ウルトラマンキグナス   作:リョウギ

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第5話「私はあなたを信じたい」

復興作業途中の足場が組まれただけの現場

 

そこに似つかわしくないスーツ姿の男が1人立っていた

 

髪をオールバックにまとめた男はメガネを拭きながらため息を吐き出す

 

「全く、地球の侵略も楽じゃないな、兄上」

 

スーツ姿の男の背後から革のジャンパーを纏う金髪のガラの悪そうな男が姿を現す

その顔はスーツの男と瓜二つだった

 

「ウルトラマンが邪魔ならさっさと倒しちまおうぜ。変身する前だったら、楽に潰せそうだしなぁ」

 

金髪男は獰猛な笑みを見せながらそう告げる

 

「ウルトラマンも邪魔だが、もう1人ほど邪魔者がいる」

「ああ、あの連中か…」

 

スーツ男はメガネをかけ直し、ニヤリと微笑む

 

「まぁ大丈夫。策はもう張り巡らせた」

 

 

「一兎を追うなら、二兎も追いたい。だろ?どうせなら」

 

「わかってんじゃねぇか。弟よ」

 

 

月下に照らし出された双子の姿が異形の姿に一瞬変容した

 

☆☆☆

 

ウルトラマンゼアスー朝日(あさひ) 勝人(かつと)や兄妹と別れた後、星奈(せいな)はすぐに家に戻って心配していた母に泣きつかれ、いなくなったことについて叱られた

 

しばらく叱られはしたが、その後は温かいココアを淹れてくれて、一緒に最近のドラマとかを見ながら過ごしてゆっくりと休んだ

 

その日の夜は、もうあの悪夢にうなされることはなかった

 

 

久しぶりのゆっくりとした目覚めで起き上がり、微睡む中、星奈はあることが気になっていた

 

 

『ーよかった』

 

 

謎の宇宙人の少年・ユウが見せたあの笑顔がどうも引っかかっていたのだった

 

(なんでよかった、なんだろう…)

 

 

朝食を食べ、自主勉強を少しした後に星奈は「買い物に行ってくる」と出かけた

 

母はこの前のこともあり最初は心配していたが、気分転換だからということと何かあったらすぐ電話することを伝えると「なるべく早く帰ってきてね」、と笑顔で送りだしてくれた

 

「……とは言っても…どこにいるかなんてわからないよね…」

 

街をとぼとぼ歩きながら星奈はうーん、と頭を捻る

 

キリカもユウも自らこちらに来た形なので、彼らが普段どこで過ごしているかなんてわからない。探すアテがあまりにも無さすぎる

 

彼らが宇宙人であることを考えれば、最悪この街の住民ですら無いかもしれない

 

 

とあてどなく街を彷徨っていると、突然街の中心部が光り輝き、どこからともなく黒い翼の生えた青い巨人が姿を現した

 

「あれ、って…⁉︎」

 

現れた巨人は、ユウとキリカの宇宙人の姿ーギラッガス・UKだった

 

 

ー………‼︎

 

 

ギラッガス・UKは突如腕の爪ーカットフックを振るうと、近くのビルを倒壊させ、更に光弾を周囲にバラまいて攻撃しはじめる

 

突然の襲撃に逃げる人々と共にビルの影に逃げ込んだ星奈はキグナスクロスを取り出し、祈るように握りしめる

 

 

「ー力を貸して…キグナスッ!!!」

 

 

キグナスクロスが展開し、クリスタルから青い光が放たれる

 

 

ーリュオァッ!!

 

破壊活動を続けるギラッガス・UKの背後に降り立ったウルトラマンキグナスがその体をはがいじめにする

 

ーやめて‼︎これ以上暴れないでッ‼︎

ー………‼︎

 

ギラッガス・UKは肘鉄を当て、キグナスを引き剥がす

 

ギラッガス・UKが油断なく構えるのを見て、キグナスも構えを取る

 

(なんでいきなり攻撃なんか……)

 

宇宙人という存在は得体が知れないことはまだ払拭できていないし、キリカやユウのことを信じきれていない自分もいる

 

でも星奈は、そのまま、何も知らないまま彼らと戦うことはしたくなかった

 

ー………‼︎

 

ギラッガス・UKがカットフックを振り回しながら襲いくるが、その腕を掴んで押さえて動きを封じる

 

ー教えて…あなたは、あなたはなんで…

 

問いかけようとしたキグナスを投げ飛ばし、起き抜けに光弾を放つ

光弾がキグナスの胸で弾け、キグナスがよろめく

 

更なる追撃を放とうと構えるギラッガス・UKが突如胸を押さえて膝を突く

 

ーグ……ォアァァッ……⁉︎

 

苦しみだしたギラッガス・UKは光弾をばら撒いて爆煙を撒き散らすと、その姿を消してしまった

 

取り残されたキグナスは光となって近くの道路に星奈として降り立つ

 

「………」

 

星奈はギラッガス・UKがいた空を見上げ、意を決したように手を握った

 

☆☆☆

 

「10月3日に十星(じゅうせい)町に現れた巨大生物第一号・彗星怪獣カノープス」

 

「続く10月5日に十星町の復興現場から出現した巨大生物第二号、識別名・大翼怪獣アルトゥール」

 

「10月12日、星之宮(ほしのみや)学園に出現して多数の死傷者を出した巨大生物第三号」

 

「10月20日、同地区に出現した巨大生物第四号」

 

パサッと書類の束が机上に追加され、そこに向き合う位置の椅子に士官服の若い男性が腰を下ろす

 

