ウルトラマンキグナス   作:リョウギ

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第6話「やりたいこと」

ある一軒家の玄関先で出てきた女性と星奈(せいな)は話し込んでいた

 

「体調が悪いわけじゃないんだけど、家からあまり出たがらなくてね。友達とも今は会いたくないって」

「そう…ですか…」

 

星奈が残念そうに目を伏せるが、すぐに小さく首を振り女性に小さな紙袋を差し出す

 

「……ありがとうございます、おばさん。これ、よかったら恵美と食べてください」

「ごめんなさいね、星奈ちゃん…学校に行けるようになったら、きっとあの子もまた元気になると思うから」

 

女性ー恵美(えみ)の母に小さく会釈をして玄関先から離れる

 

しばらく顔を伏せたままとぼとぼ歩いていた星奈に頭上から声がかけられる

 

「せっかくお土産持ってきたのに、出てきてもくれないなんて薄情なお友達だねぇ〜」

 

塀の上に腰掛けたキリカがやれやれと肩を竦める

 

「……ううん、しょうがないよ。あんなのを見ちゃったら…」

 

あの時の恵美の顔を思い出して星奈が唇を噛む

頬杖を突きながらキリカが呟く

 

「……セイナはあの子のこと助けたんじゃん。納得いかないなぁ」

 

シュタッ、と星奈の側に降りたキリカは星奈を物陰に誘ってその手を取る

 

「ちょっとだけ、いい?」

「……い、いいよ」

 

キリカが掴んだ星奈の右手首をカプり、と噛む

牙が皮膚を貫く痛みに星奈が片目を閉じて顔を顰める

 

ごく、ごく、とキリカの喉が鳴り、ぷはっと口を離して満足したような様子でキリカは口元を拭う

 

「ご馳走様ぁ。やっぱセイナの血は美味しいわぁ」

「……うう、いきなりこんなところで吸わなくても…」

 

 

この前の事件以来、ギラッガスの義兄妹ユウとキリカと友達となった星奈はこうして度々会って交流を重ねるうち、キリカからお願いされていたのだ

 

「セイナって物凄く血が美味しいんだよね。ちょっとでいいから、たまに飲ませて?お願い‼︎」

 

吸血生物の種族であるキリカは前々から星奈の血が美味しそうとは思っていたらしい。そんな「におい」がしていた、とか

 

最初こそ拒否していたが、残念そうなキリカの顔を見ていたら断るに断れず、こうしてたまに少し血をあげていたのだ

 

 

「ごめん。我慢できなくなってつい…」

 

キリカが唇を舐めながら頭をかく

 

「あとさ…こう、気が…紛れるかなぁ…って…」

 

ちらちらと星奈の目を見ながらキリカがもじもじと告げる

その様子を見ていた星奈があはは、と力無く笑う

 

「ありがとう、キリカ」

 

☆☆☆

 

キリカと共に自宅への帰路についていた星奈はふと公園の方で小学生が集まって騒ぎになっていることに気づく

 

「おいウチュージンなんとか言ってみろよ‼︎」

「こんなキーホルダーぶら下げてダッサ〜」

 

ぷらぷらと大きなUFOのキーホルダーを倒れた少年の手が届かないように持ち上げながら少年が笑う

 

「か、返してよ…‼︎それはボクの宝物なんだ…‼︎」

 

「あれ…いじめだ…‼︎」

 

星奈がたまらず止めに入ろうとかけ出すと、その前にフード姿の長身が割り込む

 

「………お前らまたやっているのか」

 

割り込んできたのはユウ

フードの下から鋭い目つきを更に鋭くしていじめっ子たちを睨みつける

 

星奈も思わずたじろぐ迫力にすくみ上がったいじめっ子たちは少年にキーホルダーを乱暴に投げつけて逃げていった

 

呆けていた星奈だったが、落ちていたUFOキーホルダーを拾って埃を落とし、ユウに助け起こされた少年に手渡す

 

「……大丈夫?怪我とか、してない…?」

 

少年は自分の体と放られていたランドセルの土埃を落とし、星奈が差し出していたキーホルダーを大事に受け取る

 

「ありがとう、お姉さん」

 

人懐っこい笑みで少年が笑う。ふと、少年は星奈の顔を見て首を傾げる

 

「……?どうしたの?」

「お姉さんってもしかして……あの銀色のおっきい人?」

「銀色のおっきい人……」

 

しばらく少年の指す言葉に気が付かなかった星奈だが、それがウルトラマンキグナスを指す言葉だということに気づき、息を呑む

 

「な、へ、あっ…⁉︎なん、いや、ど、どうして私、が…」

 

唐突に図星を突かれすぎてしどろもどろになりながら妙なジェスチャーを繰り返す星奈の肩をユウが叩く

 

「落ち着け星奈」

「あ、で、でもっ」

「こいつは大丈夫だ。こういうことには口が硬いし何よりも…」

 

わたわたする星奈を見て少年が慌てて手を振る

 

「あ、ごめんなさい!その、僕……」

 

 

「………う、宇宙人だから、わかっちゃうみたいで…」

 

 

「……え、えぇっ!?」

 

少年の言葉に星奈がもう一度大きく驚いた

 

☆☆☆

 

少年の家を知っているらしいユウとキリカと共に家まで送っていくことになった星奈は道中、この少年ー星海(ほしうみ) 那由多(なゆた)の事情をユウから聞いた

 

