ウルトラマンキグナス   作:リョウギ

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第9話「届いたらいいな」

ーリュオァッ!!

ーキュイィィッ!!

 

黄色い甲殻と鎌状の長い腕を持つ昆虫のような怪獣ー甲虫怪獣タガヌラーにキグナスが組み付き引き下がらせる

 

ーキュイィィッ!!

 

振り返ったタガヌラーの鎌腕での斬撃がキグナスの胸を引き裂く

衝撃に後ずさったキグナスだが、迫るもう片方の鎌を掴み、引き寄せて蹴りを打ち込む

 

ーキュイィィッ!!

 

交戦するキグナスの背後、地面から新たなタガヌラーが姿を現す

 

ーうそ⁉︎2匹目⁉︎

 

ーキュイィィッ!!

 

新たな個体の出現に気を取られたキグナスに押さえていた1匹目が覆い被さるように組み付き、動きの止まった背中に2匹目の鎌攻撃が突き刺さり火花を散らす

 

ーう、ぁッ!?

 

更なる追撃を加えようと鎌を振りかぶるタガヌラーB

 

『ハァッ!!!』

 

そこに青い流星のように何かが衝突し、キグナスからタガヌラーBを引き離す

 

タガヌラーBの前に降り立ったギラッガス・UKがチラとキグナスを見遣り頷く

 

『こちらは任せろ』

ーわかった!!

 

ーリュオァァ……ッ!!

 

心強い援軍に力強く頷きを返し、キグナスがタガヌラーAの拘束を振り解いてその腹を蹴り吹き飛ばす

 

ーキュイィィッ!!

 

振り回されるタガヌラーBの鎌をカットフックで弾いていなしながら、ギラッガス・UKの鋭いチョップが鎌と腕を繋げる関節部に突き刺さる

 

片方の鎌が落とされ、タガヌラーが大きく動揺する

 

同じくキグナスも光を纏った手刀でタガヌラーAの鎌を片方切断することに成功

 

ーリュオァッ!!

ーハァッ!!

 

背中合わせになったキグナスとギラッガス・UKがそれぞれ腕にエネルギーを集中させ、ノーザンクロスシュートと青色光弾・赤色光線合体光線を放つ

 

直撃をもらったタガヌラーたちはゆっくりと倒れ込みながら爆発四散していった

 

 

星奈(せいな)お疲れ様〜!怪我とか無い?」

 

戻ってきた星奈に恵美(えみ)が駆け寄り、心配そうに見つめながら顔をむにゅっと両手で挟む

 

「大丈夫。今日のは前みたいに熱くなってなかったからよかった…」

 

星奈が少し脱力した声で返答する

 

「前みたい」と言うように、今戦っていたタガヌラーという昆虫怪獣はここ2週間ほど何故か連続して出現していた。今回の個体でもう7体は撃破している

一体目に戦った個体はとんでもなく全身が熱く、ろくに触ることができずに苦労したが、発電所の電力をある程度吸収すると頭部のツノから自身の真上に向けて光線を放ち、そのまま動かなくなって撃破されている

 

「恵美もありがとう。今回も、誘き出すポイント探してくれて」

「いやぁ全然。戦ってる星奈とか、怪獣の出現をある程度予知できる未来(みく)ちゃんと比べたら大したことできないよ」

 

何度も現れる怪獣タガヌラーに対し、もちろん星奈も何度も戦うこととなっていたが、未来がある程度の出現場所と時間を予測してくれることで備えることができ、戦っている最中は恵美が戦いやすい場所を探して示してくれるおかげで今まで以上にスムーズに戦うことができていた

 

「キリカとユウもありがとう」

「まぁ私らもこれくらいしか手伝えないから」

「セイナばかり戦うことになっては、負担が大きすぎるからな」

 

そんな話をしているとユウが顎に手を置いて思考し始める

 

「しかし、あの虫怪獣は何がしたいんだ…」

「何って…怪獣だから暴れたい、とか?」

 

星奈の頬をもにもにしながら恵美が首を傾げる

 

「怪獣も、生物兵器でもない限りは生物だ。地球外の昆虫型怪獣は特に本能的な行動に忠実なものが多かったのを考えると…」

「あー確かに。バグダラスとかダイオリウスとかあの辺りそれっぽいもんねぇ」

「ばぐだらす…?だいおりうす…???」

「バグダラスはなんか地球にも似たヤツいたわね。なんて言ったかしら…確かゴキー」

「キリカその名前は言ったらダメだヤツが来る!!」

「えぇ…そんなヤバい昆虫なのあのゴー」

 

