一般農民になりたいのに最強達がそれを許してくれません   作:ワンカン

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月曜日になってしまいました。申し訳ございません。
日曜日に投稿しようと思ったら、間違えて消してしまいました。



この戦争を終わらせに来ました

 今目の前に起こっている事象が現実なのか、それとも夢であるのか、そういう疑問を以前に抱いたことがある。それは父が熱を出して、僕が毎日働かなくてはいけなくなり、寝不足も相まった時にそう思った。いま行っている行為は本当の行為ではなく、本当は夢ではないだろうか。しかし、それに応えてくれる人物はおらず、ミーナも首を可愛く傾げるだけに過ぎない。

 

 後にカズキにも聞いたが、彼は真顔でなに言っているんだと言いながら、僕を病院に行かせようとしていたし、アカネも僕が質問すると本気で心配しながら都の病院に入院させようとした。この二人がかなり失礼な人物であることがよく分かった一幕ではあった。

 

 アカネの話によれば、そういうものは哲学というジャンルであると聞かされた。

 

 この世が水でできているとか、はたまた原子と呼ばれる人間の目には見えない何かで構成されているとか、人間は元々悪の存在であるとか、はたまた善の存在であるとか……考え出したらキリがなく、どこまでも深堀できそうなものを考えることが哲学であると言っていた。

 

 僕のこの疑問は、所詮は二番煎じにしかすぎず、僕が生まれるずっと前に誰かが考えていたことであるともいっていた。アカネは僕にそれについての本を貸してくれたが、結局読まずに返した。所詮はただの僕の気まぐれにしかすぎず、別に答えが知りたかったわけでもなかった。

 

 ただ、僕は今後悔していた。もっと哲学を学んでいればよかったと思った。

 

 

 

 

 

 

「この場で死ね!!この邪知暴虐な魔王が!!」

 

「よわい、だから、きらい」

 

「相棒は俺らと一緒に試験を受けるんだよ!!」

 

「人間ごときが相棒と言うな!!身の程を知れ!!」

 

「喰らいなさい!!小鳥ミサイル!!」

 

「そんなもの私に当たるとでも思っているの?」

 

 これは現実ですか?それとも夢ですか?神様がいるのなら答えてください。

 

 

 

 

 

 怯えている二人を慰めながら、僕はミカサと魔王となったミーナを見つめる。やはりというべきか、さすがというべきか、ミーナは元魔王様ということもあり、ミカサを追い詰めている様子であった。しかし、それは彼女が弱いということではなく、単純にミーナが強すぎるということだ。

 指を鳴らせば、黒い炎がミカサの身体を焼き尽くし、魔法陣を展開させたかと思えば、邪気がふんだんに含まれているであろう黒い球体が彼女に襲い掛かる。流石にこれを攻略することは難しいだろうと思われたが、悪戦苦闘しながらもなんとかミカサも反撃はしている様子だった。赤い剣を振るいながら、魔王様に攻撃している。これが戦いというものなんだなぁとつい感心してしまう。

 

「すっげぇ……」

 

「言ってる場合じゃねぇ!!」

 

 いやぁ、もうどうしようもなくないですか?これをあなたは先ほど僕に向かって止めてこいとか言っていたんですよ?どうやって止めろと言うんですか?逆に止めてください。

 イルクは怯えているメイドさんを抱きしめながら、焦った様子で考え始める。そんなイルクに僕は一つ提案をする。

 

「この戦争が終わるまで待てばよくない?」

 

「お前は黙れ」

 

 ひどい。イルクのことを考えて提案したのに、そんな目くじら立てながら言わないでほしい。こっちだっていろいろ考えているんだぞ。メイドさんは身体を小刻みに震わせながら、怯えた様子で呟いた。

 

「そ、そもそもなんでこうなったんですか?なんで私生きているんですか?夢?そ、そうよ……こ、これは夢よ……こんことありえないもの……おかぁさん……おかあさん……」

 

「……バッドに入ったね」

 

「お前が言うな世紀末が!!」

 

 だから僕は世紀末ではない。この状況が世紀末であって、別に僕自身が世紀末ということではない。そんな僕が元凶のように言わないでほしい。マリトッツォを食べたかっただけの農民にそんな罪はないはずだ。

 イルクはメイドさんの頭を撫でながらマナモードのごとく震えている彼女を宥めていく。

 

「君が悪いわけではない……。ほら、あそこでぬぼぉとしている農民がいるだろう?あれがこれを引き起こした元凶だよ?」

 

