一般農民になりたいのに最強達がそれを許してくれません   作:ワンカン

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お久しぶりです。インフルエンザで寝込んでました。それに伴い仕事が半端なくたまっていたので、それをこなしていたらいつの間にかこんなにも間が開いてしまいました。



ノリで罰を与える最強ども

 

 

 

「座学の試験はどうだった?私はバッチリよ!」

 

「俺も上出来だぜ!!」

 

「まんてん、かくじつ」

 

 午前の座学の試験が終わると、僕たちはお昼を食べに外に向かった。午後からはいよいよ実技の試験が始まるのだが、その前に感想を各々が述べているという状況だろう。僕もアカネに応えるように、親指をグッと立てやってやったぜアピールをする。

 僕は考えた作戦通り確実に落ちるように解答を全部めちゃくちゃな答えでうめてやった。ゼロ点確実。そう思ってもいいくらいの結果を残したはずだ。もしも最強達に何か言われても、一問ずつずれていたかもしれないなどとテキトーな言葉で納得させることも可能だろう。流石にこれではいくら最強達が文句を言っても結果は覆らないだろうし、僕がいくらこのあとにすっごい魔法を使っているかのように偽装できたとしても、僕は受からないと考えられる。すべては僕の作戦通りである。

 アカネは僕の姿を見て、満足そうな笑みを浮かべた。これだけを見ると、普通の女の子に見えるのだが、それは錯覚であり本当の中身は家族にでさえスキルを使う絶対君主である。

 隣に座っていたカズキが僕の肩に手を置いて笑顔で話しかけて来る。

 

「次は実技の試験だな!相棒やってやれ!!」

 

 君は僕を魔王か何かと勘違いしているのか?そうであるならその勘違いは止めてくれ。ミーナちゃんが本物の魔王だから。僕は農民さんですからね。間違えないでいただきたい。その満面な笑顔が憎たらしいと何度思ったことか……百を超えたあたりから数えてない。

 アカネはカズキの言葉を聞き、どこか不満げな表情をした。

 

「本当は私たちと受ける予定だったのよ?」

 

「おにぃ、ミーナとくめば、さいきょう」

 

 最初はそうだったのか。確かに、アカネがスキルを駆使して試験内容をパーティ戦にしたのはこのメンバーで挑むためであり、僕が一人で挑むことを前提にしてはいなかった。それはバカな僕でも容易に想像できる。では、どういう経緯で僕がこうなったかと言われれば、間違いなくミカサ達の所為であろう。

 アカネは口を尖らせた。

 

「ほんとにあのクソニート何から何まで邪魔ばっかりね」

 

 アカネからしてみたらそう思うのも無理はない。なんせ、自分が考えた作戦に邪魔が入ったのだからこれくらいの暴言が出てもおかしくはない。そう考え、アカネを宥めようとしたが、アカネが何か思いついたような表情をした。

 

「そうだ、私たちの相手、あのクソキモメンバーにしない?」

 

 クソキモメンバー……。アカネさん、お口が悪うございますよ。

 カズキがアカネの言葉に同調する。

 

「それいいな!あいつらと本気でバトッてみたいし」

 

 君は本気で言っているのか。君たちとあのメンバーが本気で戦ったら、今度こそ世界が滅ぶぞ。あの屋敷での出来事もう忘れたのか?じゃれ合い程度であの始末だぞ。世界を壊して何をしたいというんだ。このクサレ騎士め。

 

「あいつ、ころす」

 

 ミーナちゃん?ちょっとお口の悪さが加減超えてるよ?そのサンドイッチの食べカスがついてるかわいいお口からそんなこと言わないでくれ。お口の周りを拭いてあげるから。

 

「あら?本気で戦うの?受けて立つけど」

 

 後ろから聞こえてきた声に振り向くと下ネタエルフことキョーカが歩いてきていた。その後ろには青髪美青年とミカサの姿が見える。本当に君たちはタイミングが悪いな。なんでいつもそうタイミングが悪いんだ。そういうスキルか何かでもあるのか。

 

「悪いけど、今度は小鳥とかじゃすまないから」

 

「あら?じゃあなに?カナブン?それともアリ?」

 

