ーリュオァァッ!!!
白い、白い世界
黒い影を白銀の巨人が殴りつける
何度も、何度も、何度も
十字を切り、放つ青と銀の光線が影を葬り去る
何度も、何度も、何度も
ーやっと、やっと辛い戦いが終わった
ーこの前はひどいこと言ってごめん
ーまた一緒に帰ろう、
少女が伸ばした手を、親友は避けて後ずさる
ーな、んで…?
少女はようやく気づく
自分の手が、体が、ドス黒い血に塗れていることに
ーちがう、ちがうちがうッ‼︎
頭を抱えてうずくまる少女を、伽藍堂の瞳をしたもう1人の親友が抱きしめる
『違わないよ?
生暖かく、鉄臭い息が耳朶を撫でる
『ーひとごろし』
★★★
「ーぁあッ!?!?」
星奈が荒い息を吐き出しながらベッドから起き上がる
パジャマはぐっしょりと脂汗で濡れていた
「ぅぷッ」
突如襲いくる吐き気に洗面所まで駆け出し、流しに胃の中身を吐き出す
食欲がなく、ほとんど何も食べていないからか黄色い胃液しか出てこない
吐き気も落ち着き、流しに水を流して吐瀉物を落とす
ふと見た両手に黒いシミが見える
ー気持ち悪い、落とさなきゃ
石鹸をつけてゴシゴシと擦る
中々落ちない。爪を立ててもっと擦る
落ちない、落ちない、落ちない
「ー痛ッ」
痛みに気がつき手を止める
気がついたらそこにシミはなく、引っ掻いた生々しい傷だけ残っていた
流れ出す赤い血が、流しを一瞬赤く染める
星奈はただ項垂れながら生気の無い目でそれを見ていることしかできなかった
☆☆☆
夜の道を星奈はとぼとぼと歩く
家には『少し1人になりたい』と書き置きを残してきた
あの日からもう5日は経つ。学校はしばらく臨時休校になった。校舎が大きく壊れて、生徒にも死傷者が出た。学校としても様々な対応や復旧が必要になるからだ
その日以来、星奈は毎日ふさぎ込んでいた
何度忘れようとしても忘れられないのだ
『あなたと私は同じ。私は食うために殺す。あなたは守るために殺す』
『殺しを楽しむモノ同士、だ』
リーチ星人ファルデが言ったあの言葉
怒りで真っ白だった頭が、すーっと冷めていったあの言葉
そして、それを裏付けるような恵美の怪物を見るようなあの顔が
「…………」
行く当てなんてない
恵美はもう、側にいない
優里はもう、死んでしまった
ふと、フードの兄妹が脳裏に過ぎるがすぐにかぶりを振る
宇宙人である彼らを信じることなんかできない
何より、あのキリカという少女は理由があったとはいえ、優里を消そうとしていたんだ
星奈は、1人ぼっちだった
空になったポケットを掴む
ウルトラマンなんてもう嫌だ
もうあのロザリオも捨てて、これでもう戦わなくていい
なのに、胸の奥がズキズキと痛んで仕方がないのだ
胸を押さえて思わず星奈がうずくまる
「……もう嫌だ…なんでよ…ッ」
ふと空を見上げる
夜空を一筋のオレンジに輝く流星が流れる
流れ星…と思ったのも束の間、流星は地上に進路を変え、大きな衝撃と共に大地に降り立った
「ーきゃ⁉︎」
星奈が思わず尻餅をつく
砂煙から顔を守り、薄目を開けて前方を見遣る
ーゴォォオォオォオン!!!!
低く、歌うような咆哮が響く
星奈のいる場所のすぐ近くの街中
巨大な鯨のような黒い巨体が天を仰いでいた
鯨を二足歩行させたようなシルエット
そこから生えた腕は逞しく、人間のような形をしている
体の各所に鎖が巻きつけられ、鎧のような装甲もいくつか見えた
間違いない。新しい怪獣だった
ーゴォォオォオォオォオン!!!!
