【2018年4月15日 歌野ちゃんについてずっと気になってたことがある。あの子は具体的には何がきっかけで勇者になったんだろ? いや、必要ないなら無粋な詮索はしない。きっと本人にとってはあまりよくない思い出だろうし。とりあえず明日からの撮影頑張ろう。】
「スリー、ツー、ワン……アクション!」
「はっ、始まりました! 農業王妃のすわすわチャンネル……! ええっと、メインMCの諏訪の巫女藤森水都です……。よっ、よろしくお願いしましゅっ! きゃっ、バーテックスがっ」
「ファイトみーちゃん! 噛んでもとってもチャーミングよ! こらっ! バーテックス! みーちゃんの晴れ姿を邪魔しないで!」
「てやぁー! ちょっとあんた達! 水都の撮影の邪魔だよ!」
──あれ? どうして私、こんなことしてるんだろ?
ここは諏訪大社上社前宮裏の結界付近、今日も変わらず諏訪ではバーテックスの襲撃があり、今もうたのん達は絶賛戦闘中。
私は結界内ギリギリにいていつものようにうたのんの戦いを見届けようとしたのに……。
それなのに。
「あー! いいですよ! 藤森様、次はもっと目線をこちらにお願いします! さぁ! さぁ!」
目の前のビデオカメラを持った人、北海道旭川の指導者及川さんになぜかアレコレ指示を出されて──
『水都、次のセリフだよ』
「は、はい。皆さん見て下さい! あの白き化物を! 2年半前に私達人類の大半を死に追いやった怨敵バーテックスです! 私達諏訪の民は今もこうして日々化物達からの襲撃を受けています!」
時折コシンプちゃんが指示するカンペを読みながら、テレビのレポーターまがいのことをさせられている。
「ここ諏訪は、7.30天災の日に上社本宮、上社前宮、下社春宮、下社秋宮の4つの大社から大量出現した御柱を線状に結ぶことで結界を形成し、バーテックスの侵攻を食い止めてくれています! 侵攻は日々激化して2018年4月現在、2つの大社分の結界を放棄せざる負えなくなるまで追い詰められてしまいました! 今日も諏訪の勇者白鳥歌野、そして北海道からの援軍、秋原雪花が御柱への攻撃を阻止すべく戦ってくれています!」
「クククククク、藤森様! いいですぞ! とっても良いですぞぉ!」
なんか及川さんは変なテンションになっちゃってるし!
「どうして……どうしてこうなっちゃったのー!?」
それは今朝、及川さん達が私とうたのんを訪ねてきた時まで遡る──
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「諏訪の日常を撮影したい?」
「ええ、私のビデオカメラで諏訪での皆さんの暮らしぶりや白鳥様の戦いをぜひ記録させていただきたいのです」
今朝──北海道から諏訪に避難してきた人達のリーダー、及川さんは家で朝食を済ませたばかりのうたのんを訪ねてきた。うたのんは本当に忙しい人だから確かになにか話をするならこのタイミングが一番だろう。
「うーん……いいかもしれないわね。エクセレント! 楽しそうじゃないですか! あっ、映る人達にはちゃんと了承を得てくださいね? 」
うたのんは少し考えた後、愉快そうに食後のお茶をすすりながら及川さんに許可をだした。
「ありがとうございます。勿論、許可取りも抜かりなく。それと……図々しいのは承知ですがもう1つお願いがありまして」
「ワッツ? 私にできることならなんでも協力しますよ?」
及川さんって結構ぐいぐいいくんだね……。それにしても出会ったばかりの人にも協力を惜しまない、今日も変わらずうたのんはお人好しだね。
「では、撮影する動画の案内役として藤森様をお借りしたいのですが……」
「はぁ……?」
思わず気の抜けた声が漏れちゃったけどどういうこと? ああ、道案内かな? それくらないなら全然いいけど。
「あっ、念のため……案内と言っても道案内という意味ではなくてですね。諏訪の状況をぜひ動画内で藤森様にリポートして頂きたいのです」
「は?」
今なんて? 私は及川さんの言っていることがいまいち理解できなかった。
「それって……つまりみーちゃんがMCってこと!? ワンダフル! 私は一向に構いませんよ!」
「えぇっ!?」
MCって……そんなの私には無理だよ!
それなのにうたのんは目をシイタケのように輝かせて及川さんに手を差し出した。
なんで!? なんでうたのんもすぐに許可だしちゃうの? 私の同意は!?
