AnotherSEED   作:another12

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白い死神ーー3

白い死神ーー3

 

 

 

 ジェノスは機体を休ませる間も無く向かいくる敵MSを迎撃していた。

 眼前に迫る“リベンジ・ディアス”をビームサーベルで切り捨てる。

 かなりの敵を倒しはしたが、まだ敵の数が多い。

ーーなんとかここで抑えられてはいるけど、こちらも被害が大きいな…

 

 いかに卓越した操縦技術を持つジェノスといえど防衛隊の全員を守りながら戦うのは不可能だ。なにより、“ウィンダムⅡ”よりも敵のMSは性能が数段上だ。それに加えてこの物量差。劣勢を強いられるのも無理はなかった。

 

『う、うわああああっ!!』

 

 防衛隊の“ウィンダムⅡ”がトーデスシュレッケン12.5m砲を錯乱し後退しながら撒き、目前に迫る黒いMSから距離を取る。ジェノスは両肩のビームマシンガンを放ち、防衛隊に迫る“リベンジ・ディアス”のコックピットを蜂の巣にする。

“ウィンダムⅡ”の目前で爆発四散し、機体の残骸が落下していく。

 そんなジェノスに敵が四機狙いを定めてきた。

 

「チッ! 主力から落とそうってかい?」

 

 ジェノスは毒づきながら機体をきりもみさせて、あちこちから放たれるビームピストルの連射から逃れる。機体を急加速させて一機の“リベンジ・ディアス”に肉薄し、ビームサーベルで両断する。

 しかし、息もつく間も無く敵が背後から迫る。しかし、ジェノスが対応するよりも先に別の角度から放たれたビームが敵機を貫いた。

 見れば、リナの“ジャスティス”がビームライフルを右手に、左手に先からビーム刃を発生させたシールドを構えて残る二機に突っ込んでいた。敵がビームサーベルを抜き放つ前にリナの高速で振り下ろされたビームブレイドが敵を袈裟斬りしていた。

 背後からもう一機が迫る。リナはフットペダルを強く踏み込む。そして、敵機が気づいた時にはその腹にビームブレイドが突き刺さっていた。

 敵が爆発する前に刃を抜いて蹴り落とす。

 

「荒ぶってるなぁ…」

 

 シュミーレーション訓練を受けていたとはいえ、今日受領したばかりの機体であそこまで動かせるものなのか。

 彼女が荒ぶる理由、それは間違いなく敵機の主力である緑色のガンダムと戦っているユウイチの事を気にかけているのだろう。

 

『ボサッとしてないで、さっさと片付けるわよ!』

 

 リナの厳しい声が届く。

 ジェノスは自嘲気味な笑みを浮かべて、高速で敵の群れに突っ込んでいくエースの背を追った。

 

 

 

 

 

 幾度目かの光刃が振り下ろされた。しかし、またしても敵のビームシザースにより防がれる。

 

『楽しいなぁ! この時間が無限に続いてくれるだろうか!』

 

「とっとと堕ちろっ!!」

 

 もう片手に握られたシールドからビームブレイドを発生させ薙ぐ。しかし、すでに敵機は離脱している。

 距離を取った敵機が胸部の誘導プラズマ砲フレスベルグを放った。

 

ーーーアレかっ!

 

 ユウイチはビームをかわすのではなく、シールドで受け止める。

 大きく機体が振動で揺さぶられ、後ろに弾かれる。巨躯のガンダムが光の鎌を携えて迫る。ユウイチは機体を立て直し、ビームサーベルで受け止める。しかし、その振るわれた光刃を幾度となく受け止めていたサーベルが手元からポッキリと折れてしまった。

 ユウイチは動揺を見せず、すぐさま敵に折れた柄を投擲する。

 折れた柄刀が敵の右の殻のようなバックパックにかろうじて突き刺さる。

 

「これも、もってけ!!」

 

 空いた右手で腰のビームライフルを抜き放ち、突き刺さった柄に向けてビームライフルを放つ。誘爆させるつもりで放ったライフルは奇しくも寸前で軌道を変えて青い空を貫いた。

 

『そんな程度でこの鉄壁の守りは崩せないよっ!!』

 

「チッ!」

 