低い咆哮を響かせながら鯨ー
響き出す悲鳴と怪獣の咆哮に星奈が耳を塞ぐ
「もう嫌ッ‼︎なんで、なんで来るの⁉︎」
ガリュブデスが咆哮し、口から衝撃波を放つ
車が吹き飛び、ビルがジオラマのように折れ飛ぶ
星奈は自分の方に飛んでくるビルや車をただ眺めていた
ーああ、これは天罰なんだろう
夢で見た血に塗れた手を思い出す
見下ろした手にまた黒いシミが滲み出す
「……もう、どうでもいいや…」
襲いくるはずの衝撃と痛みに目を瞑る
だが、痛みどころか衝撃もなかった
「……え?」
目を開くと、星奈は何か大きなものの影にいた
ージュアァッ……‼︎
星奈が前方を見上げる
そこには、巨人の背中があった
巨人は夜の中でも目立つ赤い顔を振り向かせ、星奈の無事を確認したのか頷くと、震える手で抱えていたビルなどの残骸をその場に置き、立ち上がる
夜の闇の中でも目立つ真っ赤な体に白いライン
赤い顔には黄色の目が輝いている
ージュアッ‼︎
ーゴォォオォオォオォオ!!!
巨人は空手のような構えで息を整えるとガリュブデスへと突進、その巨体を抱え込んで押さえ込む
揉み合うガリュブデスと巨人
その隙間から見えた巨人の胸元にキグナスと同じような青く輝くカラータイマーがあることに気づき、星奈が目を見開く
「キグナスじゃない、ウルトラマン…⁉︎」
赤いウルトラマンはガリュブデスに組み付くが、圧倒的なパワーに振り解かれ、巨大な尻尾の回転攻撃に脇腹を強かに打たれよろめく
しかしかぶりを振りながら体勢を立て直し、負けじとガリュブデスの巨大な頭部に浴びせ蹴りを喰らわせてダウンさせ、その背中に飛び乗って正拳突きを打ち込む
ーゴォォオォオォオン!!!
ガリュブデスが咆哮と共に巨大な頭部を振り上げる
顔面を強かに打ち据えられた巨人は顔を押さえながらよろめき、ガリュブデスの背から離れる
それを逃すことなく、ガリュブデスは頭部を鈍器の如く振り回し、巨人を殴打する
ージュアァッ!?
火花を散らすほどの一撃に吹き飛ばされる巨人
ーゴォォオォオン!!!
頭部をバシバシと両腕でドラミングしたガリュブデスが疾走、追撃を加えんと突撃してくるのを見据えて巨人は胸の前で円を描くように手を構えて大きく広げる
ージュアッ!!!
クロスした巨人の腕から細い赤い光線が放たれ、疾駆するガリュブデスの右肩に命中。それに続けて放たれた青い大光線がガリュブデスの右肩に直撃して大きな火花を放つ
ーゴォォオォオォオ…ッ‼︎
ージュアァァァァ…ッ!!