「ラセスタ、星人…?」

「ああ。惑星ラセスタ出身の、平和が好きな穏やかな種族だ」

「まぁ、ちょっと訳アリだけどねぇ」

 

星奈、ユウの前で那由多の手を引くキリカが振り向きながら告げ、ユウが頷く

 

「惑星ラセスタは、地球時間で数十年前に氷河期に突入して住める場所ではなくなった。ラセスタの民たちは苦渋の決断としてある約束を交わして、惑星ラセスタからあらゆる星に旅立っていった」

 

「僕は、そのラセスタ星人のお父さんとお母さんから生まれた子孫‼︎ってアルゴおじさんとせんせーから聞いたんだ」

「先生と、アルゴさん⁉︎アルゴさんと知り合いなの⁉︎」

 

はぁとユウが息を吐きながら答える

 

「アルゴはこの街でひっそり過ごしている宇宙人たちのご意見版みたいなものだからな。この街に長くいるヤツなら、知らないヤツの方が少ない」

「掴みどころのないタヌキジジイだけど、なんだかんだ役には立つのよねぇ。地球側の事情も詳しいみたいだしぃ」

「なんかすごい人だったんだね…」

 

ふと、先程の言葉を思い出し、那由多に尋ねる

 

「アルゴさん…はわかったけど、先生って?」

「せんせーは施設のせんせーだよ。すごく美人で優しいの‼︎」

「施設…?あれ、でも那由多くんの家って…」

「そこら辺はあの人から聞いたらいい。もう着いた」

 

4人が到着したのは小さな2階建ての定食屋だった

星海食堂と書かれた看板のかかるその正面で掃除をしていたエプロンに三角巾の若い女性がこちらに気づく

 

「那由多、おかえり…ってまた泥だらけになって⁉︎まさかまたあの悪ガキ共にやられたの⁉︎」

「ただいま、お母さん。大丈夫‼︎ユウ兄ちゃんたちが助けてくれたから」

「そういう話じゃないだろ‼︎」

 

ったく…と女性が那由多の服やランドセルに付いた泥汚れを払って落としていく

 

「えっと…この人も、ラセスタ星の…?」

「ああん?」

 

思わず口をついて出た言葉を聞いた女性の鋭い目に睨まれ、ハッと星奈が口を押さえる

 

しばらく星奈をじろじろ見ていた女性はすぐに表情を綻ばせニカッと笑う

 

「なんだい、見ない顔と思ってたけどあんたもそこの2人の知り合いって感じかい。なら知ってても大丈夫だな」

「え、え…?」

 

女性の言葉の意味がよくわからず、星奈が目を白黒させる

 

「あたしは星海(ほしうみ) (あかり)。一応この子の母親だけど、ラセスタ星人ではないよ。あたしは生まれついてのただの地球人」

 

女性ー灯がエプロンの上から胸を叩いて自己紹介する

 

「まぁ立ち話もなんだし、ちょっと上がっていきな。お茶でも淹れるからさ」

 

 

定食屋の1席の片側に星奈、ユウ、キリカが座り、その向かいに那由多が座り、人数分のお茶を並べた灯が那由多の隣の席に腰を下ろす

 

「名前なんていうの?あなた」

「あ、えっと…市ノ瀬(いちのせ) 星奈(せいな)です」

「星奈ちゃんか〜よろしくね。星奈ちゃんはどこの星出身なの?」

「え、えっと…私は地球人で…」

「へぇ?地球人なのに宇宙人と関わりがあるんだ。なんだか不思議な子だねぇ」

 

からからと笑いながら灯はあっという間に星奈のことを受け入れた

 

「まぁ、あたしも人のことは言えないけどさ。宇宙人の子供、養子にもらってるわけだし」

 

ぐりぐりと隣でお茶を啜る那由多の頭を強めに撫でながら灯が言う

 

「養子…」

「そういうことだ」

「ナユの実の両親は、事故で亡くなってんのよ。ナユがまだ小さい時にね。そこからは施設育ち。宇宙種族の孤児を宇宙種族の先生が面倒見ているとこで育ったのよ」

 

キリカの補足説明を聞いて那由多が頷く

 

「せんせーのところも楽しかったよ。ラセスタ星のこと色々聞いたり、他の宇宙人の子と遊んだり!今の学校のみんなは宇宙人のこと話すと、ひどいことしてくるけど…」

 

那由多が目を伏せながら話す言葉を聞いて星奈は先程の場面を思い出す

 

(……確かに、宇宙人だとかそんな話聞いたら…あんなふうにいじめてくる人とかもいるよね…)

 

あれだけ酷いことをされても那由多は泣いたり、抵抗したりすることはなかった。那由多は実は強い子なのかもしれない

 

無意識のうちに星奈はギュッと机の上に置いていた手を握りしめていた

 

 

(でも……もしかしたら那由多くんは……)

 

 

あの日、恵美に「大丈夫」と笑ってみせた自分自身を思い出し、唇を噛む

 

と、那由多の頭を灯が軽くはたく

 

「だから宇宙人のことは無闇に話すなって言ったろ〜?あの悪ガキどもはそういうの、格好の餌食にするんだから」

「でも、ラセスタ星とか宇宙ってすごいところだから、僕もワクワクした話だし…」

「あんたはワクワクしてもあいつらはなんとも思わないの。あんたとあいつらは違うんだから」

 

頬を膨らませる那由多とそんな那由多に喝を入れる灯

その光景が微笑ましく見えて思わず星奈の頬も緩んでいた

 

 

『惑星ラセスタの民は苦渋の決断として、ある約束をー』

 

