AnotherSEED   作:another12

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アメノミハシラ攻防戦⑥

 

 

 

 

 

 

 

どんどんと機体内部の温度が上がっていくのをティアは肌で感じる。眼下にはこの状況の中でも憎いほどに青く輝く地球が大きく迫っている。そしてコンテナ内でも異常は起きていた。

 

「声が……っ…!」

 

コンテナも大気圏を昇降する為に設計されており、溶けてなくなる事はない。しかし、それは軌道エレベーターを上下する場合に限る。これだけ長い時間同じ場所でしかも損傷した状態で大気圏突入の熱に耐えられるとも限らない。先ほどまで不安で泣き叫んでいた子ども達の“声”も弱々しくなっていた。このままでは無事に助かる以前に脱水症状を起こしかねない。しかし、どれだけティアがフットペダルを強く踏み込んだ所で中々重く巨大なコンテナは持ち上がろうとしない。

 

「まだだ、まだ……諦めるわけにはいかないのよっ…!」

 

コンソール上では限界まで稼動させ続けている“フェンリル”の機体ブースターがその熱の限界に近づきつつある事を示している。このままではスラスターが焼けてオーバーロードを起こしかねない。それでも、ティアは逃げなかった。小さな救える命が目の前にある。ここて目を逸らせば、何の為に自分はAIGISに入ったのか、それすらも分からなくなる。

プラントに捨てられ、そしてあの人に拾われて、戦いについての知識をたくさん手に入れた。がむしゃらに自分の二度と来ない思春期の時間を注いできた。思い出せば口に血の滲むようなその全ては、ある願いを叶える為だ。

 

ティアが強い覚悟を胸に燃やしたその時だった。

視界の端で宇宙の深淵のように真っ暗なガンダムが映った。飛来した黒いガンダムは、ティアの“フェンリル”同様にコンテナの下部に入り込み、持ち上げようとバーニアを全開に吹かす。

 

「どうして…」

 

機体もボロボロに損傷している状態でこんな重力の蟻地獄に飛び込んでくるなんて普通ではない。

 

『頭の中に聞こえるんだよ、声が……!』

 

「あんたまさか…っ?」

 

自分同様にコンテナの中にいる子ども達の声が聞こえるというのか。

幼い頃、気がつけば自分の意識とは無関係に人の意思や声を受信出来るようになっていた。その能力を疎ましく感じた事もある。同じSEEDを持つ者と出会いはしたが、同じように心の声まで感じ取れる人はいなかった。けれど、漆黒のガンダムに乗る人物は、自身と同じくコンテナを通して聞こえてくる子ども達の心の声が聞こえるというのか。

 

『それに救える命があるなら、救いたいっ……!』

 

黒いガンダムのパイロットの決然たる叫びは、確かにティアの心に届いた。

ーー敵のはずなのに…バカなやつ…

 

しかし、片腕を失っている“フォルテ”が加勢したところで、ここまで重力の沼に捕まった状況では二機のバーニアを全開にしても脱出するのは難しかった。先ほどよりもコンテナは持ち上がってはいるが、このままでは状況は多少良くなった程度に過ぎない。

 

『くそっ…! なにか、何か手はっ……!?』

 

額に玉粒の汗を滲ませ、ヒロキは必死に考えを巡らせる。その時、“フォルテ”のコックピット内に“ユーピテル”からの通信が飛んできた。

 

『ヒロキっ! なにをやっている!?』

 

この状況でも遠慮会釈なく自身の隊長であるシンが怒鳴りつけてきた。

『あの蛇型は撃退したんだ、帰還命令だって出たはずだろっ!』

 

だが、ヒロキはシンに一顧を与えるようすもなくコンテナを持ち上げようと作業を続ける。

 

『“ボギーワン”が地球に降下しようとしているんだぞっ!?』

 

「分かってます、でも人命救助ですっ!!」

 

ヒロキは苛立ちを込めて叫ぶ。

それでも一応敬語なのは、シン・アスカの言い分も理解していたからだ。

ヒロキは焦りの滲む声で叫び返す。

 

「目の前の命を見捨てる為に、俺はこの力を手にしたんじゃありませんっ!!」

 

通信機の奥で、シンは腹の煮え繰り返る思いでヒロキの機体を睨みつけた。

それは、ヒロキの姿にかつての弱かった自分を思い起こしたからだ。救える命? 救いたい命?

