ウルトラマンキグナス   作:リョウギ

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第7話「どうすればいいの」

いつもの通学路

いつもの街並み

 

歩道橋の手すりに掴まって空を見上げる

 

太陽光を照り返して銀色に光るビルを見つめながら、シルバーブロンドの髪を短いポニーテールにまとめた制服姿の少女は通学鞄に手を置く

 

 

【ミラ、我ヲ起動セヨ 起動セヨ、ミラ】

 

 

脳裏に機械的な低い声が響く

 

見上げたビルの壁面。よく見ると、そこには透明化した大型の『何か』が張り付いていた

 

その声に少女ーミラは俯く

 

 

「おーい、ミラ‼︎」

 

 

その声に気付き、ミラが振り返る

 

ミラに手を振りながら同じ制服姿の黒いショートカットの少女が追いついてくる

 

「……未来。おはよう」

「おはよう‼︎」

 

未来と呼ばれた少女ー鈴山(すずやま) 未来(みく)がミラが見ていたらしい場所を見上げて、耳に近づいてこそこそと話す

 

「…もしかして、ミラの星からのお迎えがきた…とか?」

「…いいや、まだだった。見間違いだったみたい」

「そっか、じゃあまだお別れじゃないんだね」

 

にひひといたずらっぽく笑って顔を上げ、通学路を歩んでいく未来の顔を見て、無表情だったミラが薄く微笑む

 

一足先に駆けていく未来の後をついて歩き始めながら、ミラはもう一度ビルを見上げ、表情を無表情なものに戻して歩み出した

 

☆☆☆

 

リーチ星人ファルデの事件以来、校舎再建などのために休校となっていた(ほし)(みや)学園だが、ようやく色々と片付きはじめ、休校が解除された

 

久しぶりの登校を終え、席についていた星奈がふと廊下に視線を移すと、恵美(えみ)が横切っていくのが見えた

 

(学校には来てる…病気とかじゃなかったんだ。良かった…)

 

ほう、と息を吐き、寂しそうな顔を星奈が浮かべる

 

いつもは登校したら別クラスなのにすぐ会いにきてくれた恵美

今日は、会いに来るどころか覗いてもくれなかった

 

1人寂しそうにしている星奈(せいな)の肩がぽんぽん、と叩かれる

 

「おはよ、セイナ」

「おはよう、キリカ…ってえぇ⁉︎」

 

思わぬ顔が現れたことに驚き、思わず星奈の声が裏返ってしまう

 

星ノ宮学園高等部の制服を着たキリカがそこに立っていた

奇しくも、あの時学校で初めて遭遇した時のあの服装で

 

「き、キリカ…⁉︎うちの生徒だったの⁉︎」

「まぁね。リーチ星人の時から実はここの生徒になってたんだ。アルゴに頼んだらサクッとやってくれてさ」

 

(どんだけ顔広いのアルゴさん…⁉︎)

 

にひひ、と悪戯っぽく笑うキリカ

 

「一応ユウも来てるよ。ほらそこ」

 

廊下の方を指差すキリカに倣って見ると、同じく制服を着たユウがドアの側に立ってこちらに視線を送っていた

 

「…入ってこないの?」

「ユウ、あれで人見知りなのよ。だから大丈夫」

「全然大丈夫じゃないんじゃないそれ…?」

 

目をぱちくりさせている星奈の耳元にキリカが顔を寄せる

 

「ー私らみたいな異星種族は、スペクトルの違いとかであんたがウルトラマンだってすぐわかるのが多いの。だから、バレたりしてこの前のファルデみたいになるなら、私らで守れた方が都合がいいからさ」

 

「……キリカ…‼︎」

 

「まぁ、注意できる目は多い方がいいもんね。じゃあ、またあとでねセイナ〜」

 

ひらひらと星奈に手を振り、振り返す星奈を見てこちらに戻ってくるキリカを見てほう、と息を吐くユウ

 

「……?」

 

と、その視界の端で不審な人影が去っていくのが見えた

が、気づいた時には既に人影は消えており、ユウは不審に思いつつもキリカとその場を去ることしかできなかった

 

 

「あ、そういえばこれ見た?」

 

星ノ宮学園の中等部

未来とミラと数名の友達が机を付けて弁当を食べていると、1人の女子生徒がスマホの画面を見せてくる

 

そこにはアルトゥールと戦いを繰り広げるウルトラマンキグナスの動画が映っていた

 

それを見て露骨に嫌そうな顔を未来が見せる

 

「あの巨人……がどうしたの?」

「そうじゃなくて、ここ」

 

首を傾げるミラに女子生徒は動画のタイトル部分を指し示す

 

「ウルトラ…マン…?」

 

「そ!ウルトラマン。最近みんなの中で流行ってるんだ。あの巨人のこと、ウルトラマンって呼ぼうって」

「そーそー、ウルトラでっかい正義の味方!って感じで誰かが名付けたんだって」

 

もぐもぐと口の中のものを咀嚼して飲み込んだ未来ははぁ、とため息を吐く

 

「……くだらない。正義の味方なら、街の一つ壊さないように戦えばいいのに…」

「ま、まぁそうだけど…あんな怪獣とか倒そうとしたら難しいんじゃない?」

 

ねー?と顔を見合う女友達2人を他所に未来はどこか不機嫌に弁当を食べ終えて手を合わせる

 

「行こっか、ミラ」

「あ、うん」

 

ミラも食べ終えているのを見て未来が席を後にしようとする

 