 アカネさん……その煽りスキル使うのやめて。こんな都の中心街で人外さんを怒らせる発言止めて。頼むから喧嘩だけはやめて。

 

「はぁ?なめてるの?」

 

 ほら怒り出した。もうやめて。なんで君たちは仲良くできないんだ。またお腹が痛くなるだろうが。こうも何度もやられるとこっちが困る。

 

「そこまでだキョーカ」

 

 青髪美青年はキョーカの肩に手を置きながらあきれたような表情を浮かべている。この人は今のところミカサ達と比較してまともそうな人だ。ただ、人外であることには変わりはない。カズキと戦っていたし、それにいまだって、キョーカの肩に置いている手がメキメキと音を立てながら、力がどんどん加えれている。見ているだけでも痛々しいなと感じてしまうのに、当の本人はあまり感じないのか、その手をめんどくさそうに払いのける。

 キョーカは青髪美青年をにらみつける。

 

「なによ!あんたに言われる筋合いなんてないわ」

 

「同盟を組んだと言っただろう。貴様はどこまで血の気が多いんだ」

 

「じゃあなに?このクソガキの発言を肯定しろというの?人間にあんなこと言われてムカつかないわけ?」

 

「そうじゃない。ただ、今はマスターの前だ。喧嘩はよせ」

 

 そういわれた瞬間に鋭い目つきをしていたキョーカはやらかしたような表情を浮かべ、こちらをすぐさま振り向いた。僕の姿を認識するとすぐさま片膝をつく。

 

「お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありません」

 

「……いや、まあ、うん」

 

 なんて答えていいかわからない。とりあえず、こういう時は何かを言った方がいいのは間違いないが、どういう言葉がいいのかわからないな。結果としてここが戦場にならなくてよかった。

 アカネがそのキョーカを見てニヤニヤしながら僕の傍に来る。

 

「ハリネ、こういう時は罰を与えるのがいいのよ」

 

 ……何を言ってらっしゃるんですかこの子は。そういうことを言うから絶対君主とか訳の分からない汚名があなたに付与されるんですよ。自覚を持ってください。

 それに対して、その光景を静かに見守っていたミカサが口を開いた。

 

「確かに、そこのクソゴミの言うとおりだ。貴様はマスター居る目の前で何をやっているんだ。午前のことといい、先ほどのことといい、失態を犯すな」

 

 なんということでしょう。あんなに嫌悪していた自分の妹の発言を肯定したではありませんか。クソゴミ呼びは変わっていないが、それでもそれに同調するとはこの二人はもしかして本当は仲がいいのかもしれない。

 

「いやあ、わかってくれればそれでいいんだけど」

 

 罰とか実際何をさせればいいかわからないし、後々恨みを買われても嫌だし。大体、アカネが発端だからアカネも罰を受ける義務が生じると思うんだけどね。ミカサも先ほど僕の前でアカネと喧嘩していたから罰を受けなければいけないということにもなると思うし……あれ?なんかめちゃくちゃ論理が破綻してるぞ。

 青髪美青年も僕の言葉に首を横に振る。

 

「マスター、ここで慈悲を与えることはよくありません」

 

「そうですマスター!!どうか私に罰をください!!」

 

 勢いよく頭を上げながら目を見開き、強い意志のこもった目でキョーカは僕に訴える。その忠誠心みたいなのっていったいどこから来るのか不思議でたまらない。

 

「私はどんな罰でも耐えて見せましょう!!」

 

 すっごい忠誠心。マスター感心しちゃう。できればそういうのはもっと別のところで発揮してほしかった。ていうか、これ本当に罰を与えないといけない流れになったな。どうすればいいのか……。そう思い悩んでいるとカズキが口を開いた。

 

「それだったら、俺らで決めればいいじゃん」

 

 その発言にミーナ以外の人外が衝撃を喰らう。何かに気づかされたような、新しい発明を思いついたような表情をしながらカズキを見た。ミーナはというとサンドイッチを食べ終え、僕の食べかけのおにぎりに手を伸ばしていた。

 

「その手があったわ!!」

 

「なるほど……確かに名案だ」

 

「さすがハリフォントだな」

 

「人間のくせによく浮かんだわ」

 

 なんで罰を受ける側も乗り気なのかいまいちよくわからないが、なぜかその発言に皆が賛成した。カズキは一人照れたような表情を浮かべながら頭を掻く。別に褒められるようなことを言ってない気がするんだが……え?僕がおかしいのか?

