【第1章完】ゲツアサ!~インディーズ戦隊、メジャーへの道~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第2話(4)パープル、登場

「え、えっと……」

 

「こちらは?」

 

 声の主が隣の席からコントローラーだけを見せてくる。

 

「ア、アタシたちも!」

 

「う、うむ……」

 

 凛たちも鞄からコントローラーを取り出し、隣の席に見えるようにする。

 

「ふむ……失礼しますえ」

 

 白いロングワンピースに薄紫色のジャケットを羽織った、紫色のショートボブの女性がトレーを持ったまま、輝の隣に座る。輝が戸惑う。

 

「お、おお……」

 

「そ、それは三色チーズ牛丼特盛!」

 

「温玉付きどす……」

 

「やはり……」

 

「ええ、貴女は見事正解にたどり着かれました」

 

「やったあ!」

 

 凛がガッツポーズを取る。

 

「あ、当たっていたのか……」

 

 輝が困惑する。

 

「あらためて……どうも初めまして……」

 

 女性が丁寧に頭を下げる。

 

「初めまして! 天津凛です!」

 

「ほほっ、元気の良いお嬢さんどすな~」

 

 女性が笑う。

 

「……どうも、橙山輝です」

 

「こちらはクール&ワイルドなお嬢さんどすな」

 

「ワイルドかどうかは知りませんが……」

 

「輝っちは山で狩りとかしてそうだよね。迷彩服的にも」

 

「イメージで決めつけるな! 迷彩服は好きなだけだ」

 

「ほほっ……」

 

「……貴女の名前を伺っても?」

 

「これは失礼しました……わたくしは紫条院心(しじょういんこころ)どす」

 

「紫条院心……」

 

 輝が心と名乗った女性を見つめる。心はおどける。

 

「あまりの綺麗さに見とれてしまいましたか?」

 

「いいえ、全然」

 

「ぜ、全然⁉ ご、ご挨拶な方どすな……」

 

「どこかでお見かけしたことがあるような……」

 

「ふふっ、どこか初々しさのあるナンパどすな……」

 

「ナ、ナンパ⁉ 節操がないよ、輝っち!」

 

 凛が声を上げる。

 

「誰もナンパなどしていない!」

 

「アタシというものがありながら!」

 

 凛が自らの体を抱きしめる。

 

「何を言っている!」

 

「一晩をともにしたのに!」

 

「誤解を招く発言は止めろ!」

 

「ふふっ、なんや愉快なコンビどすな~」

 

「コンビじゃありませんよ!」

 

 心の言葉を輝は否定する。

 

「あ、そうなん?」

 

「そうですよ、それよりもですね……」

 

「きゃあ!」

 

「!」

 

 店員の悲鳴がしたかと思うと、牛の頭をした怪人と、黄色の全身タイツを着た戦闘員たちが店に入ってくる。

 

「ウ、ウシ怪人さま⁉」

 

「なんだモー⁉」

 

「この女子大を占拠するのが狙いでは⁉」

 

「そうだモー!」

 

「そ、それなら、もっと人が多いところに行った方が……」

 

「その前にこのふざけた店をぶっ潰すモー!」

 

 ウシ怪人が金棒を振り回す。

 

「きゃ、きゃあ⁉」

 

「牛丼屋で逆上している! 下手に刺激するとマズいぞ!」

 

 輝が声を上げる。凛が立ち上がって叫ぶ。

 

「ウシさんと黄色……卵入り牛丼だ!」

 

「ああん⁉」

 

「うおいっ⁉ 言った側から思いっきり刺激するな!」

 

「良い度胸しているモーね……」

 

 ウシ怪人が凛たちに迫ってくる。

 

「お、お客様、お逃げ下さい!」

 

 店員が震えながらも声をかける。

 

「お姉さんこそ裏口から逃げて、他のお客さんもよろしく……」

 

「ええ?」

 

「アタシらは大丈夫……ヒーローだから!」

 

「‼」

 

「輝っち!」

 

「ああ! ちょっとお行儀が悪いが……」

 

 凛と輝が座席の上に立ち、コントローラーを装着したコネクターに繋いで叫ぶ。

 

「「『コントロールOK! ゲームスタート!』」」

 

「⁉」

 

 凛と輝が眩い光に包まれ、仮面とタイツで顔と体を覆う。

 

「EFシアン!」

 

「EFオレンジ!」

 

「やった、カッコよく変身出来たね、輝っち!」

 

「あ、ああ……」

 

「夜通し練習した甲斐があったよ!」

 

「そ、そういうことまで言わなくていい!」

 

「こ、こんなところに戦隊が!」

 

「うろたえるな! 排除してしまえ!」

 

「は、はい!」

 

「う、うわあっ!」

 

 迫ってくる戦闘員を見て、シアンが戸惑う。

 

「お前がうろたえるな!」

 

「! う、うん! それっ!」

 

 シアンが飛び上がり、戦闘員たちの前に着地する。

 

「むっ!」

 

「『弱パンチ』!」

 

「どわっ!」

 

「『弱キック』!」

 

「おわっ!」

 

 シアンが戦闘員たちを倒す。

 

「いいぞ、シアン! ただ……」

 

「ただ? なにさ、オレンジ?」

 

「技のネーミングはなんとかならないのか⁉」

 

「『小パン』とかにした方が良い⁉」

 

「いや、それもどうかと……」

 

「弱パンチは弱パンチなんだからしょうがないじゃん! 確実に効いてはいるよ!」

 

「印象としてだな、弱いパンチって……ま、まあいい! ウシは任せろ!」

 

 オレンジが銃を放つ。

 

「ふん!」

 

「なにっ⁉」

 

「……なにかやったモー?」

 

「じゅ、銃弾を金棒で弾いただと……?」

 

「それで終わりモー⁉」

 

「くっ! ん?」

 

「ええっと、こうやって……」

 

「紫条院さん、ひとまず避難して下さい!」

 

「なんやったっけ? ああ、せやせや、『コントロールOK! ゲームスタート!』」

 

「なっ⁉」

 

 心が眩い紫色の光に包まれ、紫色の仮面とタイツで顔と体を覆う。

 

「EFパープル!」

 

「も、もう1人いたモー!」

 

「パ、パープル! 変身出来たのは良いが、下がった方が良い!」

 

「いやいや、わたくしの大学で暴れてもらった落とし前はつけさせてもらいますえ……」

 

「し、しかし、武器が無いようだが⁉」

 

「説明書によれば、これどす!」

 

 赤い球体がどこからか現れ、パープルの手に乗る。

 

「そ、それは……?」

 

「投げてみまひょか。えい!」

 

「ふん! なんだそんなもん!」

 

 ウシ怪人が球体を弾き飛ばす。

 

「おお、打たれてもうた……」

 

「パープル、とりあえず下がれ!」

 

「いや、大体分かりましたわ……これを四つ集めれば……!」

 

 パープルの手に、赤い球体が四つ重なる。赤い炎になる。

 

「むっ⁉」

 

「それ~!」

 

「うおおっ⁉」

 

 ウシ怪人が火だるまになり、力なく倒れる。オレンジが呟く。

 

「そうか、パズルゲーム、中でも『落ちものパズルゲーム』で有名プレイヤーだったか……」

 

「きっちりと落とし前つけさせてもらいました、落ちものだけに……ふふっ」

 

 パープルは優しい声色で物騒なことを呟く。

 

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