「ーそしてつい先ほど新たに現れた人型巨大生物第五号…」

 

机に座る数名の士官服の人々の前、大型モニターに映し出されている怪獣たちーカノープス、アルトゥール、リーチ星人ファルデ、ガリュブデスの記録映像にギラッガス・UKのものが新たに追加される

 

小太りの男が机を殴りつける

 

「なんだこれは…‼︎怪獣など映画でも見ておるのか⁉︎」

 

神経質そうな眼鏡の男が眼鏡を直しながらため息を吐く

 

「映画であればどれほど良かったことか。残念ながらこれは現実ですよ。南雲(なぐも)陸将補」

 

「そんなことはわかっておる‼︎」

 

南雲と呼ばれた男が眼鏡の男ー桐野(きりの)海将補に怒声を飛ばす

 

「我々で争っている場合ですか⁉︎南雲陸将補‼︎」

 

この場で唯一の女性ー日笠(ひかさ)空将補がバンッと机を叩き立ち上がる

 

 

「日笠空将補の言う通りだ。双方共に落ち着くように」

 

 

机中央に座っていた若い男が重い口を開く

若い男ー七星(ななせ)陸将が咳払いをし、資料を見せながら告げる

 

「元々我々自衛隊は様々な状況下の脅威に対策できるようにシミュレーションを重ねていた。巨大生物による侵攻もその一つだ。だが、政府はこれを自衛と見るか、長らく重い腰は上がらなかった」

 

かつ、かつ、と靴音が響く

 

「ーその重い腰がようやく上がった。ということです」

 

七星陸将が振り返る

そこにはスーツ姿のメガネの男が立っていた

 

双海(ふたみ) (ひだり)三佐。それはこれから話すことだ」

「失礼、気が早ってしまいました」

 

双海と呼ばれた男が眼鏡を直しながら笑う

 

「ー双海三佐の言う通りだ。政府はようやく、あの巨大生物群に対しての攻撃を自衛と判断。我々の出撃が認められた」

「……この短期間でそこまで漕ぎつけるとは…七星陸将の辣腕が光ましたな」

 

南雲陸将補の言葉に七星陸将が薄く笑う

 

「なんのことだか。自分はただ、話すべき人間と腰を据えて話をしたまで」

 

「では、此度逃走したあの青い巨人や銀色の巨人が出現した場合は、今度こそ被害が出る前の制圧が行えるというわけですね」

 

日笠空将補の言葉に七星陸将が表情を曇らせる

 

モニターに並べて映し出される銀色の巨人ーウルトラマンキグナスを見て七星陸将はふむ、と唸る

 

「あの巨人への攻撃は…まだ控えるべきと自分は思っています」

 

七星陸将の言葉に南雲、桐野、日笠の3名が驚きの顔を見せ、双海が眉をひそめる

 

「……理由を聞かせてもらいましょうか。七星陸将」

「あの銀色の巨人は、今まで巨大生物群にのみ敵対している…いや、むしろ我々人類を守ってくれたようにも見える」

 

七星陸将がモニターの画像を切り替える

 

そこには赤い巨人ーウルトラマンゼアスの姿が映る

 

「第四号の事例で一度だけ姿が確認されたこの赤い巨人も、巨大生物が飛散させたビルの残骸から人々を守ろうとする動作も見せている」

「しかし、この巨人もまた宇宙からの存在に変わりはないでしょう⁉︎人類の味方のように見えるだけの可能性もー」

「……宇宙からの存在だが、我々と意思の疎通が可能な存在であるならば、自衛とはいえいきなり武器を向けるのは好ましくない。自分はそう思うだけです」

 

七星陸将の言葉を聞いた双海が画像を切り替える

 

今し方記録されたギラッガス・UKを押さえようとするキグナスの姿が映し出されていた

 

「しかし、先程の出現の際はこのように、新たな人型巨大生物とまともに戦闘を行わずにいる姿も確認されています。かの巨人……我々の味方のフリをしているだけの可能性は…まだ捨て切れていないと思われますよ?」

 

「………」

 

双海の言葉に七星陸将は再び言葉を濁す

 

「ともかく、今自分はあの巨人への攻撃は時期尚早と考えている。次の出現の際も、攻撃するか否かはよく検討を重ねねばなるまい…」

 

七星陸将の言葉に抵抗を感じながらも、道理は理解した3名が頷き、会議が終わる

 

議場から去っていく4名を見送った双海は1人、モニターのギラッガス・UKとキグナスを見据えてニヤリと微笑んだ

 

☆☆☆

 

廃工場跡地

 

『片割れになっちまったギラッガス……形無しどころかゴミも同然だなぁ?』

 

よろめきながら立ち上がるユウの前に異形の怪人が悠々と近づいてくる

 

赤い外皮を持つ黄色い目の異星人

何故かその半身は漆黒に染まっており、右半身のみが色づいている

 

「…単細胞の割に、知能的なことをするな。チェーン星人…」

 

ユウの悪態を聞いてハッ、と怪人ーチェーン星人ガストルが鼻で笑う

 

『出来のいい弟がいるおかげでなぁ。俺の弟は最高だぜ?』

 

ガストルは愉快そうに右の爪を鳴らしながらユウを指差す

 

『ーさっさと尻尾巻いて逃げやがったお前の相棒と違ってな』

 

ガストルのその言葉にユウは眉を寄せる

 

「………相棒じゃない」

『クソみたいな片割れは相棒の価値すら無いってか?』

 