「よし、決まりですな!」
及川さんも同様に目を輝かせてうたのんと固く握手する。ていうか勝手に決めないでよ!
「ちょっと待ってください! 私が動画のMCっていきなりなんなんですか!」
「みーちゃん、ナイスツッコミ!」
「うたのんはちょっと黙ってて!」
「そんなぁ……」
シュンとしちゃったけど今のはうたのんが悪いからね。
「言葉足らずで申し訳ありません。藤森様は何より容姿に優れ、人の目を引きます。そして住民の方々にも顔が利き、諏訪と白鳥様について誰よりも詳しい。案内役としてうってつけかと思った次第でございます」
「良かったわね、みーちゃん。とってもキュートって口説かれてるわよ?」
「えぇ……!?」
自分ではそんなこと思ったことないし、それは喜んで良いの?
「さ、そろそろ撮影のアシスタント達が到着する時間です。ご準備を」
「アシスタント!? ていうか今からですか!?」
いけない! このままじゃ完全に及川さん達のペースに乗せられちゃう。なんとかしなきゃ……!
「やっほー、お邪魔するよん。アシスタントの秋原雪花ですよー」
『初めまして同じくアシスタントの精霊、コシンプだよ。やれやれ、ボクは便利屋じゃないんだけどな』
断ろうとしたのに……いつの間にか居間には北海道の勇者秋原雪花さんと人の言葉を話す不思議な紫色の狐さんまで現れていた。
「ワオ! 精霊って初めて見るけどファンシーで可愛らしいわね。私は白鳥歌野、よろしくね!」
「藤森……水都です。確かに可愛いけど……精霊ってなんですか?」
精霊と名乗る紫の狐さんは宙に浮いていて明らかに私の知るこの世の生き物ではなさそうだ。
『ボクは雪花に敵襲を知らせたり、勇者に変身させたりができるんだ。雪花専用のサポートアイテムとでも思ってくれたらいいよ』
コシンプちゃんは言葉を話すけど口を動かしている様子はない。脳内に直接声が聞こえてくるような不思議な感覚だ。でも悪い気はしないから悪霊とかではないのかな?
「ちなみに精霊であるコシンプ殿は基本的に無垢な少女である勇者様か巫女様しか知覚することができません。中年一般男性の私が知覚できてるのは私にもよくわからないのでお気になさらず」
「は、はぁ……」
「本当はMr.及川もチャーミングなガールだったりして!?」
「うっ……!?」
「そ、それはないよ! 絶対にないから!」
うたのんのジョークを秋原さんが必死に否定するけど、確かに及川さんは一見ちょっと顔が怖いオジサンだけどなにか特別な気配があるような気がする。けど今はそんなこと考えてる場合じゃないよ……。
「さ、さあ! コシンプの紹介も済んだことだし早速始めていくよん」
「そうですな! 行きましょう! 行きましょう!」
「あっ、ちょとその……」
いけない、コシンプちゃんに気を取られてて断るの忘れてた……!
「うーん! みーちゃんの動画撮影……夢が広がるわぁ。とっても楽しみだね、みーちゃん♪」
「うぐっ……」
まぁ……うたのんが喜んでくれるなら。そんなに嬉しそうな顔されたら断れないもん……。
「もう好きにしてぇーー!」
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撮影期間はまる1週間、日頃の役目の合間を縫って行われた──
及川さんが撮影係兼監督でコシンプちゃんが時々フリップでカンペを見せてくれる。
町の人達にはフリップは宙に浮いて見えるから不思議そうな顔されたけど、巫女様のことだからと特に気にされなかった。……いや、私にそんな特殊能力はないよ?
