AnotherSEED   作:another12

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静かなる反抗ーー2

静かなる反抗ーー2

ーーー強襲戦艦“アテナ”作戦室 同時刻

 

 

 

“RAVEN”の隊員達が集められた照明の抑えられた部屋に、ハルバートが入室して来る。

ハルバートが入室するなり、誰かが声を上げた。

 

「アテーンション!!」

 

一斉に敬礼をして、立ち上がる隊員達。

ハルバートが手でそれを制すると、隊員達は着席する。

 

「事態は切迫している。よって、全てを迅速に進める。」

 

 大型スクリーンを背にして、ハルバート大尉は言った。

 ブリーフィングルームの椅子はほとんど埋まっていた。

 MSパイロットに輸送機パイロットや歩兵戦闘員など総勢で三○名以上の兵士たちが顔を並べる。その顔ぶれはまちまちで、人種や民族、年齢に性別もごった煮だった。

 その中にはレベッカ・ゲート、ゼル・ウィガーの姿も混じっていた。ハイジャックの知らせを受け、あわててオーブから“アテナ”へ戻ってきたのだ。

 

「これ以上後手に回れば、事態は悪化する一方だろう。“RAVEN”としては、こうして全世界の注目を集めている事件に関与するのは避けたいが、この事態を防げなかった責任があるのも、遺憾ながら事実だ。以上を踏まえた上でーー」

 

 大尉は言葉を切り、辺りを見渡した。

 

「われわれ“アテナ”が救出作戦を遂行する。プランは次の通りだ。」

 

 スクリーンにオーブの外郭区の衛生写真が映し出された。その写真の上に記号と文字が重なり、敵兵士のくわしい配置が示される。

 そして、救出対象者が乗せられているジャンボ機の位置。

 

「“BD-X1”六機に先立って、まず各種航空支援部隊が出撃すやる。攻撃ヘリと輸送ヘリの順だ。まずーー」

 

 ハルバートが事細かに作戦を説明していった。ヘリの着陸地点、MSの展開方法、秒刻みのタイムテーブルーーー

 

「MSは本艦から直接、ストライカーパックを全機に装着して射出する。過去八時間以内にアルコールを摂取したパイロットは名乗り出ろ。」

 

 ストライカーパックとは、かつて“ストライク”という旧地球連合が開発したガンダムの換装装備の一つ、高機動戦闘に特化したユニットだ。

 アルコールのくだりでレベッカとゼルが顔を見合わせた。ゼルが小声で『10時間前だからセーフ、セーフ。』とささやく。

 

 ハルバートは二人の様子を一瞥したが、何も言わずに説明を続けた。

 

「最大の問題は爆弾だ。」

 

 件のジャンボ機の透視図が映し出され、ユウイチの報告による爆弾の位置がマークされる。

 

「この爆弾は遠隔起爆方式と予測される。我々の第一撃から立ち直り、テロリストがスイッチを押すよりもはやく、この爆弾を無力化しなければならない。」

 

「しかし、どうやって?」

 

 歩兵チームのウェッジ・アルバ少尉がたずねると、ハルバートは爆弾の処理方法をおおざっぱに説明した。それを聞いた兵士たちはある者は愉快そうに、またある者は不安げに顔を見合わせた。

 

「ですが、そうなるともう飛行機は飛べません。」

 

「そうだ。だがジャンボ機には、もともと燃料がない。戦火の中での給油も論外だ。人質は別の飛行機に載せて運ぶしかないが、それでも問題が残る。人数だ。」

 

 乗客乗員名簿が画面の中をスクロールしていた。四二〇名強。ここ最近のテロでも最大規模の人質だ。

 

「本艦が保有する輸送機を総動員しても全員を運ぶことができない。そこでフェリクス島から輸送機を二機飛ばした。すでに出発しており、作戦開始前に空中で給油する。」

 

「あれの定員は一五〇名くらいでは?」

 

 隊員の一人、ジェノス・ハザード中尉が質問した。

 

「定員はあくまで定員だ。我々の目的は彼らに快適な空の旅を提供する事ではない。……この輸送機は作戦開始と共に強行着陸を行い、五分以内にジャンボ機から人質グループを収容、離陸する。」

 

「たった五分? そりゃキツい」

 

 人質の誘導担当のウェッジがうめいた。

 そばのゼルが苦々しげに。

 

「五分でも長いぜ。あのデカブツを守るのは……」

 

「それにも理由がある。」

 

 言って、ハルバートは基地周辺の地図を映し出した。

 

「この基地は、幹線道路沿いに位置している。敵増援部隊の到着は、きわめて早い可能性がある。気休めではあるが、“アテナ”から道路上にスマート地雷を散布する予定だ。あくまで足止め程度だろうがな。」

 

「着陸中、どちらかの輸送機が破壊された場合は? もしくは、飛べない状態だったり。」

 

 レベッカがたずねた。

 

「それでも片方は離陸させる。席に余りがあっても、だ。」

 

 大尉は冷然と言った。

 

「取り残された人質は、可能な限り輸送機に積む。最終的にMSの収容は諦めても構わないがその場合は確実に“BD-X1”は破壊してもらう。これは諸君の命より優先される。そうならない事を祈っているが。」

 

 室内が重苦しい沈黙に包まれた。

 

「……すでに理解していると思うが、これは非常に冗長性の低い作戦だ。わずかな失敗が致命的な損害をもたらすだろう。だが、この作戦を成功させられるのも全世界で我々だけだ。各員の能力に期待する。……他に質問は?」

 

 兵士たちは沈黙を守った。

 

「では準備に入れ。以上」

 

 一同がわらわらと立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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