明らかに無視できないダメージを負っているだろうガリュブデスはそれでも前進。負けじと巨人も光線を放ち続ける
巨人の目前まで迫ったところでガリュブデスの右肩が爆発
巨人とガリュブデスが双方共に吹き飛ばされる
立ち上がった巨人は頭を振りながらガリュブデスを睨み、油断なく構えるが、よろめいて膝を突く
胸のカラータイマーは赤く点滅していた
ーゴォォオ……‼︎
対峙するガリュブデスも立ち上がるが、その右腕は肩ごと吹き飛び、大きなダメージを負っている
分が悪いと見たのか、ガリュブデスは地面に頭を叩きつけ、大地を砕きながら地面に潜ろうとする
巨人はそれを阻止しようと駆け寄るが、ガリュブデスは口から放つ衝撃波で巨人を足止めし、そのまま地面へと潜って姿を消してしまった
戦闘をただ眺めるしかなかった星奈は、近くの自然公園の高台から残された赤い巨人を遠目に見上げていた
「…キグナス以外の、ウルトラマン…」
赤い巨人はよろよろと立ち上がると、空を見上げて飛翔
夜の空へと消えていってしまった
ただ飛び去るその姿を見つめる星奈
手すりを掴み、胸を押さえて俯く
その背後から足音が鳴った
「ーキミは、この星のウルトラマン…だよね?」
驚いて星奈が振り向く
そこに立っていたのは、ガソリンスタンド店員の制服とジャケットを着た青年だった。短く切り揃えた髪ときっちり着た制服が青年の生真面目さを表しているようであり、どこかおっとりとした空気を纏っていた
「あ、あなた、は…?」
ウルトラマンというワードが出たことに警戒しながら、星奈は青年に問いかける
青年は姿勢を正しながら元気よく答える
「僕は、
「ウルトラマンゼアス…?って…さっきの赤いウルトラマン?」
「そう、それ‼︎怪獣は結局、取り逃しちゃったけどね…」
悔しそうに勝人が唇を噛む
そんな勝人を不思議そうに見つめていた星奈だが、目を伏せて勝人から目を晒す
「……わ、私は…もうウルトラマンじゃ…ありません…」
「ウルトラマンじゃ、ない…?」
勝人の声を聞きながら、黒いシミの目立つ震える両手に視線を落とす
「もう、嫌なんです‼︎痛いのも、怖いのも‼︎」
星奈が叫んで走り出す
「あ、ちょっと待って⁉︎」
勝人の言葉に星奈が足を止める
ウルトラマンであることをやめた星奈に足を止める理由なんてなかった
でも、足は自然と止まってしまった
「少しだけでもいい。僕と話をしてくれないかな?」
「あなたと…話…?」
星奈が訝しみながら振り返る
ウルトラマンである、と名乗っているとはいえ初対面の男性である勝人のことを警戒して少し怯えている空気が見える星奈を察し、勝人がぶんぶんと手を振る
「あ、いやいや‼︎変な話とかじゃないんだ‼︎ただ……」
勝人は鼻をこすりながら微笑みながら告げる
「キミの心の汚れを…キレイにする手伝いをしたいんだ」
「……私の、心の汚れ…?」
星奈は黒い汚れの滴る手をギュッと握った
☆☆☆
星奈と勝人は自然公園のベンチに腰掛け、勝人の方から話を始めた
「あの怪獣、日課のパトロール中に見つけたんだけどとても手強い怪獣でね……何度も挑んだけど、まだ決定打に届いていないんだ」
勝人は照れ臭そうに、申し訳無さそうに告げる
「でも大丈夫。僕が必ずあの怪獣は倒す‼︎」
胸を叩いて宣言する勝人から目をそらし、星奈は目を伏せる
「……どうして、そんな風に戦えるんですか?」
ぽつり、と言葉が漏れる
「あんなに大きくて、ウルトラマンになっても爪や牙は痛いし、怖い…それに、私たちのことは誰も…助けてくれない……」
星奈は黒いシミだらけの両手に目を落とし、はは、と乾いた笑いを漏らす
「……怪獣や宇宙人の命を奪う私たちが助けてもらえないのは…当然のことか…」
生気を失った瞳で力なく笑う星奈
「ー強いなぁ。星奈さんは」
勝人はあっけらかんとそう言った
「私が…強い…?」
信じられない、と言った顔で星奈が勝人の方を見る
「うん。僕なんかよりずっと強いよ」
「そんなことない…‼︎私は、私は…あなたみたいに戦えない…」
勝人は立ち上がり、夜空を見上げる