 敵機から距離を取り、残った対艦刀を両の手で握る。

ーーこのままではジリ貧だ。

 敵は余裕すらある様子で刺さった柄を抜いて放り捨てた。

 あの厄介な装置すら何とか出来れば、敵の大きな隙を作る事も出来るはずだ。

 しかし、あの装置を破壊する算段が今のユウイチにはない。

 

『どうしたんだい? もうお終いかぁい!?』

 

 敵機が迫る。敵機に応戦する。レーザーの刃とシールドが交錯し、火花を上げる。ユウイチの“スパイラル”が敵の気迫に押されかのように下がり、バーニアを全開にして上空に逃れた。

 

『私と君の狂想曲だ! フィナーレにはまだ満足していないよ!』

 

 シャネルがしまりのない笑みを浮かべてユウイチを追う。

 

「貴様と協奏曲だなんて、耳が腐る。」

 

 ユウイチは向かいくる“フォビドゥンシャーレ”に向けてビームライフルを幾度か放つ。

 無論、そんなものは意味もなく放たれたビーム全てがその軌道を逸らして背後に飛んでいく。ユウイチは注意深くその軌道を追う。

 

『無駄、無駄ぁっ!』

 

 シャネルがせせら笑いながらビームシザースを振り回して躍りかかる。

 ユウイチはその鎌から逃れながらも懲りもなくライフルを3連射する。それぞれ違う箇所に向けて放たれたビームはそれぞれの軌道を描いて逸れてゆく。

 

『感じるよっ! 君の命の鼓動が! 私を包んでいくぅ!!』

 

 “スパイラル”の左手からシールドが射出され、それは先端からビーム刃を出力し、飛んでいく。

 敵機は簡単にその光刃をいなし、弧を描いて“スパイラル”に戻る。

 

『君も感じるだろう!? 私達は運命を共有しているのだから!』

 

 ーーコイツは、なにを言っている!?

 

 ユラユラとユウイチの攻撃全てをかわしながら迫る巨躯に、ユウイチは恐怖にも似た感情を抱く。敵機が胸部のフレスベルグを放った。ユウイチはハッとしてシールドの陰に身を隠す。極太の熱戦がユウイチの目前で屈折し、その右足を持って行く。

 

「っ!」

 

 ユウイチの目に少しばかりの焦りが滲む。

 完全にペースを敵に掴まれている。

 

『造られた存在ーー人類の可能性を秘めた種子!!』

 

 シャネルの含みのある言葉に、変な苛立たしさを覚える。

 ビームシザースとユウイチのビームサーベルがぶつかり合う。なおも、シャネルは目を血走らせながら語り続ける。

 

『君はその血に、疑問を抱いた事はあるかい!?』

 

「なにを…?」

 

 ユウイチの目が噛み付くように目前のガンダムを睨みつける。

 

『デスティニープランーー運命を遺伝子に縛られたというならば君も私もその運命の渦中にいるっ!!』

 

 こいつは何を言っている?

 何を知っているんだ…!?

 

『君の事はその遺伝子が教えてくれるっ!!』

 

 戦いの最中だというのに、シャネルの声だけが鮮明に耳に残る。

 その他の雑音など聞こえていない。心に、シャネルの言葉だけが木霊する。

 

ーー集中しろ、集中するんだ…コイツを倒さなければ…皆が…

………オーブが…!!

 

 オーブ…?俺はなにを…

 ふと、ユウイチの視界が目前に迫る“フォビドゥンシャーレ”を大きく映し出す。

 いや、ユウイチが今戦っている緑色のガンダムと似通ってはいるが、フォルムや武装が違う。持っている鎌もビームではなく、実体兵装に見える。サイズも“スパイラル”と同程度だ。とても似通ったフォルムをしてはいるが、自分が戦っていた敵ではない。

このMSは…一体…!

 

 ふと、眼前に迫ったMSが突如として先程まで戦っていたガンダムに変わる。

 いや、姿を重ねていたというのが正しいだろう。そして、この次に敵は大きな鎌をを振り下ろす。それがユウイチにはデジャヴのように見えていた。

 ユウイチは振り下ろされたビームシザースをシールドで防ぐ、しかし、勢いよく振り下ろされた光刃の威力により、“スパイラル”は大きくバランスを崩して地に落ちていく。ユウイチは何とか機体を立て直すも、すでに第二撃の構えに入っていた敵機が胸部のフレスベルグを構えている。

 

『これならどうだぁぁぁ!!!』

 

ーーー避けられない!