 

ふと、ユウの言葉を思い出し星奈はユウの方を見る

 

「そういえば…ユウ、惑星ラセスタの民の約束って?」

「………それはー」

 

言いづらそうながら言葉を紡ぎかけたユウの言葉を食堂の戸が開く音が遮る

 

「あ、いらっしゃ……って、狭山(さやま)先生…?」

 

お客さんを迎えるつもりで立ち上がった灯の表情が疑問の様相に変わる

 

現れたのは灰色のスーツに身を包んだ灰色の混ざった長い黒髪をした女性だった

 

「お久しぶりです、灯さん。那由多くんも、元気そうでよかったわ」

「せんせー‼︎」

 

儚げながら整った顔を綻ばせ、狭山と呼ばれた女性が嬉しそうに歩み寄ってきた那由多の頭を撫でる

顔を上げた狭山は星奈の方をしばし見て微笑むと、星奈の目に地球人のものではない、薄紫の皮膚を持つのっぺらぼうのような異星人の顔が重なって見えた

 

(この人が…⁉︎)

 

「はじめまして。私は狭山(さやま) (らん)。キュリア星から訪れて、この近くの姫蘭(ひめらん)の家という施設で、我々と同じく地球にきた宇宙種族の孤児の世話をしております」

「あ、えっと市ノ瀬 星奈です。わ、私はそのー」

「大丈夫、存じております。あなたの身の内も、あなたに悪意が無いことも」

 

蘭がぺこり、と星奈に頭を下げる

それに習って星奈も会釈して自己紹介する

 

「……ラセスタの民の約束については、私からお話ししましょう」

 

どこか悲しそうな顔をした蘭が灯とー那由多の顔を見て口を開く

 

 

「……灯さんと那由多さんにも、話さねばならない時でしたから」

 

 

☆☆☆

 

「惑星ラセスタが……消滅…?」

 

那由多と並んで蘭と向き合った灯が思わず呟く

沈痛な面持ちで蘭が頷く

 

「はい。つい先程、私の友人である宇宙種族からうかがいました。惑星ラセスタが同じ恒星系の恒星ビビドラに衝突して消失したことを」

 

蘭の言葉を黙って聞いていた灯がごくりと唾を飲む

 

「………約束の時が来たってこと、ですね」

 

 

「……はい。以前お伝えしていた通りです。母星が無くなった今、ラセスタ周期5歳を迎えている那由多くんは、約束の場所であるてんびん座星系に向かって、残った同胞と共に新たな故郷を探す旅に出なければなりません」

 

 

蘭が告げた言葉に、隣のテーブルに移っていた星奈が目を見開く

 

「それっ…て…⁉︎」

「……ああ、そういうことだ。那由多は…」

「……ナユは、地球から旅立たないといけないのよ」

 

椅子に深く腰掛けたユウが目を伏せ、隣に座るキリカが頬杖を突きながら続ける

 

話を呆然と聞いていた那由多の目が点滅するようにキラリ、と光る

 

「那由多……」

 

灯がその姿を見て驚く前で蘭がまっすぐ灯を見据える

 

「那由多さんのラセスタ星人への変異が始まっています。惑星ラセスタの滅びと共に、各地のラセスタの民たちの覚醒が始まりますから…」

「惑星ラセスタ…無くなっちゃったの…?」

「……えぇ、そうなの。だから、那由多くんが新しい惑星ラセスタを探しに宇宙に行かなきゃならないのよ」

 

蘭の言葉をまだうまく理解できないのか、那由多は首を傾げる

そんな中、蘭は灯に付け加える

 

「ただ、那由多くんはラセスタ周期5歳になってから経った時間が長いので、完全に変異するかどうかは那由多くん自身が選ぶことができます。今日、日付の変わる0時までに変異しなければ…那由多くんは地球人のままに過ごしていける」

 

「そ、それなら…‼︎」

 

星奈が思わず声を上げる

 

「……ですが、那由多くんを引き取ってもらう時に言った通り、惑星ラセスタへと帰ることは、彼の亡くなった両親が願っていたことです。例え、新たに見つけていく故郷だとしても、同じラセスタの民と出会うことは悲願であるということも理解していただきたいのです」

 

蘭の言葉を聞いた星奈は俯いたままの灯を心配そうに見ていた

肩を震わせながら灯が口を開く

 

 

「……はははっ、よかったじゃないか那由多‼︎」

 

 

ぱしん、と灯が那由多の背中を叩く

 

「……え?」

 

「前から惑星ラセスタとか、宇宙とか見たがってたし、やっと夢見た先に行けるんだ。最高じゃないか‼︎」

「宇宙に…惑星ラセスタを探しに行っていいの⁉︎」

「ああいいともさ。待ってな〜旅の支度は夜までにきっちり終わらせてやるからさ」

「やったぁ‼︎」

 

無邪気に喜ぶ那由多とぐりぐりとその頭を撫で回す笑顔の灯

それを見た蘭が安堵の息を吐く中、星奈は2人をどこか釈然としない様子で見ていた

 

「あたしもやっと肩の荷が降りるよ…」

 

灯が言った言葉に星奈は思わず立ち上がる

 

「ほ、本当に…それでいいんですか…⁉︎」

「…何さ、星奈ちゃん。いいんだよ、那由多が前からやりたがってたことだからさ。夢が叶うんだから」

「そうなんだよ、お姉ちゃん‼︎ 僕、宇宙に行けるんだ‼︎」

 