「戦うことだけが強いってことじゃあない…僕は、そう思うから」
勝人は腰に手を当て、言葉を続ける
「昔の僕は、ただただ一生懸命に立ち向かうことで精一杯で、守ることで傷つくものを想う余裕なんかなかった」
星空を背に勝人は真面目な顔で星奈に向き直る
「自分が守るために倒してしまった命はある。そこからは、目を背けちゃいけないし、背負い続けないとダメだと思う」
「それはとても辛いことだし、押し潰されることだってきっとある」
「だから、そんな時には逃げることにも、勇気がいるんだ。逃げだす自分を許すことができないと、きっと立ち上がれなくなる」
「逃げだすことを選んだキミは、それだけ勇気があるんだよ」
優しく告げる勝人を見上げながら星奈は唇を震わせる
「…私に勇気なんて、あるはずない…」
「勇気だったらあるはずだよ。僕にも、もちろん星奈さんにも」
勝人の言葉に星奈は俯く
「もう戦えないなら、戦い続けなくてもいい。あの怪獣は、僕一人でどうにかできるかわからないけど…」
勝人は拳を握りしめ、呟く
「でも、なんとかする‼︎僕は地球の人たちに勇気をもらったから、守りたいんだ。この星の人も、もちろんこの宇宙も」
勝人は空手の構えを取り、その拳を打ち出す
「今のうちに、師範から教わった型を思い出して気合いを入れ直しとかないと‼︎」
拳を何度も鋭く突き出し、時折蹴り上げも交えつつ、勝人は素振りをはじめる
あまりにもまっすぐで優しい勝人を見ていた星奈は俯きがちだった顔を少し持ち上げる
きゅっと膝の上で握る手にはまだシミが見えていた
でも、それはほんの少しだけ薄くなったようにも見えた
「……私に、勇気なんか…」
星奈はそう呟きながらも、勝人の素振りを眺め続けていた
地下数百メートル
ーゴォオォオ…
ガリュブデスは岩盤を崩し、その中からこぼれ出す結晶をバリバリと食べていく
失っていたはずの右腕部分からは大きな透明のクリスタルが生え出していた
ーゴォオォオォオン!!!
ガリュブデスは目を赤く光らせ、雄叫びを上げ、周囲の岩盤を揺るがした
★★★
何もない白い空間、血に塗れた自分の手のひら
そして目の前には、口が裂けた血塗れの親友が立っていた
(ああ、またあの夢だ……)
星奈が震え出し、血塗れの手を握りしめて俯く
「ー違う、私は……」
『逃げ出すことを選んだキミは、それだけ勇気があるんだよ』
星奈の脳裏に勝人の声が響く
星奈は自分の血塗れの手のひらを見下ろし、口を開く
「私はー」
★★★
ードォォオォオン!!!
「ぅあッ⁉︎」
衝撃に驚いてベンチから滑り落ちる
いつの間にか眠っていたらしく、勝人のジャケットがかけられたことに気づくとともに、勝人が真剣な顔で街の方を見ていることに気づく
ーゴォオォオォオン!!!
街の方から煙が上がり、咆哮が響く
ゼアスが戦っていたあの鯨のような怪獣の咆哮だ
「怪獣…‼︎」
星奈の握りしめた両手が震え、腰が引ける
それを見た勝人は決心したように頷くと、星奈からジャケットを返してもらい、しゃがんで目線を合わせながら告げる
「星奈さんは逃げて。ここは、僕がなんとかする」
「⁉︎でも、あの怪獣は…‼︎」
勝人は微笑んで立ち上がる
「大丈夫、なんとかするさ‼︎」
星奈に背中を向け、勝人が走り出す
「そんな、朝日さん…‼︎」
なんとか立ち上がるが、シミの残る手が目に映り、手と足が引けてしまう
勝人はガリュブデスが現れた街に向かって走って行った
走りながら勝人は懐から赤い電動歯ブラシーピカリブラッシャー2を取り出し、スイッチを入れる
「行くぞ‼︎怪獣‼︎」
ピカリブラッシャー2で勝人が歯を素早く磨く
みるみるうちにピカピカになった歯を煌めかせながら勝人がピカリブラッシャー2を天に掲げる
「シュワッ!!!」
勝人の体が光に包まれ、その姿が赤い神秘の巨人ーウルトラマンゼアスへと変貌していく
ージュアッ‼︎
飛来したゼアスが街中に着地、爆煙を上げて猛進するガリュブデスに向き直り、構える
星奈はなんとか歩き出し、自然公園の展望台からゼアスとガリュブデスを見つめていた
ーゴォオォオォオォオン!!!
