AnotherSEED   作:another12

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レクト・ジャスティス

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユーフェミア達との交渉を終え、王宮内での滞在を許されたユウイチらは“RAVEN”のMS輸送艦“シュヴァルべ”へと戻っていた。

 局地的任務に対応するために“アテナ”が移動できない場合に使われるMSと隊員を輸送する艦だ。サイズ的にはMS四機を積み込むので精一杯で、対艦戦の装備もあまり積んでいない。本当にMSと隊員を輸送する役目だけに使われる事が多い。

 

「敵はオーブで出くわした連中と同じだろうか。」

 

 輸送艦の通路をリナと共に歩きながら、ユウイチが尋ねる。

 

「その可能性が高いでしょうね。総帥達はどういう連中かマークしてはいるみたいだけど…」

 

 今回、未然にこの情報を仕入れて防げたのは“RAVEN”が随分前から敵をマークしていたからに他ならない。だが、自分達は敵の情報を全く知らない。規模も、名も、人員も。ユウイチの脳裏にオーブで対峙したマガシの染み付いた下卑た笑みが過る。

 

「ミナミがさっきの戦闘で撃墜した敵の機体を解析してるわ。何か分かると思うわよ。」

 

 ユウイチとリナが会話を交わしながらある部屋に入室する。

入室してすぐに、メガネを掛けてパソコンをカタカタと弄っている少女が目に入った。少女は入室してきた二人を見とめると、掛けていたメガネを頭にずらし特徴的なえくぼをにこやかに傾けて二人に声を掛けた。

 

「あ〜、おかえんなさ〜い。」

 

「ただいま、ミナミ。」

 

 ミナミ・マクスウェル技術開発部局長。“RAVEN”の誇る天才的メカニックだ。金色の髪をアップテンポにしてくくりあげ、薄緑色の瞳に細身の身体、短めのショートパンツ姿だ。

 “RAVEN”において、軍服は決まった形はない。標準の軍服があるものの、あくまで隊員の自由度を大事にしている風潮があり軍服を自分の好みに発注して着ている者が多い。スカートを好んで着用する女性もいれば、カッチリと上から下まで露出度の少ない軍服を好んで着ているものもいる。

 軍服は世界に捨てられ自由を制限された中で個性を強調出来る数少ない部分なのだ。

 

「ユウイチ、“スパイラル”の具合はどうだった?」

 

 ミナミが嬉々とした目で尋ねてくる。

 

「概ね問題はないが、少しばかり投擲したシールドを収納するのが長く感じた。 」

 

 ユウイチの言葉にふむ〜と顎に指をおいて考え込む仕草をするミナミ。

 彼女が考え事をする時にする癖だ。

 

 「なるほど〜、腕の関節部分か、シールドとの接続箇所に引っかかりがあるのかもしれないなぁ〜。あとで少しいじっとくよ。」

 

「すまない。頼むよ。」

 

 ミナミの技術力は常に感嘆する。まだ若干17歳にして“スパイラル”を調整させ、さらに開発もしている。それだけでなく“RAVEN”のMSは全て彼女が管理、修繕し、カスタム武装に関しては設計までしている。当然用意した武器や整備した機体等に一切の不良は無く、設計作成した武器はいずれも高性能。 果ては、隊員達に無茶振りをされてもキチンと期限に合わせる等、まさに技術者の鑑である。

 オーブのモルゲンレーテ社で働いていた両親を持っていたと聞いたことはあるが、あまり彼女の深い話を本人から聞いた事はないので事実はわからない。

 

「ミナミ、さっきの敵機のデータは取れた?」

 

 リナが尋ね、ミナミが待ってましたとキーボードを指で叩きつけるように操作してデータを部屋の前面に備えられた電子モニターに敵機の情報が表示される。

 

「リナの読み通りだったよ。機体こそ十年前の中古だけど、中身が全然違うんだ〜。」

 

「中身が?」

 

 ユウイチが尋ね返す。

 

「うん。外装だけ中古品で中身は超最新鋭の技術を組み込んであるの。わざわざこんな手の込んだ事をやるなんて暇な連中だよね〜。」

 

 機体は十年以上前に開発され活躍した当時の主力MSばかりだ。今となっては型落ちされ、マニアの間での人気は高いもののわざわざスペックで劣る機体を使う物好きもいない。そしてその生産ラインも停止しているため量産されている筈もない。自分が知る範囲では。だが、自分が戦った感覚は型落ちの量産機なんてものではなかった。それこそ、“ザクイェーガー”にもパイロットの腕がどうとかではなく、機体の事性能が劣らない気がする。

 

「どれぐらいのスペックを持っていたんだ?」

 

「私達の“RD-X1”と同等かな。悔しいけどね」

 