 

【何様?って言い方だよねあんなの】

【ねー、感じ悪】

 

 

瞬間、未来が顔を顰めながらこめかみを押さえる

 

「未来…?大丈夫?」

 

心配そうにミラが顔を覗き込みながら声をかける

 

「……大丈夫、大丈夫‼︎ちょっと偏頭痛がしただけ」

 

手をひらひらと振ってあはは、と笑って見せる

 

ちらと未来がミラの顔を見る

 

「…?どうかした?」

「……ううん、なんでもない」

 

首を振った未来はミラと並んで2人図書室に歩いて行った

 

その様子を見ていた制服姿の何者かは踵を返して去っていった

 

☆☆☆

 

【名無しの生徒】

【ねぇねぇ、こんな噂があるの知ってる?】

 

【名無しの生徒】

【噂ぁ?もういいよ】

 

【名無しの生徒】

【今時学校の怪談とかはやんねぇよ】

 

【名無しの生徒】

【怪談じゃなくて、もっとリアルな話】

【実はねー】

 

☆☆☆

 

「おはよ…?」

 

翌日、教室を訪れた星奈は異様な空気に気づき、言葉を詰まらせる

 

教室中の生徒が話している内容が異様なことに気づいたのは一拍遅れてからだった

 

 

「あいつとかそうなんじゃね?C組の」

 

「この前の事件で怪我したらしいけど、怪しまれないためとか」

 

「事件巻き込まれすぎなヤツ、そういえばいたよなぁ」

 

「怪獣が出たのに無傷とか怪しすぎ」

 

「俺あいつに一票っと」

 

 

皆、手にそれぞれのスマホを持ち何かの操作をしている

授業中に取り出すのは校則違反でも、持ち込むまでは許されている星ノ宮学園では日常的といえばそうだが、話している内容が異様すぎた

 

「ね、ねぇ…みんなで何の話、してるの…?」

「あ、市ノ瀬(いちのせ)さん。これ見てよこれ」

 

入り口側にいた女子生徒がスマホの画面を見せてくる

 

 

【正体を見せろ!宇宙人投票】

 

 

「……なに、これ…」

 

画面に表示された内容に星奈が目を見開く

 

「実はこの学園にさ、いるんだってさ」

 

悪戯っぽく笑った女子生徒が囁いてくる

 

 

「ーう、ちゅう、じ、ん」

 

 

「ーッ⁉︎」

 

早鐘のように心臓の音が鳴りだす

 

「びっくりだよね。こんな近くに宇宙人がいたなんてさ」

「もしかしたら、ウルトラマンとかもいるんじゃねーの⁉︎」

 

愉快そうに囃し立てる男子生徒の言葉に星奈の肩が震える

 

「それはないって。あんなに大きいんだよウルトラマン」

「わかんねーだろ?小さくなれたりもするかもだし」

 

「でも確かに、人間に化けてるならどんな元の姿かわかんないよね」

「化け物みたいな姿のヤツがどっかにいるかも?」

「こっわ。そんなの同じ学校とか、マジ無いわぁ…」

 

憶測と偏見が飛び交う嫌な空気の中を横切り、星奈は自分の席に着く

 

(誰がこんな……そういえば、投票って…)

 

星奈は先程見せてもらったページの言葉を検索ページに入力する

すぐに宇宙人投票が行われている掲示板らしいページがヒットし、それを開いて目を見開く

 

候補の中に羽崎(はねさき) ユウ、羽崎 キリカとユウとキリカの名前があったのだ

 

「ユウ、キリカ……⁉︎」

 

「あ、この兄妹?なんか宇宙人っぽいなぁって思うのよね」

「たまに星奈とかに話しかけてる以外は見かけないし」

「帰ってるとこはみるけど、どこに帰ってるかはわかんないしなぁ」

「なんかそれ聞いてたら宇宙人っぽい気してきたなぁ」

 

星奈が呆然としている中でピロン、と通知が鳴り、ユウとキリカに票が入って表示された数字が増える

 

 

「ーッ、やめてッ!!!」

 

 

ガタン、と音を立てて椅子を跳ね除け、星奈が立ち上がる

 

ざわついていた教室が一気に静まりかえる

 

「あ、ご、めん…なんでも、ない……」

 

星奈はおずおずと席に座り直す

 

困惑した空気の中、刺すような視線がいくつも星奈に突き刺さってきているのを感じていた

 

「ー何今の?」

「あれもしかして、庇った?」

「てことは、あの子も?」

「かもしれないね。じゃあこうして…」

 

ピロン、と新たに通知が響く

いくつか並んでいた名前の中に「市ノ瀬 星奈」の名前が追加され、数票ほど票が入りだす

 

ピロン、と新たな通知と共に、並んだ名前の中

「鈴山 未来」と「各務原(かがみはら) ミラ」の欄に新たに票が入っていた

 

 

ガタン、と派手な音と共に椅子が倒れ、突き飛ばされた女子生徒が尻餅をつく

 

「何すんのよ、未来!?」

 

尻餅をついた女子生徒の目の前、怒りを表情に表した未来が見下ろしていた

 

手にしていたその生徒のものらしいスマホを投げつける

 

「……どういうつもりよ、これ‼︎」

 

ひび割れたスマホ画面には宇宙人投票のページが開かれていた

未来とミラに投票した直後らしい表示が残っている

 

女子生徒が目を泳がせながらはは、と渇いた声で笑う

 