以前よりも力強くなった咆哮を上げ、ガリュブデスは右腕を振り回して爆煙を振り払う
振り回された腕を見たゼアスが一瞬たじろぐ
ゼアスの必殺技ースペシュッシュラ光線で吹き飛んだはずのその右腕は、黒い手甲と透明な結晶のナックルダスターを装備し、物々しい白銀の鎖が何重にも巻かれて左腕の2倍は巨大化して復活していたのだ
ーゴォオォオォオォオァァァァ!!!
ガリュブデスー否、地脈の結晶エネルギーを喰らってパワーアップしたガリュブデス・オブシデアは肥大強化した右拳を勢いよく地面に突き立てる
大地を揺るがしながら黒い結晶が地面から突き出しながら衝撃波が走り抜け、ゼアスの足元を爆発させながら突き出した大量の黒い結晶がゼアスを襲う
ージュアァァッ…⁉︎
いきなりの攻撃にゼアスは大きなダメージを喰らい、膝を突く
ーゴォオァァッ!!!
かぶりを振りながら立ち上がろうとするゼアスにガリュブデスが突進、強烈なヘッドバットをかましてその体を吹き飛ばす
ージュアァァッ!?
「朝日さん!!!!」
吹き飛ばされたゼアスはうつ伏せに倒れ伏し、もがく
ーゴォオォオォオ!!!
ガリュブデスは頭部をドラミングしながら勝利の咆哮を上げていた
が、倒れたはずのゼアスが上体を起こし始めているのを見て動きを止める
「朝日さん……⁉︎」
倒れ伏したゼアスは、拳を握りしめながら立ち上がり、震える拳を振るい、頭も振りながら頬をバシバシと叩いて気合いを入れ直すと、ガリュブデスに向けて構えなおし、走り出す
ージュアッ!!!
ゼアスの鋭い蹴りがガリュブデスの頭部を揺らし、その隙に正拳突きを放つが、ガリュブデスはそれを右腕の装甲を盾にして防ぐ
ガギィンッと鈍い音がし、ゼアスも痛そうに右手を振る。負けじと何度も拳を撃ち込むが、ガリュブデスの装甲はビクともしない
ージュアァァッ!!!
渾身のハイキックを放つが、それも受け止め、ガリュブデスが足ごとゼアスを弾き、よろめいたゼアスに拳を撃ち込む
ージュアッ!?
重たい一撃にゼアスがよろめき、そこを逃さずガリュブデスは連続パンチを放ってくる。1発、2発と直撃しながらも拳を受け止め、ゼアスチョップを撃ち込むが、ガリュブデスはものともせず、拘束を振り払ってゼロ距離で口から結晶弾を放ち、ゼアスを後退させる
ーゴォオォオァァァァ!!!
ガリュブデスは口にエネルギーを溜め、更に結晶弾を乱射する
ゼアスはそれを見ると腕と足を高く伸ばし広げて、体を高速スピンさせて弾丸を砕きながらガリュブデスに突撃する
ーゴォオォオン!!!
ガリュブデスは再び手甲を盾として構える
ゼアスのスピンキックが何度も衝突し、派手な擦過音と火花を上げるが、手甲には傷一つ付く気配が無い
ーゴォオォオァァァァッ!!!
ゼアスのキックを振り払い、力任せな拳の一撃でゼアスを吹き飛ばす
ージュアァァッ!?!?