 

「じゃあそれでいきましょ」

 

「あー……うん……そうですね」

 

 アカネがそういうとそれにつられて皆がうなずく。もうわからん。この子たち本当にわからんわ。

 

 

 

 

「マスター、少しよろしいでしょうか?」

 

 しばらく少し離れた位置でその会話をミーナと一緒に聞いていると、青髪美青年が僕に近づいてきた。服の袖から見える高価そうな時計が太陽の光でキラッと輝いていた。

 

「どうしたの?」

 

 もしかして罰が決まったとか?意外と早かったね。できれば血なまぐさいのとかはよしてくれよ。頼むから。青髪美青年は綺麗な笑顔を作りながら片膝をついた。

 

「はい、実は午前中の件でお話が……」

 

「午前中?」

 

 午前中というと、校門のところで会った時のことだろうか……思い出した。そういえば僕に何か渡したいものがあるって言ってたな。多分午後の実技で使うものだと思ってはいるが、なんだろうか。

 

「渡したい物があるとか言ってたね」

 

「はい、実はその件で……少しよろしいでしょうか?」

 

 青髪美青年はそう言いながらチラッと皆がいる方に目をやる。なんとなくそれで察しがついた。どうやら聞かれたくない話らしい。

 僕はミーナにここで待つように言い、青髪美青年と一緒に皆に聞こえない場所まで移動した。

 

「……で?僕に渡したい物ってなに?」

 

「その前に確認ではありますが、この度の試験をマスターはどのように考えていらっしゃるのでしょう?」

 

 どう考えているのもなにもミカサがスキルを使って透明になって、僕がすっごく無双しているようにみせるのではないだろうか。これ以外に考えられないね。

 

「考えるも何もミカサが透明化して僕がやったようにするんでしょ?」

 

「そう、そうなのです。私が危惧しているのは他でもないそこです」

 

 いまいち青髪美青年の言葉が理解できず首をかしげる。

 

「我々はマスターの部下であります。マスターの意思を尊重する下部といっても過言ではないでしょう」

 

「さすがにいいすぎじゃない?」

 

 僕としては君たちがマスターと慕っている理由すらわからないから、部下としてとか下部としてとか言われると困惑してしまう。あれよあれよでここまで来てしまったが、それでもわからない部分が多すぎだ。そもそも、マスターの意思を尊重するのであれば、普通に農民として暮らしたいという意思はなぜ尊重されてないのか理由を聞かしてもらいたい。

 

「いえ、これは至極当然のことであります」

 

「……さいですか」

 

「はい、であるので我々のことは下部として扱ってくれて結構です」

 

 青髪美青年はそっと僕の手を触れながら優しい笑みを浮かばせる。なんですかその笑みは。めちゃくちゃかっこいいじゃないですか。思わずそっちの世界に行ってしまいそうになりますね。しかし、下部というのはやはりどこかおかしいような気もする。僕は皇帝でもないし、王様でもない。ただの一般農民だからそんな扱いはできるわけがない。

 

「友人じゃダメ?」

 

「いえ、その神をも超越された御心は大変ありがたいですが、さすがにその申し出を受けるわけにはいきません。我々がマスターと対等?それこそあっていいことではありません」

 

 君もなんという忠誠心だ。できればもっと違うところでそれを発揮してくれ。ほら、君の元許嫁にそういう言葉を言ってみればもしかしたらまた結婚の話とか出るかもしれないよ?絶対君主さんそういう言葉好きそうじゃん。

 

「ですからオールドマスター、安心して我々を道具として使ってください」

 

 そう言いながらミカサのように片膝をついて手の甲に唇をつけた。なんだろう……なぜか背徳感を感じる。超絶イケメンを従わせているということを認識するとすっごいゾクゾクする。うん、これいけないやつだ。なんか変な性癖に目覚めそうだ。

