【第1章完】ゲツアサ!~インディーズ戦隊、メジャーへの道~   作:阿弥陀乃トンマージ

35 / 50
第9話(2)先輩ヒーロー

「……なんて言うてたっけ、司令官……」

 

「大仕事とか言っていたな」

 

「これが大仕事か⁉」

 

 怪人の着ぐるみを着ながら躍が声を上げる。

 

「アミューズメント施設で行われるヒーローショーに出演するなんて、そうそう出来ることじゃないだろう……」

 

 輝が淡々と答える。

 

「だからって着ぐるみって⁉」

 

「むしろ良い方だろう」

 

「何が⁉」

 

「卓越した運動神経を評価されたわけだからな」

 

「う、うむ……」

 

「こっちはこれだぞ?」

 

 輝が全身タイツ姿で首をすくめる。

 

「じゃあ変わるか?」

 

「いや、いい」

 

 躍の問いに輝が即答する。

 

「いいって! なんでやねん!」

 

「恥ずかしいからな」

 

「恥ずかしい言うな!」

 

「まあ、そうヤケを起こすなよ、躍くん……」

 

 用意されたお茶を飲みながら秀が呟く。

 

「せやかて秀さん……」

 

「最初はなんでもこんなもんさ」

 

「こんなもんって……」

 

「こういう下積みを重ねることが大事なんだ」

 

「下積みね……」

 

「先輩ヒーローの仕事ぶりを間近で見られるのもそうそうないことだよ?」

 

「先輩ヒーローね……知ってた?」

 

 躍が輝に問う。

 

「正直知らなかった……戦隊ヒーローにはあまり明るくないからな……」

 

「せやろ?」

 

「とはいえ、最近売り出し中みたいだぞ?」

 

「ふ~ん……」

 

「ボクらは今回休みだが、凛くんと心くんが頑張っている。袖で見学させてもらおう……」

 

 秀が声をかけ、秀とともに輝と躍が控室から袖に移動する。

 

「ふはははっ! この京都の地は我々のものだ!」

 

「凛くん、なかなか上手いじゃないか……」

 

「口調が戦闘員やなくて幹部のそれですけどね……」

 

 感心する秀の横で躍が苦笑する。

 

「誰も我々の邪魔は出来ないどすえ~」

 

「心ちゃん、京都弁が出てもうてるがな……」

 

 躍は心配そうに見つめる。

 

「待て!」

 

「!」

 

「そなたらの悪事もここまでだ!」

 

「なっ⁉」

 

「だ、誰どす⁉」

 

 凛と心が周囲を見回す。

 

「群雄割拠! センゴクレッド!」

 

 鎧武者のような恰好をした赤いスーツの者がステージに現れる。輝が呟く。

 

「センゴクレッド……」

 

「戦国時代ならではの血で血を洗う感じをイメージしているそうだよ」

 

「レッドってそういう意味⁉ 怖っ⁉」

 

 秀の説明に躍が体を震わせる。

 

「優美巧妙! ムロマチゴールド!」

 

 全身金色のスーツを着た者が現れる。

 

「金ぴかだな……」

 

「ははっ、まるで金閣寺みたいやな」

 

「そこからインスパイアを受けたようだよ」

 

「適当に言うたら当たった⁉」

 

 秀の反応に躍が驚く。

 

「絢爛豪華! モモヤマピンク!」

 

 派手なピンク色のスーツを着た者が現れる。

 

「ふむ、これまた派手だな……」

 

「桃山って、安土桃山時代の?」

 

「そう、桃山文化をイメージしているようだ」

 

 躍の問いに秀が頷く。

 

「血風乱舞! バクマツダンダラ!」

 

 浅葱色のダンダラ模様のスーツを着た者が現れる。

 

「新選組か……」

 

「ダンダラって……自由やな」

 

「どちらかと言えば取り締まる方だけどね……」

 

 秀が笑みを浮かべる。

 

「典麗風雅! ヘイアンジュウニヒトエ!」

 

 色とりどりのカラーリングの着物のような恰好をした者がステージに上がる。

 

「じゅ、十二単って⁉」

 

「動きづらそうな恰好だな……」

 

 驚く躍の横で、輝が素直な感想を口にする。

 

「約20キログラムの重さらしいよ」

 

「そ、そんなに重いんですか⁉ な、何故、そないなことを……」

 

 秀の補足に躍が戸惑う。

 

「平安文化を再現する為だってさ」

 

「こだわりが強いな……」

 

「輝、もしかして感心しとる?」

 

「ここまで徹底されればな……」

 

 躍からの問いに輝が頷く。ステージにヘイアンジュウニヒトエを中心に五人が並ぶ。

 

「千年王城を守り抜く! 歴女戦隊!」

 

「「「「「『ヒストリカルガールズ』!」」」」」

 

 五人の揃った掛け声の後に、爆発音のSEが鳴る。

 

「れ、歴女戦隊⁉」

 

「歴史好きが高じて、戦隊になったそうだよ」

 

「高じ方間違うてません⁉」

 

 秀の解説に躍が困惑する。

 

「全員女か……」

 

「ボクらと一緒だね」

 

 輝の言葉に秀が反応する。

 

「ふむ、司令官がこのヒーローショーにわたしたちを派遣したのは、大いに学ぶことがあるからということか……」

 

 輝が顎に手を当てて呟く。

 

「そういうことかもしれないね」

 

「そこまで考えてますかね、あの人……?」

 

 躍が首を捻る。

 

「考えてないな」

 

「まあ、ボクもそう思うよ」

 

「二人とも言うてること変わってるがな」

 

「まあ、とりあえず勉強させてもらおう、先輩ヒーローの様子を……」

 

 秀がステージを注視する。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。