青い顔でバッテンを作り首を振る恵美の必死な様相を見てキリカが首を傾げながらも口元に指でバツを作ってその名を呼ぶのを避ける

 

うんうん、と首を縦に振る恵美の隣、星奈がスマホを取り出していると今日の日付、12月16日の表示を見てあることに気づく

 

「あ…今日16日ってことは、もうそろそろだった…」

「?もうそろそろってなんのこと?」

 

キリカが首を傾げる隣で恵美がポンと手を打つ

 

「あ、そうか…12月だし、星奈のお父さんの誕生日そろそろだね」

「セイナの…父親?」

 

うん、と星奈が頷く

 

「12月23日。その日がお父さんの誕生日。まぁ、本人は…いないんだけどね…」

 

少し俯きながら星奈が寂しげに告げる

 

「もう何年も前から…仕事で出掛けて帰ってきてないの。自衛官の仕事で、出掛けてからずっと…いなくなったその年は、私はまだ小さくて何がなんだかわからなかったけど…お母さんが一日中泣いてたのはよく覚えてる」

 

星奈の話を静かに聞くキリカとユウを見て、恵美がばつが悪そうに頬をかく

 

「あー……キリカたちの種族だと、家族の話はピンと来ない?」

 

恵美の問いにキリカはマフラーを口元まで引き上げながら俯き答える

 

「……いや、よくわかるわ。家族」

 

ユウが続けて口を開く

 

「俺たちの種族…ギリバネスは、群れー特に血の繋がりは特別大切に考え、群れ全体の意志に皆が賛同して動く。そういう種族だ」

 

少し俯くキリカの頭をユウが撫でながら続ける

 

「ーまぁ、群れを捨てた俺たちのことなんてもう、同種族とも見てはくれないだろうがな」

 

「あっー」

 

ユウの言葉にこの前聞いた2人の事情を思い出し、恵美が申し訳なさそうに俯く

 

「ご、ごめん…無神経なこと言っちゃった…」

 

しおらしくなる恵美の横腹をキリカが肘鉄で突く

 

「あんたが気に病むことはないわよ。家族も同族も捨てたのは、私たちの種族だもの」

 

その様子を見ていたユウが星奈の方を見据えて告げる

 

「地球人の家族は、子個体のことをなんとも思わないのか?」

「……時たま、そういう人はいるけど…」

 

星奈は自分の頭を撫でる

 

小さい頃、自分の頭を撫でてくれた、母とは違う大きく暖かな手のひらの感触を思い出し、目を細める

 

「……お父さんは、違うと…思う」

「そうか…それなら、待っていれば必ず帰ってきてくれるだろう」

 

柔らかに笑いながらユウが確信を持って告げる

 

「ー親個体とは、そういうもののはずだ」

 

「……うん、ありがとう。ユウ」

 

気を取り直して星奈が口を開く

 

「お父さんは、帰って来ないけど…でも誕生日プレゼントは毎年買ってるの。お父さんがいつ帰ってきても、寂しくないように」

「そそ。星奈んとこの毎年の恒例行事ってヤツ」

 

ぽん、と恵美が手を叩く

 

「そうだ…‼︎せっかくだしさ、みんなを誘ってプレゼント選びに行かない?ついでにカラオケとかも行こうよ!」

「確かに…いいかも…」

 

2人の会話を聞いていたユウとキリカが首を傾げる

 

「カラオケ……って……何?」

 

星奈と恵美が顔を見合わせ、恵美がキリカの方を見て悪戯っぽく笑う

困惑するキリカと肩を組み、恵美が拳を上げる

 

「ふっふっふ〜行けばわかるさ!少女よ!!」

「そ、そう…なの…???」

 

未だ困惑が隠しきれないキリカと楽しそうな恵美を見比べ、星奈が楽しそうに微笑んだ

 

☆☆☆

 

「ノリあげて行こう!キリカちゃん!!」

「あー、もう!こうなったらヤケよ!!」

 

大音量で音楽が流れるカラオケボックスの中、恵美と並んで肩を組まされたキリカがウルトラでハイな曲を熱唱する

 

ユウは興味深そうに聞き入り、未来とミラは手拍子を送っていた

楽しそうに歌う2人に微笑みながら星奈もタンバリンを振る

 

「あー……疲れた…声を張るって難しいのね」

「お疲れ〜キリカちゃん。初体験のカラオケはどうだった?」

 

メロンソーダを飲みながらキリカが答える

 