「……ただのジョークに決まってるじゃん」

「ジョーク…?こんな笑えないジョークがあるわけないでしょ⁉︎」

 

未来の恫喝に教室中が静まりかえっている

だが、未来の脳裏には声が聞こえてきていた

 

 

【必死すぎ…怖…】

【やっぱこいつ宇宙人じゃね?マジだからキレてるんでしょ】

【そうに違いないって。なら一緒にいるミラも宇宙人じゃん】

 

 

頭を押さえながら肩を怒りに震わせる未来の耳をピロン、という通知の音が震わせる

 

「誰だァッ!!!」

 

激怒しながら未来が教室中の生徒たちを睨みまわす

 

脳裏に響く声を辿って1人の男子生徒を見つけると、そのスマホをひったくって投げ捨てる

 

「何すんだよ!?」

【なんでわかったんだよ…キショ…】

 

怒る男子生徒と同じ狼狽と侮辱の声が頭に響き、未来が顔をしかめる

 

 

【気持ち悪…こっちの考えてることとかわかるの…?】

【うーわ、マジ宇宙人じゃん。ウケる】

【怖すぎじゃん。もう学校来んなよ…】

 

 

「うるさい…うるさい…‼︎」

 

未来が頭を抱えて首を振る

 

怒りに震える未来の肩に合わせて周りの机がかたかたと揺れ始める

 

 

「ーうるさいッ!!!」

 

 

未来の一喝と共に周りの机が吹き飛ばされ、派手な音と共に倒れる

 

教室から悲鳴が上がり、未来が我に返る

教室中から向けられる敵意と恐怖の視線に震え、未来が肩を抱く

 

「あ、う……ああ、あっ!?」

 

狼狽した未来が教室から逃げ去っていく

 

それとすれ違いになったミラが思わず手を伸ばす

 

「ッ、未来ッ⁉︎」

 

その手が未来に触れることはなく、走り去る未来をただミラは見つめることしかできなかった

 

 

脇目も振らずに走っていた未来が誰かにぶつかる

 

「あ、うっ…」

 

「ー大丈夫かい?きみ?」

 

未来がぶつかった人物が未来を助け起こす

 

その人物は白衣を纏う紳士のようなフォーマルなスーツを着た若い青年だった

 

「あ、ご、ごめん、なさ、い…」

 

頭を下げて去っていこうとする未来の手を青年が引く

 

「待ってくれ、私は井出(いで)。この学校でスクールカウンセラーをしているものだ」

 

未来の肩に手を置き、目線を合わせながら井出が告げる

 

「何か力になれるかもしれない。そうでなくとも、ちょっと落ち着いた方がいい。カウンセリングルームに行こう」

 

☆☆☆

 

「何これ…感じ悪いわねぇ。那由多の時も、学校でいじめられたりしたけど、中学校とか高校ってもっと嫌な感じだね」

 

スマホの画面を見た灯がうへぇ、と呻く

 

那由多の一件以来、「いつでもおいで。宇宙人のことって家族にも中々話せないだろうし、うちはそういう話聞くだけならできるだろうしね」と言ってくれており、それから星海食堂は星奈たちの集合場所のようになっていた

 

「他の星でも一定数いたが、異種族を受け入れ難いというのはどこも同じだな」

「そーそー。まぁ…感じの悪さはここが一番かも、だけど」

 

向かいに座ってせんべいを齧りながらキリカが肩を竦め、ユウが目を伏せる

 

「…心配することはない。俺たちはそういうのには慣れている」

「そういう問題じゃないよ‼︎」

 

星奈はユウの言葉に立ち上がりながら反論する

思わぬ反論にユウが目を丸くする

 

「慣れたとか、そうじゃないとか…そんなのは、なんか、嫌だよ…」

 

席に座りながら星奈が続ける

 

「……最初は、宇宙人なんて怖いだけで…ウルトラマンだって訳わかんなくて…嫌だって思ってた私が言っても……意味なんか無いかもしれないけど…」

 

「でも、ユウやキリカ、アルゴさんや蘭先生、那由多くんを見てきて、ただ生まれた星が違うだけって人もいることを知ったから……そんな風に、宇宙人だからってだけでこんなことされるのは……」

 

ギュッと胸ポケットのキグナスクロスを握る

 

そんな星奈の肩を灯が叩く

 

「気持ちのいいこと言ってくれるじゃない!」

 

朗らかに笑いながら灯が星奈の隣に腰掛ける

 

 

「なんかあったらあたしのとこ来な、星奈ちゃん。もちろんユウくんとキリカちゃんも」

 

「こんだけじゃ、とても足りないけど。あたしもあなたたちに助けられた恩返しをしたいからさ」

 

 

にっ、と笑う灯。それに安心した星奈たちも頬がゆるむ

 

「ありがとうございます…‼︎灯さん」

「いいってこと。じゃんじゃん大人を頼りな〜」

 

☆☆☆

 

「なるほど……自分の友達が宇宙人扱いされたのが許せなくて、クラスの学友に酷いことをしてしまったんだね」

 

スマホを見ながら例の掲示板を眺める井出の言葉にソファに座る未来が頷く

 

「………」

 

黙って俯く未来を井出が見下ろす

 

「ーそれだけではないんじゃないかな?例えば……」

 

井出が未来の肩に手を乗せる

 

 

「……その友達が本当に宇宙人で、自分も知られたくないことがあるから、とか?」

 

 

「!?」

 

