【第1章完】ゲツアサ!~インディーズ戦隊、メジャーへの道~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(1)縁が無かったということで

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「格ゲー? ウチにはないで?」

 

「え?」

 

 水色のポニーテールが特徴的な女の子がバッとその可愛い顔を上げる。女性が答える。

 

「だからウチらのチームには格闘ゲーム部門はないって」

 

「え? こちらは京都でも有数の規模のeスポーツチームですよね?」

 

「そうやで」

 

「格ゲー部門もあったと思うんですが……」

 

「いつの話をしとんの?」

 

「ええ?」

 

「三年前から休眠状態で、一年前に廃止されたで」

 

「ええっ⁉」

 

「今日日格ゲーをやる子なんてほとんどおらんからね」

 

「そ、そんな……」

 

「えっと、お名前はなんやったっけ?」

 

天津凛(あまつりん)です……」

 

「せやせや、滋賀の天津さん言うたらそこそこ有名やん。ニックネームはなんやったっけ?」

 

「テ、テンシンリンです……」

 

 凛は顔を真っ赤にしながら答える。

 

「恥ずいならそういうニックネーム辞めたらええのに……」

 

「若気の至りというか……」

 

「今も若いやん」

 

「と、とにかくそれが結構浸透しちゃったから変えるに変えられないというか……」

 

「ま、まあ、名前を売ることが大事やからな、この界隈」

 

「ええ……」

 

「格ゲーについてはよう知らんけど、他のジャンルでも結構有名やないの、あんた」

 

「中高時代は方々から助っ人を頼まれましたので……」

 

「履歴書見させてもらったけど、なかなか立派な成績やん」

 

「ありがとうございます……」

 

 凛が頭を下げる。

 

「あらゆるジャンルのゲームで好成績を残しとる……それだけでも類まれなるゲームセンスの持ち主やということが分かるね」

 

「は、はあ……自分ではよく分かりませんが……」

 

 凛はポニーテールをくるくるとさせる。照れている証拠である。

 

「というわけで、ウチらのチームでは違う部門で活躍してもらおうかな♪」

 

「え……?」

 

「はじめは控えからのスタートやけど、ウチらのチームは徹底した実力主義やから、毎週行っている紅白戦の活躍次第では即レギュラーになることも夢ではないで」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「ホンマや」

 

 女性が頷く。凛がおずおずと口を開く。

 

「ち、ちなみに……」

 

「ん?」

 

「主に取り組むゲームとは……?」

 

「『フォートレスナイト』や」

 

「あ、すみません」

 

 凛が勢いよく頭を下げ、高速で荷物をまとめ、部屋から出ようとする。

 

「は、早っ⁉」

 

「お時間取らせてしまいまして申し訳ございません」

 

「い、いや……」

 

「残念ながら今回はご縁が無かったということで……」

 

「そ、それはどちらかと言えばこちらの台詞……!」

 

「失礼します!」

 

 凛が部屋を出て、立派な建物を後にして、地下鉄を乗って、自宅のアパートにつく。端末を開くと、さきほどからの女性からのメッセージが数件入っている。

 

(なんか怒らせてもうた? せやったらごめん)

 

 少しは落ち着いた凛も返信する。

 

(いいえ、こちらこそごめんなさい。いきなり飛び出してしまって)

 

(なにが気に食わなかったん? 私の態度?)

 

(いいえ、あなたではありません)

 

(せやったら何? 言いたくなかったら、別にええけど……)

 

(あのゲーム……)

 

(え? 『フォートレスナイト』のこと?)

 

(そうです)

 

(いやいや、今や世界中で人気のTPSやで?)

 

(知っています。サード・パーソン・シューティングですよね)

 

(知っているやん)

 

(高校時代の友人に散々付き合わされましたから、『平野暴動』とかも……)

 

(あ~やり過ぎてすっかり飽きてもうたタイプ?)

 

(そうではありません)

 

(え? それじゃあ何?)

 

(ゲーム形式が気に食わないんです)

 

(はい?)

 

(物陰に潜んで狙撃したりというのがどうも……)

 

(ああ……)

 

(やはり基本は拳で決着をつけるのがベストでしょう⁉)

 

(ああ……そういう考えね、よお分かったわ。今回は縁が無かったということで……)

 

 そこから女性のメッセージは途絶える。凛は部屋のクッションに端末を投げつける。そして憤慨しながら、部屋のパソコンを起動させる。画面には『ロードファイターⅥ』の文字が躍る。凛は手際よく操作し、他のプレイヤーたちが集まっている場所に行き、その場にいるプレイヤーたちと片っ端から戦う。

 

「こんなにプレイヤーいるじゃん……まさか格ゲー部門廃止とかあり得ないんだけど!」

 

 凛とフレンド登録しているプレイヤーからメッセージが届く。

 

(どうしたの? 今日はいつにも増して気合い入ってんじゃん)

 

(カツ丼)

 

(え、カツ丼?)

 

(打ち間違った、格ゲー最高だよね⁉)

 

(何を今さら!)

 

 凛は笑顔を浮かべる。凛のところに世界中の格ゲーマーからメッセージが届く。

 

(テンシンリン! 今日こそは君が頂点に君臨する最後の日だ!)

 

(それはどうかな!)

 

 挑んできた強者たちをバッタバッタとなぎ倒し――ゲーム中ではあるが――凛はとりあえず溜飲を下げる。すると、部屋のインターホンが鳴る。

 

「~♪」

 

「えっ、引っ越しの荷物は全部届いたはずだけど……はーい?」

 

「ヤマゾンさんから荷物でーす」

 

「え? 何か買ったっけ? ……はい」

 

「ハンコかサインでよろしくお願いします!」

 

「じゃあ、サインで」

 

「ありがとうございます!」

 

「お疲れ様です……受け取ってしまった……大きくないな、なんだろう? 開けちゃうか」

 

 凛は妙にハイテンションだったためか、その箱を開けてしまう。中にはゲームコントローラーのようなものが入っていた。

 

「なんだこれ……トイステ5の奴ともZBOXの奴とも違う……スウィングでもないな……どこのメーカーだろう? コネクターみたいのも付いているし……ん?」

 

 凛の端末に知り合いからのメッセージが入っていた。高校の先輩からである。大至急来て欲しいという。凛はなんとなくそのコントローラー類も鞄に突っ込んで、再び家を出た。

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