優しく那由多の頭を撫でながら答える灯と、無邪気に微笑む那由多

 

「……でも…」

 

「元々あたしは、那由多の本当の親じゃない。那由多が大きくなるまでの仮の母親なんだし。これでいいのさ」

 

そう微笑む灯に、何か言おうとして

それでも言葉が出てこずに星奈は言い淀んだまま頷く

 

「…那由多くんを今日まで預かり育ててくれてありがとうございました。私も、見送りに向かいます。準備と…最後のお別れをどうか、お願いします」

 

蘭がそう告げ、灯もまた頭を下げる

その様子をただ、星奈は見ていることしかできなかった

 

☆☆☆

 

自衛隊作戦本部

 

先日の戦闘データを見返しながら、七星(ななせ)陸将が顎に手を当てる

 

ウルトラマンキグナスがカルマエレオが擬態したギラッガスを自衛隊機の攻撃から庇う様子を、そしてそのカルマエレオの攻撃を受けた自衛隊を助ける姿をその眼が見据える

 

(あの敵性体が擬態…偽装を解いた後からは攻撃を行なっている…あの青い宇宙人の姿だから、攻撃をしなかったのか…だが、我々のことを無下にしている、ということもない……)

 

モニターに映るウルトラマンキグナスの静止映像を、七星はじっと見据える

 

「……あなたは一体、何をしたいんだ?」

 

思わずそう呟いた横に南雲(なぐも)陸将補が並ぶ

 

「宇宙人の考えることなど、わかるはずがありません」

「……だが、彼のことを理解せねばこれからの対策はー」

「信用ならん地球外からの侵入者など、排除一択ではありませんか⁉︎」

 

南雲は七星の言葉に反論する

 

「相手がいくら知性体とはいえ、あの力は脅威以外の何ものでもない。加えて連中は姿が大きいだけでなく、我々の一員にすらなりすます怪しい能力まで備えている‼︎」

 

南雲の言葉に七星は眉をひそめる

 

陸自所属であり、七星の直属の部下だった双海(ふたみ)三佐が自衛隊作戦本部のロッカー室に拘束されていたのを発見された

 

曰く、青黒い異星人に拘束され、制服やIDを奪われていたという

 

自衛隊は知らずのうちに異星人に入り込まれていた。由々しき事態に七星たちは様々な見直しに奔走する羽目にもなっていたのだ

 

「やはり、宇宙人など信用ならん…‼︎」

「……言葉には気をつけたまえ、陸将補」

 

七星は興奮する南雲をたしなめる

 

「我々自衛隊の使命は、この国の防衛であって異人の殲滅ではない。そこを履き違えてしまえば…」

 

七星は拳を握りしめる

 

 

「ー我々の方が、いつか侵略者と違わぬ存在となってしまうのだ」

 

 

☆☆☆

 

友達の家に泊まることになった、という旨を母に伝えた星奈は旅立ちの時である夜まで食堂近くの公園でユウ、キリカと共に待つことになった

 

「本当にこれでいいのかな…」

 

ブランコを力無く揺らしながら星奈が何度目かもわからない呟きを漏らす

すべり台から滑り降りてきたキリカがため息混じりに答える

 

「だからってどうするつもりよ。このことはあの親子の話だし、何よりナユは本当に宇宙や惑星ラセスタに憧れてたの。私たちだって飽きるほど話相手させられたし」

 

すべり台の支柱に背中を預けていたユウも口を開く

 

「新たな故郷を探すことは、ラセスタの民の悲願であり約定。俺たちがどうこう介入するべき話じゃない」

「でも……っ」

 

星奈はブランコの鎖を握りしめながら目を瞑る

 

灯のあの笑顔

その顔と同じ顔を、自分もしていたことがあることを星奈は自覚していた

 

「……セイナはさぁ、何をしたいの?」

 

すべり台の淵に肘を乗せて頬杖を突き、星奈に問いかける

 

「……私の、したいこと…」

 

しばらく考えていた星奈だが、意を決して立ち上がる

 

 

「ー私、灯さんのところに行かないと…‼︎」

 

 

駆け出していく星奈の背中をユウとキリカが見送る

 

「ほんと、別の種族とは思えないくらい誰かさんにそっくりな鈍さねぇ、ホント」

「何のことだか、な」

 

☆☆☆

 

食堂の明かりがまだ点いていたことを見つけ、星奈が入り口の戸を開ける

 

「あ、もう店は……って星奈ちゃんか」

 

用意した大きめのリュックに色々なものを詰め込んでいた灯が顔を上げて少し驚きながらも微笑み、手にしていた何かをエプロンのポケットにしまいこむ

 

「灯さん……」

「もうすぐ那由多の出発の時間だっけ?ならそろそろ起こしてこないとね。あたしが起こさないと中々起きないからあの子」

 

リュックを閉めて机に置き、2階の自宅に上がろうとする灯を星奈は呼び止める

 

「灯さんは、これで本当にいいんですか…⁉︎」

 

灯は振り返ることなく答える

 

「……本当にって、いいに決まってるじゃない。那由多だって行きたがってるんだしー」

「那由多くんのことじゃありません、灯さんのことです‼︎」

「……あたしの…?」

 

ははっ、と力無く笑う

 

「願ったり叶ったりよ。世話の焼ける息子が自立するんだもの」

 

側の机を撫で、灯は続ける

 

「急に亡くなった親父の店継ぐ形になって、がむしゃらに1人で働いて、店も落ち着いてきたら同級生の友達とかみんな家庭持ってるの見てさ…」

 