井出の確信を突いた言葉に未来が警戒しながら立ち上がる

 

「ああ、警戒しないでほしい。実は、私も似たような身でね。出身はファビラス星で、この地球に移り住んだ」

「え…?」

 

カウンセリング室の執務机に腰掛け、井出が微笑む

 

「今はただの地球人さ。ある方法で、私は宇宙人としての体を地球人のものに作り変えている」

「!?どうやったんですか!?」

 

井出の言葉に未来が声を上擦らせる

優しく微笑む井出は言葉を続ける

 

「かつてと同じ悩みで困ってるキミたちを放ってはおけない。だが、この方法も準備簡単なものじゃないんだ」

 

少し前に乗り出しながら井出が告げる

 

 

「ーひとつ、困っていることを助けてくれたなら、私は喜んでその方法をキミに授けよう。なに、なくしものを持ってきてもらうだけだよ」

 

 

井出の提案を聞いた未来が、ごくりと喉を鳴らした

 

☆☆☆

 

翌日

 

いつも通り登校してきた星奈だが、普段と学校の空気が違うように思えて不安そうな表情は隠せなかった

 

皆が皆ではないとわかっていても、スマホを触ってる人がいたらどうしてもあの「投票」をしているのでは、と疑ってしまう

 

(……怪しまれたりとか、疑われるのは嫌だけど……)

 

深いため息を吐き出す

 

 

(ー誰かを疑わなくちゃいけないのも、嫌だなぁ…)

 

 

教室への道を急いでいると、ふとすれ違った顔見知りの手元を見て思わず振り返る

 

「恵美…‼︎」

 

びくっ、と肩を震わせてすれ違ったはずの人物が立ち止まり振り返る

 

河村 恵美。話こそしなくなったけれど、まだ星奈は友人として心配していた恵美

 

 

その手に持つスマホ画面には『宇宙人投票』のページが表示されていた

 

 

「恵美…それ、って…⁉︎」

 

信じられないものを見たかのように星奈が目を見開く

 

恵美は目を泳がせながらその場を駆け足で去っていった

 

ふら、と足をもつれさせる星奈を誰かが支える

 

「大丈夫ですか⁉︎先輩…」

 

支えてくれていたのは中等部の制服を着た女子生徒だった

 

「だ、大丈夫…少し、立ちくらみがした、だけ…」

「大丈夫じゃないじゃないですか…保健室に行きますね」

 

 

女子生徒に支えられ、星奈は保健室に到着。先生はいなかったがベッドに腰掛けて休ませてもらうことにした

 

「………少し休んだら大丈夫だと思う。ありがとう、えっと…」

 

「鈴山 未来。中等部2年です」

 

胸に手を置いて自己紹介する未来

にこやかながらどこかその顔は笑っていなかった

 

「………星奈先輩っていいですよね。借り物の力で、ちやほやされて。今更悲劇の主人公、ですか?」

「……鈴山さん?」

 

未来はその手に握っていたものを星奈に見せる

 

 

ーキグナスクロスを

 

 

「!?」

 

星奈はいつもクロスを収めていた胸ポケットを探るが、そこにあるはずのクロスがなくなっていることを確認、未来が持つそれが本物のキグナスクロスであると理解する

 

「それ、返して…‼︎それは大切なー」

 

「大切な…?これが無いとウルトラマンになれなくてただの人に戻っちゃうから?ふざけないで。欲しくもないのに、こんな力を持っちゃった人の気持ちなんか、わからないくせに…ッ!!!」

 

激怒した未来に呼応するかのように側にあった棚がものすごい勢いで動きだし、星奈が腰掛けるベッドに直撃する

 

「ーッ!?」

 

ギリ、と唇を噛み締めながら憎悪の溢れる視線が星奈に向けられる

 

「宇宙人の落とし物で偶然手に入れた力で、いつでも普通の生活に戻れるのに目立ちたいからってずっとその力を使って…いい気分だったでしょうね‼︎」

「違う、そんなー」

「違わない…ッ‼︎井出さんが言っていたんだから、あなたが、井出さんの落とし物で好き勝手をしてるって…‼︎」

 

未来はキグナスクロスを握りしめ、叫ぶ

 

「小さい時の事故で頭を打ってから、人の心の声がわかるようになったり、軽い念動力が使えるようになったり、最初は心が踊った。でも、友達を助けようとして力を使ってから私は化け物扱い…それから、この力が嫌で嫌で大嫌いで仕方なかった……‼︎」

 

「こんな力を持ってても、私を友達と受け入れてくれた、ミラだって…きっとバレたら化け物扱いされる…そうなる前に…ッ‼︎」

 

未来が駆け出して保健室を後にする

 

「ーッ、待って!!!」

 

星奈も後を追って駆け出していく

 

☆☆☆

 

星ノ宮学園の屋上

その入り口の扉を勢いよく開け、未来が息を切らせながら現れる

 

「未来…?なんでこんなところに?」

 

先に来ていたミラが困惑の表情を見せる

その隣から歩み出た井出に未来は駆け寄り、キグナスクロスを渡す

 

「約束通り、井出さんの落とし物を取り返してきました‼︎」

「ありがとう、未来さん。こんな危険なものが野放しになっているのは良くありませんからね」

 

井出はクロスを受け取ると、懐から一丁の小型銃を取り出す

 

「約束のものです。さぁ、早速彼女に使ってあげてください」

 

井出がミラに視線を動かしながら告げる

 

「未来…?それって…」

 

