脳の破壊された上司と爆散するワンコ女の話   作:ここに文字を入カ

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脳内プロット「理由を…理由を考えだす!」
ぼく「がんばれ がんばれ」
脳内プロット「派生技大量にある始動やめろ」

美食研究会やフウカの運転技能を考えると平時のゲヘナの高速ってとんでもなく楽しいことになってそうですよね。
オリキャラ回です。
第2回追試回(上)


第9話 A TWO HOURS LETER

 雑草や木々が生い茂る中、錆びて穴が空き、屋根から光が漏れる格納庫があった。中には油や燃料の臭い、錆の風味が立ちこめている。

 

 そこでツナギを着た少女が手や顔にまで黒い油を着け、布張りの複葉機を整備していた。また、その様子をもう1人の少女が冷えたコンクリートに座り込んで眺めていた。

 

「整備してもらってる上に悪いんだけどさ、次の仕事、一緒に来てくれないか? リサ*1って昔から農業機飛ばしてたし、地文推測天測と航空航法、夜間航行までできるって理想的なんだよ」

「うへへ、なんすか急にそんな! おだてなくても姐さんの頼みなら行くに決まってますよ! この前のやらかし帳消しにするチャンスっスし」

「あれは相手が悪かったのもあるけどな。助かる、ありがと」

「お易い御用ってやつッスよ!」

 

 方向舵と昇降舵を動かして確認しつつ、こちらにサムズアップをして了承を伝えてくる。

 

「ところで、さっきから何やってんスか? 抱き心地は良さそうッスけど」

「羽毛まくら。最近つらいから癒されてる。夢と理想の桃源郷を味わえる。」

「へー、そんないいもんなんデスね」

「コレみたいにストレートだと違いがハッキリして、素材そのもののが感じられて楽しい。ブレンドはブレンドで調整された最高のひとつになって良い。コーヒーや紅茶みたいなもんだな」

「色々あるんスね。なんかヤなことあったんスか?」

 

 あった。叱られるしなんかヤバみを感じるし、ゲヘナ行くぜーってだけでかなり気合いがいるのに知らぬ間に作戦に謎のオプションが付け足されてるし。なんだよ補習授業部の試験をゲヘナでやるって。反条約ならゲヘナ強硬派かつゲヘナ嫌いだろうからゲヘナにぶち込んでみて様子を観察すればいい? なるほど分かりました、それで誰が観察するんです? 俺ぇ!? 報復のついでにやってこい? えぇ……。

 

「……なるほど、ゲヘナ、ゲヘナか。大変ッスねぇ。にしてもこの子どうしたんスか?状態もいいし、夜にはもう飛べますよ」

「ブラックマーケットほっつき歩いてたら昔の知り合いがくれた」

「へぇ。ちなみにゲヘナにどうやって行くか聞いてもいいっスか?」

「身分偽装した上で出所不明の飛行機で夜に紛れて空から侵入する。ちなみに温泉開発部を誘導したから地上には警戒線が敷かれると思われる」

「ゲヘナ、飛行機、夜……あ、ふーん。整備完了したんでアタシは帰りますね」

 

 やたらセカセカ動いて工具類、部品、機材をしまいこんで帰ろうとするリサの肩を掴む。

 

「決行は今夜だしココで寝とけよ。蚊帳も寝袋もあるぜ? なんなら特別に俺の尻尾を枕として供出するぜ?」

「いらねぇ!!! 地獄なんざアタシは行かねぇッス! 死ぬならテメェ1人で死にやがれ!!! 行くにしたってこんなオンボロ用意しやがってせめてスピファイかなんならタイフウ寄越しやがれ!!!ッス!!!」

「いいだろ? メカジキ君。グライダーと迷ってこっちにしたんだ。それに報酬ならはずむぜ? ほら、トリニティ中のスイーツ屋の無料券がこんなに。ガソスタやチューナーの優待券のまで、ほら」

 

 懐から帯の着いた紙束を取り出して眼前で見せびらかす。ダメ押しとばかりに厚みのある封筒をいくつもだしてみるが

 

「命あっての物種って言葉知ってるか、あ゛あ゛ぁ!?」

「受取人は別だから安心してくれ」

「なにを安心しろと!?つかなんでアタシなんスか!!」

「戦闘なら俺でいいしメインじゃないからな。パイロットが欲しい」

「習ったことなら大体できるアンタはコイツ飛ばせるだろうがよ!!!」

「それにもう飛ぶしかないぜ?」

 

 枕の裏から短機関銃を出す。先程まで床の上に置いてあった代物。持ち主はもちろん目の前で息巻いているリサだ。

 