吹き飛ばされ、大地に叩きつけられるゼアス
それだけのダメージを負ったにもかかわらず、ゼアスは立ち上がり、ガリュブデスを見据える
「なんで…なんで、戦えるの…」
手すりを握りしめながら星奈は力無く呟く
立ち上がり、何度吹き飛ばされてもガリュブデスに追い縋るゼアス
その手が震えていることに星奈は気づく
『昔の僕は、ただただ一生懸命に立ち向かうことで精一杯で、守ることで傷つくものを想う余裕なんかなかった』
『あの怪獣は、僕一人でどうにかできるかわからないけど…』
「……なんで、気づかなかったんだろう…」
星奈は手すりから手を離して駆け出した
★★★
血塗れの手のひらを見下ろした星奈が
「私は……こんな重たいもの背負える自身が無い…きっといつか、潰されて転んじゃう…」
震える足で一歩、また一歩と踏み出していく
胸の前で握りしめている両手が震えている
「でも、でもー」
泣き腫らした瞳で、今も涙がつたうままに
星奈は血塗れの優里を見据える
「ー目を逸らすことは、したくない…ッ‼︎そこから逃げたら…私は…きっと私が許せなくなるから…ッ‼︎」
震える声で、だけどもしっかりとした声で目と鼻の先にいる影に告げる
「痛いのも、怖いのも嫌だ……私が地球人じゃないかも、とか、そんなのわからないし、知らない…‼︎」
「戦いたくない…‼︎でも、でもー」
星奈は思い出す
傷ついて倒れた親子
子を庇った父親に泣き縋る少年
呆然と死を悟る恵美
怪獣や宇宙人に、「日常」を壊された痛みや辛さは、きっとみんな感じていた
ウルトラマンとして戦える、自分以上に
「ー私は、そんな痛みに苦しむ誰かに手を伸ばせない方が、もっと嫌だから…ッ!!!」
はっきりと告げた星奈を、血塗れの優里が抱きしめる
その口が僅かに動いた
「ーがんばって、星奈」
ほろほろと優里の影が消えていく
「優里ッ!?」
泣きながら星奈が手を伸ばす
その手にはもう、血も、黒いシミも見えなかった
★★★
天川まで走ってきた星奈はそのまま川の中にざぶざぶと入っていく
冷たくなってきた川の水に思わず顔をしかめながらも、川の中に手を突っ込んで川底を探る
「私には、勇気なんかない…迷子の子1人満足に助けられない私に、そんなものはない…‼︎」
「怖いし、痛いし、辛いし、訳もわからないし…もうこんなの嫌だよ…逃げだしたままでいい…そう思った……でもー」
ガリュブデスに襲われた街から上がる悲鳴を思い出す
「ー私みたいに、日常を壊されていく人は見たくない…もういてほしくない…ッ」
ガリュブデスに何度吹き飛ばされても立ち上がるゼアスの姿が、手を震わせながらも怪獣に立ち向かうその姿が脳裏に過ぎる
「ー臆病でも、こんな私を…この星を守ろうって、何度も立ち上がって、何度も傷つくあの人を…見捨てたくない…ッ‼︎」
泣きじゃくりながら、凍えて真っ赤になってきた手を懸命に動かす
「弱虫で、どうしようもない私は、多分何度も諦める…何度も立ち止まる…何度も、何度も逃げてしまう…ッ‼︎」
「ーだからお願い………力を貸して……ッ」
「私を、助けてよ…キグナスッッッッッ‼︎」
星奈の声に応えるかのように側の大岩の隙間から青い光が噴き出す
大岩の下に手を伸ばし、それを掴む
キグナスクロス。投げ捨てたあの後、奇跡的に大岩に引っかかっていたそれを手にした星奈は、祈るように胸に当てる
「あなたが何者か、私がなんなのか…わからないことだらけで怖い…怖いよ……戦うのも、痛くて辛い……」
「ーお願い…力を、勇気を貸して、キグナス…ッ!!!」
キグナスクロスが開き、星奈の体が白銀の光に包まれた
☆☆☆
ージュアァァッ!?
ガリュブデスのアッパーに吹き飛ばされたゼアスが仰向けに倒れ伏す
とうとうすぐに立ち上がるだけの力も失ってしまったゼアスに向けて、ガリュブデスは拳を振り上げる
ーゴォオォオァァァァッ!!!
巨拳がゼアスを粉砕する、かに思われた
ーリュオァァッ!!!
空から飛来した銀色の流星がガリュブデスを吹き飛ばす
ーゴォオァァッ!?