ユウはフードを下ろしてその目を輝かせ、ギラッガス・Uの姿に戻り、カットフックをガストルに向ける

 

 

『ーキリカは、俺の妹だ…ッ‼︎』

 

 

『ハッ、種族も違う半端ザコ共が寝言言ってんな‼︎』

 

ガストルとギラッガス・Uが正面からぶつかり合う

廃工場に赤と青の閃光が瞬いた

 

☆☆☆

 

星奈はいつもの街を駆け回っていた

 

母から怪獣出現を心配する電話が来たが、「友達の様子を見たいから」ともう少し外にいることを伝えている

 

(ごめん、お母さん…)

 

嘘をついてしまったことの後ろめたさがある中、とにかく色んな場所を走り回っていた

 

いつもいくCDショップ

天川の河川敷

住宅地内の路地裏

病院前の公園

 

とにかく、彼らと出会った場所で行けるところを駆け回って見回る

 

そのどこにも、彼らの姿はなかった

 

途方に暮れた星奈が足を止めたのは通学路近くの高架下。あの占い師がいつもいる場所だった

 

「…はぁ、はぁ…ッ、どこにいるの…」

 

息を整えていると、いつも占い師が座っているあたりから声が聞こえてくるのがわかり、思わず聞き耳を立てる

 

 

「やはりあの連中は信用できないじゃないか…‼︎」

「これだからヤツらは厄病神なんだ‼︎」

 

あの占い師が立ち上がる目前で2人の青年が怒声を上げている

占い師はボロ布を纏ったまま立ち上がり、2人の話をただ聞いていた

 

『落ち着け。彼らがそんなことをすると思うか?』

「今までしてこなかっただけで、わからないじゃないか‼︎」

「あのギラッガスども、今の今まで正体を隠してたんだろ‼︎」

 

「ギラッガス…⁉︎」

 

2人の言葉の中に聞いたことのある名前を聞いて思わず歩み出る星奈

それに気づいた2人がこちらを向く。その2人の顔がノイズのかかったように変化して異形のものとなる

 

「宇宙人…⁉︎」

 

星奈が驚く中、青年2人が慌てふためく

 

『な、地球人⁉︎何故ここに⁉︎』

『ば、バカッ⁉︎元々ここは地球人の通路だろうが⁉︎慌てて偽装ホログラムを解くなお前は‼︎』

 

フック星人の青年が狼狽するバルキー星人の青年をはたく

 

『というか…ちょっと待てよ…?』

 

フック星人が星奈の方をじろじろと見つめ、その顔を蒼白にする

 

『あ、あの地球人…ウルトラマンじゃねぇか⁉︎』

『ま、マジかよ⁉︎おっかねぇ…オレは逃げるぞ‼︎』

『お前⁉︎ズリぃぞ!!!』

 

勝手に驚かれ、ビビられ、逃走していく2人の宇宙人を眺める複雑な表情の星奈の前に占い師が歩み出る

 

『ようやくお目にかかれたのう、ウルトラマン』

 

占い師は顔にかかった布を脱ぎ、その姿ーファントン星人アルゴとしての姿を露わにする

 

「…ッ⁉︎」

『驚かせたかの?このような姿の者を見るのは初めてか』

 

最初こそ驚いていた星奈だが、胸に手を当て深呼吸をして気を落ち着かせる

 

「……いえ、ちょっとだけ…びっくりしただけで…宇宙人を見るのは初めてではないです…」

『だろうな。初めて見るなら、さっきの2人でもう悲鳴をあげて逃げだしとるわい』

 

ハッハッハ、とアルゴが膨れた腹をさすりながら笑う

 

「………あなたは、侵略とか…地球人を食べたりとか…しないんですか…?」

 

まだ少し警戒しながら問いかける星奈にアルゴは顎を撫でながら答える

 

『わしらファントンの民にそんなヤツらはおらんよ。ただ食うことを大切にする、そんな種族じゃから。無論、地球人の君たちと同じようなものを飲み食いするだけじゃ』

 

アルゴはそう答えるとともに星奈を見据えながら告げる

 

『ウルトラマン…こうして本物を見るのは初めてじゃな』

「本物を…?名前は知っているんですか?」

『そうとも。我らが星を食糧危機から救った英雄の、かけがえのない友として、我らの星でその名を知らん人はおらんよ』

 

その言葉に星奈は一歩前に歩み出し、質問を重ねる

 

「ウルトラマンって、なんなんですか⁉︎私、それだけは…わからなくて…」

 

星奈の真剣な様を見ながらアルゴは静かに答える

 

『残念だが、わしにもわからぬ』

「わからない……」

『そう落胆するでない。それは恐らく、わかるものの方が少ない問いなのじゃよ。もしかすると、ウルトラマンも』

 

高架下の定位置まで戻ると、アルゴはどっこいしょと腰を下ろしてあぐらをかき、側に置かれていた袋から折り畳み椅子を取り出し、自身の前に置く

 

『立ち話もなんじゃ。ほれ』

 

椅子の座面をぽんぽんと叩き、座るように星奈を促す

星奈は警戒しながらも、こちらを襲おうとしないアルゴの方を見て、意を決したように椅子に座る

 

『ーその警戒心は宝じゃよ。宇宙種族と交流するなら、警戒を忘るるなかれ。悲しいかな、わしのようなものの方が少ないのが、そなたらがまだ見上げることしか叶わん宇宙じゃ』

 