「寂しかったんだろうねぇ…姫蘭の家で1人寂しく遊んでるあの子を見て、なんでか放っておけなかったのよね。その場で引き取るって決めてみたら、まさかの宇宙人の子供って言われてびっくり」

 

あはは、と思い出して灯が笑う

 

「そっからはもう大変よ。宇宙行きたいとか言い出すわ、わかんない星のことに夢中だわ、秘密だって言ってるのに友達に話していじめられて、泣きながら帰ってくるわ……ほんと手間しかかからない子だったのよ」

 

 

「ーだからさ、やっとひとり立ちしてくれて、あたしも肩の荷が下りるのよ。だからこれでいいの」

 

 

灯はそう答えて2階に姿を消した

 

その笑顔を見た星奈はただ、俯くことしかできなかった

 

☆☆☆

 

日付が変わる時間が迫り、明星(あけほし)自然公園に那由多たちは集まっていた

 

『揃っておるな。なんとまぁわしが最後か』

 

のそのそと現れたアルゴにげっとキリカがうめく

 

「なんであんたも来るのよ、狸じじい」

『なんでと言われてものう。わしはこの街の宇宙種族の橋渡しをしておる訳じゃからな』

 

揃った顔ぶれを眺めてアルゴはうむと頷く

 

「灯さん、那由多くん。最後に1枚記念写真を撮りましょう」

 

蘭が歩み出て提案する

 

「いいね〜みんなで映した写真なかったもんね」

「そもそも星奈と出会ったのは最近だしな」

「お姉ちゃんたちと写真‼︎ 撮りたい‼︎」

 

蘭が三脚を立て、カメラをセットして皆のところに行く

 

「はい、チーズ‼︎」

 

パシャリと音と共にフラッシュが焚かれ、写真が撮影される

 

 

キリカに撫で回されたり、対照的に優しくユウが頭を撫でたり、那由多が皆と最後の思い出を作っているのを灯は一歩離れて見ている

 

そんな灯にもう一度、星奈は歩み寄る

 

「灯さん…」

「…あはは。那由多も幸せものだね。こんなに見送ってくれる人がいるんだから」

 

灯が那由多のことを見つめながら笑う姿を見て、星奈もまた那由多たちを見つめながら口を開く

 

「灯さん、少し私の話…してもいいですか…?」

「ん?急にどうしたのよ?」

 

ギュッとスカートの端を握りながら、星奈が意を決して告げる

 

 

「私、仲のいい友達がいたんです。なんでも話せる親友が。色々あって、大変なことに巻き込まれて……でも、親友には黙っていたんです。巻き込まれて欲しくなかったから…そのためにちょっとケンカみたいになっちゃったりも、して……」

 

「……そのあと、結局私のあることがバレて、会ってくれなくなったんです……また明日会ったら、謝って仲直りしようって思ってたその明日は……結局来なくなって……」

 

 

星奈の言葉を灯は黙って聞いていた

灯に向き直り、星奈は真剣に言葉をぶつける

 

 

「大丈夫だって思って、我慢していたら伝えられない、二度と戻って来れないことはあるんです。それは、とても…とても辛くて…」

 

「私の…やりたいこと……私は、灯さんに、那由多くんに同じ辛さを味わって欲しくない…だから……」

 

 

星奈の言葉を聞いていた灯は、エプロンのポケットから何かを取り出して見つめる

 

「……大丈夫。だってあたしは、あの子の本当の母親じゃないから…」

「灯さん…‼︎」

 

「本当、大変な子だったからねあの子。宇宙のこととか、ラセスタ星のこと話しだすと止まらないし、黙ってろって言ったのに学校の友達に話していじめられたりして帰ってきたら泥だらけなのに笑ってるし、いつまで経ってもあたしが起こさないと起きないし……」

 

「……あたしも酷い母親だったもん。転んだり、ラセスタ星の話で泣き出したりしたらぴーぴー泣くなって叱ったり、欲しいものすぐに買ってあげれなくて我慢させたし、誕生日に欲しがってたもの買おうとして、違うヤツ買っちゃったし…」

 

ははっ、と灯が笑う

 

「だから、大丈夫…この方が、あたしもあの子も幸せだからー」

 

 

「ー大丈夫じゃないですッ!!!」

 

 

星奈の大声に灯が目を丸くする

 

「私は…今日会ったばかりで、灯さんの苦労も、那由多くんがどういう子かもわからない…でも、でも…‼︎灯さんは那由多くんが大好きで、那由多くんも灯さんが大好きなのは分かるんです…ッ‼︎だから…だから…ッ……‼︎」

 

しばし沈黙が流れていく

すると突然、灯は星奈を置いて那由多の方に歩いていく

 

那由多たちを遠巻きに見守っていた蘭とアルゴに灯が話しかける

 

「蘭先生…那由多が、ラセスタ星人になるかこのまま地球人のままでいるかは…今ならまだ選べるんですよね?」

「……ええ、そうですが…」

 

蘭の言葉を聞いた灯は少し俯く

そんな灯を見たアルゴが口を開く

 

『確かに、実の両親の願いは大切なことじゃ。じゃが…本当に送り出すかどうかは、貴女が決めてもいいんじゃないかの?』

 

 

『今、あの子の母親は…灯さんじゃからな』

 

 

アルゴの言葉を黙って受け取った灯

那由多の方に歩き出すその背中をアルゴも蘭も黙って見守っていた

 

 

「あ、お母さんー」

 