 “RAVEN”隊員が愛用する“RD-X1”。それこそ、ZEUSの主力量産機“ザクイェーガー”にも引けは取らない。しかし、敵はそれだけの技術力を有している。そしてそれを知られたくないが為にわざわざ型落ち品のボディを着せて偽装までさせている。ユウイチの隣で深刻な面持ちで立っていたリナが口を開いた。

 

「嫌な予感が当たったわね。次に敵が攻めて来た時、なにが起きてもいいように対処しておく必要があるわ。アスカ、アレは使える?」

 

 アレ、という言葉を聞き指で押したくなるようなミナミの片えくぼをへこませて嬉しげに口元を緩める。

 

「勿論! あと簡単なOSの調整だけでいつでも動かせるようにできるよ!」

 

 前面のモニターにユウイチもよく知っている機体に酷似したモビルスーツが映し出されれる。ユウイチが呆気に取られていると、ミナミがモニターに映る機体を輝いた目で見ながら語り出す。

 

「STTS-303 ”レクト・ジャスティス”、“スパイラル・フリーダム”の兄弟機として開発した機体だよ。スペックならあの“デスティニー”にも引けは取らないんだ。」

 

 ウキウキとした口調で語るミナミの話しを聞きながら、ユウイチはモニターに映る機体に釘付けだった。“スパイラル”と兄弟機として開発されただけはあり、二機は確かに似通ったものがあった。

 

「ユウイチの“スパイラル”をサポートする為に、リナにこの機体を乗ってもらうのよ。」

 

 なるほど、それでリナが自分には配備予定の機体があると言っていたのか。

 彼女はパイロットではあるものの立場上味方に指示を出す機会が多い。それを考慮した上での機体配備なのだろう。

 

「要は暴れ馬の手綱握りってわけね。」

 

 軽いウインク混じりの視線をユウイチに向けるリナ。

 誰が暴れ馬だ。

 ユウイチがリナのニヤニヤとした挑戦的な笑みにうんざりとした気持ちになっていると、部屋に誰かが扉を開き、入室してきた。

 

「くぅ〜! ずっとスカンジナビア王国の防衛隊に睨まれっぱなしで疲れたよ」

 

「ご苦労様、ジェノス。」

 

 肩をほぐしながら入室して来たジェノスにリナが労いの言葉をかける。

 入室するなり、手近にあったイスに腰掛けて背もたれにうだぁっと持たれかかるとジェノスは口を開いた。

 

「…敵さんは間違いなく、ミラージュコロイドを展開させた艦を付近に待機させてる。そんな技術を持つ奴らって一体何者なんだろな?」

 

 防衛隊の話しによれば、敵は海から来たという。わざわざ海をモビルスーツで渡って攻めてくるほど非効率的な事はない。なら考えられる事はミラージュコロイド搭載の艦を付近に待機させているという事。敵はいま間違いなく態勢を整えているはずだ。戦力を再編成し、また攻撃を仕掛けてくるだろう。

恐らくその時が、自分達にとって正念場になる。

 

 

「考えたくもないな。世界の数年先を行く技術を持っていると言われてる“RAVEN”と同等の技術力を持った連中が相手だなんて。」

 

 ユウイチが暗澹たる気持ちで呟いた。

 “RAVEN”は世界よりも数年進んだ技術を有している。公にされていない為に秘匿されているが、ZEUSの連中が知ればその技術を欲するに違いない。

 強すぎる力は争いを呼ぶ。

 

「どんな相手であろうと、私達のやる事は変わらないわ。」

 

 リナが意思のこもった澄んだ青い瞳で言う。

 ユウイチ、アスカ、ジェノスの三人は頷いてそれに答えた。

 

「敵が来るまで少しは余裕もあるだろうし、少し身体を休めましょう。」

 

「そうだなぁ。移動続きで少し身体が重いよ。」

 

 椅子に座りながらうーんと伸びをするジェノス。

 

「私はリナと少しだけ“ジャスティス”の調整しなきゃだから、二人とも少し休んで来たら?」

 

 ミナミが二人の体調を気遣い声をかける。

 なんだかこんな状況でいてもたってもいられない心境だったユウイチはその言葉を断ろうと思った。

 

「いや、俺は…」

 

「少し外の空気吸って来なさい。ここに向かう途中もだけど酷い顔してるわよ?」

 

 リナがユウイチの紡ごうとした言葉を遮り、心配の声を上げた。さらに反論しようとしたユウイチだったのだが、ユウイチに向けて憂わしげな表情を向けるリナに観念したように小さくため息をつき、ユウイチはそれに従う事にした。

 

「…分かった。少しだけ外の空気を吸って来るとする。」

 

「素直でよろしい。いってらっしゃい。」

 

 なんだか嬉しげなリナの笑顔に見送られ、ユウイチは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

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