 僕は手をすぐに引っ込め、軽く咳ばらいをする。これ以上話が変なところに持ってかれたら本当の意味で何かに目覚めそうだ。

 

「んんッ……話がそれたね。それで君は何に危惧しているのかな?」

 

「おっとそうでしたね。思わず失念していました」

 

 失念しないでくれ。あとそのその笑みをやめてくれ。ほんとに取り返しのつかないことになりそうだから。君の目を見ながら話すことができないだろ。

 青髪美青年はスッと立ち上がり話をつづけた。

 

「マスター、あなたは優しい御心をお持ちの方であると私は認識しています」

 

「そうかな?」

 

「我々があの人間どもと戦っている最中に、マスターは投げ飛ばされて怪我を負ったにもかかわらずその敵を生き返らせたではありませんか」

 

 それはカウントしないでくれ。イルクだって被害者だ。勝手に僕の敵にしないでくれよ。あれは君たちが勝手に喧嘩を始めて、僕が怪我を負ったんじゃないか。あの後のイルクの世話だって大変だったからね?無茶苦茶怯えていたし、傍にいたメイドさんだって黄色い液体の上で腰を抜かしてたし……多分イルクの頭が吹っ飛ぶところを目の当たりにしたんだね。無理もないよ。

 

「あれは事故だよ」

 

「そうですか?しかし、私にはマスターは非常に慈悲深い御心を持たれた御方であるという認識をしました。これは我々の共通認識でございます」

 

「さいですか」

 

「したがって我々もマスターの下部である以上は、極力慈悲をもって人間どもに接しようという考えに至りました」

 

「さいですか」

 

 もう人間どもって言っている時点で多少見下してるけどね。いくら人外さんな君でも、同じ人間なんだから見下すのはやめようよ。イルクみたいにキゾクオブキゾクの称号を貰えるような顔立ちはしているし、もう少し優しい心を持った方がいいと思う。

 

「ですが、今回に限ってはそうもいきません」

 

「……ん?」

 

「主にミカサ様は違うと言った方がいいでしょう」

 

「……なんとなく想像できた」

 

 あのクソニートは加減というものを知らなさそうだし、何かやってしまう可能性がある。ていうよりその可能性しかない。下手したら対戦相手全員を殺しかねないかもしれない。こんな公の場で殺しなんか起きてみろ。僕に明日はないぞ。明日から牢獄に入学とか絶対嫌だし、ジョークにすらならない。流石にそこまではしないかもしれないけど、本当に何かやらかしそうなのは間違いない。

 

「ミカサ様はここに来るまでの間、非常にあらぶってました」

 

「……どういう感じで?」

 

「鼻をふんふんとならしてました」

 

 魔王ミーナちゃんと同じではないですか。ミカサも魔王と同じなのかな?少し似ているなと思ったけど、ここまで似ているともはや姉妹かもしれませんね……ってそんなこと考えている場合じゃないよ。確実に殺しちゃうよ。

 

「試験受けるの辞退しよう」

 

「それはあってはなりません!やっと重い腰を上げてくださったマスターが、たった一人の下部の所為で表舞台から姿を消えることは許されるべきものではありません」

 

 重い腰を上げてここに来たわけでもないから別に受けなくていいし、むしろ本望といっても過言ではない。そもそもこの学校は魔法も剣も使えない農民が入る場所じゃないでしょ。そういうことなら引き上げた方がいいじゃん。

 

「ですが、最強であるミカサ様を私程度が止められるはずもありません」

 

「じゃあダメじゃん」

 

「だからこそ、マスターにこれをお渡ししたいのです」

 

 そう言いながら青髪美青年は懐から奇妙な形をした宝石を取り出した。高価そうなその宝石は青い光を放ちながら存在感を主張している。なんかこの形見たことあるぞ。デジャブってやつか?