動画はメインが私でアシスタントが秋原さん、時々うたのんが演者として混ざってくれて私達と諏訪の人達との交流を撮影していくスタイルだ。秋原さんは緊張で慌てちゃう私をすぐにフォローしてくれてとっても頼もしい人。やっぱり勇者ってすごいなーって思う。
撮影場所はうたのんが整備した畑から行きつけの蕎麦屋さん、諏訪湖の漁師さん達や子供達、町に唯一ある病院に集会所や憩いの場等様々でなるべく色んな人達と関わりながら動画撮影を行った。
中でも印象に残っているのが──
「高島城! バーテックスの侵攻にもやられずに残ってたんだね!」
諏訪結界内にある高島城の天守閣での撮影は秋原さんがこれまでにない程興奮していた。
「ごめんなさい。私、お城についてはあまり詳しくなくて……秋原さん説明お願いしてもいい?」
「任せてよ! 高島城は安土桃山時代に豊臣秀吉の臣下、日根野織部正高吉によって築城さたんだよ。少し前の時代にも同じ地方に諏訪氏が支配していた同名の城があるんだけど、そこは一旦置いといて……。実は今、目の前に映っているのは取り壊されちゃったのを昭和45年に復元したものなんだ。桃山時代当時は諏訪湖の水が城際まで迫り壕の役割を果たしてたんだけどその難攻不落さから諏訪の浮城なんて呼ばれてたんだよね。復元前の天守閣の構造は──」
「ストップ、秋原さん! そこまではいいから!」
「──はっ! ごめん水都、かつての高島城に思いを馳せていたらつい」
「ううん、気にしないで。と、ということで諏訪では立派な城郭を眺めて日頃の疲れを癒やす方もいるみたいでしたー!」
びっくりした、私が止めなかったらあと何分話してたんだろう。秋原さんってもっとクールな人だと思ってたけど意外と熱くなりやすいのかな?
動画を撮影してて一番楽しかったのは──
「オーケー! エブリワン! 山菜収穫フェスティバルを開始するけど、結界の外には出ないでね? あと小さい子は必ず大人と行動するようにね! もし、山で迷ってもドントウォーリー! この私、歌野お姉さんと……」
「雪花お姉さんが勇者の聴力で皆を見つけるからねん♪ すぐに声を出して助けを呼んでね」
「「はーい!」」
「諏訪の子供達はみんな勇者様達の話を聞く良い子揃いです。今日も元気いっぱいに食糧調達を手伝ってくれています!」
うたのんが企画した裏山での山菜収穫祭りの撮影は子供達が中心になってたくさん山菜を収穫してくれた。
うたのんの企画で皆が笑顔になってくれて撮影できて本当によかったなーと思う。
対照的に一番大変だった撮影は──
「こんのぉぉぉお! 星屑はどきなって!」
「ナイスキル! このまま2人であの脚付きもヤるわよ!」
「あいよ! 旭川と諏訪の勇者の力、甘く見ないでよね!」
バーテックスとの戦闘撮影はかなり気を張った。秋原さんが戦闘に加わってくれたとはいえ常に死と隣り合わせの現場だ。
うたのんの戦いはいつもなるべく見に行ってるけど慣れるものじゃない。うたのんが倒れれば諏訪の滅亡、なによりうたのんに一番死んでほしくないから。
今うたのん達は星屑に脚が2本生えたような進化体と対峙している。脚が生えている事以外に特徴はないけど猛スピードで上社前宮の結界付近を駆け回り、御柱に少しでも被害を与えようとしているのが見て取れる。
「とまりなさぁぁぁいっ! よし……! 雪花、鞭で捕まえてるからとどめよろしく!」
「任された! とっとと、やられちゃえぇぇぇ!」
うたのんの鞭によって、脚を絡め捕られた進化体は為すすべなく秋原さんの槍に貫かれて消滅した。
「いっ、今ご覧のように高速で移動する進化体は勇者白鳥の鞭により動きを止められ、勇者秋原の槍によって撃破されました。敵の進化体は強力ですが、勇者様は知恵と工夫、仲間との連携によって倒してくれました!」
こうした戦闘記録は及川さん曰く四国にとってはかなり貴重なデータになるらしい。私はなるべくうたのんと秋原さんの戦いをわかりやすく解説することに徹した。
──こうして怒涛の1週間の長い撮影が終了しようとしていた。
「ハァ……ハァ……つっ……疲れた……」
朝から晩までカメラをまわされ続けて変な筋肉痛になりそうだよ……。特に表情筋を使ってたのか顔がすごく痛い。
「藤森様、お疲れ様です! だいぶ撮影にも慣れてきたみたいでプロのレポーター顔負けですな」
「ハァ……おだてないでくださいよ。本当に疲れたんですからね?」
「ハハハ。これはこれは、申し訳ありません」