 宥めるのに僕を貶す必要性が感じられないのですが……。メイドさんも小さく何回も頷くのは止めてもらえますか?そんな怯えながら小さく頷かれたらなんかこっちがいけないことしたなって思っちゃうから。被害者意識が薄れて来るからやめてほしい。できればイルクもキゾクオブキゾクに戻ってほしい。じゃないとこの戦争止められないから。

 イルクはしばらく宥めると、僕に近寄り、先ほどと同じように肩に手を置いた。だから何回も言うけど無理だって言っているよね?イルクは小さく呟いた。

 

「もうこの手しかない……」

 

 うん?なんかさっきと様子が変だぞ?この手しかない?何を言っているんだ?ていうか、目がバッキバキでめちゃくちゃ怖いんですけど。とりあえず痛いので、手をどかしてもらえるとありがたいんですよね……。

 そんな僕にお構いなしで、イルクはブツブツと唱え始める。

 

「スキル……腕力向上」

 

 ちょっとイルクさん?なんか怪しい単語聞こえてきましたけど?大丈夫ですよね?ほら、メイドさんまだ震えてるよ?慰めなくていいの?お得意のイケメンフェイスで慰めたらどうですか?

 

「主よ、この悪しき者たちから我々を救いたまえ」

 

 あれ?なんか嫌な気がしてきたんですが……どうしたの?スイーツモンスター食べる?むしろ食べたくなったの?いいよ、あげる。あげるからもうそういう単語は止めてくれ。

 

「ハリネ……こっちも必死なんだ」

 

 あ、わかった!もうわかったから!!僕のことを世紀末とかアタオカとかイカレ農民とか言っていいから!!むしろ言って!僕こう見えてすっごくそういうのにぞくぞくするタイプだから!!

 

「必ず止めてこい。いいな?必ずだぞ?必ずだ……三回僕は必ずと言ったんだ。その意味が解るよな?」

 

「いまので四回目……なんちゃって」

 

「…………」

 

 ごめん。ごめんって。そういうジョーク言いたかっただけだから。だから腰を持たないで。そんなに筋肉ムキムキの腕で僕の身体を持ち上げないで。なに投球フォームに入ってるの?僕はボールじゃないよ?人間だよ?世紀末さんだよ?世界滅ぼしちゃうよ?そんなことしていいの?

 

「きゃゃおらぁぁぁ!!」

 

 イルクは雄たけびをあげながら、問答無用で僕の身体を投げた。ビュンと風を切る音が耳に聞こえたなと感じると、僕は空中にいた。目の前の風景は忙しく変わり始める。アカネ、下ネタエルフ、カズキ、青髪美青年……それらがすべて下で戦っている。僕は綺麗な放物線を描きながら、食堂へと入っていった。

 大きな音ともに僕は食堂の中央で頭から打つと、あまりの痛みに転がり続ける。痛い。あのキゾクオブキゾク、本気で投げ飛ばしやがった。強行にしてはやりすぎだ。第一僕は普通の農民だぞ。もしこれで死んだらどうするつもりだ。君の命がまずはないと思った方がいいからね。この子たちを止められるというのでしたら止めてみてくださいよ。貴方の雄たけび投球でやっつけてみてくださいよ。

 

 僕は頭にたんこぶができていないか確認しながら現状を考える。先ほど投げ飛ばされていた時に見えた景色ではすっごい戦いをしていた。その中で僕が巻き込まれたらたまったもんじゃない。イルクには悪いがもう一回廊下に逃げる隙があればいいのだが……。

 

「……ん?」

 

 その時、疑問を感じた。音がしない。これっぽっちも大きな音が聞こえない。何か違うことでもしているのか?そう思いながら起き上がり、周りを見渡す。アカネ、下ネタエルフ、カズキ、青髪青年……四人が全員こちらを見ながら目を見開いていた。それも得体のしれないものを見たような目ではなく、取り返しのつかないことをしたような驚いた目……。あ、これやばい。かなりやばい。僕がイルクを見ると、彼の姿とメイドさんの姿は廊下にはなかった。あいつやることだけやって逃げやがったな。

 その時、頭上から声が聞こえた。

 

「だ、だれが我々のマスターを傷物にした!!」

 

 その言い方やめて。変な意味に聞こえちゃう。

 下ネタエルフが身体を震わせながらつぶやいた。

 

「我々のマスターが……傷物にされた?」

 

 やめろ。お前にだけはそういう言い方されたくない。

 

「万死に値する……マスター、私にどうかご命令を」

 

 ご命令もなにもない。君たちがあの最強達と仲良くなっていただければ、僕が投げ飛ばされる心配もなかったんだ。そもそも、どちらが僕と試験を受けるかでこんな戦争になったんだぞ?それを考えても君たちの所為だといっても過言ではない。イルクは……まぁ悪い部分もあると思うが、それでも比率を考えたら七対三くらいで君たちが悪い。