「初めてすぎて疲れるけど……これはこれで、悪い気はしないわね。地球人たちが楽しんでるのも、わかるわ」

 

でしょー?と隣の恵美が微笑み、ユウもどこか楽しそうに頷くのと合わせて星奈も笑顔になる

 

「主目的は買い物だけど、その前に盛り上がって行くよー!!」

 

 

続けてマイクを取った未来とミラが息のあったデュエットを披露し

 

 

「ユウ、見てばっかじゃなくてアンタも歌いなさいよ」

 

とキリカに引き摺られる形でユウも歌声を披露していく

最初は不慣れな感じだったが、キリカとユウの2人もすぐに歌い慣れていくのに驚く

 

「2人とも歌い慣れるの速いね〜」

「元々、音波が俺たちの交信手段だからな」

「これくらい、慣れたらどうってこと無いわよ」

 

フフン、と得意げに笑うキリカは恵美に巻き込まれる形で歌わされていた最初の曲を1人で歌いあげ、見事98点という高得点を叩き出して歓声をひとりじめにしていた

 

 

未来とミラがトイレに行って一旦曲の流れが止まった時、星奈はジュースを一口飲んで隣に座る恵美を見る

 

「恵美…」

「ん?どしたん星奈?」

 

振り向いた恵美に星奈が微笑む

 

「私はもう、大丈夫だから。恵美も気に病まなくていいよ」

 

ジュースに口をつけようとしていた恵美の手が止まる

 

「……あれれ、もしかしてバレてた…?」

「当たり前。だって、幼馴染じゃん」

 

星奈が得意げに笑う

恵美があちゃーと頭を抱えながら俯く

 

「……私、星奈にひどいことしちゃってたからさ…」

 

自嘲気味に呟く恵美

キグナスとして戦う星奈へのサポートや、このカラオケ会は彼女なりの罪滅ぼしだったのだろう

 

そんな恵美の頭を星奈がコツンと小突く

 

「……それならきっと、私の方が先だよ。怖がらせちゃったから」

「いや、それは!?」

「違わないよ。だからおあいこ」

 

星奈が悪戯っぽくはにかむ

 

「何?まだ気にしてたのそのこと?」

 

向かいのシートで話を聞いていたキリカが呆れたように呟く

 

「諦めなさいな。短い付き合いだけど、セイナってビビりに見えて変なとこで頑固だから」

「え、私ってそう思われてたの…?」

 

隣で聞いていたユウもふっ、と吹き出す

 

「ああ、確かに頑固者だな」

「あう…ユウまで…」

 

しゅんとした星奈を横目にキリカが身を乗り出す

 

「……そんな頑固者が好きなモノ同士なんだから。もう遠慮なんかいらないでしょ?エミ」

 

初めて名前を呼ばれたことに気づき、恵美が目元に滲んでいた涙を拭う

 

「ごめん…ありがとう…みんな…」

 

「うえっ!?どうかしたんですか恵美先輩!?」

「ど、どこか痛いのか…?苦しいのか…!?」

 

そんな時にちょうどトイレから帰ってきた未来とミラが目を白黒させながら恵美に駆け寄る

 

「あ、えっと…いや、そんなんじゃなくて…」

 

はぁ、とため息をつきながらキリカが星奈に曲を予約するタブレットを手渡しする

 

「ほら、湿っぽい空気の責任取ってなんか歌いなさいよ星奈。さっきから歌ってないじゃない」

「え、わ、私…⁉︎」

 

戸惑いながらも星奈はキリカからタブレットを受け取って曲を選んで予約する

 

前奏が流れる中、星奈がマイクを手に取り胸に手を当てて深呼吸する

 

「……ごめん。もしかして苦手だった?」

「ううん…ちょっと久しぶりだから緊張しちゃって…」

 

マイクを口に近づけ、静かに星奈が歌い出す

 

その歌声にキリカとユウ、未来とミラが目を丸くし、恵美が目を閉じて聴き入りはじめる

 

「……うっま」

「……うまいな」

「ほぁあ…」

「すごい…」

 

4人の言葉を聴いて恵美が得意げに笑う

 

「でしょー♪星奈の歌は天下一なんだよ〜本人恥ずかしがって中々歌ってくれないけど」

「へぇ〜いいこと聞いたわ。今度またおねだりしちゃおっかな」

 

ニヤニヤと悪戯っぽくキリカが笑う

 