突然の一撃にガリュブデスが倒れ伏す
飛来した流星は身を翻しながらゼアスの前に降り立った
銀色の巨人ーウルトラマンキグナス
白銀の翼持つ巨人が、再び降り立ったのだ
キグナスを見上げていたゼアスに駆け寄り、助け起こす
立ち上がったゼアスを見つめてキグナスが頷くと、ゼアスも嬉しそうに頷く
ーゴォオォオォオァァァァッ!!!
ガリュブデスが怒りの咆哮と共に立ち上がる
ーリュオァッ!!!
ージュアッ!!!
銀と赤の2人の巨人が力強く構えた
ーゴォオォオァァァァッ!!!
ガリュブデスが地面を殴りつけ、再び結晶が爆炎と共に大地を走る
2人のウルトラマンは身を翻し左右にそれを避け、共にガリュブデスへと突進して組み付く
ゼアスがチョップを、キグナスが蹴りを撃ち込むが、豪快なパワーでゼアスを吹き飛ばし、キグナスをヘッドバットで叩き伏せる
ージュアッ!!!
ゼアスが復帰と共にジャンプ。手刀をガリュブデスの頭部左に撃ち込み火花を散らせる
ーリュオァッ!!!
続けてキグナスもガリュブデスの頭部右にハイキックをぶち当てる
左右からの挟撃によろめくガリュブデスに更にパンチとキックが迫るが、ガリュブデスは右腕を盾に軽々と受け止める
弾き返された2人が並び立つ
ゼアスはキグナスの方を見て何かを思いついたように頷き、空手のような構えを取る
それを見たキグナスー星奈も意図を汲んで頷く
ー見よう見真似、だけど‼︎
キグナスもゼアスと共に空手のような構えを取って同時に駆け出す
ーリュオァッ‼︎
ージュアッ‼︎
2人の巨人が同時に正拳突きを放ち、ガリュブデスが右腕で受け止める
ーリュオァァッ!!!
ージュアァァッ!!!
更に続けて同時に蹴りを手甲に撃ち込む
ービキビキッ
鈍い音が黒金の手甲から響く
ゼアスはそのまま高くジャンプし、足を突き出して体を縦に回転させる
その足の先ー踵に炎のエネルギーが迸り、そのままガリュブデス目掛けて振り下ろされる
ガリュブデスが手甲を構え、それを防ぐ
一発、派手な火花を上げ、衝撃がガリュブデスを揺らがす
二発、バギィンッという音と共に手甲が大きくひび割れ、ガリュブデスのガードが崩れる
ージュアァァァァァァッ!!!!
ゼアスの気合いと共に三発目の踵落としがガリュブデスの巨大な頭部を打ち据え、その巨体を地に伏せさせる
ーゴォオァァ…ッ⁉︎
よろめきながら立ち上がるガリュブデスを前にキグナスとゼアスは共に必殺光線の構えを取る
ーリュオァァァァァッ!!!
ージュアァァァァッ!!!
ノーザンクロスシュートの白銀と蒼の光、スペシュッシュラ光線の赤と青の光がガリュブデスに放たれる
が、ガリュブデスは間一髪でこれを手甲で防ぐ
エネルギーが亀裂にスパークし始めているが、まだ手甲は砕けそうにない
ーゴォオォオォオァァッ!!!
超常的なパワーでガリュブデスは光線を押し返しながら前進をはじめ、気圧されるウルトラマンたち
ー負けるもんか…‼︎僕にだって…いや…
ゼアスがキグナスの方を少し向き、頷いて力を込める
ー僕たちにだって、勇気があるんだ…ッ!!!
ーリュオァァッ……!!!
ゼアスの気合い一喝を聞いて、キグナスも更に力を込めて光線の出力を高める
ー今なら…やれるッ!!!
ゼアスは更に力を込めて気合いを声に乗せる
ーヘアァッ!!!
ゼアスの十字に組んだ腕が倒され、X字に組み変わる
放たれていたスペシュッシュラ光線が、腕先からのみの光線から腕全体から放たれる極大光線ークロススペシュッシュラ光線となる
2人の出力を増した光線がガリュブデスを押し戻す
ーバギィィィィンッ!!!