袋の中を探りながら何やら道具を並べながらアルゴが続ける

 

『ウルトラマンの話じゃが、元々この言葉は別の宇宙の地球人が名付けたものをあの者らが称号として使っておる。それに恥じないように生きていくために』

 

宝石玉をジャラジャラ探りながらアルゴが優しい声色を星奈に向ける

 

 

『だからお前さんも、お前さんの恥じぬように生きたらいい。そうして生きることでお前さんも、いつかウルトラマンとなるじゃろうて』

 

 

「……私に、恥じないように…」

 

アルゴの言葉は難しいものが多かった

でも、星奈はその言葉にどこか不安定だった自分の足元を支えられた気がして、落ち着くのがわかった

 

『ーさて、本題に入ろう。お前さんが息を切らしてここまで来た用件…そもそもわしがいるとは思わんかったじゃろうが、それはそんな問いではなかろう?』

 

アルゴの言葉に星奈がハッ、と顔を上げる

いつのまにかアルゴの前には星が描かれたような四角の黒い盤が置かれていた

 

ちゃら、と右手から振り子を取り出して垂らしながら告げる

 

『わしは、ファントン星伝統の星見を大成した身。ちょっとした未来・失せ物ならば…たちまち見ることができる。時たま…当たらぬこともあるがの…』

 

ポリポリと頬を掻きながらアルゴが照れる

ごほんと咳払いし、アルゴが改めて星奈を見据える

 

『ー今日は特別サービス。我らの星の友……その同族の来店記念として一度だけ、無料で見てやろう。さぁ、お前さんの名は?』

 

アルゴの問いに星奈は唾を飲み込み、意を決して答える

 

「い、市ノ瀬…星奈で、す…」

『イチノセ セイナ。ふむふむ』

 

アルゴが星盤を撫でる

するとその模様が光とともに組み替わり、新たな星図が出来上がる

 

『では、セイナ。探したいものもしくは、見たい未来はなんじゃ?』

 

星奈は口を開く

 

「ギラッ、ガス…ギラッガスの、キリカさんを、探してください‼︎」

 

ほう、とアルゴが口を開く

 

『キリカを、か。意外な名前じゃ。何故、あの子を探す?』

 

問いかけの口調が少し低くなり、アルゴの真剣さが星奈にも伝わる

星奈はおずおずと口を開く

 

「私、は……まだ宇宙人が、怖いです……学校だって…酷いことになったし……キリカさんも、怖い…し……」

 

ぎゅっと、胸の前で組んだ手を握りしめる

 

「……でも…ッ、宇宙人だからって…拒絶されるのは……」

 

伸ばした手を払いのけた恵美の、あの顔を思い出し、思わず肩が震えだす

 

震える唇を噛み締め、星奈はアルゴの方を見て告げる

 

 

「……すごく辛いって…わかるから……だから、キリカさんも…あの人のことも…拒絶する前に……もっと知りたいんです…‼︎」

 

 

星奈のその言葉を受け止め、アルゴは口を開く

 

『……ギラッガスというのは忌み名じゃよ。追放者に名付けられる烙印ともいうかの』

「忌み名…?」

『疎まれる者としての名、ということじゃ』

 

アルゴは星盤をなぞりながら滔々と呟く

 

『宇宙種族ギリバネス。人型のギリ族と羽型のバネス族が合体共生しておる種族。同時に、種族内での掟がとても厳しい種族でもある』

 

『あやつらが追放者ギラッガスとなった理由はー』

 

真摯にアルゴの言葉を受け取る星奈

アルゴの口から語られる理由を聞いた時、その目が大きく見開かれる

 

「…そんな⁉︎じゃああの人たちは…」

『うむ……』

 

アルゴは星盤から光る宝石玉を取り外し、星奈の手に握らせる

宝石玉をから漏れ出す光は線となり、ある方向に伸びていた

 

『キリカを追うなら、その光を辿って行くといい』

 

アルゴは星盤を片付け、立ち上がりながら告げる

 

『……頼む、セイナ。あやつらを見つけてやってくれ』

 

そう頭を下げるアルゴ

星奈もまた立ち上がり、しっかりと頷いて走り出した

 

その小さな背中を見送り、アルゴは満足そうに頷いた

 

☆☆☆

 

『オラァッ!!!』

 

ガストルの力任せな投げ技にギラッガス・Uが吹き飛ばされ、ドラム缶の山に叩きつけられる

 

『ぐぅっ!?』

 

呻くギラッガス・Uにすかさずストンピングを加えようとするが、素早く避けられ、ひしゃげたドラム缶とその破片だけが盛大に飛び散る

 

立ち上がったギラッガス・Uだが、すぐによろめき膝を突く

 

『ハッ、もう足に来てるじゃねぇか』

 

ガストルが手を広げ、勝ち誇ったように笑う

 

そこにぱちぱちと手を叩きながらスーツ姿の男ー双海 左が姿を露わにする

 

「さすが自慢の兄上。私の予想以上に手早くギラッガスの人型側を追い詰めてくれました」

『くすぐったいこと言うんじゃねぇよ、弟よ。これくらいお前の作戦に乗りゃ楽勝よ』

 

双海はニヤリ、と微笑みメガネを直すとその姿を歪ませて真の姿を現す

 

ガストルと瓜二つながらこちらは体の左側のみが青い体色となっている宇宙人ーチェーン星人ポルークが姿を現す

 

『チェーン星人総出でお出まし、か…‼︎』

『ええ、チェックとなりましたから、最早こんな原住民の星に紛れ込む必要もなくなったので』

 