「もとより俺の足から逃げられるとは思ってないだろ? 更に得物がないとなればワンチャンスの期待すらない」

「……えげつないっスよ。」

「頼むよ。君ならって思ったんだ。成功するって思ってるから頼んでるんだ。失敗が前提ならそれこそ1人で行くよ」

「……はぁ、そうっスか。」

 

 リサは乱雑に頭を搔いて、先程までの思いを投げ捨てるように手を思いっきり振り払って答える。

 

「二言はないっス。元とはいえ族長の矜恃ってのもあるし、何より姐さんっス。乗る、乗ったッス」

「ありがとう」

 

 安堵の気持ちを隠すことなく顔に出し、リサの手を両手で握って感謝を伝える。

 

 

 

 

 

「話変わるけどさ」

「これ以上はちょっとキツイっス。」

「いや違うって。カタコンベとか遺跡とかの噂って何かないか?」

「んー、あー、そうッスねぇ。夏なんで最近お化けとか幽霊が出たって聞きますね。白くて小さいなんかがいた……囲まれて襲われたとか。あ、そういえばティーパーティーの人たちが定期的になんか運び込んでるって話があったッスよ」

「なるほど、やっぱりこの手の話は自警団に聞くに限るな」

「ま、横の関わりが大事ッスから。」

 

 

 

 /01

 

 

 

「ゲヘナってレーダー網とか防空網とかないんスか?」

「ない……訳では無いがまともに機能してる所としていない所があるな。自動で何か作動するようにしてあってもロクに整備されず稼働しているものが大半だ。」

「誘導装置は精密機械ッスからね……」

 

 

「ふと思ったんスけどレインボーってrainとbowで雨の弓ッスね」

「パイナップルもpineとappleで松ぼっくりリンゴだな」

 

 

「……しっぽくださいっス。」

「残念だけど後ろまで届くほど俺の尻尾は長くないかな。」

「……っスか。」

 

 

「なぁ、あってるよな」

「あってるはずっス。方角も星も。」

 

「「…………。」」

 

 風に乗って機体を制御して、方角を、方向を、速度を時間を計算しているいるうちはいい。しかし、暗夜を無線などの誘導も何もなしにポツンと飛ぶのはツラい。最初うちは星が綺麗なんて戯言を宣うことができたがうっかりすれば天地が分からなくなる緊張と孤独感で精神が摩耗してくると段々と口数が減ってくる。

 

 自分の向かっている先は合っているのか、風に流されどこか別の所へ向かっているのではないか、不明、不明、不安、不安、脳がマイナス思考で満たされていく。エンジンと風を切る音が全身を締め付けて絞ってくるような錯覚。操縦桿を握る手が麻痺しているような感覚。

 速度計も高度計もコンパスも針は動いていない。時計と燃料計のメーターは動いている。予定の時刻はとう過ぎた。燃料は半分を切って久しい。当然長距離になればなるほど誤差は大きくなる。だから焦り過ぎてはイカンと分かっている。分かってはいるけれど。

 

 いや、思い出せ、自分を、後ろに仲間がいることを、何を背負っているのかを。しっかりしろ。

 持ち直すべく強く念じる。それに応えた必然か偶然か、光明が見えた。

 

「ん? 山か?」

「!」

 

 雲、水蒸気、煙、埃、空気に当たった光が散乱している。天から降る星々の輝きではない地上から発される人工的な光。その一部が目に飛び込んで薄ぼんやり明るいこと、その手前にそれを遮る障害があることを知覚する。

 

 

 

「ラジオ! ラジオ受信したっス!」

「てことはゲヘナ領空に入ったか!?」

「入ったッス! 全部合ってるなら山脈を超えれば……」

「ホントか? ホントだな? ホントだ! ゲヘナ……ゲヘナの(ひかり)だ!」

「もう無線封鎖はゴリゴリっス──―

 

 

 

不明機に告ぐ

コチラはゲヘナ風紀委員会だ

速やかに応答し所属を明らかにしろ

さもなくば撃ち落とすぞ! 

 

 

 

「姐さん、コレは……」

「当たりを引いたらしい。というか管制は風紀委員会の管轄なのか……?」

「規則あるところに風紀委員会ッスから」

「そうだな、変に生真面目なおかげで()()()の文言って分かるんだから」

 

 サーチライトなし、レーダー照射なし、スクランブルなし。温泉開発部の対応に全リソースを注いでいる可能性もなくにはないが癒着か、怠業かの可能性の方がはるかに濃い。この地区は駐在の風紀委員ごと腐っているようだ。こちらとしては幸い……なのか? 