そんなもの、今まで何度だって見捨てて来た。この両手で救いかねてきた。あまりにも若く、醜い自分を見ているようだ。

 

『俺達は軍人だ!! 軍人として、敵を倒して命を救う義務があるっ!』

 

「軍人である前に、俺は……人間ですっ!!」

 

『っ……!』

 

オーブで救えなかった命がお互いにあった。共に戦争を、故郷を心から憎んでいた。

けれど、その思いまではお互い共有出来ていなかったというのか。

 

ヒロキはそれ以上押し黙るシンに対しての通信を強制的に切り、意を決して機体を操作する。

コンテナを支えていた手を離し、地球に向けて落下を続けるコンテナを必死で押し上げようとする白いガンダムの背後に回り、その背中へと“フォルテ”の背中を向ける。

 

『なにをっ……!?』

 

白いガンダムのパイロットがヒロキの行動の意味を図りかねて叫ぶ。

 

「ちゃんとコンテナを掴んでおけよっ! 離せば、それで終わりだっ!」

 

『い、言われなくたってさっきからやってるわよっ!』

 

「それだけ威勢が良ければ問題なさそうだな。」

 

口元を緩めてヒロキが強気に笑う。機体が大気圏に引きずりこもうとする重力に捕まり、制御を失いそうになる。

態勢を崩さないように操縦桿を握りしめるのも一苦労だ。自動制御システムのスイッチをオンに入れ、排熱システムの計器に目をやる。やはり、戦闘の後遺症もあってか排熱システムの具合があまりよろしくない意味を示すイエローを指していた。

 

「上等だ……っ!」

 

禁断の兵器を呼び起こす自身の漆黒の黒腕を握りしめ、ヒロキは不敵に笑う。

下手をすれば機体はその膨大な熱量に耐えられず、バラバラになるかもしれない。もしかするとこの不安定な状況下で姿勢を崩し、白いガンダムとコンテナ諸共消し飛ばすかもしれない。“アメノミハシラ”を崩壊させる可能性もある。けれど、これしかヒロキには救う方法が思い当たらなかった。

 

「人を殺す為じゃなく、人を救う為に使うんだ。耐えてくれよ、“フォルテ”…」

 

自身の相棒に語りかけ、ヒロキはゆっくりと右手をコンソールに差し出した。ガコンという重厚な音が鳴り、禁断の扉が開かれる。漆黒のガンダムの瞳に覚醒の光が灯る。自身の丈ぐらいはある巨大な砲身が右肩に寄りかかり、四枚の翼がバックパックに展開される。肩と脚部の冷却ファンが、赤熱しながら稼働する。

残ったエネルギー全てが砲身へと注がれていく。砲頭に集められた莫大なエネルギーの奔流によりスパークが引き起こされる。ギシギシと機体が悲鳴を上げている。

 

ーー耐えてくれっ……頼むっ……!

 

最後に、自身の願いを込める。

そして、蓄えられた巨大なエネルギーの爆流が解き放たれる。

 

「…っ、いっけぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

ティアの背後で解き放たれたエネルギーの塊が、ユイとコンテナを掴んで離さなかった地球から伸びる重力の鎖を引きちぎった。

 

「なっ…!? あいつ、アレをブースターがわりにっ……!」

 