ポルークは左の爪を鳴らしながらほくそ笑む

 

『私たちの地球侵略において障害となりうるのは、あのウルトラマンとあなたたち……1人ずつ捻り潰すのは造作もないことでしたがー』

 

 

『ー私、早く済ませられる仕事は早く終わらせたい主義、ですのでねぇ……あなた方とウルトラマン、二兎とも同時に仕留めることにしました』

 

 

パチン、とポルークが指を鳴らす

 

廃工場の壊れた屋根から見える遠景の街中に巨大化したギラッガス・Uの姿が現れる

 

『……⁉︎』

『この星、原住民程度の文明しかない割には防衛体制はそこそこ優秀なのですよ。怪獣やら我々侵略者への対応を、拙いながらも定めて見せてますし、ね』

 

ポルークは目前で膝を突くギラッガス・Uを指差す

 

『あなた方とウルトラマン、協力体制ではないのはわかりましたが、敵対関係にないこともわかっています。まだまだ甘いこの星のウルトラマンなら、すぐに攻撃しない…むしろ、庇ってくれるまである』

 

『貴様…まさか⁉︎』

 

クックック、とポルークが勝ち誇ったように笑う

 

 

『侵略者と定めたモノを庇う得体の知れない存在。地球人から見てそれは…果たして味方と思われるでしょうか…ねぇ?』

 

 

『ウルトラマンからは手が出せない敵。我々がトドメを刺せずとも、勝手にウルトラマンを倒してくれるちょうど良い手駒。なんと素晴らしいか‼︎』

 

メガネを直すような動作を見せながらポルークは目を光らせる

 

『あなた方は兄上が潰せば問題なし。そもそも、翼型の方は私が既に撃ち落としましたからねぇ…』

 

ポルークの言葉にギラッガス・Uがぴくり、と手を動かす

 

 

『あなたもそろそろ死んでもらいましょうか』

『ああ、もう耐えられないだろ?流石になぁ』

 

 

ポルークが左手を構えて光弾を生成し、ガストルが右拳を鳴らす

ギラッガス・Uは未だに立ち上がれず、双子の侵略者を睨むことしかできなかった

 

☆☆☆

 

ビルの隙間

捨てられたゴミ袋の山が動きだし、フードを被った小柄な少女が姿を現す

 

「あ……ぐっ……」

 

頭を押さえながら立ち上がろうとするが、痛みに顔をしかめる

その額からは青い血が滴っていた

 

そこに息を切らせながらもう1人少女が姿を現した

 

虚ろな視線で赤い目が現れた少女を見上げる

 

「……何しに来たの?ウルトラマン、ちゃん…」

 

冗談めかしたふうにキリカが問う

はぁ、はぁと息を整えていた星奈を見ながら諦めたように薄く笑う

 

「…って、愚問か。侵略者の私たちを殺しにきたんだろ?」

 

キリカの言葉に星奈が口を開く

 

「……さっき暴れたのは…本当にあなたたちなの?」

 

キリカは目を伏せる

 

「…あんたが見たまんま、だよ」

「本当に、あなたたちは侵略するために暴れたの⁉︎」

「私らは宇宙人なんだぞ、あんたらから見たら」

 

キリカの語気が強くなる

 

 

「異物で、得体の知れない侵略者……それが、それが全てだよ」

 

 

その言葉に星奈が首を振る

 

「……確かに、宇宙人たちって怖かった…私たちにとっては、理解がしにくい存在だし…」

 

星奈の瞳がキリカの赤い目を見据える

 

「でも、でもそんな宇宙人も、まだ知らないだけなのかもって、あなたたちを見ていて思った…から…」

 

「はっ、お綺麗な考え方……何も知らない甘ちゃんらしいわ」

 

キリカの周りのゴミ袋が吹き飛ばされ、星奈の首筋に鋭い尾の先が突きつけられる

 

「……私は、私らは、ギラッガス…追放者。今までいっぱい殺してきたんだから、1人増えたところで…‼︎」

 

星奈は突きつけられた刃にカタカタ歯を震わせるが、ぐっと唇を噛み、叫ぶ

 

 

「私、は…ギラッガスなんて知らない…!!でも、でも…」

 

「あの時、『よかった』って、『殺さなくてよかった』って言ってくれた、あなたたちは知ってる…ッ!!あなたたちが追放された理由だって、さっき知った…!!」

 

 

キリカがその言葉に目を見開く

 

「………あの狸じじい…余計なことを…ッ‼︎」

 

★★★

 

『あやつらが追放された理由は、群れの意志に背いたことじゃ』

「群れの意志…?」

 

うむ、とアルゴが頷く

 

『ギリバネスは血の気の多い戦闘侵略種族。積極的に他所の星を滅ぼし、侵略しようと攻め入る連中じゃ。あやつ…ユウにも、総意として滅ぼすべき星があてがわれた』

 

手にした振り子が振れるのを見ながらアルゴは続ける

 

 

『あやつは、その総意を突っぱねて「戦いたくない」と意志を表明して追放者となったのじゃよ』

 

 

星奈が目を見開き、ユウが告げた言葉を思い出す

 

『……よかった』

 

「じゃあ、あの言葉って…」

『ユウは戦うことが嫌いだと言っておった。奪うことは、もう嫌なのだと。キリカも、血の気は多いがユウに賛同しておる』

 

アルゴが頷くように首を動かす

 

 

『わしは、天地がひっくり返ってもあやつらがこの星を害するはずが無いと信じておる。以前この星はどうだ?と聞いた時…あやつが見せた笑みと「平和ないい星だ」という言葉に、嘘は無いと、な』

 

 

★★★

 

「私は、あなたたちがあんな街を壊すようなことをする人とは思いたくない…いつでも襲えたはずの私や、優里のことも襲わなかったあなたも…」

 

星奈の言葉にキリカが俯く

 

その瞬間、大地が大きく揺れ星奈が思わずよろめく

 

見上げるとビルの隙間から巨大化したギラッガス・Uの姿が見えた

 

ー……!!