困惑した様子のミラに、未来はその銃口を向けた

 

「………え?」

「大丈夫、ミラ。こうすれば、ミラも地球人になるから…もう、怯えたりしなくていい…宇宙からお迎えが来たら、元の宇宙人にも戻れるから…ッ‼︎」

「待って、未来、それー」

 

 

星奈が屋上に追いついた瞬間

未来の銃から放たれた赤い光線がミラの肩を掠め、屋上の柵を焼き切った

 

ぺたりと尻餅をついたミラの右肩の、切り裂かれた服の隙間から鮮血が漏れ出す

 

呆然とするミラの前で未来が動揺で震えだす

その隣で井出は静かに口元を押さえていた

 

「な、んで…⁉︎これ、この銃なら、ミラを一時的に地球人にー」

 

「………信じてた」

 

ミラが震える声で呟く

 

「宇宙人の私を、未来は受け入れてくれて、そんな人もいる地球は壊すべき星じゃないって、そんな未来と一緒にいたいから、嘘だってついて……」

 

滲み出すようにミラの首に現れたチョーカーにはめられた石が黄色く輝く

 

「……でも、やっぱりこの星は…地球人は…ッ‼︎」

 

ミラは抱えていたカバンを乱暴に開いて中から赤いクリスタルのようなデバイスを取り出す

 

それを組み換え、ガチンとある形に変形させると、それは眩い光を放った

 

 

【コマンド入力 破壊指令00 我、起動セリ】

 

 

いつもミラが見上げていたあのビルの壁面が剥がれるように持ち上がり、菱形の宇宙船の正体を表して飛翔する

 

飛翔した宇宙船はその姿を大きく変形させ、三叉のクローアームとロボットクレーンを持つロボットー惑星破壊ロボット グインジェへと姿を変え、地上に降り立った

 

グインジェは静かに侵攻し始めると、胸部の砲門から光線を放ちながら街を破壊し始める

 

 

「あれって…⁉︎」

 

星奈が屋上の柵に捕まり、侵攻していくグインジェを見やる

 

「壊してグインジェ…この星は、危険な惑星…だから壊してッ‼︎」

 

人が変わってしまったかのような激しい口調で、へたり込んだままのミラが叫ぶ

 

「嘘…ミラ…?ミラが、あのロボを…⁉︎」

 

未来が震える口で呟きながら思わず後ずさる

 

それを静観していた井出が肩を震わせる

 

カウンセラーの男はー愉快そうに笑っていた

 

「ハハハハハハッ‼︎思った以上に愉快な展開をむかえてくれました‼︎感謝しますよ、鈴山 未来」

 

「井出さん…?」

 

井出と呼ばれていた男はネクタイを緩め、その顔と腕を変質させる

一本角のような触角が伸びた茶色の表皮と緑の瞳を持つ虫のような顔の異形がそこに立っていた

 

「!?嘘、なんで…地球人に、なってる、は…」

『浴びるだけで別の惑星の生命体に姿を変え、あまつさえ後ほど戻すこともできる。少し考えればわかることだとは思いますが…』

 

くっくっ、と愉快そうに笑いながら、井出だった男は未来の肩を掴みながら告げる

 

 

『ーそんな都合のいい道具、我々の技術でも作り出せはしませんよ』

 

 

「ーな、あ…」

『更に付け加えておきますが、そこにへたり込む駒…失礼、スレイユ星人という種族は争いを好まない上に治癒能力以外はこれといった力もない。体の組成も、ほぼ地球人と同じ』

 

井出は未来の耳元で囁く

 

『あなたの足掻きは、どこまでも無駄だったのですよ。私には、とても愉快な娯楽でしたけど、ね』

 

脱力した未来を無情に井出が突き飛ばす

 

変貌した井出を睨む星奈に、手にしたクロスを見せつける

 

「それ…⁉︎」

『失礼。私のゲームの邪魔になりそうなあなたは封じさせていただきましたよ。ウルトラマンキグナス』

「ゲーム…?」

 

井出だった存在に向けて青い光線が放たれるが、井出はそれを軽々と避ける

 

屋上入り口から駆け込んできたユウとキリカが星奈を庇うように前に立つ

 

『おやおや、ようやく現れましたね。ヒーロー気取りの追放者』

「クソッ、なんで気づかなかったの…こんなヤツが入り込んでたなんて…ッ‼︎」

 

キリカが奥歯を噛み締める

 

「……ヤツはムザン星人。知的生命体を捕獲して首輪や腕輪を付けターゲットとし、他の惑星に放ってハンティングする悪趣味なゲームを繰り返す連中」

「ハンティングって…⁉︎」

 

井出はやれやれと肩を竦めながら告げる

 

『種族名なんて粗野な呼び方はやめていただきたいものですね。私には、アルカブという名前があります。加えて、我々のゲームをハンティングだとか悪趣味などと評するのはやめていただきたい』

 

 

『ー無い知恵を絞って逃走し、その命の限りの逃走を全霊をかけて追跡して美しく追い詰めて優雅に摘み取る。そういう、崇高なゲームなのですよ、コレは』

 

 

井出ーアルカブはそう告げながら、ミラを見下ろす

 

『まぁ、そんな素晴らしいゲームですが…もう1000もターゲットを仕留めてきた私には少々飽きもきてしまう。ですから今回は趣向を変えたのですよ』

 

 

『ー争いを好まない種族を泳がせて、その手で別の星を滅ぼすスイッチを押させる。名付けて…猟犬ゲーム、と言ったところでしょうか?』

 