 

「エンジンカット、滑空してこのまま潜入する。」

「音がないのに気がつくのは無理ッスよね~。ところで光がないと着陸とか無理ゲーッスよね~どうすんスか!?」

「いい感じのとこ探せ! 最悪どっかにワイヤー引っ掛けて止まる!」

「アンタ馬鹿!!!」

 

 

 

 /02

 

 

 

 

(生きた心地がしないッス)

(分かる)

 

 薄汚れたツナギにヘルメット、首や頭にタオルを巻き、ピッケルやハンマーかスコップ、中にはダイナマイトや何かしらの計測機器を抱えた者たちが大勢うろついている。

 俺たちも同じような格好をしてその中にいた。ヘルメットと頭の間にタオルを挟んで垂らし、容貌が分からないように工夫をして。

 

 スラム入口のようなネオンの煌めきなど一切ない暗く汚い場所。

 横は朽ちかけのトタンの家や落書きだらけのシャッター。電気が来ていないのか、役目を果たさぬ電灯の代わりにドラム缶に薪と油をぶち込んだ篝火が光源になっている。そのせいか随分と暑くて、汗が止まらない。

 

 そしてなんと驚き、ここは補習授業部の第2次追試験試験会場であり温泉開発部本日の温泉開発予定地Part2である。なんて偶然なんだ。

 

 

(第15エリア77番街の……ここだな)

(今度はアタッシュケースじゃなくてこの子なんスね)

 

 先程の市街地での発破時は、何故か数の合わない在庫と納品書、会計書類、おまけに温泉の権利書を詰めた謹製のアタッシュケースを仕込んだ。もちろんある愚かな行政官へのお土産である。

 

 今度は補習授業部へプレゼント。リサのバックパックから我らが護衛隊の誇りL118君の榴弾をあれこれした特製弾を取り出し設置、完了。

 

(よし、撤退──―

 

「おい! なにしてんだ?」

 

 ビクゥッと2人で飛び跳ねるように振り向き、銃に利き手をかける。

 

「あぁ悪い、驚かせちまったな! 休憩だってよ! 早くしねぇとお茶もおにぎりもなんもなくなっちまうぞ!」

「そ、そうですか。集中してて聞いていませんでした。ありがとうございます」

「マジっスか! 急がねぇと!」

 

(姐さんここゲヘナ! ド丁寧に喋ってどうすんスか!?)

(びっくりしたんだもん)

 

 入っていた廃墟から外に出てみると別々のことをしていた温泉開発部たちが同じ方向に向かって動きだしていた。

 

(機をみて離脱)

(了解ッス)

「どうしんだ?」

「いやちょっとトイレ行きたいなと」

「んなら、あっちにあったはずだぞ」

「あざっス!」

「あ、俺も」

 

 人の流れから逸れ、抜け出す……路地の陰で辺りを見回して確認、うまく撒いたようだ。

 

 /03

 

 俺とリサは廃墟となった高層マンションの屋上にいた。十分高く、よく見渡せるが、貯水槽によじ登ることで更に高さを稼ぐ。

 

 見下ろした景色は良いかと言われれば、良くないと答えよう。

 

 はるか向こうでは大橋とともに高速道路が絢爛たる自身の存在を主張しているが、川を境に劇的に光がなくなる。対岸はビルの群れひしめき、深夜なのに市街地の輝きを放っているが、俺たちのいる岸は高速道路から零れた光が届く範囲のみだ。

 

 大小様々な建物の隙間には、先程のようなスラムがあるが、区画全体は廃墟のようで、ニュータウン事業にでも失敗して放棄されたのだろうか。ひどく静かで寂しい……寂しかった。

 

 今は違う。

 

 さっきから爆発がドッカンドッカンひっきりなしに起きて、瞳孔の調節が大変である。しっとりと夜の帳が下りた静音の支配下から一転、てんやわんやの大騒動。

 

「アレは……銀鏡イオリ。ハナコ隊が包囲された」

「先生が! 指示出したぁ! 先生が! 道路端ぃ! 先生が! 爆発読んでぇ! まだ行かない! 先生がぁ……飛び乗ってぇ! 先生が抜けたぁぁぁ!!!」

「要約」

「先生たちの方は上手いこと切り抜けられたみたいッス! 高速がガラガラなのを利用して火力と装甲をテクでまくってぶち抜きました!」

「そうか」

 

 どこからか調達した車両に乗り込んだ先生たちは、風紀委員会と硝煙にまみれたド派手なカーチェイスを繰り広げていた。

 しかし、前方に温泉開発部が出現。ブルドーザーやショベルカーによって作られた堅固なバリケードで先生と風紀委員会をドッシリと待ち構える。

 