 

ギラッガス・Uはカットフックから光弾ーライブラッド光線を放ちまくり、辺りを破壊し始める

 

「また…ッ⁉︎」

 

星奈が取り出したキグナスクロスを見てキリカははっ、と失笑する

 

「……結局、あんたもヤツらと同じじゃん…行きなよ。あんたの仕事だろ…?侵略宇宙人を倒すの」

 

諦めたように吐き捨てるキリカ

そんな彼女が突きつけてきていた尻尾の先端を星奈は握る

 

「痛ッ!?」

 

鋭利な先端に肌が裂かれ、すぐに手を引っ込める

 

「あんた、何やって!?」

 

驚愕するキリカをまっすぐ見据え、星奈はぎこちなく笑って見せる

 

 

「……私は、あなたたちを信じたい、信じたいの」

 

 

走り出す星奈を、キリカはただ見送ることしかできなかった

 

 

「力を貸して…!キグナスッ!!!」

 

少女の祈りが白銀の光となり、駆けていく少女は巨人の姿となる

 

ーリュオッ!!!

 

暴れるギラッガス・Uに背後から飛びつき、組み付くキグナス

ギラッガス・Uは暴れ、その拘束を剥がしてキグナスにカットフックの斬撃を叩きつける

 

ーリュオァァッ!?

 

よろめくキグナス

ギラッガス・Uがなおもカットフックを振りかぶるその背後に、航空自衛隊の戦闘機が3機迫ってきているのが見えた

 

『敵性巨大生物発見。これより攻撃に移る』

 

戦闘機たちからミサイルがギラッガス・Uに向けて放たれる

 

ーだめッ‼︎

ーリュオッ!!!

 

キグナスは素早くその間に割り込むと、白銀の光のバリアを広げミサイルを防ぐ

 

『ぜ、全弾撃墜⁉︎』

『銀色の巨人が…敵性体を庇った⁉︎』

 

困惑する戦闘機たちが旋回する中、がら空きになったキグナスの背にカットフックの一撃が突き刺さる

 

ーぅあッ!?

 

よろめくキグナスを今度はギラッガス・Uが羽交締めにするが、キグナスはそのギラッガス・Uを押さえようとするだけで反撃に移ろうとしない

 

それを、ビルの屋上によろよろと登ってきたキリカが柵を掴みながら見上げていた

 

「なんで…攻撃しないのよ…?」

 

キリカの脳裏に、今までの過去が過ぎる

 

 

『吸血種族とか怖いわ』

『平和が好きとか冗談だろ?』

『オレたちを食糧としてしか見てないのに』

 

バネス族の自分を忌み嫌う他種族の声

 

『追放者じゃないか』

『あのギリバネスのはみだしものとか』

『侵略者の同胞だったヤツだろ?殺せ‼︎追い出せ‼︎』

 

ギラッガスであることで自分たちを白い目で見る宇宙人たち

 

『……大丈夫。きっと、いい星がいつか見つかる』

 

悪態をつく裏で泣いていたキリカを、1人慰めてくれたユウ

 

 

『私は、あなたたちを信じたい』

 

 

震える声と手でも、しっかりと自分たちを

 

ギラッガスじゃなくて1人の存在として見てくれた女の子

 

 

キリカは柵をグッと強く握る

 

ギラッガス・Uの拘束を振り払い、立て直すキグナスを見上げ、キリカが叫ぶ

 

 

「ーバカウルトラマン!!!私の自慢の、大のお人好しの兄貴が…あんたやこの星に爪を向けるなんて絶対にあり得ないでしょう!!!!」

 

 

キリカの声にキグナスが振り向く

 

「だから、だからさ……」

 

 

「ーそんなニセモノ、思いっきりぶっ飛ばしちゃってよね、セイナ‼︎」

 

 

ニッ、と強がって悪戯っぽく笑うキリカ

 

 

ー…‼︎わかった…‼︎

 

 

キグナスもそれを聞いて確かに頷いた

 

キリカは尻尾先に滴る星奈の血を舐めとり、唇をぺろりと舐める

 

 

「ーやっぱ予想通り、いい味じゃん」

 

 

☆☆☆

 

『終わりです。そろそろあちらも…⁉︎』

 

勝ち誇るポルークが異常に気づく

 

ーリュオァァッ!!