 

星奈が驚愕に目を見開き、ユウが舌打ちを漏らす

 

「…外道が」

『わざわざスレイユ星人を捕獲するのは骨が折れましたし、アクシデントもあって新たな策を講じる必要もありましたがね…』

 

アルカブはスマホを取り出し、『宇宙人投票』の画面を開く

 

「それも、あなたが…⁉︎」

『地球人も滑稽ですね。こうして少し餌をまくだけで、牙を忘れた猟犬を炙り出す「協力」をこぞってしてくれる…』

 

手を広げて高らかに笑う

 

『このオモチャのおかげでより良いものが見れましたよ。追い詰められパニックになった親友に、撃たれて絶望したスレイユ星人の凶行‼︎なんと愉快な喜劇でしょうか‼︎』

 

ユウがギラッガスUの姿に戻りながら駆け出し、アルカブに組み付く

アルカブはそれに軽く応戦し、ユウの攻撃を最小限の動きでいなしていく

 

『無粋ですね。このゲームの顛末を共に眺めていてはどうです?』

『俺にそんな趣味は、無い‼︎』

 

2人の異星人が壮絶な戦いを繰り広げる中、淡々と街を壊していくグインジェとそのグインジェを見据えるミラを見て、未来がへたり込む

 

「どうしたら…私は、どうしたらいいの…?」

「……どうしようもないわ。スレイユ星人のグインジェは、スレイユ星人しか知らない停止コマンドを端末で入力しないと止まらない。ある程度街を壊しつくしたら、地球の中心に向けて惑星破壊ミサイルを撃ち込んで終わり」

 

キリカが淡々と事実を告げる中でも、未来はただ絶望に頭を抱えることしかできなかった

 

星奈は未来とミラ、グインジェを見据えて自分の空になった胸ポケットに触れる

 

 

ギラッガスUの猛攻をものともせず、アルカブは高らかに笑う

 

『無駄ですよッ‼︎私は、自分の手でハンティングを楽しみたいために、私自身の体にも機械改造を加えている‼︎』

 

ギラッガスUの拳をそのまま鷲掴みにし、捻り上げる

 

『ぐっ…⁉︎』

『あなたのパワーでは、私に届くことはないッ‼︎』

 

アルカブの蹴りがギラッガスUを吹き飛ばし、勝ち誇ったようにアルカブが腕を広げた

 

 

「ーうわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

そこに想定外の存在が突撃してきた

飛びついてきたその人物に思わず面喰らう

 

『なっ⁉︎あなたはッ!?』

 

飛びついた星奈はアルカブの腕を押さえるが、アルカブはそのまま力任せに腕を振り回し、星奈を吹き飛ばす

 

ガシャン、と柵に叩きつけられた星奈

光線で焼き切れていた柵はそのまま壊れ、彼女の体が空に投げ出される

 

「ーあ」

『星奈ッ!!!』

 

駆け出そうとするギラッガスUを黒い影が追い抜き、落下しようとしていた星奈の体を掴んで屋上に引き戻す

 

『いきなり無茶してんじゃないわよ⁉︎』

「キリカ……ありがとう……」

 

襟を咥えていたキリカーギラッガスKを振り返りながら星奈が気の抜けた笑顔を漏らす

 

強かに打ち据えられ、星奈のこめかみから血が流れる

 

『全く、無駄なことを…』

「無駄なんかじゃ、ない…ッ‼︎」

 

星奈はその手にしっかりと掴んだキグナスクロスを見せる

 

『!?バカな…いつの間にッ!?』

 

焦るアルカブは触角から緑の光線を放つが、ギラッガスKがそれを弾き、アルカブへと纏わりついて星奈から注意を逸らす

 

星奈はふらつきながらもへたり込む未来の側に腰を下ろして、その頬を優しく掴んで目線を合わせる

 

「どうすればいいか…わからないよね…私も、こんな力が使えた時はパニックだった…」

「え……あ……」

 

星奈はまっすぐに未来を見据え、未来も星奈を見返す

 

「……ミラが宇宙人のままなら、あなたはもう友達でいられない?」

「ーッ」

 

星奈の問いに未来は唇を噛み締める

 

「………そんなわけない」

 

未来の頬を涙が伝う

 

「……私の力を、気持ち悪いとか、変な目で見たりとかしなかった。優しいし、地球のこと知らないこと多いのに、色々勉強して、私に合わせてくれたりだってしてくれて……ッ」

 

 

「……宇宙人だとか、そんなの関係ない…ッ‼︎ミラだから、私は、ずっと、ずっと友達でいたい‼︎傷ついて欲しくないんだ…‼︎」

 

 

悲痛な叫びが屋上に響く

俯くスレイユ星人の少女が持つデバイスに、数滴の雫が溢れた

 

星奈はその言葉に優しく微笑む

 

「ーなら、そのことをミラさんに伝えてあげて」

 

「それは、親友のあなただからできることだから」

 

星奈はふらつきながらも立ち上がり、ギラッガスUとKと戦うアルカブを睨む

 

 

「ー私は、あなたを絶対許さない…ッ‼︎」

 

 

キグナスクロスに青い光が灯り、それを胸に当てる

 

 

「力を貸して、キグナスッ!!!」

 

 

星奈の光が白い光に包まれ、校舎の傍に白銀の巨人が降り立つ

キグナスはグインジェを見据え、飛翔していった

 

☆☆☆

 

ーリュオァァァァッ!!!