派手な金属音を響かせ、ガリュブデスの右手甲が砕け散り、2つの光線が今度こそガリュブデスを捉える
ガリュブデスは青と銀の光をスパークさせながら倒れ伏し、爆発四散した
光線の構えを解いたキグナスとゼアスはカラータイマーを共に点滅させながら、肩で息をしながら、視線を交わして確かに頷いた
☆☆☆
「ありがとう、星奈さん。僕一人だけじゃあの怪獣は、倒せなかった。まだまだ修行不足だなぁ…」
勝人が申し訳なさそうに頭を撫でる
星奈は首を振る
「それは、私も同じです。私一人じゃ、あの怪獣はきっと倒せませんでした」
星奈は薄く微笑む
それを見た勝人は笑顔で頷く
「ピカピカになったみたいだね、星奈さん」
その言葉を聞いて、自身の手のひらを見下ろす
その手にはもう、黒いシミの幻は見えなかった
星奈は微笑んで頷く
「ーはい」
勝人は改めてピカリブラッシャー2を取り出して星奈に告げる
「じゃあ僕は行くよ。修行のしなおしをしないとだしー」
「この星には、頼れるウルトラマンがいるからね」
勝人の言葉に星奈はまだ少し緊張しながらも、確かに星奈は頷く
「私にどこまでできるかわかりません…でも、任せてください…‼︎」
少女のまだ未熟ながらも確かな決意の籠る言葉に、青年は頷く
「ひとりぼっちじゃあ僕らは戦えない。だから仲間を見つけるんだ」
「仲間……」
「星奈さんにもきっと見つかるよ。信じられる…いや、信じてみたい仲間が、必ず」
勝人がピカリブラッシャー2を掲げると、赤い光と共にその姿がウルトラマンゼアスへと変わる
ージュアッ!!!
ゼアスは星奈を見て頷き、手を振ると、空を見上げて高く飛び上がっていった
1人ゼアスを見送り、手を振る星奈
ざっ、とその背後に2人の人物が現れ、星奈も振り向く
そこにいたのは、フードを被った異星の兄妹だった
「……ウルトラマンに戻ったのか」
少年ーユウがフードを脱いで歩みだしながらその姿を青い宇宙人ーギラッガス・Uの姿に変化させ、腕の刃を星奈に向ける
「ーッ」
星奈が思わず一歩退く
『お前は、これからその力でどうするつもりだ?』
淡々と告げられる言葉に星奈は震える唇をおさえながら返答する
「……力の使い方なんて、わからない…でも…」
「あなたたちや他の誰かを、身勝手に傷つけることには、絶対使わない…私も、そんなことはしたくないから……」
星奈の言葉にギラッガス・Uはしばしば沈黙を保つ
『………そうか』
ギラッガス・Uはそれだけ呟くと腕を下ろし、人間の姿となる
フードを被りなおす
「ーよかった」
フードの下で、ユウが薄く微笑んでいたことに星奈が気づく
「俺たちからキミにもう用は無い。じゃあな」
ユウはそのまま姿を消し、キリカは「またね〜」と言いながら手を振りながら姿を消す
一瞬見せたユウの笑顔が、星奈は何故か忘れられなかった
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【赤い巨人】
【政府によってガリュブデスと名付けられた怪獣と戦っていたもう1人の巨人】
【正体は不明】
【同時期に怪獣と向き合って歯磨きをしていた謎の人物が目撃されているが、関連性は不明】
「ウルトラマン、さっさと倒しちまわないとな」
「ギラッガスとは、追放者の忌み名じゃ」
「俺たちにはもう、関わるな」
「お人好しすぎるのよ、あんたは」
「一兎を追うなら、二兎も欲しくなるのさ」
次回ウルトラマンキグナス
「私はあなたを信じたい」
双体宇宙人 チェーン星人ガストル
双体宇宙人 チェーン星人ポルーク
共生宇宙生命体 ギラッガス・UK 登場
「私は、あなたたちをもっと知りたい‼︎」