AnotherSEED   作:another12

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消えゆく光

 

 

 

 

 

「走って、走って、走って!」

 

 人質誘導犯のウェッジが叫ぶ。アイドリングを続ける輸送機に、人質グループがなだれ込んでいく。

 

 リナの“BD-X1”は、片方の輸送機のそばで人質の列を守るようにして膝をついていた。視界に敵は見えない。あらかた制圧してしまったのだ。

 

「生徒がひとり連れ去られたままなんですっ!」

 

 列から離れ、人質の1人が叫んでいた。二十代半ばくらいの女性。先生だろうか。

 

「探しに行かせてくださいっ! 私の生徒なんです!」

 

 リナはため息をつき、外部スピーカーを入れた。

 

 『そこの先生、彼女はデスティニープラン適応外だった。文書を偽造していたの。だから、連れては帰れない。』

 

「て、適応外? 偽造? 私の生徒が……私の生徒に……害虫が?」

 

 仕方ない。

 彼女をもはや日常に返すわけにはいかなくなった。こうするより他、なかった。そう自分に言い聞かせる。

 しかし、あれだけ熱心な先生も自分の生徒がデスティニープラン適応外と知った途端にこの反応か。

 ーー問題は根深いわね、ホント

 

 しかし、ユウイチ達が遅すぎる。ゼルは今も戦闘中だ。

 三十秒前に『ちょっと手こずる』と交信してきたきりだが……。

 

「アサルト3、まだなの?」

 

 リナは無線で呼びかけた。応答はない。

 人質グループと誘導班がもれなく収容され、輸送機の後部ドアが閉じ始めた。

 

「アサルト3、はやくユウイチ達を連れてきて。」

 

 やはり応答はない。

 

「アサルト3、応答せよ、アサルト3」

 

 返事はない。

 

「ゼル、こんなときにふざけてるの⁉︎ 怒るよ?」

 

 それでもゼルは答えなかった。

 

 

 

 

 

 

 滑走路の上で、ユウイチは振り返った。ゼルは追ってこない。その一方で輸送機は滑走をはじめようとしていた。あれに乗るのはもう無理だ。撤退するMSの輸送ヘリに拾ってもらうしかない。

 だが、こちらに向こうが気づいてくれるだろうか?

 

 ーー無理だな。

 

 炎と煙で視界は悪く、上空からでは発見できないだろう。そこで東の方角から十数発の弾丸が飛んできた。基地のあちこちに着弾して、派手な爆発を起こす。うち一発はユウイチ達の五〇メートル手前に着弾した。

 

「な……なに?」

 

「敵の増援だ。」

 

「……最悪ね。」

 

 額の汗を拭ってレベッカが愚痴る。身を低くして、建物の陰に隠れた。敵の増援が来た以上MSの輸送ヘリさえ自分達を待っていられないだろう。なんとかしなければ……。

 しかし、合流の手立てはなさそうだった。

 そうしているうちにジェット輸送機が轟音をあげ、彼らの前を通過していった。

 

「あぁ、……いっちゃった。」

 

「仕方ない。」

 

「どうすんのよ……。」

 

 暗い事実が覆い被さってきた。ユウイチ達三人は味方との合流に失敗しつつあるのだ。

 

 

 

 

 

 西の空へ輸送機は飛び立った。エスコート役の“BD-X1”が、ぴたりと寄り添い二機を守る。リナはそれを見送り、

 

「いちばんの厄介事は済んだわね……」

 

 ぽつりと呟いた。

 

『パーティは終わりだ。敵の大部隊が近づいている』

 

 MSを輸送するための艦が、彼女らのそばに降下してきた。

 

「待って、アサルト3からの連絡がないわ。ユウイチとヒナにアサルト2も……」

 

『こちらショット4だ。』

 

 上空で警戒にあたっていた攻撃ヘリから連絡が入った。

 

『いま、“BD-X1”の残骸を発見した。アサルト3のもと思われる。基地の北の川だ。』

 

「……なんですって?」

 

 リナは青ざめた。

 

 『バラバラだ。胴体も真っ二つになっている。』

 

 いったいなにが……? 胴体、つまりコックピットが?

 

「パイロットは無事なの⁉︎」

 

『確認できません。煙が強くて……』

 

「パイロットを探して! アサルト3を、ユウイチは⁉︎」

 

 無線の向こうで、ヘリのパイロットが唾を飲み込んだ。

 

 『リナ少佐、自分もそうしたいですが、彼らを捜索している時間はありません――』

 

「一分でいい。私も――」

 

 それを新たな声が遮った。

 

『捜索は厳禁する。ただちに撤退せよ。』

 

 命令を出したのは、小型の偵察ヘリから全体の指揮を取っていたレッキス大尉だった。

 

「大尉……!」

 

『リナ少佐、いくらあなたでも今回ばかりは作戦指揮を取やる私に従ってもらいます。増援部隊も橋を越えている。時間はありません。』

 

 有無を言わさぬ口調だった。さらに大尉は、

 

 『ショット4へ、“BD-X1”の残骸に残弾全て打ち込め。ネジ一本でも敵に渡すな。』

 

 『ショット4……了解』

 

「やめ……」

 

 攻撃ヘリが、北の川目掛けてロケット弾を発射した。遠い爆発、ゼルの機体は燃え上がり、粉々になった。

 

 『アサルト1、輸送艦とのドッキング急げ。』

 

 冷酷なハルバートの言葉に、瞬間、リナは狂おしいまでの怒りを覚えた。喉のすぐ下まで汚い言葉がせり上がる。しかし、彼女はなんとか苦労してその言葉を飲み込んだ。

 

「アサルト1……了解。」

 

 彼は正しい。敵は本当にすぐそこまで来ていた。

 

 

 

 

 

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