 

 敵がフレスベルグを放つその寸前、ビームがユウイチとシャネルの間を駆け抜けた。

 

 

『っ!』

 

 シャネルが慌てて、機体を旋回させる。

 視線を上げればリナの“ジャスティス”がビームライフルを砲口から煙を上げ、構えていた。

 

『ユウイチっ!!』

 

 たまりかねたリナが間に入って来たらしい。いや、しかし助けられた。

 あの一撃を避けれていた自信はない。

 リナがユウイチとシャネルの間に飛び込もうと機体を踊らせる。しかし、ユウイチはそれを制止した。

 

「待て、リナっ!!」

 

『待たないっ! これ以上待つのはっ!』

 

 リナがビームサーベルを構えてシャネルを狙う。

 しかし、ユウイチは再びリナに向けて叫んだ。

 

「違うっ! ライフルを今から言う箇所に俺のタイミングで当てられるか!?」

 

『なにをっ!?』

 

「出来るのかと、聞いてるんだっ!」

 

 ユウイチはビームサーベルを構えてシャネルに踊りかかっている。

 リナはユウイチの言葉の意味を分かり兼ねていたが、彼の意思の含まれた言葉を信じて頷いた。

 

『私を誰だと思ってるのよ! 余裕よっ!』

 

「流石だ。」

 

 ユウイチはニヤリと笑うと、ビームサーベルを構え翼を展開させた。

 高速機動で敵に切り掛かりながらリナに目標を告げる。

 

「敵の左肩…その少し上を狙って撃ってくれ! タイミングはコッチで告げる!」

 

『了解…!』

 

 リナはユウイチの指示通り、ビームライフルを構えて敵機に狙いを定めて待機する。敵機もゲシュマイディッヒパンツァーがあるからかリナには見向きもしない。

 

 だが、それでよかった。

 

『邪魔が入ったが、そろそろ終わりにしようかっ! ユウイチっ!』

 

 シャネルが高らかに告げる。

 

「言われなくとも貴様の戯言にはもううんざりしていたところだっ!」

 

 ユウイチはシャネルに対して吐き捨てながら、ビームサーベルを振り上げて切りかかった。敵機がその高速のレーザー刃をかわす。その瞬間、ユウイチは唯一の守りともいえるシールドを“フォビドゥンシャーレ”に向けて投擲した。

しかし、そのシールドは敵機の横をかすめて背後に飛んで行く。

 

『唯一の守りを捨てたとは、捨て身の覚悟かいっ!?』

 

 シャネルがビームシザースを振りかぶる。同時にユウイチは叫んだ。

 

「今だっ!!」

 

 ユウイチの号令と共にリナの“ジャスティス”のビーム砲塔からビームが迸る。迸ったビームが“フォビドゥンシャーレ”のゲシュマイディッヒパンツァーに作用され、その軌道を変える。正面からの不意打ちはこの機体に無意味だ。シャネルが無駄弾を、と嘲笑う。

 しかし、ゲシュマイディッヒパンツァーにより屈折したビームがユウイチが投擲したシールドに弾かれ、その軌道を再び変えた。

 

『っ!!』

 

 軌道を変えたビームは“フォビドゥンシャーレ”の背後から襲い、その両足を切断した。大きくバランスを崩したシャネルに向けて、“ジャスティス”がビームブーメランを投擲した。防ぐ間も無く右手をごっそりと切り落とす。

 二度の攻撃を受け、両足と右手を敵機は失った。

 ユウイチは落ち着いた声で告げる。

 

「ゲシュマイディッヒパンツァーは背後には作用しない。背後からのビームはわざわざ防いでいたからな。」

 

『くっ……フハハハハハハッ! そうあってくれなくてはねぇっ!!!』

 

 シャネルが両腰のレールガンを乱れ打つ。

 “RPS”装甲を積んでいる“スパイラル”にレールガンは効かない。しかし、シャネルの狙いは本体ではなかった。

 

 右腰のレールガンに命中し、爆炎をあげる?