艦隊を壊滅させたあれだけの巨大なエネルギーだ。ティアとコンテナを押し返すぐらいの運動量ならお釣りがくるぐらいだろう。ティアは急激に下から持ち上げられるスピードにコンテナを離さないようにしっかりとコンテナ握りしめる。あれだけビクともしなかった機体とコンテナが背後に放たれた禁断のブースターにより急加速して持ち上げられる。これなら、行ける。赤熱していたコンテナと純白の機体もその輝きを取り戻す。

それは大気圏内に引きずり込もうとする重力の蟻地獄から逃れた事を意味している。

 

「これで…もう大丈夫だよ。」

 

ティアは無重力化に入った事で嘘のように軽くなったコンテナを押して、“アメノミハシラ”の救助艦の近くへと送り届ける。コンテナ内部でも、それを見て取れたのだろう。歓喜の声が上がっているのを感じ取れる。ティアは小さな命を救えた事にホッとして胸を撫で下ろす。そして弾かれたように思い出す。

「あいつはっ…!?」

 

自分とコンテナを押し上げる為にあの力を使った黒いMSを必死に探す。モニターを目を凝らして真っ黒な宇宙の中からあの機体を探し出す。そして、ついに機体のセンサーがそれを捉えた。

全てのエネルギーを使い果たしたのであろう漆黒のMSは、なす術もなくゆっくりと青い地球へと吸い込まれていく。自分達を逃がす為に全てのエネルギーを使い果たしたものも、あのMS自身は重力の鎖から逃れられなかったようだ。

 

「…っ、もうっ!」

 

ぎりっと歯を噛む。震えを抑える為じゃない。ティアは、本当に頭に来ている。

敵だとは分かっていた。助けた所で自分には得もなにもない。けれど、命を救ってくれた相手を見捨てるほど薄情にもなれない。ティアは、舌打ちを一つして機体を漆黒のMSへと向ける。見れば真っ黒だったボディはフェイズシフトダウンしており鉄灰色に輝きを失っているようだ。必死に引き上げようと、機体の腕を掴んでバーニアを全開にする。

 

『お前っ……!?』

 

ヒロキが白いガンダムの行動に驚いて声を上げる。

しかし、先ほどのコンテナも持ち上げられなかったのだ。今更二機のMSをこの重力の鎖から逃がせるわけもない。

 

「ここでアンタを見殺しにしたら、後味が悪いのよっ……! 私のっ!」

 

本当、なにやってんだろ。

自分でも理解出来ない。けれど、今はコイツを見捨てたくはなかったのだ。

どれだけバーニアを全開にしようとも、すでに二機を引き上げる事は不可能だった。まるですり鉢のそこへ滑り落ちるように、機体はじりじりと引力にひきずり込まれていく。

 

この手を離せば逃がれられる事も可能だろう。

けれど、ティアはその手を自分からは決して離しはしなかった。

 

「くっそたれっええええええ!!」

 

やがて“フェンリル”の手が引力により引き剥がされ、二機は抗う術もなく大気の底へと落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「“ボギーワン”、降下シークエンスに入りますっ……!」

 

エリーが告げ、アーサーは歯ぎしりした。

 

「ヒロキと“フォルテ”の位置はっ?」

 

語気を荒くたずねると、エリーは焦りに滲ませた表情で強く首を左右に振る。

 

「ダメです! 位置特定できませんっ……!」

 

「…あのバカがっ……!」

 

後部座席でシートに付いていたシンがモニターを見つめ、毒づいた。

自身の許可もなくアレを使ったのだ。恐らくエネルギーを使い果たしてこの宇宙空間を彷徨っている事だろう。だが、大気との摩擦の影響と“アメノミハシラ”のビーム阻害フィールドが復帰しようとしている事もありMSの位置を掴む事が出来ないのだ。

 

「“ボギーワン”! 間も無くフェイズ・ツー……!」

 

エリーが困惑した表情をアーサーに向ける。

「敵艦に逃げられます! 艦長っ!」

 

「分かってるっ! しかし、ヒロキの位置がっ!」

 

エリーがかぶりを振り、アーサーが額に汗を滲ませて答える。

「“フォルテ”の位置を特定出来なければ巻き込みかねんっ!」

 

