AnotherSEED   作:another12

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アメノミハシラ攻防戦③

 

 

 

 

 

 

「くそっ! なんなんだ、コイツはっ!?」

 

 

 “アメノミハシラ”上で“ミレニアム”を狙っている半蛇人のようなMAを睨みつけてチヅルはごちる。

 ビーム阻害フィールドはどうなった!?

 何故あいつはあんな風に動ける!?

 

 アメノミハシラ上でもう一度“ミレニアム”を狙い撃とうとしている蛇型を見てチヅルは舌打ちを一つした。

 ここからビーム兵装を使えばアメノミハシラを傷つけてしまう。あそこには一般人も数多くいる。もしかわされでもしたら大惨事になりかねない。

 

「くっ、そんな好き勝手っ!!」

 

 チヅルはマグヌスグラディウス特斬槍を肩の抜き放ち、蛇型に斬りかかる。

 蛇型もチヅルに気づき、両肩の2連装レールガンを噴かせた。高速の弾丸がチヅルを狙う。チヅルは機体を操ってレールガンをかわし、蛇型の懐へと向かって突貫する。

 しかし、不意にコックピット内に違う方向からアラート音が鳴り響き、チヅルは考えるより先に機体を急旋回させた。寸前まで彼女の居た空間をビームが貫く。

 

「新手かっ!?」

 

 ビームの飛びすさった方を見れば“バヨネット”が高速で迫り来ていた。前腕から“グフ”と同じ兵装のスレイヤーウィップをしならせて、チヅルの“ゲルググメナース”に叩きつけて来る。チヅルは回避行動を取ってかわすとすかさずビーム突撃銃を構える。

 その“ゲルググ”をアメノミハシラ上の蛇型が手にしたライフルからビームが連続で飛びんできた。

チヅルは苛立ちを込めて吐き捨てる。

 

「二体一でのか弱い女の子を付けねらうなんて良い趣味しているよっ! 全くっ!」

 

 そして“バヨネット”のコックピットでもジェイムがつぶやきを漏らしていた。

 

「一機でどこまで俺達相手に立ち回れるか……?」

 

 その口調には面白がるような響きが込められている。

自分の狩場であがく獲物を見て舌なめずりするように。

 ジェイムはビームライフルとスレイヤーウィップを用いて蒼い“ゲルググ”を攻め立てる。が、ジェイムの苛烈な攻撃をすべて避け、撃ち返して来る。やはり、一筋縄でいく相手ではないらしい。

 そんな二機の戦闘に割って入るように味方の蛇型が“ゲルググ”に向けてビームを撃ちかける。

 

「チッ、アマンダっ! お前の目的はあの戦艦だろうがっ!」

 

 自分の狩りの邪魔をする味方に向けてジェイムが叫ぶ。

 

『黙りなっ! ここいらの奴らは全部私の獲物だっ! 取られるのが嫌なら私より先に堕とす事だねっ!』

 

 蛇型の大型試作MA、“スネーカー”に搭乗するパイロット、アマンダ・ヘルストレームが反論してくる。

 

ーーチッ、調整された使い捨ての分際で…。

 

 彼女は“スネーカー”の操縦適性を上げるために薬を使って無理矢理操縦適性を引き上げられている。その為か、戦闘中の彼女は戦闘外とは比べ物にならない程に気性が荒くなる傾向がある。まぁ、だからどうだと言うわけでもないのだが。

味方との連携も取れない兵士が使い物になるわけもない。

 

 ふと、ジェイムの気がアマンダとの会話に向いたその隙をついて蒼い“ゲルググ”が射抜くようなスピードで“スネーカー”に向かってビームトマホークを手にして斬り込んだ。

 

「抜かれたかっ!」

 

 ジェイムはビームライフルを放ってその進路を阻もうとする。しかし、別角度から浴びせた筈のビームも上手くかわしてアマンダの乗る“スネーカー”に飛び込む。これ以上撃てばアメノミハシラに当たってしまう。それは、革命同盟軍としても望まない事だ。

まぁいい、後はアマンダがなんとかするだろう…

“スネーカー”はどちらかといえば近中距離戦に重きを置いている。だからこそ、先程近くに迫っていた“ミレニアム”の艦体に取り付けなかったのは大きかった。

 離されてしまえば無重力空間では“スネーカー”の動きはアメノミハシラ上だけに制限される。

 そうなれば“スネーカー”も武装を制限される事になる。しかし、ジェイムの思惑は次の瞬間、覆される。

 “スネーカー”と同じアメノミハシラ上に降り立った“ゲルググ”がビーム槍で切りかかろうとした時だった。

 アマンダも同じように近接武装で攻撃するとばかり思い込んでいた。

 しかし、アマンダはあろう事かアメノミハシラ上で腹部の拡散ビーム砲を唸らせた。

 

「なっ!? アマンダ! 何をする気だっ!?」

 

――そんな所でその兵装を使えば……!!