こうして恵美の言葉からスタートしたカラオケ会は、6人の仲をますます深めていく形で幕を閉じた

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

カラオケ会が終わり、近くのショッピングモールでの買い物会が始まった

当初の予定通り、星奈は父の誕生日プレゼント選び、キリカもそれについて行こうとしたが恵美がキリカと服も見たいと言い出し、未来たち諸共連行されてしまった

 

そんなこんなで、星奈はユウと共にプレゼント選びに小物屋などを見て歩いていた

 

ネックレスなどを見ている星奈を横目で見ながらユウは声をかける

 

「いいものは、見つかりそうか?」

「あ、えっと……う、うん……」

 

ぎこちなく頷く星奈の様子を見て、ユウが続ける

 

「……どうかしたのか?」

「……え?」

「いや、いつもよりも暗い顔をしている気がしてな」

 

いつものようにそう答えるユウを見て、星奈は俯きながら手に取っていたネックレスを置く

 

「……ちょっと…考えちゃって…」

 

 

小物屋から離れてユウと共に近くのベンチに座る

 

「……お父さんへのプレゼント、毎年買って取っておいてるんだけど、お母さんもお父さんのことは考えないようにしてるみたいだし…」

 

俯いた星奈は膝の上で両手を握る

 

 

「……もう、しょうがないのかなって…こんなこと続けても…」

 

 

「……セイナ」

「…どこにいるかもわからない。生きてるかもわからない…なのに、こんなことするのに意味あるのかなって……どうしても、考えちゃって…」

 

しばし沈黙が流れるが、星奈は顔を上げる

 

「ごめんね、こんな話しちゃって…」

 

ユウは返す言葉に詰まり、また沈黙が流れる

 

 

「ーメリークリスマース!!!」

 

 

と、そこにサンタ服に身を包んだ青年が現れ、明るい声をかけてきた

 

「おいおいどうした?そんな暗い顔して。地球じゃ特別な日なんだろ?もっと楽しもうぜ」

 

目をぱちくりしている星奈の前で青年は朗らかに笑って見せる

 

「え、えーっと…」

 

星奈が固まっていると、青年の頭が後ろから小突かれる

 

「こら、レイト。急に声をかけたら彼女たちが驚くだろう?」

 

青年の後ろから現れたのは同じくサンタ服を着た初老の男性だった

 

「ってぇーな親父!?何も叩くことは無いだろ!?」

「すまないね、お嬢さんと彼氏さん。こいつはちょっとガサツな所があるもんでね…」

 

頭を下げる初老の男性

彼氏と言った男性の言葉に少し頬を赤ながら、星奈も問いかける

 

「親父……って、お父さんなんですか?そちらの方の」

「ああ、そうだ。今日はクリスマスパーティのために色々と二人で買い出しにきていてね」

「めんどくせぇ親父だよ。オレ一人でも問題ないって言ったんだけどよ、心配だからってついてきやがった」

 

やれやれと肩を竦める青年ーレイトに思わず星奈がくすりと微笑む

 

「お、可愛い顔して笑うじゃねぇか」

 

満足そうにレイトも微笑む

 

「失礼。実は…先程話していたことが少し聞こえてしまっていたんだが…」

 

男性がレイトの隣から歩み出て同じく微笑む

 

 

「お嬢さんの思う気持ちは、きっとお嬢さんのお父さんにも伝わっていくだろう。例え、どこにいようとも」

 

 

「!」

 

男性がレイトの肩を叩く

 

「それが、親子ってもんさ」

「くすぐったいこと言ってんなよ、親父」

 

照れくさそうながら、レイトも満更ではない様子を見せていた

 

「……オレもさ、父親…みたいなことは少し経験あるんだが。一生懸命描いた絵とか、折り紙で作ってくれた動物とか、ちょっと焦げちまったパンケーキとか…」

 

鼻の頭を掻きながら、どこか懐かしむように話すレイト

 

「オレのことを思ってくれたって思いは、どんなもんでもあったかいんだよな。最高に」

 

「……さて、私たちはそろそろ失礼しよう。デートの邪魔になっては悪いからな」

「そうだな。じゃあな、お二人さん!」

 

二人は朗らかに手を振り、離れていった

 

「……思いは、伝わる…」

 

星奈は意を決したように立ち上がる

 

「ユウ、もう一回……一緒に見てくれる?」

「……ああ、もちろん」

 

 

と、その時

 

「先輩!!!」

 

未来が慌てた様子でこちらに走ってくる。遅れて恵美たちも追いつく

 

「未来ちゃん?どうしたの…?」

「ビジョンが見えたんです…ッ、ここに…あの昆虫怪獣がッ!」

 

未来の言葉が早いか否かのタイミングで、突如大きな振動がモールを揺らした

 

 

ーキュイィィィッ!!!