ユウやキリカと戯れていた那由多を、灯が抱きしめる

 

「……なぁ、那由多…宇宙飛行士になるための勉強ができる中学校が最近できたみたいなんだ。勉強することがいっぱいで大変らしいけど、養成学校への進学も保障されてるしさ…いいとこみたいなんだ」

「お母さん…?」

 

「ラセスタ星の話とか、宇宙飛行士目指してる子らならきっと笑わない。もしかしたら一緒に行こうって言ってくれる子もいるかもしれない…」

 

那由多を抱きしめる手の力が強くなる

 

「……お母さん、痛いよ…」

「ーなぁ、那由多。今じゃなきゃダメなのか…?本当に、本当に宇宙に行くことは、那由多のしたいことなのか…?」

 

ぽろり、と灯の頬を滴が伝う

 

 

「……いいお母さんなんかじゃない。こんなあたしの言葉なんかどうでもいいだろうけど…行かなくていいなら、今行かなくてもいいだろ…もう少し…もう少しでもいい…」

 

「……やっぱりあたしは…あんたと別れるのが辛いんだよ…あんたは違うかもだけど……あたしは、あたしには……ッ」

 

 

ギュッと力を込める

その手に握っていたものーもう少し小さい頃の那由多と灯が満面の笑みで宇宙科学博物館のロケット模型の前で記念撮影した写真がくしゃりと音を立てる

 

 

「ーやっぱり、世界一大好きな自慢の息子なんだよ…那由多ぁ…」

 

 

ぽろぽろと大粒の涙が溢れ出す

 

追いついてきた星奈にユウとキリカが並び、静かに親子を見つめる

 

「…お母さん…ありがとう…」

 

那由多はそう言うと、優しく灯の手を解いて灯から距離をとる

 

「那由多…?」

「でも、ごめんなさい。僕はやっぱり、宇宙に行きたい」

 

那由多の言葉に灯は目を見開き、俯く

 

「僕の本当のお母さんとお父さんが話してくれた故郷、今は無くなっちゃったけど、その星の仲間から、もっとラセスタ星のことを聞きたいから。それに、僕が宇宙を大好きなのは、ラセスタ星人だからじゃなくて、本当に憧れてるからだもん」

 

那由多は灯に向けて振り返る

灯が寒くないようにと着せた大きなマフラーを下げ、はっきりと大きな声で告げる

 

 

「それにー灯お母さんが心配しなくてもいい強い子だって証明したいから‼︎」

 

 

灯が顔を上げる

親子が見つめ合い、那由多が言葉を続ける

 

「いじめられても大丈夫。朝だって、きっと1人で起きてみせる。お母さんに育てられた僕はきっともっと強いから、みんなにその強さを見せたい。そしてラセスタ星のみんなに話したいんだよ」

 

 

「ー僕の『お母さん』は、最強のお母さんなんだって」

 

 

那由多の言葉に灯はしばらくぽかんとしていたが、ぷっと吹き出して朗らかに笑う

 

「なんだよそれ…そんなに言われたら、止められないじゃん…」

 

涙を拭って灯は前を向く

 

 

「ー行ってこい‼︎泣きたくなったり寂しくなったら、いつでも帰ってくるんだよ‼︎」

 

 

灯の言葉に那由多が微笑む

それを見つめていた星奈たちも自然と微笑んでいた

 

 

那由多が夜空を見上げる。その体が瑠璃色に輝き、巨人へと変貌していく。甲羅を背負ったような剽軽な姿をしたラセスタ星人の姿に変わった那由多を見て灯が祈るように手を合わせる

 

ナユタは足を震わせながら、手を空に向けてジャンプを繰り返す

が、思うように飛んでいかない

 

「ナユ…どんだけ鈍臭いのよ…」

 

中々空に飛んでいけないナユタを見守っていたキリカがやれやれとため息をつく

 

そうこうしているうちにナユタは不意にジャンプをやめ、空を見上げるだけになる

 

「那由多くん…?」

 

ーう、うぅ……

 

ナユタは突然弱々しい声と共にうずくまってしまう

その体は小さく震えていた

 

「那由多…‼︎」

 

ナユタはやはり怖かったのだ

灯から、地球から離れることが怖くてたまらない

そんなナユタを灯が心配そうに見上げる

 

その目を見たナユタは震える手足によろけながら、それでも立ち上がってまたジャンプを始めた

 

「がんばれ、那由多くん…‼︎」

 

星奈も祈るように手を合わせる

 

そんな中、風切り音と新たな振動が響いてきてその方向を見上げる

 

上空を自衛隊機が飛来し、遠くから戦車も迫ってきているのを見て星奈が目を見開く

 

「そん、な…ッ⁉︎」

 

 

『巨大異生物、目視‼︎』

『攻撃開始‼︎』

 

ジャンプを続けるナユタに自衛隊機からミサイルが降り注ぐ

驚いたナユタが尻餅をつき、辛うじてミサイルを回避する

 

そこに更に戦車からの砲撃が飛来してナユタは頭を押さえてうずくまる

 

「那由多ぁ!!!」

 

灯の悲痛な声よりも早く星奈が駆け出し、キグナスクロスを取り出すと共に、クロスが光を放つ

 

 

「ーキグナスッ‼︎ 力を、貸してッ!!」

 

 

星奈の体が光に包まれ、那由多の目前に飛来

ウルトラマンキグナスとなり、すぐさまバリアを張って自衛隊機や戦車からの攻撃からナユタを守る

 

『…お姉ちゃん…』

 