 突如訪れた危機に対し、先生はハナコ、アズサちゃんの2名を工作隊として先行させる。火薬弾薬に引火したのか温泉開発部の防衛ラインは大爆発を起こしながら瓦解、ハナコ隊は見事任務を果たした。

 それを受け、サービスエリアやインターチェンジなどを巧みに利用し、追手を撹乱した先生たちは方向転換──温泉開発部を一気に突破。敵勢力を丸ごと後方に置き去りにした。

 

 しかし、問題発生。迅速な対応だったとはいえ時間がかかってしまった。何かというと、風紀委員会主力が到着してしまった。怠けていないしっかりした、真面目な奴らが。

 

 下道にいたハナコとアズサちゃんは前方に温泉開発部、後方に風紀委員会精鋭と敵中で孤立、包囲されてしまう。

 また、大爆発の影響で各地で誘爆が相次ぎ、道路を支える桁が崩落、予測不可能の状況だ。しかも運悪く先生の乗る車は巻き込まれてしまい、下の川に飛び込むことになる。

 ヒフミとコハルちゃんはそのまま高速を進み、ハナコとアズサちゃんは孤立無援、先生は川流れ、と補習授業部はちりぢりになってしまった。

 

「……ハナコたちは大丈夫そうだな」

「割と絶望的状況じゃなかったっスか?」

「現場は道路が倒れくるわ爆発しまくるわで大混乱。そんな好機をトリニティ最高峰の頭脳と熟練のゲリラが見過ごす訳がないだろ?」

「あ、察し」

 

 ハナコとアズサちゃんの選んだ択は突撃。温泉開発部の火炎と弾幕の中に飛び込む。

 札付きのテロ集団とトリニティ生という異色の取り合わせに逸る気持ちを抑えられず風紀委員会も飛び込んでしまう。

 

 落ちてくる瓦礫、激しく舞い上がる土煙、著しく悪くなった視界。あやふやな味方の位置、あいまいな前方に敵が存在していたという感覚。視認した影は敵か味方かただの礫か判別できず、頭を振ってしまえばどちらが前だったかも分からなくなる。

 

 敵味方判別不能な大乱戦、ひっそりと抜け出したハナコとアズサちゃんを追いかけられた者は誰もいなかった。

 

「水着ガスマスクなんてマニアックな格好はこのためだったんスね……」

「本人そこまで考えてないと思うよ」

「え? 泳ぐんじゃないんスか?」

「確かに水は銃弾とか破片を防いでくれるけど爆発とかすると酷い目にあうからな」

「あー、前に看病したときそんなこと言ってたっスね」

 

 水の抵抗は空気抵抗よりも圧倒的に大きい。数百メートル飛ぶ弾が数メートルしか飛ばない。ライフル弾なんかだと弾の方がもたなくて砕けてしまうこともあるくらいだ。オマケに火炎なんかも水面で受け止めてくれる。

 だが、水に潜ることによるデメリットも存在する。水はよく伝導する。例えば音。音速は空気中で340m/sくらいだけど水中だとその5倍の1500m/sくらいある。そして音は振動、つまりは圧力の変化だ。そんで衝撃波ってのも圧力。爆発の衝撃が襲ってきますねぇ! オマケにジェット水流も付いてくるぞ! 魚雷とか機雷を喰らったら鋼鉄の戦艦だって腹に穴開けて沈みますよコレは。生身で食らっちゃ行けない(1敗)手榴弾は地上よりも水中の方が絶望感ありました。

 

「そんな即死トラップがある中を行くよりも河川敷から堤防を遮蔽に移動してそれから川を渡る……上流に行くみたいだな」

「あ、カメラの方は用済みなんで消しとくっすね」

「頼んだ」

 

 いまどきパソコンにパスワード書いた付箋を貼ってるやつがいるとは思わなかったが、おかげでかなり楽に監視できたから感謝するよ風紀委員会。大丈夫かお前ら。

 

「モニタリングの成果はあったっスか?」

「全員対ゲヘナ感情良好」

「なかったんスね」

 

 無いわけではない。でもこの前のアクアリウム襲撃の時の美食研への対応で何となくわかってた。ヒフミ白、コハルちゃん白、ハナコ白、そしてアズサちゃんも白。

 裏切り者がゲヘナ憎しで動いていたのじゃないのなら……。

 

「そういえば先生の方はどうなったんだ?」

「泳いでないっスか? ドデカい川の真ん中なんで車は沈んじゃってるとは思うんスけど」

「……いない」

「ありゃ?」

 

 

 

 /04

 

 

 

*1
オリキャラ : 暮務(くれむ)リサ

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