問題はそこだ。アーサーは唇を噛んだ。やみくもにタンホイザーを撃って、射線上にヒロキが居れば無事ではすまない。アーサーの号令が、ヒロキの命を奪うかもしれない。それに、ここからでは“アメノミハシラ”にすら当たる可能性もある。

だがーーこの一射によって救われるであろう人々の命は何万ーーいや、もしかすると何百万になるかもしれない。

決断に迷うアーサーよ尻目に、後部座席でシンが静かに告げた。

 

「“タンホイザー”、起動」

 

艦橋に居た全員が鋭く息を飲んだ。

「“ボギーワン”の降下阻止はなにがあってもやり遂げなきゃならない総裁直属の任務だ。」

 

シンはあえて冷徹な声で宣言する。

 

「しかしっ……!」

 

「照準、右舷前方、“ボギーワン”」

 

反論しようとするアーサーを無視してシンが命令する。

その命令はヒロキの死刑執行書にサインしたようなものだ。火器担当の士官が苦しげな声で復唱する。

 

「照準、右舷前方、“ボギーワン”」

 

ことによるとまだ反論するかと思ったアーサーは固く唇を引き結ぶ。

アーサーもまた間違いなく、この一射のもつ意味をよく理解しているのだ。艦首が開き、“ミレニアム”最大の武装である陽電子砲“タンホイザー”の砲口が覗く。ノイズの入ったモニターには赤熱する“ボギーワン”が映し出される。

シンは決然と命令する。

 

その時だった。

 

『そこまでにしてもらおうか。ZEUS軍。』

 

突如として艦橋に響き渡る鼓膜に突き刺さるような尖った声。

 

「何だっ!?」

 

アーサーが驚愕しながらも尋ねる。

 

「“アメノミハシラ”上に機影を複数確認っ……! 映像、出します!」

 

エリーが素早く映像を流し、艦橋に居る全員が映し出されるモニターを息を飲んで見つめる。

見れば、あちこちを被弾した“アメノミハシラ”の頂上。そこに、腕を組んで悠然と立ちこちらを見下ろすMSが一機。

機体各部を金色に煌めかせ、どこか禍々しさすら感じさせる鎧のようなボディにハイヒール状の特徴的な脚部。

そして、そのMSの姿を見てその場の誰もが瞬時にアレが何であるかを理解する。

 

「“アメノミハシラ”の金に輝くアストレイ……影の軍神…」

 

操舵手であるリンが信じられないものを見たような目で呆然と呟く。

 

「ロンド・ミナ・サハクっ……!」

 

かねてよりオーブにおいて軍事部門を影で担っていたオーブ五大氏族の1つ、サハク家の正当後継者にして現在の女性党首。厄介な人間に最悪のタイミングで出てこられた、とシンは歯を噛みしめる。

 

『これ以上、この“アメノミハシラ”で戦闘を続ける事はこの私が許さない。』

 

女、ロンド・ミナ・サハクの鋭い声が“ユーピテル”に向けられる。

 

「…ハッ、ここで革命同盟軍を見逃せって言うのかっ!? 人類の敵だぞっ!?」

 

シンが高圧的な物言いをするサハクに向けて噛み付いてみせる。あと少しでタンホイザーを撃てたというのに。

 

『そんな事情、知ったことか。私はただ“アメノミハシラ”に住まう子らをこれ以上傷つける事は許さんと言っているのだ。』

 

通信を介してモニターに映し出されたミナの目が、噛み付いてくるシンを見つめる。

「これが、ロンド・ミナ……」

 