 大きく爆煙を上げて視界が霧散する。ユウイチは見えない視界の先に向けて両肩の超高インパルス砲を射出すると、すぐに次の手を打った。

 

 近くを飛んでいた“ウィンダムⅡ”に近づき、その腰に装着されているスティレット投擲噴進対装甲貫入弾を手に取った。

 

「借りるぞっ!」

 

 それだけ言い残し、怒り狂って迫る“フォビドゥンシャーレ”に向き合った。

 眼下にはいつの間にやら海が広がっていた。交戦しながらかなり移動していたらしい。

 

『あぁ……君を追い詰めるこの感覚、この高揚、逝ってしまいそうだっ!!!』

 

 敵機のフレスベルグが放たれる。

 

「勝ってに言って(逝って)ろっ!!」

 

 ユウイチが叫ぶ。コックピットに警告アラームが鳴り響く。

エネルギー切れ間近だ。

 

ーーこれが最後の攻撃になるか…!!

 

 ユウイチは覚悟を決めながら、“フォビドゥンシャーレ”の砲撃をかわした。海面を捉えたビームが大量の水を蒸発させ、高々と白い煙を上げる。

 そのコックピットにはなおも、アラートが鳴り響く。バッテリー値はレッドゾーンに近づきつつある。

 

『苦しみを……もっと苦しみをおおおおおお!!!!!』

 

 シャネルの巨大な鎌が迫る。

 ユウイチは先程手にしたスティレット投擲噴進対装甲貫入弾を投擲する。敵はかわすこともなく、クナイのような貫入弾は  敵機の右側に展開されたバックパックに突き刺さり、爆発した。ゲシュマイディッヒパンツァーを作用させていたバックパックの片側を失ったのた。

 ふと、別の右上からビームが迸り振り上げたシャネルの鎌ごと腕を貫いた。

 絶妙なタイミングで放たれたリナの援護射撃だ。

 

『くっ……貴様ああああああああ殺してやる、殺してやるぞおおおおお』

 

 シャネルがリナを見上げて激昂する。

 幾度となく戦いを邪魔されて、シャネルの神経を逆なでしたらしい。

 ユウイチは腰元のビームサーベルを抜き放つ。シャネルが応戦してフレスベルグを放ち、“スパイラル”の左腕と左翼をごっそりと持っていく。しかし、ユウイチは止まらない。

 

「俺の前から、いなくなれえええええええ!!!!!」

 

 その光刃が真っ直ぐに敵機に突き立てられた。防ぐ手段もなく、ユウイチはビームサーベルを手放し、トドメの超高インパルス砲をコックピットに目掛けて勢いよく叩き込む。

 

『……っ……ご馳走です。』

 

 シャネルの呟きが聞こえると同時に、ユウイチはその場を離れた途端、大きな爆発を上げて“フォビドゥンシャーレ”が四散して海に消えていった。

 シャネルを退けたと同時に機体のエネルギーが底をついた。

 

「これ以上の継戦は不可能、か……」

 

 まだ敵機も残っているのに。なんてザマだ。と思った矢先だった。

 

『敵機が退いていきます!』

 

 ジェノスの声が響いた。

 ふと、見上げれば指揮官機を失ったからなのか残存していた敵機は踵を返して一斉に海へと退いていく。

 

『退くならば追撃はしない。全機帰投しましょう。』

 

 リナの指示が飛び、RAVENのスカンジナビア王国での戦いは終わりを告げた。

 防衛隊も同様に追撃はしないらしく、嬉しげ勝利の歓声を上げている。

 

 

 

 ユウイチは海の藻屑と化したあの男の言葉が頭に残って仕方がなかった。

ーー君の事はその遺伝子が教えてくれる…

それに、戦いの最中に過ぎったあのビジョンは…

 

 戦いを終えて敵を墜した筈なのにユウイチの心は晴れる事はなかった。

 

 

 そして、これがユウイチ達の長きにわたる辛く、悲しい戦いの序章に過ぎない事を後になって知るのだった。

 

  運命は、その刻限をゆっくりと刻んでいた。

 

 

 

 

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