ナユタの声にキグナスが振り向き、頷く

 

ー大丈夫。絶対守るから…‼︎

 

『銀色の巨人、出現‼︎』

『この巨人への攻撃は…』

 

狼狽する自衛隊機に通信が入る

 

『銀色の巨人への攻撃は避けなさい。あの巨大異生物も様子見に徹するわ』

『日笠空将補⁉︎』

『以前の戦闘で、あの巨人は我々には手を出さなかった。それどころか撃墜された機体を助けてもくれた。七星陸将の対話が行える可能性を私も考慮したい』

『りょ、了解‼︎』

 

自衛隊機が旋回し、キグナスやナユタから距離を取る

戦車隊にも似たような通信が入ったのか、後退していく

 

その様子を見て構えを解くキグナス

 

 

ーゴゴゴ…ッ

 

 

一瞬静まりかえった場に大きな振動が襲いかかる

 

地面が突如泡立ち、赤熱化すると共に弾けて地下からゴツゴツした恐竜のような巨体が姿を現す

 

ーゴグァァァァァァァァッ!!!

 

現れた怪獣を見上げ、キリカが舌打ちを漏らす

 

「なんなのよ、次から次へとッ‼︎」

「おそらく那由多がジャンプした時の衝撃や自衛隊の攻撃の余波で地下に眠っていた地底怪獣が目覚めたんだ…クソッ」

 

 

ーゴグァァァァッ!!!

 

地底から現れた怪獣ーファルナクスは大きく息を吸い込み、口の中と外殻を赤熱化させると、固まった石炭の塊のような燃え盛る火炎弾を撒き散らす

 

爆発が夜空を彩る中、戦車隊がファルナクスに砲門を向ける

 

『新たな巨大異生物、出現‼︎』

『敵性行動と判断‼︎攻撃開始‼︎』

 

戦車隊からの砲撃がファルナクスに突き刺さる

 

ーゴグァァァァァァァァッ!!!

 

苛立たしげな咆哮をあげ、ファルナクスが火炎弾を放つ

 

『⁉︎退避ィ‼︎たいー』

 

戦車隊の一台に直撃、飴のように装甲が溶かされた後に爆発炎上する

 

ーゴグァァァァ…ッ‼︎

 

ファルナクスは再び空気を大きく吸い込み、体内を点火し始める

 

『うわぁぁぁあ!?!?来るな‼︎来るなァ!!!』

 

半狂乱になりながら戦車が砲撃しつつ後退するが、意に解することなく、チャージが終わったファルナクスが火炎弾を放つ

 

ーリュオァッ!!!

 

直撃しつつあった火炎弾をキグナスが撃ち落とし、戦車を守る

 

ーゴグァァァァァァァァッ!!!

 

ファルナクスの咆哮に怯えて縮こまる那由多を見てキグナスは改めて構えを取る

 

ー那由多くんの邪魔は、させないッ‼︎

ーリュオァッ‼︎

 

キグナスがファルナクスに突撃する

ファルナクスは火炎弾を連発するが、それをキグナスは避け、時には撃ち落として肉薄。その胴にパンチを撃ち込む

よろめいたファルナクスは負けじと太い腕を振り回すが、初撃を回避して二撃目をキグナスが受け止め、反撃の蹴りを撃ち込む

 

ーゴグァァァァッ!!!

 

赤熱化したファルナクスの口元を見たキグナスは咄嗟に放たれた火炎弾を回避。背後に回って羽交締めのようにしてファルナクスの口を上に向け、火炎弾をスカらせる

 

ーリュオァァァッ…‼︎

 

その体勢のままファルナクスを押さえ込むキグナス

ファルナクスはそのまま空気を大きく、大きく吸い込んでいくと、その外殻が再び赤熱化

 

ーぅ、あッ⁉︎熱、ぅッ…⁉︎

 

ジュアァ…と肉の焦げる音が響き、組み付いていたキグナスの体から白煙が上がり、思わず拘束を解いてしまう

 

ーゴグァァァァァァッ!!!

 

ファルナクスは反撃にその太い尻尾でキグナスを強かに打ち据え、吹き飛ばす

 

地面を転がり、なんとか立ち上がろうとするキグナスのカラータイマーが赤く点滅を始める

そのキグナスにじわじわとファルナクスが迫ってくるー

 

 

ーうわぁぁぁぁぁッ!!!

 

 

そのファルナクスが何かの突進を受けて後退する

 

ファルナクスに突進してきたのは、ナユタだった

 

ー那由多くんッ!?

 

「那由多⁉︎」

 

ナユタはファルナクスを押し除け、キグナスの前に震える足で仁王立ちになる

 

『ぼ、僕だって…僕だって強いんだ‼︎ お母さんの、灯お母さんの子供だから…‼︎』

 

「那由多……‼︎」

 

震える言葉で叫ぶナユタを見上げる灯

押し除けられたファルナクスがナユタに向けて火炎弾を放とうとするのを見て思わず頭を抱えるナユタ。その前にキグナスが飛び出す

 

ーゴグォォォォォォッ…‼︎

 

ファルナクスが大きく息を吸い込み、まさに火炎弾を放とうとしたそこをにギラッガス・Uが割り込み、ファルナクスの口を閉じさせ掴み上げる

 

ーユウ⁉︎

 

ギラッガス・Uはもがくファルナクスの口を手が焼けるのもものともせずそのまま押さえ込み続ける

 

口内に留められ続けたエネルギーが爆発を起こし、ギラッガス・Uが吹き飛ばされる

 

ーゴァァァァッ……

 

口の中で小爆発が起こったファルナクスが目を回してよろめく

 

『今だ、ウルトラマン‼︎』

 

ギラッガス・Uの言葉にキグナスが頷き、ナユタの前に出て十字を切る

 

 

ーリュオァァァァァァッ!!!