 

「これは?」

 

「これは私の魔力を込めた宝石です。マスターにはこれを持って試験に臨んでいただきたい」

 

 渡された宝石を見ると、ご丁寧なことに首から下げられるように紐が通されている。こういうことができる時点であそこにいる最強連中とはどこか格が違う。しかし、これを首から下げるのには少々抵抗がある。身分不相応というか、農民がつけるアクセサリーではない。一応首から下げるが、やはり宝石が歩いているようにしか見えない。

 

「お似合いでございます」

 

 お世辞は結構だよ。似合ってないのは知ってるから。

 

「……で?この宝石でミカサを止められるの?」

 

「いえ、これはそういったものではございません」

 

 え?違うの?じゃあ何する道具なの?いままでミカサ様を止めなければとか言ってたのにまさか僕に対しての羞恥プレイか?新手のいじめか何かかな?

 

「これはですね、マスターの願いを一つだけ叶えてくれるものでございます」

 

「……ん?」

 

 どういうことだ?意味が解らないぞ?

 

「まだ未完成の魔法の故、間に合うかどうか不明でしたが、どうにか間に合わせました」

 

「いや、そう意味じゃなくて……なに?これ作ったの?」

 

「はい」

 

「神様か何かかな?」

 

 もはや最強とかそういうレベルじゃないよ。神の領域だよ。神様か何かじゃないとそんなもの作れるはずがないよ。もはや国宝級だよ。どんなもん渡してるんだ。

 

「無論、やはりこの人間の身であるため、あの時のようには上手く生成することはできなかったことは謝罪いたします。どうかこの役に立たずである私をお許しください」

 

 もう言っている意味がわからん。あの時ってなに?これ作ったの今回が初めてじゃないの?ていうか謝罪しないで。むしろ誇りに思いなさいよ。君はいま神の領域に手を伸ばしてるんだよ?自覚を持ちなさい。神様が農民に謝らないでくれ。

 

「それでこれの使い方ですが」

 

 いや、話を進めるな。しれっとすっごいものを作ってなに当然のように話を進めてるんだ。もう少しこれの経緯を聞かせてほしい。じゃないと前に進めない。

 

「これの使い方はいたってシンプルです。あの時のように、自身の魔力の調和を必要とせず、ただ、自身の思いを強くこの宝石に込めればその通りになる仕組みにしてあります」

 

「ちょっと待って頭追いついてないから」

 

 だからあの時ってなんだよ。めちゃくちゃ気になるわ。普通に共通認識として使ってるけどこんな恐ろしい宝石を使った記憶が一ミリもないぞ。違う誰かだろ。こんなものが作れる人いたら、村長直伝の雨ごい踊りなんかやってないよ。どこの誰と間違えてるんだよ。

 

「ですので、もしミカサ様がマスターの意思と反したことをした時はその宝石を使ってください。きっとマスターの意思通りにこの宝石がしてくれることでしょう」

 

 青髪美青年は先ほどのようにきれいな笑みを浮かべながら僕の手を握りしめる。

 

「あ、あのー……一応お伺いしたいのですがスキルで作ったとかじゃないんですよね?」

 

「はい、人間のスキルでこのようなものを作ることは不可能です」

 

「……さいですか」

 

 もう納得するしかない。もう怖すぎて話聞けないわ。先ほどまでゾクゾクしたその笑みも、この話を聞かされた後と前では全然違う意味になる。めちゃくちゃ怖い。未知の生物と対面しているというか自分が関わってはいけない領域の人と話しているようで恐ろしくなる。こんなものを生み出せる人物が僕の下部とか云々言ってたんだ。怖さしか勝たん。

 

「そ、その時は使わせていただきます……それと一応確認なんですけど、この形って……」

 

「はい、私の心臓を抉り取り、宝石にしました」

 

 わかってたけど。ちょっと見覚えがあるなと思ってたけど。ミカサからもらった心臓型の宝石とそっくりだなって感じたけど。もうこの程度だと驚かなくなってしまう自分がいる。もう何でもありの君たちといるとこちらの感覚が狂っちゃうよ。

 

「やはりお優しいですね。私ごときでも心配なさってくださるのですね」

 

 違う、そうじゃない。

 

「そんなマスターの下に仕えている私は幸せでございます。これからも役に立てるよう精進いたします」

 

 もうやめてくれ。これ以上好かないでくれ。僕は好感度を上げるようなことをした覚えはないぞ。どこまで忠誠心が深いんだこの子たちは。神の領域に達している人を仕えた農民なんて聞いたことないぞ。ていうか、いま思ったがこんなすっごいものを作れる人があのクソニートのことを様付けしてるんだよな?あのニート、この人以上に強いってことなのか?

