。遅すぎるアフタヌーンティーというよりは俺が来たからだろう。
紅茶に口をつけるナギサ様、今日何杯目だったかなと数えるのをやめ、俺もナギサ様手製のお菓子に手をつける。
おいひい、しあわせだぁ。
素直に思ったことを口にすると、嬉しい恥ずかしそうにするナギサ様。
照れ隠しのようになにか喋りはじめる様子も可愛い。
現在は上司と部下ではなく、ただの先輩と後輩。公人として立場を気にする必要がないので砕けた物言いや振る舞いをしても許してもらえる。
油断しきっている状態だ。
「どうしました?」
故に、唐突にナギサ様の手を握っても許される。
そして、袖口、手首も許される。
年々積み重ねた信頼によってか、ナギサ様はコテンと首を傾げて「?」「メアリさん?」と困惑している。振りほどかれて引っぱたかれたりすることも弾丸が飛んで来ることもない。
しなやかで綺麗なおててだぁ。肌が白い、白い、静脈が見える、これが青い血ってやつかぁ。
こんな天使の手に私は撫でられたことがある。
マジ最高だよな。
「何か付いていたように見えたのですが、気のせいだったみたいです」
「そ、そうですか」
急にナギサ様の手に触りたくなっただけで、この前執務室に無理やり引き抜いたみたいな羽根が落ちてたこととか俺は別に気にしてますけど。
気にしないでくださいね、ナギサさ……
「……違いましたか?」
「だいまんぞくです」
俺の頭に手が伸びていた。
優しく、あやすように撫でられる。頭に載せられる重みが安心感になっている。近くふわりと香る匂いで夢心地になる。
「尻尾も随分乱れていますね……」
「今日は動いたので」
「結い直すので後ろを向いてください」
言われるまま、尻尾を差し出す。
「情報局は大丈夫でしたか?」
「なんとかってところです。分析予測科は興味無いとばかりに数字とにらみあい。諜報科も不満なし」
「引き継ぎは上手くいったようですね」
「えぇ、救護騎士団団長の捜索、条約反対派の監視に防諜……芳しくない話と静かすぎて気味が悪い話をしっかりと聞きました」
程よく自由が効いて、トリニティに忠誠を誓ってて、かつ暗部も知ってる護衛隊の人間が幹部になるのは
俺、スネにかなり深めのキズがある人間なんすけど……こんなヤツ上に上げて大丈夫なのか?
なにより、傷心自信喪失ヤミヤミ前任者たちの仕事がなくなるのが怖い。絶対にソイツらから目を離すなよ。
「あぁ、そういえば、昼にミカ様とお話したときに」
話は仕事、友人、趣味などあちこちに逸れる。悪意も駆け引きも何もない雑談。気づけば窓の外はすっかり暗くなっていた。
/02
第1次特別学力試験結果
合格 ヒフミ 72点
不合格 アズサ 32点 コハル 11点 ハナコ 2点
補習授業の合宿が決定した!
補習授業部が開始して数日、1回目の追試が実施された。しかし、本当に残念なことに、誠に遺憾なことに不合格者が出たため、事前の取り決めに従い合宿を行うことになりました。
楽しいお泊まり会にしようね。俺は蚊帳の外から眺めてるだけなんすけども。
つまり、怪しい奴いねぇかなって感じで監視のために合宿所をうろつく。不審者にならないようにイチカに連絡してパトロールだの夜番に代えてもらったりして合法ストーキングだぜ。俺がおまわりさんだ。
え、お前護衛隊なのに正実の仕事出来んのかよって?人員派遣だよ。ナギサ様にサインもらってきたら大体なんとかなるんだよ。
んー、さて、とりあえず1日目は顔だして補習授業部の顔を拝むかな。胡散臭いティーパーティーの人間が来ることで注意とヘイトを俺が受けることにより、他の面々に隙を付いてもらう作戦よ。カンペキ~。
「チェック」
「あ」
やっべ、変な事考えてたら詰みそうになって……もう詰んでないか?
「チェックメイト」
「参りました」
でなきゃわざわざチェックって言いませんよね。集中できてないのがバレたな。
ここは以前先生を迎えたベランダ。日の沈んだ景色は全く別の装いだ。
吹き抜ける夜風、冷えた大気で屈折して響く電車の走行音。
手前には厳かな歴史をもつ伝統的な建物、遠方には最先端のビル群。道照らす街頭に車のヘッドライトとブレーキの光。満遍なく塗られた夜の闇に光が流れる。
俺とナギサ様はチェス盤を挟んで相対していた。
「もっかいお願いします。次は本気でやるので」
「ぜひ、と言いたいのですが、そろそろ先生がいらっしゃるので」
ありゃ、もうそんな時間か。早いなぁ。
今夜、先生に補習授業部に潜む裏切り者を見つけ出して欲しいと依頼する。
引き受けてくれるかは正直分からないが、そこはあまり重要ではない。先生に知ってもらうことが大事だ。
本来ならトリニティ内で完結すべきなのだろうが、もうこの際だから
補習授業部の真の目的、退学、セイア様のヘイローが壊されたこと、ナギサ様はどこまで話すつもりなのか。疑心に支配されつつあるこの人は、外部から来た完全な第3の立場の先生を、どこまで信じられるのだろうか。
「それじゃあ、俺は引っ込んでますね」
「もしかしたら内容は聞こえてしまうかもしれませんね」
「えぇ、4つも耳があってよく聞こえてしまいますから」
先生はなんと答えるのだろうか。
/03
オリ設定
シュガーポット
Sugarpot in Secret
トリニティ情報局またはティーパーティー直轄の特務機関と言われている。
部長、構成員、規模など全て不明。生徒間では怪談の如く話されており、存在そのものが疑問視されている。
正義実現委員会の、救護騎士団の、自警団の、ティーパーティーの、郊外のギャングの何某がそうなんだとか。あらゆる大事件の裏で糸を操っているんだとか。いたる所に協力者がいて、我々の一挙手一投足は監視されているんだとか。バカらしいよね。
あぁ、そうそう。さっき君の横に居た彼女。彼女もシュガーポットの協力者らしい。
今頃君の下着の色でも報告しているんじゃないか?
メアリの優先順位
ナギサ様≧ミカ様>>越えられない壁>ゲヘナへの憎悪
ようはナギサ様のためならゲヘナとだって握手する。