噂には聞いていたものの、初めて見るその姿にどこか神々しさすら感じさせる。

漆黒の長髪に朱色の切り長い瞳、純白の素肌。10年経った今でも衰える事を知らないその美貌は彼女を絶世の美女たらしめている。

彼女が10年前、全宇宙に向けて“天空の宣言”を発信したその人であるというのか。

「人類は他者の理想を妨げない限り己の信念に従うべきだ」という考えのもと、いかなる組織・国家であっても他者に主義・主張を押し付けてはならないと説いた。一見するとデスティニープランと相対しそうなこの宣言も、この天空の宣言に従う事をロンド・ミナ・サハクは強制しなかった。それにより人々がデスティニープランを望むのならと10年間、世界をこの“アメノミハシラ”から見守って来ていたのだ。

そして、ギルバート・デュランダル総裁がシンに告げたした要注意人物のリスト、“ジャック”、“クイーン”、“キング、“エース

”、“ジョーカー”における“ジャック”でもある。

『調子付くなよ、シン・アスカ。お前達だけが奴らを狙っていたとな思わない事だ。』

 

「なにを……っ!」

 

「これは……“ボギーワン”に膨大な熱量を確認っ! こちらをマークしていますっ!」

 

「何だと!?」

 

大気圏降下のレーダーの乱れに生じて敵艦に狙われていた事にも気づく事ができかったというのか。

もしあのままタンホイザーを撃っていれば自分達か、“アメノミハシラ”は藻屑になっていた可能性もある。シンは悔しさに手すりをギリギリと握りしめる。

 

『革命同盟軍。貴様らもだ。訳あって遅れたが、これ以上この“アメノミハシラ”でオーブの民を脅かすのならこのロンド・ミナ・サハクらが相手になろう。』

 

ミナの宣言に賛同するかのように、“アメノミハシラ”上から数機の機影が“ユーピテル”と“ボギーワン”に銃口を向けていた。“アメノミハシラ”におけるビーム阻害フィールドの影響を受けないとされる“M1A2アストレイ”に“デュアルソードカラミティ”に加えて先ほどまで救助活動を行っていた“ユーピテル”を護衛していた二機の見慣れないアストレイに似通ったMSだ。流石にこの状況でロンド・ミナ・サハクの駆る“ゴールドアストレイ天ミナ”まで加われば部が悪いどころの話ではない。

それは革命同盟軍とて同じである。どさくさに紛れてこちらに向けていた砲身をしまい、ゆっくりと降下シークエンスを再開し始めた。

 

「艦長……」

 

エリーが不安げに声を上げる。

言われなくてもわかっている。

 

「ミナに睨まれたカエルと言ったところか。降下シークエンスに入れ、ヒロキを捜索する。これ以上この宙域に留まっているのもよろしくなさそうだ。」

 

安堵のため息混じりにアーサーが命令する。“アメノミハシラ”を守る軍神を怒らせるなんて後で何を言われるか。

 

「君はオーブとの縁をどれだけ切っても切れないようだな。」

 

降下シークエンスに入った“ミレニアム”の艦橋で、以前として納得のいかない表情でミナを睨み続けるシンに、ロンド・ミナが子どもをからかうような声色で告げた。

「黙れ。デスティニーさえあればお前なんかいつでも殺れるんだぞ。」

 

「ほう。私が守るオーブを滅ぼすというならいつであろうと私が相手をしてやろう。」

 

二人の緊迫したやり取りに、降下シークエンスを進める艦橋に緊張の糸が張り詰める。

シンの経歴もオーブを憎む理由もわかってはいるが頼むからこれ以上、状況を悪くしないでくれとアーサーは心で祈るばかりだ。

ふと、手元の通信機が鳴り響き開く。発信源は格納庫だ。

 

「なんだ。今は悪いが取り込み中だ。」

 

『なんとかしてください! 艦長! チヅルがヒロキを探しに行くから機体を出させろって暴れ回ってて、うわぁ! やめろ、チヅっ!』

 

そこで途切れた通信を終え、アーサーは大きく息を吐き出した。

とにかく、ヒロキの安否を確認するのがこの艦の艦長である自分であり、部隊の命を預かる隊長であるシンの責務だというのに。

 

 

ーー所詮はパイロット上がりか…。

 

 

 

 

 

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