 

「あともう一つお伺いしたいのですが」

 

「私ごときに敬語など使わなくて結構です」

 

 そう言われてやめられるわけないだろうが。貴方はもう少し神であることを自覚してほしい。

 

「ミカサってもしかして、あなた以上に強い__」

 

「こんなところにいたのね!!」

 

 後ろからの大きな声で僕の言葉は遮られた。アカネ、君はお姉ちゃんと一緒にタイミングというものを勉強してくれ。お姉ちゃんのことを悪く言っていいのはそこを治してからだよ。

 後ろを振り返ると、ミカサやアカネ、カズキがこちらに向かって歩いてくるのが目に入った。

 

「やってやったわ!!」

 

 開口一番でこの絶対君主はなにを言っているんでしょうか。君のやってやった以上に怖いものなど存在しないぞ。ブンブンと僕の腕を上下に揺らすのやめてくれ。あとその満面な笑みもやめていただけると有難い。

 カズキが自慢するようにうんうんと頷きながらアカネの言葉に同調する。

 

「マスター、我々がキョーカに罰を下しました」

 

「……そうだったね」

 

 そうだった。すっかり忘れていた。青髪美青年と話す前に何かそんなことで会議が開かれてたね。本当に罰を下したんだ。君たち躊躇ないね。一回生まれ変わってみたら?この青髪美青年だったらそういうこともできるかもしれないよ?

 ミカサは後ろを振り返り静かな声でキョーカを呼んだ。

 

「キョーカ、こっちにこい」

 

 そう言うと、キョーカとミーナが僕の方に向かって歩き出した。遠かった姿が段々近づいてくると、何か違和感を感じた。その違和感の正体は姿がはっきりと見えるようになるにつれて、理解できた。それと同時に僕の目が死人のような目になっていく。

 

「マスター」

 

 キョーカは僕の前で片膝をついてそっと深く頭を下げる。それと同時に片方の腕で僕の前に差し出した。

 

「この度のことを謝罪させてください」

 

 いや、それはどうでもいい。君たちの茶番はいつものことだ。喧嘩で街を壊滅にさせないとか人が巻き込まれないとかを約束してくれるのだったら僕も多めに見よう。だから、そんなものを僕の前に差し出すな。

 

「つきまては、謝罪の意味も込めましてこれを受け取ってくださればと思います」

 

「……一応聞くけど、これは何かな?」

 

 僕がそう聞くとキョーカは頭を勢いよく上げる。なぜか当の罰を受けた本人は目を輝かせながら興奮気味の様子がうかがえた。

 

「私の腕です!!どうか受け取ってください!!」

 

「いらない、いらないから」

 

「安心してください!!魔法をかけて腐らないようにしました!!ですから夜にでも使っていただければありがたいです!!なんなら今お使いになってもいいですよ!!出来立てほやほやですからね!!」

 

「使わないし、すぐに戻しなさい」

 

「ええ……そんなぁ」

 

 何に使うんだよ。こんな生々しい腕を何に使えというんだ。夜にでも使え?君は罰を受けた側ですよね?なんでそんな興奮しているんだ。痛みとかないんか。ショックを受けたような表情するなよ。

 カズキはひどく落ち込んでいる下ネタエルフに対して、あきれた様子で顔を覗きながら肩に手を置いた。

 

「だから宝石に変えとけって言ったじゃないか」

 

 そういうことじゃないんだけどね。君たちはなんでそうも身体の一部を宝石にしたがるんだ。普通に怖いからやめてほしい。

 僕は下ネタエルフを横目に見ながら小さくため息をついた。そんな僕にミーが近づいてきて頭を撫で始る。こてんと首をかしげるその姿にたまにはミーナちゃんで癒されるのも悪くないなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 




青髪美青年の名前は後々ですね。


次回は土曜日か日曜日に投稿出来たらなと考えています。
よろしくお願いします。
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