 

モールの外に出ると、あの昆虫型怪獣のタガヌラーが街中に姿を現していた。鎌を振り上げて、まるで威嚇するかのように空を見上げている

 

「一体だけなら、私だけで大丈夫!」

「わかった」

「無茶しないでね、星奈!!!」

 

ユウたちが離れるのと逆方向ータガヌラーに向けて星奈が走り、キグナスクロスを取り出す

 

 

「ー力を貸して、キグナスッ!!!!」

 

 

星奈が光に包まれる

 

ーリュオァァァァッ!!!

 

進撃するタガヌラーにキグナスが飛びかかり、押さえ込まんとその腕を掴んで押し込む

 

が、掴んだキグナスの手のひらからジュゥゥ…と煙が蒸気が上がった

 

ーリュオァァッ……!?

ーぁつッ!?

 

タガヌラーの肉体はこれまで同様に高温に、それどころか甲殻が赤熱化して輝いてすらあった

 

ー触らないように、気をつけないと…

 

タガヌラーに対してキグナスが構え直して相対した

 

★★★

 

それを路地裏から見上げていたのは、黒いローブを纏う謎の人物

 

「……チッ、虫ケラが…何度も邪魔しやがって…」

 

舌打ちと共に取り出したペン型のアイテムの上端を掴み、押し込む

ペン型のアイテムが短くなると共に、羽のような装飾が開き、仮面舞踏会の時に纏うような小さな仮面のようになる

 

ローブの人物はその赤い瞳を獰猛に細め、その仮面を顔に当てる

 

 

 

《ダーク・オディール》

 

 

 

ローブ姿が、黒く輝く闇に包まれた

 

 

★★★

 

ーキュイィィィッ!!!

 

赤熱化した体に触れないように鎌を避けながらキグナスがキグナスショットを当てていく。タガヌラーはそれでも怯むことなく空を見上げ、頭の触角にエネルギーを集めだした

 

ーまずい…あの光線!でも、あれを撃たせたら動かなくなるから…

 

様子を伺っていたキグナス

 

 

ーデヤァッ!!!

 

 

そこに、タガヌラーの真横から黒と紫のエネルギー光線が突き刺さった

 

ーキュイィィィッ!?!?

 

不意の一撃にタガヌラーは全身をスパークさせ絶命、倒れふす

 

光線が放たれたあたりをキグナスが見遣る

 

 

そこには、夜の闇を凝集したような黒い体の巨人が立っていた

 

 

黒い体に銀のライン。キグナス同様に胸元から左肩へ伸びる黒い翼の装飾。姿形がとてもキグナスに似ている

 

その赤い瞳を覆う黒い仮面を除いて

 

 

ーウルトラ、マン…!?私…キグナス以外の!?

 

驚くキグナスを一瞥した黒い巨人は踵を返し、闇の中に姿を消した

 

 

呆気にとられていたキグナスだが、倒れ伏していたタガヌラーの異変に気づく

 

赤熱化していた体が膨張し、凄まじいエネルギーが漏れ出そうとしていた

 

ーまずい!?体の中のエネルギーが爆発する!?

 

臨界に達しようとしていたタガヌラーの体を、手が焼けることも厭わずにキグナスが持ち上げる

 

ーリュオ、ァァッ!!!

 

力の限り空へ放り投げ、更にノーザンクロスシュートを当ててより遠くへとその巨体を飛ばしていくと、限界を迎えたタガヌラーが爆発。あまりの爆風にキグナスも顔を庇う

 

 

近くのビルで様子を見守っていた恵美たちも顔を庇っていたが、立ち上がり、タガヌラーが爆発した空を見上げる

 

「…倒した…というか…」

「さっきの黒い巨人は…いったい…」

 

呆気に取られていた面々の中、未来が一瞬こめかみを押さえた後、目を見開いてへたり込む

 

「そ、んな…ッ!?じゃあ、あの虫怪獣は………アレを遠ざけるために…!?」

 

肩を抱いてガタガタと震えだす異常な様子の未来に気づき、ミラと笑みが寄り添う

 

「未来!?どうしたの…!?」

「あわ、だ、大丈夫!?どこか痛いの…!?」

 

震える足で未来は立ち上がり、屋上の柵を支えに声を張る

 

 

 

「先輩ッ、逃げてッッ!!!!はやくッ!!!!」

 

「あ、あいつが、あいつが来ちゃうッ!!!!」

 

 

 

尋常じゃない様子の未来の声にキグナスが気づくが、それとほぼ同時に新たな異変がはじまった

 

 

空から、稲光する紫のガスが降りてきたのだ

 

 

ーあれは…?