 

 ジェイムの叫びも虚しく一瞬の光輝を放って“スネーカー”が腹部拡散ビーム砲を蒼い“ゲルググ”に向けて放った。

 

 

 

広域に向けて放たれたビームは、アメノミハシラ上に無情にも降りそそいだ。

 

 

 

 

 

 

 ディアッカは巨大な砲身を構えて、エネルギーの矢を迸らせる。が、その一射が確実に捉えたと思った一撃を敵は寸前で回避した。

 

「くっ! そう簡単にやらせてはくれないってか!?」

 

 ディアッカは苛立ちを込めて唸った。

ーー俺の砲撃をこうも簡単にかわすかね……!

 

 それは単なる自惚れではない。

 彼はかつてザフトで赤を着る資格を持つエースだった。そして、AIGISに入る前も入ってからも幾度となく死線をくぐり抜けてきた経験を持っている。

 そのディアッカの勘が告げる。ーーーこいつらはただの兵士ではない。

 

 そのディアッカの背後からオレンジ色のガンダムーー“クラッシュ”が手の甲からビームソードを発振させて迫る。しかし、ディアッカは動じない。ディアッカに躍りかかる寸前で、別の角度から襲いかかったビームが、“クラッシュ”の右足を射抜いた。

 

『なぁにぃ!?』

 

 閃光のように飛び来たった紅色の機体が、続けてビームライフルによる威嚇射撃を“クラッシュ”に向けて続ける。たまらずウェインが後退していく。

 

『私もいるという事忘れないで下さい』

 

 落ち着いた声で告げたのは、マユラ・ラバッツだ。

 “M1アストレイ”にも似たカラーで塗装された“アストレア”。比較的基本的な武装しか積んでいないものの、機動力ではディアッカ機を上回っている。

 

「ヒュ〜、やるねぇー」

 

 ディアッカが茶化すように告げる。

 

『ディアッカさんもふざけてないでさっさと片付けますよ!』

 

「オーケー!」

 

 二人の軽口のやり取りが終わるやいなや大出力のビームが雨のように二機に降り注いだ。ディアッカとマユラはそのビームの雨を縫うようにかわしていく。

 

「狙いがちょっと甘いぜっ!!」

 

 ビームを浴びせてきた“フォートレス”に向けて右腰にマウントされた電磁レールガンを連射する。そのうちの二発が“フォートレス”の鈍重な装甲に激突する。もちろん、フェイズシフトを積んでいる“フォートレス”に効果はない。だが、コックピット内はかなりの衝撃を受けた筈だ。

 態勢を崩した“フォートレス”に向けてマユラが高速で接近してビームの刃を振り下ろす。なんとか機体を捻らせて直撃をかわすも、“フォートレス”の4枚のバインダーの内の一枚が切り落とされ、爆散した。

 その華麗な連携に、敵機がたじろぐのが見て取れる。

 

「悪いけど、キャリアが違うんだよねー。」

 

 崩された陣形を立て直そうとする二機に向けてディアッカが呟いた。

 年は取ったものの、まだまだ自分は現役だ。しかし、余裕を見せていたディアッカの顔色が次の瞬間に青ざめる事となる。

 

『ディアッカさんっ! アメノミハシラがっ!』

 

 マユラが叫び、ディアッカもすぐに事態を把握した。

 ZEUSの戦艦がいる付近に立っているアメノミハシラから炎が上がっているではないか。

 

「なっ!? 傷つけちまったってのか!?」

 

 あそこには民間人も多数いる宇宙港。あんなところで火が上がれば、下手をすれば人々は無重力空間に生身で投げ出されてしまうかもしれない。

 それにあれはオーブの所有物。世界の解放だなんだと謳う革命同盟軍が攻撃してメリットがあると思えない。

それに…それに…ーーあそこには……!!

