AnotherSEED   作:another12

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革命同盟軍ーー1

 

 

side RAVEN

 

 

 

 

 モニターの向こうに、“リベンジ・ディアス”や見慣れないMSが多数並んでいる。

 そして、機体が立ち並ぶ目前に全員が黒い制服を身に纏った兵士達がズラリと規則的に並んでいる。一同の視線は演説台に立つ男を見据えている。

 そして演説台に立つ男の眼光は鋭く、迂闊に踏み込ませない風格がある。

 男は立ち並ぶ一同をゆっくりと一瞥し、静かに語り始めた。

 

 

「……人類最初のコーディネーター、ジョージ・グレンの告白から数十年。人類は長きに渡り遺伝子という人が生まれながらに持つ枠組みに捉われて来た。パレスティナ会議、トリノ議定書、月面会議、コペルニクスの悲劇という幾度となく交わされた話し合い…! アラスカ宣言、そして忌まわしき血のバレンタインを経て二度に渡るナチュラル・コーディネーター間の戦争…その先に示されたのは、ギルバート・デュランダル総裁による強制的ともいえる遺伝子の優劣を測る徹底的な管理社会制度、デスティニープランの施行! 何故こうも我々は遺伝子に捉われなければならない! 」

 

 男は高らかに手振り身ぶりを交えて雄弁に語る。

 男の背後のモニターに大きく映し出される自身の姿。この放送は電波をジャックし、地球圏、そしてプラントにも映し出されている。

 

「この世界、この宇宙に住むデスティニープランに飼われた人々へ、突然のご無礼申し上げる。私はアロク・ダ・リーフ。かつて人類最初のコーディネーターと呼ばれたジョージ・グレンの遺伝子を受け継ぐ男である。だが、我々はその遺伝子に捉われてはならない!! 遺伝子で優劣を決めて管理された世界で腐っていて良いのか! 否、断じて否! 遺伝子をより良く改変したコーディネーターがデスティニープランなどとのたまり牛耳る世界を私は認めない! 現に見よ! SEED因子保持者は蔑まれ、デスティニープランを受けていない者達は迫害されている!」

 

 男の背後のモニターに凄惨な写真が映し出される。

 幼い子どもの死体。子を守るように血を流し横たわる親の姿。集団で一人の人間を暴行する大人達の姿。

 

 そして映し出される、RAVENの紋章。

 

 

「知恵なき者は小さな知恵に酔いしれてしまう。力無き者は小さき力に酔いしれてしまう。刃物を持つ者はその刃物に酔いしれてしまう。ZEUSなどと全知全能ぶる貴様達に我が軍ーーー革命同盟軍は決して屈指はしない!! 見よ! この軍事力を! この兵力を! 我々がたかがテロリストと侮っているのなら見識違いも甚だしい! 我々は同盟軍ーーつまり、世界中の各国が我々と協力関係にあるのである! さて、どうでる? 全知全能たる神よ! 鎮魂歌を奏でて地球を片っ端から焼き尽くすか!? 我々はたかが思想家の集団ではない、人間の生きとし生ける自由を取り戻すための聖職者、聖戦である! ギルバート・デュランダル、及びそれに伴う我々の攻撃対象に宣戦布告させていただく、これよりオペレーション・パンドラを開始させていただく!! 我等と意見を異にする者達よ、我々を殺しに来るがいい! 我々は逃げも隠れもしない。だが、我らの言葉に賛同するならば反旗を翻せ! 我々革命同盟軍が世界を変革させるのだ! 青き清浄なる世界を取り戻す為に!!」

 

 最後に大きくアロクが振り上げた片手に賛同するように、演説を見守っていた兵士達が高らかに雄叫びを上げる。

 

 

 

 

 

「なんて無茶苦茶な事を…」

 

 放送が終わるなり、ジェノスが呟いた。

 ユウイチ、ジェノス、リナ、ミナミが輸送艦で革命同盟軍の盟主、アロク・ダ・リーフの演説を見守っていた。

  

 

「どうやら私達の嫌な予感は当たったみたいね…」

 

 リナが深刻な表情で告げる。

 近いうちに動きがあるとは思っていたが、まさかこんなにも早く動くとは。

 

「アイツらはこの日をずっと待っていたんだ。水面下で準備を整え、そしてZEUSに反旗を翻すこの日を…!」

 

 憎々しげにジェノスが吐き捨てる。

 革命同盟軍ーーーそれが奴らの名。

 

「だが、確かにどの国が革命同盟軍と繋がっているのか分からない今、ZEUSは下手に動く事も出来ない。」

 ユウイチが冷静に分析する。

 もし仮に強制的な攻撃に出れば、地球連合とナチュラルを大きく組み込んだZEUSの指揮系統が乱され、下手をすれば内輪もめになり内部崩壊し兼ねない。いや、その規模からするとZEUSにもその魔手が潜んでいると思っていいだろう。

 

「10年という月日をかけてゆっくと水面下で動いていたって、わけか…」

 

 ミナミが口を開く。

 RAVENにも察知されないように影を生き、そして着実にその規模を拡大していったのだろう。ギルバート・デュランダルのやり口に納得のいかない者達は多くいるだろう。

 そんな中、ユウイチは演説の中の男の言葉を思い、口にした。

 

「奴はジョージ・グレンの血を引く者ともいった…それが本当かどうかは別として、それだけで救世主のように見える者もいるだろう。」

 

 ジョージ・グレン、彼を歴史の大悪党と嫌う者達も多くいるだろう。しかし、ナチュラル・コーディネーター間の軋轢をほとんど無くしている今、それはあまり意味をなさないのだ。敵意はプラント、ギルバート・デュランダル総裁、そしてZEUSに向いている。そこに現れたジョージ・グレンの血を受け継ぐ者。人によるが、あの男を新時代の先駆者と見る者もいるかもしれない。

それほどに、あの男は画面越しでも伝わる圧倒的ともいえるカリスマ性と、人を惹きつけるオーラを身に纏っていた。

 

「オペレーション・パンドラ…か…」

 

 リナがポツリとつぶやき、ユウイチ達の視線がリナに集まる。

 

「神々によって作られ人類の災いとして地上に送り込まれた。人類最初の女性ーーパンドラ。パンドラは、「全ての贈り物」を意味するのよ。」

 

「つまりあの男は、自分達が人類に災いをなす為に贈り込まれたプレゼントととでも、いいたいのか…?」

 

 ユウイチが渋い顔をして尋ねる。

 ゼウスという神に災いをもたらす者。なんともユニークの効いた名前だ。

 

「……もしかしたら、私達は開けてはならない箱を目の前にしているのかもしれないわね……」

 

 リナの憂いを帯びた声が部屋に響いた。

 パンドラの箱、決して開けてはならないその箱を、人類は知らず知らずのうちに開けてしまったのかもしれない。そして、これが単なる覇権を取り戻すだけの戦いのようにはユウイチも思えなかった。

 四人が押し黙り、部屋が静まり返る。

 

 その静寂はなにか不吉な空気を纏っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 C.E.84年の3月14日、この日を境に静寂は破られ世界は革命同盟軍を中心として戦乱の世に巻き戻る事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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