 

 

ノーザンクロスシュートがファルナクスに直撃する

エネルギーがスパークし、ファルナクスが倒れ伏して爆散した

 

☆☆☆

 

怪獣を倒したキグナスとギラッガス・Uに見守られる中、ナユタはジャンプを繰り返すが、まだ空を飛べる気配はない

 

『全く、見てらんないわねぇ』

 

ギラッガス・Kになったキリカがくるくるとナユタの周りを飛び回りながら告げる

 

『地球人の頃の常識に囚われちゃだーめ。今のナユの背中には立派な翼が生えてるじゃない』

『僕の……背中?』

 

キリカのアドバイスを受け、ナユタは背中に力を込める

 

ナユタの背中の甲羅らしきものが開き、中から甲虫のような瑠璃色の大きな翅が広がる

 

「きれい……」

 

見守っていた灯が思わず声を漏らす

 

ナユタは灯を見下ろして頷き、大きくジャンプする

今度は、地面にまで降りてくることはなかった

 

翅から瑠璃色の光を放ちながら空へと昇っていくナユタを見上げるギラッガス・Uの背中にギラッガス・Kが合体し、空へと飛翔する

 

見送る灯のそばにキグナスが右手を差し伸べる

キグナスを見上げた灯が頷き、その手に乗る

 

 

上空で滞空しながらナユタにギラッガス・UKが向き直る

 

『達者でな。那由多』

『アカリさんのことだけじゃなくて、私らの自慢もしてよね』

 

『ありがとう。ユウお兄ちゃん、キリカお姉ちゃん』

 

そのギラッガス・UKの隣に、右手に左手を傘のようにかざしたキグナスがゆっくり追いついてきた

 

開いた手の中から灯が顔を出す

 

『お母さん…‼︎』

「那由多…」

 

灯はキグナスの指に掴まって身を乗り出し、大きな声で告げる

 

 

「ご飯はちゃんと食べるのよ‼︎ピーマンとかにんじんとか、残したら承知しないから‼︎」

 

『……うん』

 

 

「いじめられたら、ヘラヘラしちゃダメ‼︎ちゃんと嫌だって言いなさい‼︎手出されたら蹴飛ばしてもいいわ‼︎」

 

『…うん、うん』

 

 

「あたしが……一緒にいないからって、夜更かしとか、しちゃダメよ‼︎1人で起きれるって言ったんだから、ちゃんと…約束は守りなさいよッ‼︎」

 

『…うん、わかった』

 

 

灯の目から涙がとめどなく溢れ出し、ナユタの目からも大粒の涙がこぼれ出す

 

 

「……どんなとこ行っても、どんな姿になっても…あなたは星海 那由多。あたしの……世界で、ううん、宇宙で一番大好きな、誰よりも愛してる息子なのは……変わらないから……いつまでも、どこまでも、ずっと、ずっと‼︎」

 

「だから、いつでも胸張って帰ってきなさい‼︎あんたの大好きな、あたしの特製カレーたくさん作って、いつでも待ってるから‼︎」

 

 

『ありがとう、灯お母さん…‼︎』

 

ナユタは灯に両手を振る

灯も力いっぱいそれに振り返す

 

ー元気でね、那由多くん‼︎

 

キグナスー星奈も左手を大きく振る

 

 

『さようなら…ううん、またね‼︎ウルトラマンのお姉ちゃん‼︎』

 

 

瑠璃色の光を散らしながらナユタは急加速し、地球の外へと旅立っていった

 

 

「………てんびん座って…どれくらい遠いのかしら」

『……確か、地球の単位で現すなら、86光年ほどだったな』

『光の速度で86年の距離…この星の技術だと、途方もない距離になるわねぇ』

「そんなに遠くに行っちゃったかぁ……あたしおばあちゃんになっちゃうだろうなぁ。あの子が帰ってくる頃には」

 

灯は涙を拭ってぽつりと告げる

 

「……ありがとう、星奈ちゃん」

 

その言葉を聞いてキグナスはゆっくりと頷く

 

 

(私のやりたいこと…まだ確信とかはないけれど…)

 

(ユウやキリカ、灯さんや那由多くん…それに、お母さんや恵美も)

 

 

(みんなの生きるこの細やかな日常を、守っていきたい)

 

(それが私の、やりたいことなのかも…)

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

【てんびん座逆転流星群】

【2032/11/10に観測された天体現象】

【地球からてんびん座の方角に向かって伸びる瑠璃色の流星がいくつも観測された。専門家も未だ原因はわかっていない】

 

【同時刻に星ノ宮市明星自然公園近辺で巨大異星人らしき生物が空に飛び立つ姿も目撃されているが、関連性は現在究明中である】

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「ミラ、我ヲ起動セヨ 起動セヨ、ミラ」

「この星は、壊さないとダメなのかな…」

「私はウルトラマン大っ嫌いだし」

「友達ならば、助けてあげないと」

「あんたに私の何がわかるのよッ‼︎」

次回ウルトラマンキグナス
「どうすればいいの」
惑星破壊ロボット グインジェ
超銀河星人スレイユ星人ルイ 登場

『ーさぁ、ゲームをはじめよう』
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