 

その様子を見ていた未来が耐えきれないといったように後退りながら尻餅をつき、頭を抱え荒い息を繰り返す

 

同時に、ミラ、キリカ、ユウも顔を青ざめさせた

 

「な、んで…!?」

「なんなのよコレ…なんの悪い冗談よ!?!?」

「バカ、な…ッ」

 

何かに気づいたらしい三人の様子に恵美が慌てる

 

「え、え、アレって何…!?」

 

 

キグナスの見上げる先、ガスの体を凝集させ、それが姿を現す

 

赤と青の体をしたそれは、竜と人間を足したかのような姿と大きな翼を持っていた

背後から伸びる長大な尾にはムカデの脚のような左右対称の突起が並んでいる

 

口も備えていない頭部には、黄色い目が無機質に輝いている

そこに、生き物らしい感情は見られなかった

 

 

姿を目の当たりにしたキリカが脂汗を頬に滲ませながら生唾を飲み込む

 

 

 

「……コスモイーター、ルーゴサイト…!!!」

 

 

 

ークァオォォォォォォ……

 

現れた怪獣ールーゴサイトは奇怪な咆哮を上げると、胸元に紫のエネルギーを溜めだし、それを放とうと地上を向く

 

ーッ!?ダメぇッ!!!

 

キグナスが咄嗟に飛び出し、恵美たちのいるビルの前でバリアを張る

 

同時にルーゴサイトの胸元から紫の怪光線が放たれる

 

それを受けるキグナスのバリアが悲鳴をあげ、あたりにエネルギーの乱気流が吹き荒れる

 

ーリュオ、ァア…ッ

 

ボロボロになったバリアが崩れ、キグナスが膝を突く

 

キグナスが庇えた地点以外は、赤熱・溶融し、見るも無惨な瓦礫の山が広がっていた

 

目の当たりにしたルーゴサイトの力の前に、恵美も足を震わせへたり込む

 

「なに……あれ……!?」

 

「ルーゴサイト……宇宙の害となるものを滅ぼす存在……一部は暴走して手当たり次第に端を壊してくらっていると……母星で聞いたことがあった……」

 

ぼろぼろと涙を流しながら掠れる声で未来がこぼす

 

「だめ、先輩……逃げて……むり…そいつはむりです……せんぱ…」

 

うっと未来が口元を押さええずく

今未来の脳内には超能力に起因する未来視が見えていた

 

 

ルーゴサイトにズタズタにされ消え失せるキグナス

圧倒的な力の前に虫のように潰されていくミラや恵美たち

そして、何度となく呆気なく死ぬ自分

 

 

気が触れるような光景に未来は嗚咽するしかなかった

 

 

恵美たちを心配しながらもキグナスが立ち上がり、ルーゴサイトに相対し、チョップをぶち当てる

 

直撃したにも関わらず、ルーゴサイトはびくともしない

押さえこまんと抱え込むキグナスを片手の力だけで跳ね除け、もう片方の手から伸びる爪状器官でその体を引き裂く

 

後退し、キグナスショットを何発か放つが、それも効いている素振りがない。ムカデのような尻尾が鎌首をもたげると、その両端の突起が発光してミサイルのような光弾ーゲネシスレインを放つ

 

キグナスは再びバリアを展開するが、数発はバリアを回り込み背後から着弾して爆発する

 

ーリュオァァァァッ!?!?

 

ークォォォォォォ……

 

力無く無機質に両腕を前に突き出し、突起を伸ばした触手ールーゴテンタクルを蠢かせる

 

ルーゴテンタクルは一撃でキグナスのバリアを弾き飛ばし、何度もキグナスの体を打ち据える

 

ーがっ、アァっ!?

 

更に降り注ぐゲネシスレインにより街に爆発が起き、更にキグナスも吹き飛ばされてビルに叩きつけられる

 

ークァァォォォ……

 

滑るように移動しながらルーゴサイトは街へゲネシスレインを無差別に放ちまくり、キグナスへと近づいていく

 

カラータイマーを赤く点滅させながらキグナスは立ち上がろうとするが、体が言うことを聞かない

 

ーこのまま…じゃ……ッ!?