 

飛翔してきたキグナスがグインジェに組み付き、その侵攻を押さえ込む

が、そのパワーをものともせずにグインジェは侵攻し、クローアームでキグナスを切り裂き、胸の砲門からの光線で引き剥がす

 

ーッ、なんとか、止めないと…‼︎

 

新たな脅威を確認したからか、グインジェは上半身と下半身を分離。残った下半身から惑星破壊ミサイルの弾頭が顔を覗かせる

 

分離した上半身からロボットアームが離れ、キグナスを掴むとそのままジェットを吹かせて高層ビルに叩きつけ磔にする

 

ーリュオァァッ!?

 

なんとか引き剥がそうとするキグナスを更に分離したクローアームが引き裂き始めた

 

 

星ノ宮学園の屋上

 

俯くスレイユ星人の少女に誰かが背後から抱きつく

 

「………離して。地球人」

 

淡々と告げるミラに反して、より力を込めて未来がその小さな背中を抱きしめる

 

「ごめんミラ…宇宙人投票なんてのが始まって…ミラのことが疑われはじめて…怖かった…私みたいに、晒し者にされて、ミラのこと笑い物にしだしたり、実験動物みたいに捕まるんじゃないかって…怖かったの…」

 

未来が声をふり絞る

 

「ほんとは……ミラがスレイユ星人だとかそんなのどうでもいい…‼︎私のことを、変な目で見てこなかったのはきっかけだけど……」

 

「私は、ミラだから友達でいたいの…‼︎ミラだから、大切なんだ…‼︎傷ついてほしく無い……ッ‼︎」

 

未来が涙を流しながらミラを抱きしめる

 

「ーごめんミラ…何度だって謝る…ミラの好きなクレープもまた食べに行こう…ッ、だから…もうやめてよ…元の優しいミラに、戻ってよッ‼︎」

 

未来の叫びを聞いて、ミラは肩を震わせる

 

「……地球人は身勝手。自分でした過ちを、いつも揉み消そうとする。周りを傷つけて、争いをやめようとしない。スレイユ星にとって脅威になることなんてわかりきってた」

「……ミラ」

 

震える声でミラが続ける

 

「……地球に来てすぐに、私のことを襲ってきた地球人たちがいた。命からがらで逃げ出して、すぐにでもグインジェを起動するつもりだった。でも、でも…そんな私を助けてくれた地球人がいた。まだうまく言葉が出なかった私の心を読んでも、私を助けてくれた…人が…」

 

ミラの言葉に未来が目を見開く

 

「色んなことを教えてくれた。面白い漫画、美味しいお店、クレープとか、シェイクとか、私の知らないことをたくさん教えてくれた」

 

ぽた、ぽたと水滴が落ちる

震える手がデバイスの形を組み換えていく

 

「……地球人が過つのはもう明白なことだったのに、わかってたのに…でも私は…この星を壊したくないって思ってしまった…スレイユ星人の本当の目的を隠してまで、私は……未来といたかった……」

 

首元のチョーカーがばちばちとスパークする中、震える手がデバイスをピラミッド型に組み直す

 

 

「……私も、こんなこと嫌だ…争いとか破壊なんて…とっくの昔に嫌だった……」

 

 

「未来……ごめんね……」

 

 

ミラの組み直したデバイスが光り輝き、同時にグインジェの動きが鈍り、キグナスが解放される

 

分離していたボディが元に組み直り、グインジェのカメラアイが黄色から黒く消灯する

 

 

『貴様の目論見はもう終わったらしいな』

 

機能停止したグインジェを見据えてギラッガスUが告げる

が、アルカブは愉快そうに笑う

 

『私が、猟犬が自力で切ることのできるスイッチを用意するとでも思いましたか?』

『何…?』

 

ミラはグインジェを見上げ、目を見開く

 

「なん、で…⁉︎惑星破壊ミサイルのカウントが止まってない…⁉︎」

 

ミラが見据えるグインジェの下半身ユニット

そのシグナルが未だに点滅を続けていた

 

ミラの手に持つデバイスが赤く光を放ち、呼応するようにグインジェのカメラアイが赤く点灯する

 

 

『貴様…惑星破壊ミサイルだけは起動させたままなのか!?』

『そんなつまらないものなど搭載していませんよ』

 

 

油断なく構えるキグナスの前でグインジェが爆発

吹き飛ぶ破片から身を庇うキグナスの前で、竜のような長い首を持つ影が揺らめき、オレンジの眼光が輝く

 

ーグォオォオォオォオォオン!!!

 

爆煙を払いのけ新たに現れたのは黒いボディに赤いラインの走る怪獣

肩や両腕、膝には大型のボウガンのような武器が取り付けられている

 

ー中から…怪獣が!?

 

ーグォオォオォオン!!!

 

怪獣は両腕のボウガンを構えるとキグナスに向けて乱射し始める

何本かの矢を撃ち落とし、射撃を回避しながら駆ける

 

乱射を続けながら怪獣は尻尾にも装備されたボウガンを展開し、空に向ける

 

怪獣の額が発光し、尻尾の上空に赤い空間が開き、そこに向けて尻尾のボウガンが放たれる

 

瞬間、キグナスの頭上に同じく赤い空間が開き、雨霰と矢が降り注ぎキグナスの体に突き刺さる

 

ーリュオァァッ!?

