脳の破壊された上司と爆散するワンコ女の話   作:ここに文字を入カ

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誤字報告、訂正、感想ありがとうございます。めっさ嬉しいです。
好きだ、イチカ。
来てくれてありがとう、イチカ。
ところで、神名文字の○○の神秘が詰まったって説明エッチじゃないですか?


第5話 冷静なティーパーティー護衛隊員

 

 停車、エンジンを切ると先程まで規則的に鳴っていた重低音は消え去る。

 降車、跨っていたバイクの後ろ、牽引されていたリヤカーに載せられていた荷物を点検。

 

 補習授業部の合宿所の入口に立ち、俺は叫ぶ。

 

「ちわー!郵便屋でーす!」

 

 

 

 

 

 

「あの……メアリちゃん……さっきのアレってなんなんですか?」

「アレ?」

「えっと、来てくれた時の……」

「ちわー?」

「はい、ちわー」

「届け物の伝統的な掛け声って聞いたんだけど……」

「初めて聞きましたよ」

 

 出てきてくれたヒフミと共に持ってきた荷物、食品、洗剤、トイレットペーパー等々、空っぽだった合宿所に必需品を運び込んでいく。

 

 この建物は長い間使われておらず、相応に汚れていたはずなのだが、どうも違う……というか外観から変わっている。

 ツタと蜘蛛の巣だらけの黒ずんでいた壁はサッパリと綺麗に。雑草の繁茂していた庭はなんということでしょう。匠の技によって伝統的トリニティ様式の輝きを取り戻しています。

 

 窓が開けられて風が通っているため、埃っぽさやカビの臭いもあまりない。ただ、まだ掃除の最中らしく、ヒフミは体操服のまま。家具は廊下に出され、清掃ロボットがモーターを鳴らしながらせっせと働いて床に水拭きの跡を作っていた。

 

 

 建物変化に驚いていると部員3人と先生がやって来た。

 

「どうも、物資をお届けに来ました。」

「“ありがとう、助かるよ”」

「兵站は大事だ。助かる」

 

 うーん、目は口ほどにものを言うってやつだな。初対面の時以上に警戒されている。()()()()()()()()でも結局裏切り者を探すことに変わりないと思うんだけどなぁ。

 

 生アズサちゃん、ちっちゃ。可愛いね君、どこ住み?てかモモトークやってる?銃背負うと掃除の邪魔にならない?もらっとこうか?

 

忙しいところをわざわざありがとうございます、メアリちゃん」

「いや、巡回の担当がこの辺りだからそのついでって感じ。大したことじゃない」

「そうなんですね。あぁ、すいません、埃っぽいですよね?長い間使われてなかったようなので、点検意味も込めて何もないか隅々まで掃除をしようと思いまして……」

「あ、そうだよね。ごめん、何もないし、何もされてないよな。業者が来るはずだったんだけど来れなくなっちゃたみたいでさ」

「あら、そうなんですか。では、空調やコンセントのような電気周りもキチンと確かめなければいけませんね」

「あぁ、流石にその辺りは定期メンテナンスがしてあるだろうから、何も問題ないはず」

 

 うっわ、ハナコこいつ俺見た瞬間に目付き変わりやがった、ギアを上げよった。危機察知というか嗅覚が鋭い。盗聴器も隠しカメラもなんも仕掛けてねぇよ。お前かアズサちゃんが見つけそうでやめたんだから。

 

 だけど、それが演技じゃないなら君は()か?

 黒ならこの時期にナギサ様主導で全員同時合格みたいな変な制度の部活に入れられた時点で気がついて既に警戒レベル上げてるだろうし。

 

 あー、でも白にせよなんにせよハナコはなんかしてくるかもな。俺が来たせいでこの部活は政治的側面がかなりキツいことに勘づいたみたいだし。

 巻き込むんじゃねぇってキレてそう。

 学内政治と縁切るために勧誘してきた所の本拠地で水着徘徊した説が本当ならだけど。

 

「あれ?ハナコちゃんとメアリちゃんは知り合いなんですか?」

「はい、夜を共にした中です♡」

「え、エッチじゃん!!!!ダメッ!!死刑!!!」

「“私はいいと思う”」

「研修で同じ班だっただけなんすけど言い方ぁ!」

 

 エッチじゃんのエッチはエッチじゃん。実質どころかモロだよ。

 さっきまでなんかモジモジして何も喋んなかったのに急にド直球なのぶち込んでくるじゃん?