 

先程までギラッガス・Uに攻撃を渋っていたウルトラマンキグナスがギラッガス・Uへと手刀を打ち込んでいたのだ

 

『バカな…ッ⁉︎何故、何故攻撃できているッ⁉︎』

『どういうことだポルーク⁉︎てめぇの作戦だろうーがッ⁉︎』

 

困惑する2人に黒い翼が襲いかかり、膝を突かせる

 

『ざーんねん♪私が種明かししたから、もうあいつは騙せないわよ』

 

ギラッガス・Uの隣にギラッガス・Kが降り立つ

 

『翼型…⁉︎バカな、お前は、お前は私が撃ち落としたはずだ‼︎』

『痛かったなぁ、アレ。まぁ、どっかのお人好しが極上な血をくれたおかげで、あんたらを倒せるくらいには回復したけど』

 

くすくすとギラッガス・Kが笑う

 

『おいポルーク…‼︎どうするつもりだ⁉︎2匹揃ったらー』

『ーやかましいんだよグズが!!!』

 

ポルークが突如激昂し、ガストルを蹴り飛ばす

 

『テメェ…⁉︎兄貴に向かってなんのつもりー』

『黙れゴミ兄上が…オレの作戦無しじゃロクに侵略もできねぇ能無しがッ!!!そもそもお前が遊ばずに人型をさっさと始末してれば終わった話だろうがこのグズが!ノロマが!!』

 

先程までの態度が嘘のようにポルークは荒々しい言葉遣いでガストルを罵る

 

『涙ぐましい兄弟愛、だな』

 

やれやれ、とギラッガス・Uが肩をすくませる

 

『黙れ死に損ないが‼︎いつまで倒れてるクソ兄上!?』

『クソが…‼︎わかってらぁよ!!!』

 

無理矢理引き起こしたガストルと共にポルークが襲いくる

 

『兄弟愛には兄妹愛ってね』

『ああ。いくぞキリカ』

『あいあい、兄貴』

 

ギラッガス・Uにギラッガス・Kが合体。ギラッガス・UKとなって立ち上がる

 

『ー1分で済ませてやる』

 

 

ーリュオァッ!

 

キグナスのキックを食らったギラッガス・Uがよろめく

その隙を逃さず、キグナスはカラータイマーに両腕を添え、生成した光のボールをギラッガス・Uにぶち当てる

 

ーギョッ、ギョルルゥッ!?!?

 

不気味な鳴き声と共にギラッガス・Uの姿がばちばちとスパークしながら変質し、その「正体」が顕になる

 

黒い外皮を持つ細長い体

口から覗く体内や体に走る模様だけ虹色に輝くその姿は、地球のカメレオンによく似ていた

 

ーやっぱりニセモノ、だったんだ…

 

ーギョルルルル…クァックァックァッ

 

不気味な鳴き声をあげる怪獣ー幻惑怪獣カルマエレオに自衛隊機が新たにミサイルを浴びせるが、カルマエレオは首をぐにゃりと不自然に後方へ向けて舌を振り回してミサイル群を撃墜する

 

ーギョルルルル…‼︎

 

旋回離脱しようとする一機を逃さず、カルマエレオの舌撃が打ち据える

 

『ぐあっ⁉︎機関損傷!!脱出…不能…ッ‼︎』

 

黒煙を上げながら墜落していく戦闘機を見たキグナスはがら空きのカルマエレオの胴体を踏み台にジャンプし、墜落しつつある戦闘機を掴んで優しく着地する

 

コクピットの窓から見えるキグナスの顔に驚くパイロットと共に戦闘機をビルの屋上に置く

 

ーギョルルルル…クァックァックァッ‼︎

 

首をぐりんと回しながら笑うような声をあげるカルマエレオに向き直るキグナス

 

ーリュオァッ!!!

 

構えを取り直し、カルマエレオに組みついていった

 

 

飛び回るギラッガス・UKにポルークは光弾を乱射するが当たらず、廃工場がぼろぼろと崩れていく

 

『クソッ‼︎クソが‼︎鬱陶しいハエがッ!!!』

 

苛立たし気に叫ぶポルーク

光弾の雨あられの中に取り残されたガストルも苛立ちの声をあげる

 

『おいポルーク!お前の攻撃のせいでオレまで動けないだろうが⁉︎』

『殴ることしか能のないクソ兄上は黙ってろよォ!!!』

 

ポルークが放つ罵声にガストルは苛立たし気に拳を握る

 

『ーだったら動かしてあげるよ?』

 

いつの間にか背後に現れたギラッガス・UKに反応が遅れ、カットフックでの一撃にガストルが吹き飛ばされる

 

『がぁっ!?』

 

吹き飛ばされた先のポルークに激突しガストルごと倒れる

 

『離れろッ!!クソ兄上さっさと起きろ!!!』

『うるせぇ!!こちとら体がもつれてー』

 

 

ーズズンッ

 

 

突如大きな音と振動が廃工場を揺らす

 

ハッとポルークが天井を見上げるがもう遅い

絡まった双体宇宙人の真上。残された大量の鉄骨を吊り下げていたクレーンが天井ごと落下してきていた

 

(まさか…⁉︎オレに光弾を撃たせたのは…これを狙っていたのか!?)

 

ギラッガス・UKが倒壊位置から離れた場所に着地し、首元を親指でなぞる

 

 

『ーチェック・メイトだ』

 

 

ガラガラガランと派手な音と共に落下してきた鉄骨に断末魔さえかき消され、チェーン星人が圧殺される

 

鉄骨からはみ出したポルーク、ガストルの腕がぱたり、と動かなくなったのを見てギラッガス・UKは首を鳴らす

 

『さて、ともう一仕事しようかな』

 

ギラッガス・Uから分離したギラッガス・Kが空へとーキグナスがまだ戦っている方へと飛んでいく

 

『ああ、任せた。キリカ』

 

それをギラッガス・Uは静かに見送った

 

 

キグナスの組み付きから離脱したカルマエレオ

逃さず追撃しようとしたキグナスの目の前でその体が溶けたように消え失せる

 

ーリュオッ…⁉︎

 

姿を消した怪獣にキグナスは辺りを見回しながら警戒する

 

あたりにある何の変哲もないビルのひとつ

そこから突然伸びてきた舌がキグナスの背後に一撃を加える

 

ーリュオァッ!?