 

キグナスがよろめき、膝をついた隙を逃さず、怪獣は腕のクローユニットを展開してキグナスに掴み掛かり、その体を引きずり上げる

 

ーグォオォオォオンッ!!!

 

 

『素晴らしいでしょう?怪獣爆弾アルナスル!!私が独自に改造を施した怪獣兵器!!!』

 

自慢げに叫びながらもギラッガスUとKの攻撃を涼しい顔でいなしていくアルカブ

 

ミラは動揺しながらもデバイスを操作しようとしているが、ロックがかかったのかもうびくともしなかった

 

「止まらない…どうしよう、どうしたら…ッ!?」

「落ち着いて、ミラ…‼︎」

 

 

ーグォオォオォオン!!!

 

反撃のキックを打ち込むキグナスに向け、アルナスルは肩のボウガンから矢を放ち吹き飛ばす

 

更に再びデバイスを輝かせ、放たれた矢がキグナスの死角から降り注いでくる

 

ーっ、あ…ッ!?これじゃ…近寄れない…ッ‼︎

 

 

手出しできずにいるキグナスとアルナスルを見比べ、未来が立ち上がってアルナスルを睨む

 

ーグォオォオンッ!!!

 

アルナスルが再びボウガンを空間に向けて放つ

亜空間からの狙撃を警戒したキグナスが構える

 

しかし、射撃が降り注いできたのはアルナスルの方

何故か亜空間が頭上に開き、そこから矢が降り注いぐ。その中の一撃が直撃した額の発光体が割れ砕ける

 

ーゴグォオォオォオンッ!?!?

 

『アルナスル…!?バカな!?!?』

 

ばちばちと頭の発光体をスパークさせながら、よろめくアルナスルにアルカブが驚愕の声を上げる

 

『よそ見している暇があるのか?』

『な、しまッー』

 

その瞬間を逃さず、ギラッガスUKとなった2人が高速で飛翔したその勢いのままに、カットフックの斬撃がアルカブを引き裂いて血飛沫を上げさせる

 

『が、ぶぅッ!?』

 

 

強い念動力を使った反動でふらつきながらも踏ん張り、鼻血を拭いながら未来が柵を掴んで叫ぶ

 

 

「ーいっけぇぇぇぇ、ウルトラマン!!!」

 

 

キグナスが未来の方を向き頷く

十字を切って現れた光の軌跡に向けて腕を組み、必殺のノーザンクロスシュートが放たれる

 

アルナスルの体を白銀の光が貫き、その体を爆発させる

 

「やった…」

 

それを見ていた未来が、脱力してへたり込む

その体をミラが支える。アルカブが取り付けていたらしいチョーカーは、立ち上がったはずみで解除されて落ちていた

 

「未来…⁉︎大丈夫…?」

 

ミラの心配する顔を見て一瞬泣きそうな顔をした未来だったが、すぐにくしゃりと笑みを作る

 

「ー大丈夫。ミラが、いてくれるから」

「…‼︎よかった…」

 

未来の笑顔に、ミラもまた笑顔で答えた

 

☆☆☆

 

星ノ宮学園の屋上に戻ってきた星奈は未来とミラが柵にもたれて眠っているのを見て安堵の息を漏らす

 

「星奈、無事か?」

「ありがとう…なんとか大丈夫」

 

ふらつきながらもユウとキリカに微笑んでみせる星奈

 

『く、はははッ…見事、ですね……まさか、この私がゲームオーバーとは……ッ』

 

血塗れになりながら立ち上がるアルカブをキリカが睨む

 

「しぶといわね…まだ死んでなかったの…?」

 

アルカブは力無く拍手を送りながらも、肩を震わせて笑う

 

『命をかけて、この星とそこに生きる命を守る、なんとも崇高ですねぇ……いやはや……』

 

アルカブは震える指先で星奈を指差す

 

『一つ、そんなあなたにいいことを、教えておきましょう……』

「……いい、こと?」

 

『……私の偽装技術がいくら優れていても、あの宇宙人投票を流行らせるのは、難しい……そうは思いませんか…?』

 

くっくっくっ、とアルカブは邪悪に笑う

 

 

『ーあの投票を流行らせたのは…紛れもない…あなたが守ろうとした人間なのですよ…‼︎』

 

 

「…………ッ」

 

星奈がたじろぐ中、アルカブの体がぼろぼろと崩壊していく

 

『……それを知ってもなお…あなたは、地球人のために……命をかけられ、ます、か……ね……?』

 

アルカブの体がチリも残さず崩れ落ちて消える

 

星奈はただ、立ち尽くすことしかできなかった

 

☆☆☆

 

薄暗い部屋の中、スマホの明かりだけが部屋の主を照らし出す

 

宇宙人投票の画面

投票結果としてある人物が一位になっているのを見て、部屋の主は唇を噛み締めて布団を被った

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

【ウルトラマン】

《2032/11/12 修正》

【40m級の巨人。詳細は不明】

【出現が確認され始めた巨大生物群と戦い、撃破することを理由に人類の味方とする意見・書き込みが54%】

【得体の知れない存在として嫌悪・忌避感を示す意見・書き込みが38%】

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「あんた、宇宙人のくせにまだ学校来てるの?」

「私は……私、は……」

「お前にとって戦う意味はあるのか?」

「……星奈」

「戦う理由も、信念も無いならば、お前は私には勝てない」

次回ウルトラマンキグナス
「       」

にせウルトラマンキグナス
改造怪獣カノープス・スカウト
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