ため息交じりで及川さんに抗議をしても彼は笑いながら謝るだけだった。
でもここ数日一緒に過ごしてみて……最初は怖い人だと思ってたからけっこう気さくな人なのがわかった。何よりつくづく紳士な人で安心できる。
私はともかくうたのんは美人だし勇者服が勇者服だから人目をかなり引く。それにうたのんは誰であろうと一切の距離感なしで接しているからそういった目で見る男の人達は結構いる。及川さんは何故かそういった所が一切ないからとても気が楽だ。秋原さんがすごく懐いてるのもわかる。
「さて、藤森様、1週間の撮影お疲れ様でした。いよいよここが最後の撮影です」
時刻はもうとっくに夕暮れで西日が眩しい。私と及川さんはうたのんと秋原さんを伴って町はずれの少し小高い所に来ていた。
「ここって……」
最後の撮影場所、そこはあの日の後にうたのんが作った墓地だった。
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「ここに来るといつも天災直後のことを思い出すわ」
「……そうだね」
いつもはにこやかなうたのんもこの墓地に来るときだけはその笑顔に影がさす。
墓標は一つだけ、けれどもその下には数え切れない数の人々が眠っている。ここは私達のとても辛い思い出の場所。決して忘れることはない思い出──
2015年7月30日のバーテックス襲来直後、勇者に覚醒したばかりのうたのんは三日三晩それこそ不眠不休で結界外に出て救助活動をしてくれた。
あの時は私も結界付近に出現するバーテックスや避難民の情報が常に脳裏に浮かんできて相当きつくて何回も吐いちゃった。1人でも多くの人を救けるために無我夢中で信託の内容を出会ったばかりのうたのんに伝えて対応してもらった。
結果的にうたのんは多くの人々を救い出してくれた。それでももう既に殺されてしまっていた人は多くて……。
「バーテックスは倒せば消滅するけど……あの時の結界外はどこもかしこも犠牲者のご遺体だらけでね。供養と疫病や獣害防止のためになるべくご遺体をここ1ヶ所に集めて弔ったのよ」
遺体といってももうそれはほとんど人の形をしていなかった。バーテックスによって人々は噛み砕かれ、血の海には手足や指の破片……もっとひどいモノが撒き散らされている地獄絵図。
「わかるよ、旭川でもそうだったから……」
「秋原さんも……」
「まぁ、私の場合はあの時はそこの及川さんや大人達が主導でやってくれたからまだね……。私は一匹でも奴らを倒して気を紛らわせてたっけなぁ」
「秋原様……」
天災直後、諏訪の人達は絶望してとてもじゃないけどそんなことまでする気力がなかった。結界内という安全圏にいるからこそ、余計に生きてても仕方がないと考える余裕だけはあって……。なにかをする事を諦めてしまっていたんだと思う。それほどまでにバーテックスが残した爪痕は大きかった。
「それなのにうたのんはたった1人で──」
「ノンノン、すぐにみーちゃんも手伝ってくれたじゃない。それに一部の人も手伝ってくれてたわ。まー……たしかに他の皆はリタイアはしちゃったけど、それでもちゃんと弔ってくれた人はいたわ」
遺体の処理には何日もかかり、臭いもひどくこびりついた。お風呂に入ってもうたのんと私からは何日間も死臭が漂い、町の人々からは冷たくて不快な視線を感じていた。初めは手伝ってくれてた人達も結果外の惨状に絶望し、離れて行ってしまった。
「Mr.及川、今もビデオはまわしてますか?」
「ええ、切ったほうがよろしいでしょうか?」
及川さんは気まずそうな顔をして手に持っていたビデオカメラを下げた。
「いいえ、それじゃ意味ないわ。ありのままの諏訪を記録してほしいですから」
うたのんは撮影の続行を指示し、ビデオカメラに顔を向けて語りかける。
「ではここで私白鳥歌野から皆さんに、勇者としては少々言い訳じみた話をします。……諏訪市は元々、人口は4万人以上もいたんです。しかしながら今の生き残りは1万人程。日本人は真面目ですから、7.30天災の日も多くの人が地震や暴雨が頻発してても学校や仕事に行ってたんです」
普段と違いうたのんは至って真剣な顔で当時の話を紡ぎ出す。
「諏訪にバーテックスが襲来したのはあの日の夕方頃で当然多くの人はまだ通勤や通学で結界となる範囲の外。力及ばず、勇者の私には救えた命と救えなかった命……どちらもたくさんあるんです」
うたのんは心底悔しそうな顔をする。だって……救えなかった命にはうたのんの両親も……。