 

「くそっ!! マユラっ!」

 

『はいっ!』

 

 ディアッカとマユラがアメノミハシラに向かおうと機体を向ける。しかし、二人の前を“クラッシュ”と“フォートレス”が立ちはだかった。

 

「こんの! 見境なしかよ、お前らっ!!」

 

 一刻も早く事態を把握しなければならない。下手をすれば戦闘だなんてしている場合ではないというのに。

 しかし、ディアッカとマユラは操縦桿を握りしめ、襲い来る二機のガンダムに応戦するしかなかった。

こうなれば、一刻も早くこの二機を落とすかない……!!

 

 

 

 

 

 

「なっ……!?」

 

 ティアはアメノミハシラ上で立ち上っている炎を見た途端、頭に血が昇るのを感じた。

爆発は鳴り止む事はなく、断続的に起こっている。このまま爆発が続けば、多数の被害が出るのは間違いないだろう。

 

 一体なにが…!?

 あそこにはビーム阻害フィールドがあったはずだ。なぜあそこが戦場になる?

 革命同盟軍にとってアメノミハシラの人々の命はは関係ないとでも言うのか?

 

 目の前で交戦していた黒いガンダムも同様に衝撃を受けているらしく、ティアと同じように攻撃の手を止めている。

 

ふと、ティアの脳裏に絶望的な声が届いた。

 

『きゃああああああ!!!』

 

『子ども達がっ!!』

 

 頭の中で響く幼い子ども達の悲鳴。その事態を見て狼狽する大人の声。

 ティアは声が聞こえるなりすかさずモニターを見回した。そして、見つけた。

 

 アメノミハシラ上でお構いなくビームを撃ち続ける蛇型の巨大なMA。左足と右手を失い逃げ惑う蒼い“ゲルググ”。そしてアメノミハシラから地球へと伸びるエレベーター。その途中にあるコンテナが、先程の衝撃のせいなのか止まっている。いや、今にもエレベーターとコンテナを繋ぐアームが千切れてコンテナが宇宙に投げ出されそうになっているではないか。

 

ーーーまずいっ!

 

 もしあのコンテナが軌道エレベーターから離れ、漆黒の宇宙に投げ出されてしまえば地球の引力に引かれて落ちていく。

そのまま大気圏で燃え尽き、チリカスとなるだろう。

 

『ティアっ! アメノミハシラがっ!』

 

 ディアッカも同様の思いらしく、焦燥した叫びを上げている。

 すぐにディアッカに変わってエリカの緊迫した声が飛んでくる。

 

『ユイ! さっきの攻撃が当たったのか……軌道エレベーターからコンテナが切り離されそうになっているわ!』

 

「…そんな事、とっくに分かってるっ!!」

 

 

 エリカに向けて叫び返す。

 ふざけるな。なんだって無関係な人間を巻き込むんだ。あそこには子どももたくたんいるのに…!

 ティアの中に苦いものが広がる。

 

 ティアは目の前の黒いガンダムに見向きもせず、MA形態へと移行させると一目散に燃え上がるアメノミハシラへと向けて飛び立った。矢のようなスピードでアメノミハシラへと迫るとすぐさまMS形態に変形し、アメノミハシラ上で我が物顔で暴れまわる蛇型のMAへと怒り任せに突貫した。

 

「お前かぁぁぁぁぁぁあっ!!!!!!!」

 

 ビームサーベルを抜き放ち、“ゲルググ”を追いかける蛇型と二機の間に割って入って勢いよく光の刃を振り下ろした。蛇型もすぐにティアの存在に気づいて、尾の先端からビームブレイドを発振させ“フェンリル”のサーベルと切り結んだ。

 

 

ーーーコイツだけは、殺すっ……!!!