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

キグナスとルーゴサイトの対決をビルの上から見ていたのは恵美たちだけではなかった

 

たまらず駆け出そうとするユウとキリカの肩を、二人の大きな手が掴み制止する

 

「待てよ。無茶すんな」

「あなたは……」

 

現れたのはサンタ服からスーツに着替えたレイトと動きやすそうな外套を纏った男性だった

 

「離してよ!!このままじゃ、セイナが…!」

「安心しなさい。私たちが行こう」

 

ユウとキリカを下がらせ、二人が前に歩み出る

 

「あんたたちは…いったい……」

 

 

「オレたちか…そうだな…」

「フッ、ただの通りすがりの風来坊だよ」

 

 

二人はその手にメガネのようなアイテムーウルトラゼロアイとウルトラアイを取り出し、同時に身につける

 

 

 

 

「「ーデュアッ!!!!」」

 

 

 

 

迫り来るルーゴサイト、その前に赤い光と緑の光が立ち塞がり、巨体を後退させた

 

キグナスの前に現れたのは、二人のウルトラマンだった

 

 

赤い体に銀のプロテクター、頭部には宇宙カッターのアイスラッガーを持つマッシブな戦士ーウルトラセブン

 

赤と青の体にセブンのものと似たプロテクターと、頭部に2本の宇宙カッターーゼロスラッガーを持つ戦士ーウルトラマンゼロ

 

 

歴戦の勇士は並び立ち、ルーゴサイトを油断なく見据えていた

 

『立てるか?キグナス』

 

倒れていたキグナスをゼロが助け起こし、その手から光をカラータイマーに向けて放つと、点滅していたものが緑の光を取り戻した

 

ーあなたたち…は……

『さっきぶりだな。改めて、オレはウルトラマンゼロ。こっちの親父はウルトラセブン。お前と同じ、ウルトラマンだ』

 

キグナスが二人の背を見比べる

油断なく構えるセブンが肩越しに告げる

 

『この宇宙に、妙な次元反応を感じてな。ロッソやブル、グリージョたちの協力で、それがルーゴサイトの反応に近いことがわかった』

『だから、オレの力で駆けつけたんだ。コイツは……今のお前だけじゃ、いくらなんでも荷が重すぎるからな』

 

ゼロ、セブン、そこに並ぶ形でキグナスも再びルーゴサイトと相対する

 

『それじゃあやるか!ブラックホールが吹き荒れるぜッ!!』

ーはいっ!!

 

ーシェアッ!!!

ーデェアッ!!!

ーリュオァァッ!!

 

ークァァオォォォォォォ……

 

放たれるゲネシスレインをセブンがアイスラッガーの投擲により全て弾き落とし、キグナスとゼロが共に駆けてルーゴサイトを押さえ込む

そこにセブンのショルダータックルがぶち当たり、巨体がようやく揺らぐ

 

『ストロングコロナゼロッ!!!』

 

ゼロと代わりにセブンがルーゴサイトを押さえに回ると、すかさず炎を纏う赤い姿になったゼロが赤く燃える拳を連続でルーゴサイトに叩き込む

 

新たに放たれたゲネシスレインがキグナスとセブンの背で爆発し、拘束が解かれるが、その一瞬の隙をゼロは逃さなかった

 

 

『ガルネイトォォォ…バスタァァァァ!!!』

 

 

ゼロの拳から迸る燃えたぎる光線がルーゴサイトの胴体を捉え、大爆発を起こす

 

怯みながらも更にゲネシスレインを放つルーゴサイトに対し、ウルトラ念力で操られたアイスラッガーを使い、弾幕を防ぎ切る

 

剛を煮やしたかのような様子を見せたルーゴサイトは胸元に再び膨大なエネルギーを集めていく

 

『ゼロ、キグナス!合わせるぞ!!』

『わかってるッ!!』

ーはいッ!!

 

三人のウルトラマンが並び立ち、必殺光線を構える

 

 

ーデュアッ!!!

『ワイドゼロショットッ!!!』

ーリュオァァァァッ!!!

 

 

三条の光線が収束し、ルーゴサイトの光線ーゲネシスレクイエムに真正面からぶつかり、拮抗する

 

ぶつかり合う光線はしばらく互角に競り合っていたが、衝突点が大爆発し、ルーゴサイトとウルトラマンたちを吹き飛ばす

 

ーデェアッ!!!

 

無機質に仰向けのまま起き上がるルーゴサイトに、即座に立ち上がったセブンの鋭いアイスラッガー投擲が迫るが、片手で難なくそれを弾き返す。戻りくる軌道にあったそれをセブンはウルトラ念力で固定

 

ーシェアァッ!!!