 

「相棒……誰にやられたんだ?」

 

 だから相棒は止めてくれ。

 

「きっとお兄様だわ……ミーナ、あのクソでバカな低俗で貴族の欠片もないゴミ人間の頭……爆発させられる?」

 

「わかった」

 

「まてまてまて!!」

 

 いきなり暴走するのはよしてくれ。私、今から暴走モードはいりますよってしっかり宣言してから暴走してくれ。ていうか、自分のお兄様ですよね?そんなことしていいの?ミーナちゃんもなんでオッケーしちゃうの?ていうか、そんなこともできるの?魔王様ってなんでもありなの?

 

「なによ?アンタそんなことができるの?」

 

 下ネタエルフはミーナに質問したが、それに答えたのはアカネだった。

 

「前にミーナの力使ってお兄様に魔法をかけたのよ。本当はちょっとした脅しのつもりだったけど……まぁ、仕方ないわ」

 

「へぇ……あの子、意外にやるわね」

 

「ミーナは元魔王よ?それくらいできるわよ」

 

 なんで自分のお兄ちゃん爆発させる話で意気投合してるんですか?すっごく怖い。それにいつの間にそんな恐い魔法をイルクにかけたの?前から暴走モードだったの?容赦がない最強だな

 

「ほう、人間にしては頭がいいな」

 

 良くないだろ。全く良くないだろ。どう考えたら自分のお兄ちゃんの頭をアボーンさせるのが頭がいいとなるのでしょうか?あの人間頭おかしいなの間違いではないでしょうか?

 青髪美青年の言葉にカズキは自慢するように言った。

 

「当然だろ?安全は保障されねぇと意味がねぇ……俺らはハリネのことを四六時中考えているからな」

 

 きもい。シンプルにきもい。男の君がそういうことを言わないでくれ。安全を保障してくれるのは非常に有難いが、四六時中は止めてほしい。特に男の君がそれを言うと少しぞっとする。ていうか、なんで君たちも人の頭アボーンの話で意気投合されているんですか?やめてくださいよ。こんなに躊躇がない人間が増える僕の身にもなってくださいよ。誰かまともな人はいないんですか?

 

「魔王……今は休戦だ。その魔法を早急に発動させなさい」

 

 ニートのくせに爆発させろ請求するのはよくないと思いますよ。お前のお兄ちゃんが対象だって知っていて請求しているんですよね?頭おかしいって自分で気づかないんですか?

 

「もうやった」

 

「……は?」

 

 やった?やったってなに?アボーンさせたの?イルク、僕の知らないところでミートボール出しちゃったの?え?マジで?躊躇がすっごくなかったから、事態が呑み込めないのですが、今どういう状況なんですか?お兄ちゃん、ミーナちゃんをそんな道徳ない子に育てた覚えないんだけど。もっと女の子らしい育て方させた方がよかったかな?

 その言葉を聞いたミカサが僕のところに降りてきて、いつもの服従ポーズを取り始める。

 

「オールドマスター、ご無事ですか?」

 

 それは僕の台詞だ。君たちの頭大丈夫ですか?

 

「マスターを傷つけた者はいなくなりましたので、ご安心を」

 

 いなくなったのではない。お亡くなりになったんだ。たったいま、君たちの暴走により一人犠牲になったんだ。そこを間違えないでほしい。

 

「次はここにいる人間を__」

 

「もうやめてくれ」

 

 僕はため息をつきながら、その場で座り込む。なんでこうなったんだ。

 そもそも犠牲者が出るまで発展する話ではなかったはずだ。マリトッツォを食べながら、口喧嘩で解決もできた。一人まともな人がいればこんな事態に発展することはなかったし、第一僕が学校に行かなければここまでの騒ぎにはなっていなかった。普通考えればわかるだろう。僕はただの農民であって、君たちのマスターでもなければ、最強でもない。魔王に好かれる要素すらないんだ。

 

 ああ、これからどうなるんだ?貴族の一人を殺したんだぞ?とてもじゃないけど、無実で済むはずがない。僕はなにもやっていないからなんの罪にも問われないか?そんなはずはない。この子たちはマスターと慕っているし、最強たちも僕のためにとか言いながら、戦争していたし……。これじゃ僕が最強最悪頭おかしい軍団のリーダーじゃないか。どう抗ってもそれにしか見えない。そうとしか捉えられない。しかもイルクを慕っていたメイドさんもこの戦争を見ていた。目撃者も証言者もそろっているような状況だ。万事休すってやつか?もうダメだ。頭壊れそう。

 

「ま、マスター?」

 