 

 

 

 

 

 

「アメノミハシラ、損害率20%! このまま被害が拡大すれば、支柱が折れて……地球に向けて落下していきますっ!」

 

「アメノミハシラ上の蛇型と羽根付きが交戦に入りましたっ!」

 

 “ミレニアム”のブリッジに響く報告を聞いて、アーサーは焦りを募らせてモニターを見つめる。

 あそこには大勢の民間人がいる。もし仮に居住区や内部の施設の壁に穴が開けば、目も当てられない惨劇が繰り広げられるだろう。もしそんな失態を犯した事が本部に知られれば軍法会議ものだ。

 これは戦闘どころではなくなった。

 

 

「これでは戦闘を続行なんて出来ませんっ! アスカ隊長! 本艦はアメノミハシラの救助活動をっ!」

 

 アーサーが焦れた調子でシンに進言する。しかし、シンはさっきから険しい目つきでモニターの向こうで燃えるアメノミハシラを睨みつけていた。ややあって彼は口を開いた。

 

「……なぜビーム阻害フィールドが消えたと思う?」

 

 唐突に質問され、アーサーは意味を計るようにシンを見つめた。

 そして、アーサーは恐る恐る口にした。

 

「……オーブが、協力していると……?」

 

 革命同盟軍と、オーブが協力関係にあるとでも言うのか。

 

「さぁな……ただ、あの国はそういう国だ。」

 

 シンが憎々しげに呟いた。

 ……なにかが、壊れてしまっている。

 目の前で人の命が消えようとしているのだぞ?

 救助を待っている人々が居るのに、彼はなにを言っている?

 そんな事を思案している場合なのか……?

 

 アーサーがギュッと艦長席の手すりを握りしめる。

 ブリッジの隊員達も、二人の微妙なやり取りを固唾を飲んで見守っていた。

 

「……まぁ、いい。」

 

 シンが決心したように言うと、アーサーは小さく安堵の息を吐いた。

 

「アメノミハシラからこの宙域全域に向けてオープンチャンネルで通信が行われていますっ!」

 

 エリーが叫び、アーサーが応じた。

 

「開け。」

 

『こちらはアメノミハシラ管制本部! このアメノミハシラ上での戦闘行為はオーブに対する侵略行為と同義であるっ! こちらには民間人も多数滞在している! 直ちに戦闘を中止して救助活動に尽力いただきたい!』

 

 緊迫した声が鳴り響く。

 その声を聞いてシンが興味なさげに鼻を鳴らした。

 アーサーはチラリとシンを見やり、シンの言葉を待つ前にアメノミハシラ管制本部とコンタクトを取るために手元の受話器を取った。

 

「こちらはZEUS軍所属アスカ隊旗艦“ミレニアム”の艦長、アーサー・トライン大佐だ。こちらにアメノミハシラを攻撃する意思はない。こちらも全力でアメノミハシラの救助活動に協力する次第だ。」

 

 アーサーの言葉を聞いて楽しくなさげに話しを聞いていたシンが怒って声を上げた。

 

「アーサーさん! なに言ってるんですか!? 敵を逃がすっていうのか!?」

 

 アーサーは受話器を耳にしたまま、シンに向けて反論する。

 

「ならここでこれ以上戦闘を広げてアメノミハシラを崩壊させた方がいいですか!?」

 

 アーサーが叫んだのを見て、ブリッジの隊員達が静まり返る。

 シンが憎々しげにアーサーを睨みつける。

 

「どちらにしろ、アメノミハシラ上の暴走しているMAをどうにかしなければ救助活動もままなりません。“ボギーワン”とコンタクトを取ります。」

 

「フン、敵に救助活動をどうか手伝ってくださいと頼むのかっ!?」

 

 シンが心外そうに声を上げるが、アーサーは冷静に彼を諌めた。

 

「人命救助が最優先事項です。もし不服ならこの戦闘終了後にいくらでも罰を受けましょう。」

 

 アーサーの言葉に、ブリッジにいる全員がその通りだと心中で思った。

 このまま三軍入り乱れての戦闘が続けば、目も当てられない被害が広がる事になる。下手をすればブレイクザワールドの再来だ。

 

 シンと睨み合っていたアーサーは決然と口を開いた。

 

「……ボギーワンとコンタクトは取れるか?」

 

「国際救難チャンネルを使えば可能です。」

 

 エリーがアーサーに答える。

 

「ならばそれで呼びかけてくれ。われわれは戦闘を停止してアメノミハシラの消火活動、及び救助活動に尽力する為に停戦を申し入れる、と。」

 

「了解しました。」

 

 アーサーの命令を聞いて一触即発だったブリッジが再び動き始める。

 シンは納得なさげにドカっと深く椅子に腰かけて足を組んだ。

 

ーーーこんな子ども染みた男が隊長だと……?

 

 アーサーは議長の人選に恨めしげにため息をついた。

 

 

「……ボギーワンがこれで納得してくれればいいが…。」

 

 

 

 

 

 

 

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