 

「あとは職務上、不審者は取り締まらんとイカンのでそれ関係」

「あぁ、なるほど」

 

 なるほどになっちまうよなぁ。おぉ、コハルちゃんから同情の視線、分かってくれるか。

 

「ふふ、では新しい関係を作りませんか?」

 

 いつの間に目の前にいたハナコ、にじり寄り、さらに距離を詰め、後ろに下がり続けて壁際まで来てしまった俺にそのまま迫る。

 逃げ場のない俺のブラウスに手が伸び、ボタンが外される。胸と胸が触れ合い、眼前に迫るハナコと目線が交差する……

 

「目的は?」

「大人しくしててくれ」

「好きにしますね」

 

 一瞬の交錯、傍から見れば濡場、しかし互いの腕の中には敵意が満ちていた。

 

 手が緩む。振りほどいて逃げ出す。わざとらしく声を出すハナコ。

 

「あぁん……!!」

「お邪魔しましたァァァ!!!」

 

 廊下にこだまする俺とエッチなのはダメ!死刑!!!というコハルちゃんの叫び。

 

 最速で駆け抜け、俺は出口から飛び出た。

 

 

 /01

 

 

 

 えーっと、履歴に怪しいサイトはあっても怪しいところは多分なし。

 盗撮とかのぞきものばっか選んでんじゃねぇよハナコ。あとコハルちゃんはもっと気をつけて。嗜好が筒抜けだよ。まぁ、普通覗かれてるとは思わねぇよな。

 

 やぁ、フリーWiFiには気をつけよう、櫛井です。

 正義実現委員会の詰所の一角を借りて合宿所の様子を見ているよ。

 

 モニターには監視カメラの映像と謎のサイトが表示されているのはそのため。

 謎のサイトたちは補習授業部が何を見たのかチェックするため。

 ちなみに、履歴に1番多いのは勉強関連、その次はももフレ、あとは小説、漫画、ミリタリとか。

 

 ホントは誰かの端末から()()()()()としたんだけど、先生の電子戦能力の話を思い出してやめた。

 

 監視カメラはもちろん合宿所周辺が映されている。そしてハナコが外に出てきてニコニコしながら服を脱ぎだしたのでその辺にいた正実ちゃんに通報した。

 夜も頑張ってくれてありがとう、正義実現委員会。

 

 あ、隠れた。知らせるか……?いや、純粋で無垢な正実ちゃんたちをあいつに会わせるのははばかられるな……。

 

 戻ってったしいいか。ん?入れ替わりでアズサちゃんが出てきたな。

 

 

 

 

「散歩にしては……ハード過ぎない……?」

 

 夜の森、しかもトラップがあるとなれば緊張で息も上がる。

 こんなゲリラでもなければ行かないようなところ行くのはなんかあるやろ!と追いかけてきた俺はそのまま普通に帰ってしまったアズサちゃんを見て愕然とする。

 

 いや、何も普通ではなかったんだけども。

 

 夜中に裏庭どころかそのまま森林の中、そして何故かブービートラップを始めとした各種罠をしかけ出す。

 戻って来られた時を考えると、解除もできず、迂回したら待ち構えるように別の罠。

 教本に載せたくなるような素晴らしい技の数々に隠密行動中にも関わらず喝采を送りたくなってしまった。

 憂さ晴らしのように手帳に罠の場所を書き記し、必死に追いかけた先は合宿所。思わず口から汚い言葉が溢れたのは許して欲しい。

 

 気づかれていたのか、なんかそういう趣味なのか、立てこもり事件の時も思ったけど顔に似合わないその技術はどこで仕込まれたんだよ。SRTか?SRTなのか?

 

 半べそかきながら詰所に戻り、代わりに監視カメラ見てくれてたイチカに慰めて貰った。君そろそろ協力者じゃなくて俺のとこ(シュガーポット)に来ない?

 

 

 

 アズサちゃんのTorment散歩は次の日も続いた。

 日課なのか?日課にしては物騒すぎないか?

 あ、あとコハルちゃんと先生が正実の本拠地まで行ってたけど、メンバー的にも聞こえた内容的にも収穫なし。

 

 やっぱり植木鉢に引っかかってたやつ盗聴器だったんすね?

 やだなぁ、そんな訳ないっすよイチカさん。

 

 

 

 /02

 

 

 

「それでは、お願いしますね」

「はい、必ず」

 

 上等な紙の手触り、印章が押された封蝋を受け取る。

 ナギサ様からの依頼、本業だ。いや、まぁ補習授業部の監視も本業なんすけどね。

 

 なのでどこかで監視を信頼できる友人たちに任せて俺は郵便屋をする。

 手紙をしまい、退室というところで口がムズムズする。

 

「俺は間違ってないと思います。」

「?」

「俺はナギサ様が好きです。ナギサ様の味方です。恩人だからとかじゃなくて、先輩としても友人としても。だから、その、なんて言うんですかね。もう少し楽観的になってもいいんじゃないかなと……」

 

 数日だ。数日。1週間も経ってない。補習授業部が始まってからナギサ様の顔色はどんどん悪くなっている。独裁者の病と罪悪感のダブルパンチはさぞ効いているに違いない。

 

 ただ、心配である。ずっと、フラフラだった。口を閉じて黙っていると際限なく何かを考え続けている。1人でチェスを回すわけでもなくただ眺めている。

 

「ふふ、そうですね。そうかもしれません。」

 