 ミカサの心配そうな声を他所に、僕はミーナの名前を呼ぶ。

 

「…………ミーナちゃん」

 

「おにい、あたま、いたい?」

 

 ミーナは僕に呼ばれると、スッと空から降りてきた。うん、お兄ちゃん頭痛い。いますっごく頭痛い。そうやって優しく頭撫でられても全く痛いのが飛んでいかない。満身創痍ってやつになったかもしれない。

 僕はミーナにダメ元でお願いチャンスを行使した。

 

「ミーナちゃん……イルクを生き返らせてあげて?おねがぁい」

 

「……わかった」

 

 しゃおらぁ!!聞いたか!?魔王が解ったって言ったぞ!?生き返るよね!?本当に生き返るよね!?

 

「ま、マスター!?それはどういうことですか!?」

 

「そうですわ!!マスターを傷つけたイカれた貴族ですよ!?」

 

「そうです。それは少し考えなおされた方がよいかと」

 

 やかましい!!アタオカの言うことなんか聞きたくないわ!!こちとら大変なんじゃ!!死刑になるかもしれないんだぞ!?お前らはなんとかなるかもしれないけど、こちとら農民だぞ!!

 

「あー……やめたほうがいいと思うぞ?」

 

「お兄様には悪いけど、仕方ないわ。だってハリネを傷つけたんだもん。お兄様もそれくらいの覚悟はあったはずだし……そこにハリネのやさしさを使うのは良くないわよ?」

 

 最強達も味方して、僕の意見は民主主義の必殺技である多数決で負けてしまった。いや、負けそうになっている。しかし、僕にはまだ考えがある。それは君たちが僕を慕っているというのを逆手に取るような手法で、誰しもにこれが通じるわけではない。しかし、現段階において、僕はこの最恐にイカれた連中らの事実上のトップだ。この民主主義をぶっ壊すことだってできるはずだ。

 

 僕は立ち上がって、手を広げた。それに反応したのは、ミカサやその取り巻きであった。

 ミカサ達は何かを悟ったのか、一瞬驚いた表情を浮かべ、スッと片膝をつき、頭を深く下げた。僕は広げた手をパンと叩き、ここにいる全員が僕に注目するように促す。乾いた音がこのボロボロな食堂に響いた。

 

「これでもう終わり」

 

 腑抜けた声になってしまったのは許してほしい。なにせこんなことしたことないから、どうすればいいのかよくわからなかったし、どういう発言がいいのかもよくわかんない。王様にでもなればもっといい発言ができるのだろうか。

 ともかく、僕はここにいる全員にそれを宣言した。しばらくして、ミカサが静かに答えた。

 

「……イエス・マイロード」

 

 ミカサがそう呟くと、赤い鎧と剣が粒子となって消えていった。それにつられ、下ネタエルフの周りを飛んでいた怖い顔をした小鳥たちが、元の表情に戻りながら大きく穴が開いた天井に向かって飛んで行った。

 どうやら僕は多数決に勝ったらしい。あんなクソみたいな宣言でこの子たちをどうにかできるんだ。相当僕のことを慕っている証拠だな。

 アカネはため息をついて僕を見ながら、苦笑する。

 

「不本意だけど旦那にそう言われたら止めるしかないじゃない」

 

 それは止めてくれ。君の旦那さんにだけはなりたくない。

 

「お前のそういう優しいところ、俺は好きだぜ」

 

 君のそういう勘違いが生まれそうな言葉は僕は嫌いですね。

 

「たたかい、すき」

 

 ミーナちゃんはもう少し空気読もうか。いまそういう空気じゃないよね?間違ってもそんなことを言ってはいけないよ?後でお兄ちゃんと一緒に道徳のお勉強しようね。ミーナちゃんは学校行く前にそこから始めようね?

 アカネは先ほどの僕のようにパンと手を叩くと、ミカサ達の方を向いた。

 

「さてと……喧嘩はもう無理だから、話し合いで決めましょうか?」

 

 それはまだ続くんですね?僕が学校に行くのは決定なんですね?わっかりました。もうそれでいいんで、あとは自由にしてください。僕は疲れました。イルクのことも心配なので、探してきますね?

 僕は気づかれないように食堂を後にし、真っ先にトイレに直行した。ズボンから黄色い液体が漏れていなかったのは奇跡としか思えなかった。




お気に入り数も順調に伸びていることが非常に嬉しい限りです。
もっと増やせるように頑張りたいです。評価とか感想もいただけるように頑張っていくのでよろしくお願いします。

十話で入学させて見せます。

次は水曜か金曜に投稿します。できないようでしたら、土曜日には絶対に投稿します。
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