【第1章完】ゲツアサ!~インディーズ戦隊、メジャーへの道~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第10話(1)そして神戸

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「ど~も~」

 

 喫茶店に心が入ってくる。

 

「……」

 

 視線が心に集中する。

 

「あら? 遅刻はしてないはずどすが……」

 

 心が小首を傾げる。

 

「……ギリギリセーフやな」

 

「躍ちゃん、判定厳しいな~アイスコーヒーをひとつ」

 

「はいよ……アイスコーヒーひとつお願いしま~す」

 

 躍がカウンターからマスターに声をかける。心が席につく。

 

「……怪我の具合は?」

 

「お陰様で、軽傷で済みました」

 

 彩の問いに心が答える。

 

「それは何よりやな……」

 

 彩が顎をさする。

 

「……凛はんは?」

 

 心が店内を見回して尋ねる。

 

「まだ来ていないよ……」

 

 秀が首を左右に振る。

 

「え?」

 

「先の敗北がよっぽど堪えたんだろうな……」

 

 輝が腕を組んで呟く。心が尋ねる。

 

「誰か連絡は?」

 

「送ったメッセージに一応既読はつくんやけどな……」

 

 アイスコーヒーを心の前のテーブルに置きながら、躍が呟く。

 

「先の敗北で自信を失ってしまったんだろうか……?」

 

「それもあるだろうが……」

 

「あるだろうが?」

 

 秀が輝に視線を向ける。

 

「リーダーだからこそより強く責任を感じているんだろう……」

 

「真面目やな……でも、そういう娘やな、あの娘は……」

 

 躍が俯く。彩が口を開く。

 

「……ここは自分らの内が誰かが励ましてやってくれへんか?」

 

「そういうことなら……」

 

 秀が立ち上がる。

 

「………!」

 

 アパートの前でぼうっと佇んでいた凛がクラクションの音に気が付く。視線を向けると、グレーのスポーツカーがそこに停まっていた。

 

「やあ」

 

 車の窓から、秀が身を乗り出して軽く手を振ってくる。

 

「ど、どうも……」

 

 凛が頭を下げる。

 

「思ったよりも元気そうだね」

 

「は、はい……」

 

 凛が車に歩み寄る。

 

「怪我は?」

 

「と、特に大丈夫です……」

 

 秀の問いに凛が答える。

 

「そうか……」

 

「あ、あの……?」

 

「海でも見に行こうか」

 

「は、はい⁉」

 

 秀の提案に凛が面食らう。

 

「いや、海を見れば、色々スッキリすると思うよ?」

 

「スッキリ……」

 

「そう」

 

「嫌です」

 

「え⁉ そこで断る⁉」

 

 凛の言葉に今度は秀が面食らう。

 

「琵琶湖は見飽きているので……」

 

「あ、海ってそっち⁉」

 

「え? 違うんですか?」

 

「し、滋賀県民ならではの感覚!」

 

「天橋立や舞鶴はちょっと遠くないですか?」

 

「に、日本海側⁉」

 

「え? それも違うんですか?」

 

「ま、まあ、そっちも悪くないけど……神戸の海はどうかなって……あっちがボクの地元だから、色々と勝手が分かるからね」

 

「神戸ですか……はあ……まあ……良いですけど」

 

「決まりだ。助手席に乗ってくれ」

 

 秀が笑顔を浮かべ、凛を促す。凛が助手席に乗り込む。

 

「………」

 

「神戸は初めてかい?」

 

 秀が運転しながら話しかける。

 

「……家族旅行であります」

 

「そうかい」

 

「素敵な街ですよね」

 

「ふふっ、どうもありがとう」

 

「秀さんはよく帰るんですか?」

 

「う~ん。そんなにしょっちゅうではないけれどね」

 

「はあ……」

 

「まあ、車を飛ばせばすぐだからね」

 

「いいなあ、車……」

 

「いいよ、車。買ったら?」

 

「貧乏学生には到底手が出ません……」

 

 凛が苦笑する。

 

「戦隊ヒーローとしてメジャーになれば良い」

 

「!」

 

「収入も大幅に増えるという話じゃないか」

 

「それも考えていたんですが……」

 

「ですが?」

 

 秀が首を傾げる。

 

「ははっ、なんとなく限界が見えちゃったというか……」

 

 凛が再び苦笑する。

 

「ふむ、輝くんの言っていたことは概ね当たりか……」

 

「はい?」

 

「いや、なんでもない。こちらの話だ」

 

「は、はあ……」

 

「初心に還ってeスポーツの大会で優勝を目指すとかはどうだい?」

 

「そ、そうですね……」

 

「どうかしたのかい?」

 

「ここ数日はゲームをする気力もないというか……」

 

 凛が鼻の頭をポリポリとこする。

 

「ふむ、なるほどね……」

 

「す、すみません……」

 

「謝ることはなにもないさ……着いたよ」

 

 秀が車を停める。秀たちは車を降りる。

 

「わあ! 素敵な眺めですね……!」

 

 凛が声を上げる。秀が笑う。

 

「ふふふっ、ここはひそかな穴場なんだ……と思ったら結構人がいるけど……ん?」

 

「きゃあ!」

 

「はーっはっはっは!」

 

 海から突如現れたタコの怪人と戦闘員たちが暴れて、周囲の人々に襲いかかる。

 

「か、怪人が⁉」

 

 凛が驚く。

 

「人間どもをタコの墨で黒くしてやるぞ~」

 

「そうはさせない!」

 

「なにっ⁉」

 

「『ハナノマーベラス』!」

 

「『ツキノアドマイヤ』!」

 

「『ユキノサイレンス』!」

 

「『ホシノインパクト』!」

 

「『ソラノトップガン』!」

 

「五人揃って!」

 

「「「「「『歌劇戦隊サンクメモリアル』!」」」」」

 

 華やかな衣装に身を包んだ五人組が優雅なポーズを取る。

 

「我らが貴様をタコ焼きにして差し上げよう!」

 

「ぐ、ぐわーっ⁉」

 

 サンクメモリアルの見事な攻撃にタコ怪人と戦闘員たちは撃退される。

 

「あ、あの人たちは……?」

 

「この兵庫県を中心に活躍する戦隊ヒーローだね……人気は全国区だ」

 

「ええっ⁉」

 

「ローカルからでもメジャーになれる。魅力的だよね、戦隊ヒーローは……」

 

「……アタシもなれるでしょうか?」

 

「なれますよ」

 

 真白がいきなり出てくる。凛が驚く。

 

「ま、真白さん⁉ ど、どこから⁉」

 

「車の後部座席に身を潜めていました。コントローラーは持ってきましたね? 変身です」

 

「え……?」

 

「そこに車が置いてあります……格ゲー民なら意味が分かるでしょう?」

 

「! 車をぶっ壊して、ポイントを稼ぎながら、必殺技の特訓!」

 

「うわあ! ちょ、ちょっと! やめてくれたまえよ⁉」

 

 自分の車が壊されそうになり、秀は慌てて止める。

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