「……だからどうか多くの人達に今回の動画を観て知ってほしいんです。今もなお、諏訪では多大な犠牲を乗り越えて、絶望せずに前を向いて生きている人達が大勢いることを。……すみません、少し長くなりましたね。巫女の藤森さんに代わります」
うたのんは終始真摯な眼差しでビデオカメラに向き合っていた。その姿は誰よりも強烈に輝いていて……多くの命を失いながらも、諏訪にはまだ人が生きていることを証明していた。
だから私も真摯に向き合う、きっとこの動画の先にいるのは──
「巫女の藤森水都です。四国の皆さん、天災から2年半経った今でも諏訪にはバーテックスが日々、結界を破壊しようと攻撃をしかけてきます。今は北海道からの援軍もいますが、基本的には勇者白鳥がたった1人で迎撃してくれているのが現状です。白鳥の尽力により結界内では今のところ犠牲者はいません、それでも結界は日に日に縮小し、生活も困窮しています。この諏訪の動画を北海道の勇者秋原雪花さんと指導者の及川さんに託します。1人でも多くの人に見て知っていただければ嬉しいです」
今は秋原さんと及川さんがいてくれる、でも2人も近いうちに四国へ旅立ってしまう。そしたらまた、うたのんの孤独な戦いが始まる。
……たぶんここから先は言っちゃだめだよね? でもごめんねうたのん、もう我慢できないよ。
「……私達は2年半前に四国から援軍があると知らされて今もそれを信じています。信じているからこそ白鳥は……うたのんはどんなに自分が傷ついても、人々を守り導いてくれました。……ぐすっ……だから……うっ、ひくっ……どうか……どうかそれが嘘でないことを祈っています……うっ、うぅ……ぐずっ……。お、お願いします……諏訪を……うたのんを救けて下さい!」
こらえられなかった……。気づけば私は地面に頭を擦り付けて泣いていた。
本当は薄々分かってる。四国からの援軍が来ないことも、結界はもう長く持たないことも、及川さんが今回の撮影を提案した理由も、傍から見て弱い私を案内役に指名した意図も。
それでもうたのんが助かるなら私はカメラの前で土下座でもなんだってする。
「みーちゃん……。及川さん、もういいです。カメラを止めてください」
「はい……白鳥様」
「歌野……水都……」
私の発言に呆然とする秋原さんと及川さん。そして撮影のことなんか忘れて地べたで泣きじゃくる私。そんな私にうたのんは腰を落として目線を合わせてくれる。
「うっ……ぐすっ……うたのん……ごめんね? 日常の撮影なのに……こんなこと言っちゃって」
「ううん。私が本当に言いたかったこと、代わりに言ってくれてありがとね?」
泣き続ける私をうたのんは優しく抱きしめてくれた。とても暖かくて安心する匂いに私の感情は決壊してしまった。
「ごめんなさい及川さん。今回の貴方の動画の撮影意図は私もなんとなくは察していました。ですが結局……私はみーちゃんにここまで言わせてしまいました」
「白鳥様……」
うたのんが私をより強く抱きしめる。ううん、うたのんが罪悪感を覚えることないんだよ? 本当に優しい人。
「及川さん、後で話があります。今夜1人で上社本宮まで来て下さい。待っています」
「かしこまりました」
「歌野……」
「雪花は今夜は私の家でみーちゃんと一緒にいてあげてほしいな」
「うん、わかったよ」
グズな私のお守りを快諾してくれた秋原さんは複雑そうな顔をしながらも、私の頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。心なしか少し落ち着いてきた。
「ありがとう、助かるわ」
私を抱きしめるうたのんから言いしれぬ覚悟が伝わってくる。そっか、私にしかしてないあの話をするんだね。よりよって及川さんに話す理由、なんとなくわかるよ。
うたのんが勇者になった時の話を。
及川(JK) カメラ越しに見るみーちゃんが尊くて少しトリップ気味だった。撮影の順番やスケジュールをほとんど組んでいる。
秋原雪花 日本各地の城郭好きで楽しみ方は当時の城に住む偉人達に思いを馳せること。
白鳥歌野 勇者であるシリーズの中でもかなり際どい勇者装束を小5から着ている。
藤森水都 怒涛の撮影で感情がジェットコースター。疲労と辛い思い出、雪花達が旅立つ不安が混ざり抱えていたものを吐き出してしまった。
脚のようなものが生えた進化体 本作オリジナルバーテックス。一見星屑に2本脚を生やしただけのようだがかなりすばしっこく攻撃が当たりにくい。そのぶん装甲は脆い。あの変態で有名なジェミニの祖先?