「ですが、代行とはいえ学園の長であるからには最悪を考え、備えることが義務ですから」

 

 セイアさんのように。

 

 

 

 フラッシュバックのようにあの日の、襲撃の日の、護衛隊長の後ろ姿を思い出した。

 

 襲撃時、セイア様のもとへ1番最初にたどり着いたのは救護騎士団、護衛隊はそのずっと後にたどり着いた。

 

 爆破されたセイア様の部屋で立ちすくむ隊長、かける言葉が分からなくて、何か言おうとしても声すら出なくて、おなじように瓦礫の積もった部屋を見ていた。

 

 その後、しばらくして動き始めた隊長の後を追いかけた時、押しつけるように渡された

 

の付いた布切れ

 

 ハンカチだったのか、シーツだったのか、なんだったのか分からないが焼け切れて小さくなった布。

 

「何か分かったら教えて。私はちょっと立ち直れそうにないや。」

 

 秘匿通信で救護騎士団からセイア様が亡くなったことが伝えられ、この血はセイア様のものだと判明した。

 

 

 

 想起したのは、セイア様の名前が出たからなのか、それともナギサ様の纏う空気がさせたのだろうか。

 

 補習授業部は長くても2週間、だがそんな余裕があるのだろうか。

 とにかく早く裏切り者を見つけてこの人の傍にいなければならないような気がする。

 

 

 

 /03

 

 

 

 さりとて見つけようにも証拠があるなら既に特定している。だから向こうが尻尾を出すのを待つしかない。どうしたものか。

 

 悩みながら詰所に戻ろうとすると頭上の耳が音を捉える。

 ドーンという爆発音、しかも最初の音を皮切りに連鎖的に音が続いている。しかも音は合宿所のほうから聞こえてくる。

 

「なにごとぉ!?」

 

 法定速度を無視して現場へと走る

 

 

 

 

 

 /

 あ、メアリちゃんだ、やっほ~☆

 \

 

「うぇあ!?ミカ様!?やっほーです!!」

 

 道中、ミカ様とすれ違う。 慌てて向き直り、敬礼。

 

「あはは~☆めっちゃ焦ってるじゃん、どうしたの?」

「爆発音がしたので急行中です」

「それなら大丈夫じゃないかな?正実の子たちが向かってたし、()()の子からも連絡がいってるんじゃないかな?」

「あ、本当ですね」

「転んだら危ないからゆっくりね。それじゃバイバイ~」

「ありがとうございます、ミカ様」

 

 たぶんミカ様がなんとかしてくれたのだろう。事情知ってる人がいると助かるぅ。

 

 合宿所の爆発、異常なし。

 

 異常なして、事件性なしとか事故とかじゃなくて異常なして。

 爆発だぞ!そんなよくあることか!?よくあるわ。

 ミカ様は何してたんだろ。合宿所の方はアズサちゃん謹製のトラップがあるから近づかないように言ってあるし、別のとこかな。

 

 詰所に向かうとと偶然居たイチカに声をかけられる。

 

「メアリちゃん、おかえりっす」

「ただいま、悪いけど明日もちょっと抜けるからお願いしてもいいか?」

「しょうがないっすね~、代わりに今度私の仕事手伝ってくださいっす」

「心得た」

 

 詳しく話さずとも察して踏み込まず、それでいて張り込みとして俺の仕事をこなしてしまう。他の子たちに情報を渡すことなく仕事させてしまう。

 君すげぇよ。うち(情報局)来ない?来ない、そう……。あ、俺にはナギサ様がいるので正実には行けません。はい。それに俺には正実は綺麗すぎるから。

 

 とりあえずイチカから貰った出来事・来客表を確認。

 来客が1人

 シスターフッドの伊落マリーちゃんね。

 そんで来訪してすぐ連鎖爆発、意味わからんな。あとでこの子にも話聞きに行くか。

 

 

 

 

 

 へぇ、あの立てこもりにはそんな訳が。

 アズサちゃんめっちゃいいこじゃん。すごい気概だ。それでも抵抗し続けることをやめるべきじゃない……かっこいいじゃん。

 

 にしても、いつまで経っても無くならないな、そういうの。いつまでも蔓延ってる。

 あぁ、何を言ってるのか。俺だってその反吐が出そうな度し難い奴らだ。実行しなかったとはいえ、ヒフミの机に仕込みをすることとか思いついたし、いつでも決行できるように完璧に再現した。

 ホント、やんなっちゃうよなぁ。

 

 へ?アズサちゃんのことを分かってくれた人が増えて嬉しい?

 

 ぅ、やめてくれ、その真摯と純粋無垢の結晶みたいな目は俺に効く。

 その健気な姿勢は俺には眩しすぎる。

 教会に祈りに行くのもミサに参加するのも、今みたいな時のためにシスターフッドの好感度を上げるためなんだ。

 私は君の思うような人間じゃない、危ない人だから近寄っちゃいけないよ。

 

 

 

 

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