 

ークァックァックァッ…‼︎

 

嘲笑うかのようなカルマエレオの声を聞き、キグナスが振り向いて光弾を構えるが、踏み止まる

 

カルマエレオだったはずのそのビルは最早何の変哲もないビルだったのだから

 

(本物のビルだったら……これじゃあ…⁉︎)

 

ーギョルルルル……

 

カルマエレオの不気味な鳴き声が再び響き、止まっていた車から放たれた舌の一撃でキグナスがのけ反る

 

間髪入れずに電灯から、ビルから、アドバルーンから、様々な方角から舌撃が降りそそぎ、キグナスを追い詰めていく

 

ーう、ぁあッ!?

 

思わず膝を突くキグナスのカラータイマーが点滅する

 

『何やられてんのよ、セイナ‼︎』

 

キグナスの体が突然浮かび上がり、上空へと連れ去られた

 

『え、えぇっ!?浮いてる!?』

『私よ、私』

 

声の方向を振り返るとキグナスの背には大きな黒い翼がーギラッガス・Kが張り付いていた

 

『き、キリカさん⁉︎』

『あの怪獣…カルマエレオはあらゆるものに擬態する厄介な怪獣なのよね。まぁ、私の目は誤魔化せないけどさ』

 

ギラッガス・Kの赤い目から放たれた波動がキグナスの白銀の目に同調し、その目が一瞬ピンクに染まる

 

キグナスを通してみる星奈の視界の中で、ビルに化けたままのカルマエレオの姿が浮き彫りになっていた

 

『私の視界貸してあげたんだからもう丸わかりでしょ?さっさとしとめちゃいな、ウルトラマン‼︎』

 

ギラッガス・Kの言葉にキグナスはしっかりと頷き、十字を切る

 

ーギョルル…?ギョルルルル…???

 

異変に気づいたカルマエレオがビルに擬態したまま視界を回すがもう遅い。ようやく見えた上空のキグナスは、既に必殺光線を構えていた

 

 

ーリュオァァッ!!!

 

 

放たれたノーザンクロスシュートがカルマエレオを射抜く

カルマエレオはビルやギラッガス・Uなど今までの擬態をぐるぐると繰り返しながらエネルギーをスパークさせ、倒れ伏して爆発する

 

それを見下ろしていたキグナスはギラッガス・Kの方を振り返ってしっかりと頷いた

 

☆☆☆

 

ユウとキリカの姿に戻った2人が佇む半壊した廃工場

そこに星奈も合流してくる

 

「……あの…」

 

おずおずと声をかける星奈にキリカはニマニマしているが、ユウは厳しい目を向ける

 

「……俺たちには関わるな」

 

そのまま去って行こうとするユウを星奈は呼び止める

 

「あ、あのッ!!」

 

ユウは振り返ることなく立ち止まる

 

「わ、私、は…地球人だから…あなたたちのことを理解なんてできないのかもしれない…ウルトラマンだって…宇宙人のことも、よく知らないし……」

 

ギュッと自分の服の裾を握りながら星奈は顔を上げてユウを見据える

 

「…でも、肩書きや容姿で…爪弾きにされた辛さや寂しさは…」

 

脳裏に、恵美が逃げ去っていった光景がよぎり、思わず目を伏せる

 

「………今の私にも痛いほどわかる…から…」

 

目を落とした右手のひらを、星奈が差し出す

 

「……私には、これくらいしかできないけど…友達に、なってくれませんか…ッ⁉︎」

 

その手を見つめながらキリカはユウにどうする?とでも言うように視線を送る

 

ユウはちら、と振り返り頬を掻きながら視線を泳がせる

 

「………友達…というのが何か…俺にはわからん…」

 

思ってもなかった反応に星奈も目を白黒させる

 

「え、ええと…私も、いざ問われたらわからないけど…」

 

恥ずかしそうに髪を触りながらも星奈はまっすぐに、恵美と優里との『日常』を思い返しながら笑って答える

 

 

「……なんてことない日を、一緒に過ごすだけの仲…かな?」

 

 

ユウは星奈のその言葉に目を見開き、振り向いて改めて手を差し出す

 

「……いいな。そんな日常」

 

薄く笑うユウの手が、星奈の手と握手する

宇宙人なんて忘れてしまうような、暖かくて柔らかい手だった

 

「ユウだ。こんな俺でよければ…よろしく」

 

気恥ずかしそうに告げるユウの手の上からキリカも手を握ってくる

 

「私はキリカ‼︎これからよろしく、セイナ‼︎」

 

にはは、と笑うキリカに釣られて星奈も微笑む

 

「よろしく、ユウ、キリカ」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

【友達】

【日々共に過ごすものを指す言葉のひとつ】

【人によって意味合いは大きく変わるが、多くは親しみ深い相手との関係を指す】




「あ、ウルトラマンのおねーちゃんだ‼︎」

『それがあの子の宿命じゃよ』

「あんたはどうしたいのよ、セイナ」

「宇宙人は信用できん‼︎あの巨人も含めて‼︎」

次回ウルトラマンキグナス
「やりたいこと」
瑠璃色宇宙人ラセスタ星人ナユタ
焼熱怪地底獣フォルナクス 登場

「私の……やりたいこと…」
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