 

ゼロがそれに炎を纏う蹴りを撃ち込んで威力とスピードを乗せて放つ

そのままアイスラッガーはルーゴサイトの胸の発光体へ突き刺さる

 

ーリュオァァッ!!!

 

そこへキグナスの渾身の拳が叩き込まれ、更にアイスラッガーが深くルーゴサイトの胸へと突き刺さった

 

『下がれ、キグナスッ!!!』

 

セブンの呼びかけにキグナスが後退

視界から外れたキグナスの代わりにルーゴサイトが捉えたのは、白銀に輝く巨大な弓ーウルティメイトイージスを構えたウルトラマンゼロだった

 

 

 

ーシェアァァッ!!!

 

 

 

番た巨大な矢が放たれる

それはようやくアイスラッガーを抜いたルーゴサイトに直撃。その背後に次元の穴を開き、その中へとルーゴサイトを叩き込んだ

 

絶望そのものとも言えるコスモイーターは次元の狭間へと幽閉された

 

 

それを見上げていたフードの人物は苛立たしげに舌打ちをし、黒いマニキュアを塗った爪をカチカチと鳴らしながら去っていった

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

変身を解いて皆の元に戻ってきた星奈の前にレイトーゼロと男性ーモロボシ・ダンが姿を現す

 

「ルーゴサイトはイージスの力で次元の狭間に叩き込んでやった。流石のあいつも、自力では戻ってこれねぇだろ」

「あ、ありがとうございました!レイトさん」

「あー……オレのことはゼロでいい。その名前と姿は、オレが前に一体化した地球人の姿借りてるだけだから」

 

ダンが一歩踏み出し、星奈に微笑みかける

 

「キミのことは、我々の仲間から聞いた。ゼアスが、キミによろしくと言っていたよ」

「ゼアスさん…!」

 

ゼロが星奈の手を取る

 

「オレたちは戦う宇宙は違っても、一人じゃない」

「ああ。と言っても、キミにも大切な仲間はもういたね」

 

ダンの言葉に恵美たちを見て星奈が微笑む

 

「はい!」

 

そう告げた星奈の前でゼロとダンの姿が徐々に薄れていく

 

「……どうやら、我々はこの世界に長く止まれないらしい」

「イージスの力でもここまでくるのに強硬手段を取らざるを得なかったからな…この宇宙…なんか裏がありそうだぜ」

 

星奈をまっすぐ見据えてゼロが告げる

 

 

「ー用心しろよ、キグナス。それと仲間たちを大切にな」

 

 

そのまま消えていく二人を見送り、星奈は確かに頷いた

 

「ウルトラマンは……一人じゃない……」

 

ゼロの告げたその言葉

脳裏には、あの黒い巨人がよぎった

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

色々あって疲労困憊になった6人

特に未来視のせいで心身ともに弱っていた未来については灯さんのところまで一緒に帰り、そこで解散になった

 

キリカが前を歩く中、後ろをユウと星奈が並んで歩く

 

「……俺はセイナの父親ではないからわからない」

 

ユウが口を開く

 

「だが…心からの贈り物というのが嬉しいのは俺にも分かる」

 

ユウは星奈の目を見据える

 

「……俺も、無駄じゃないと信じる」

「ユウ……ありがとう」

 

ユウの言葉に星奈が穏やかに微笑む

 

「私に内緒話とか……妬いちゃうんですけど」

 

むーと頬を膨らませたキリカが二人に割り込む

 

「あ、ご、ごめんね…」

「ったく。プレゼントは見つかった?」

 

キリカの問いに星奈は優しく微笑み頷いた

 

後日、星奈の部屋に飾られた父親の写真の横に四葉のクローバーの意匠が入った金属製の栞が並んでいた

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

【四葉のクローバー】

マメ科シャジクソウ属の植物シロツメクサの変異個体

通常3つの葉があるところ、4つの葉がついている

幸運の象徴として使われることが多い

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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■■率修正を提案

今ケースで誘引した個体名ルーゴサイトは惑星そのものを破壊しかねない。我々の目的と相反している

 

誘引個体の選別はより厳格に実行

端末個体にも通達

 

引き続き

ウルトラマンキグナスの動向を観察する

 

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「MesiAのサプライズライブ!?!?」

「ごめんなさい、ちょっと会いたい人がいて」

「歌って、なんだか勇気をもらえるから」

「ふふっ、わたしもそう思うわ。だから歌うの」

次回ウルトラマンキグナス
「あなたへの歌」
不協和宇宙怪獣リラギロス登場

「……いい歌声ね」
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