落ちる、落ちる、落ちる
けれど、いつまで経っても地面に叩きつけられる感覚が来ない。
そうしている内に、俺は気を失っていた。
目が覚める、そこには見慣れたけれど懐かしい自分の部屋の天井があった。
「? ……あれ? 俺はビルから飛び降りて……」
「あら、起きた?」
知らない声が聴こえた、慌てて身を起こし警戒体制をとる
「そんなに怯えなくたっていいじゃない」
そこにいたのは、いわゆる黒髪ロングの美人ってやつだった。
いや、ロングっていうか床まで髪が伸びてるけど……
服装は……エプロン? なぜ?
「だ、誰だ! なんで俺は……」
「そうだ! あれやりましょう! あれ! 運命の出会い構図ってやつ? 『貴方が私のマスターか?』ってやつ!」
なに言ってるんだコイツ? 頭がおかしいのか?
「マスター?」
「? ホントに何も理解してないのね、貴方は聖杯戦争の参加者になったのよ!」
「は?」
一瞬何を言ってるのか理解できなかった。
聖杯戦争ってのがあるのは知ってる、何回かそれ関連の依頼が来たことがあるからだ。
だけど、聖杯戦争ってのは開催される前に予兆があったはず……
「あ!」
慌てて手の甲を見る。
「これ、令呪だったのか!? あれ? でも令呪って赤色じゃなかったっけ?」
「細かいことはどうだっていいじゃない、貴方がマスター、私はサーヴァント、他になにか理由が必要?」
「いや、仮に俺がマスターでお前がサーヴァントだったとしても、おかしいだろ、俺、召喚なんてしてないし、なんで俺の部屋知ってるんだよ」
「まぁ、なんだっていいじゃない」
「よくないが!!」
そんなやりとりをしている間に、どこから持ってきたのか、いつのまにか机に食器と鍋が並んでいた。
「ご飯でも食べて落ち着きましょ?」
出てきた食事を食べ終わった。
「「ごちそうさまでした」」
味は、まぁ変な感じはしなかったし、不味くはなかった。
よくも悪くも普通の味ってやつだった。
今更思ったことだが、誰かもわからない奴から出された飯を、疑いもせずに食べた自分が信じられない。
人は空腹には耐えられないのだ、仕方ないと割りきることにした。
「それで結局お前は何なんだ?」
「お前が人じゃないのはわかる、けどサーヴァントでもないだろ」
サーヴァントってのは死んだ英雄が座に記録されてこちらの召喚に答えるものだって聞いたことがある。
けど彼女は多分だけど生きてる。
「ひ・み・つ」
「秘密ってなんだよ、これが聖杯戦争だって言うならマスターとそのサーヴァントの間に隠し事するメリットがないだろ」
「乙女の隠し事を探ろうとするのはよくないわよ?」
「………………わかった……」
「その間はなに?」
彼女が凄く不機嫌そうな顔をした。
「じゃ、じゃあ、せめてクラスだけでも教えてくれ、これが聖杯戦争だって言うなら、あいつ、バーサーカーも倒さないといけないんだろ? なにか解決策になるかもしれないし」
慌てて話題を切り替える。
「クラス? あぁ、そのサーヴァントが得意なことを表したもの、だっけ?」
「それなら、わたし、
「は? どういうことだ?」
意味がわからない、サーヴァントは全盛期をそのまま召喚することができないからクラスっていう枠に納めて召喚するものなんだろ?
「わたしにクラスなんてものはないわ」
「え? じゃあ、なんて呼べばいいんだ?」
「なんでもいいわよ、あなたが呼んだクラスの姿で戦ってあげる」
ねぇ、マスター?
あなたはどんなクラスがお好み?
次の日 ...
あの後何があったかというと。
俺の限界をはるかに超えた情報量で頭がパンクしてそのまま寝てしまった。
そのあと何が起きたのか知らないが、あいつは起きた時にはいなかった。
どうせ、悪い夢でも見てたんだろ。
気持ちを切り替えよう、今日は久しぶりに学校に行くんだ。
まぁ明日から夏休みだから終業式なんだけど。
「久しぶりの学校楽しみだな~」
(わたしもたのしみ~)
?何か聞こえたような気がする......
気のせいか!昨日の記憶は全部夢!夢なんだ!!
(夢じゃないし、私ここにいるわよ?)
「は?」
今度ははっきり聞こえてた。
慌てて周りを見渡すが誰もいない。
確実に彼女だと悟る。
「ああぁぁぁーー!嫌だぁぁぁー!全部夢だったら何にも考えなくて済んだのにぃぃー!」
(そんなの許さないわよ、あなたに勝ってもらわないといけないのよ)
「あーあー、聞こえないー聞こえないー、俺は普通の男の子にもどるんだー」
そんなやりとをしながら学校に向かった。
「ねぇねぇ、あの海外行ってたショウちゃんが帰って来るんだって」
「え~!マジで!てか二カ月って留学にしては短くね」
「早く帰ってこれたんだから何でもいいじゃん」
そんな声がいたるところで聞こえる。
俺はそんなに目立ってたわけじゃないと思うが、いつの間にこんなに人気者になったんだ?
(ずいぶん、人気者みたいじゃない、魔術使いともあろう者がこんなに目立ってていいの?)
「知らないよ、海外留学って言えば長期間学校にいなくても怪しまれないと思ったんだよ」
(海外留学って逆に目立つでしょ、頭悪い私でもわかるわよ)
「遠回しに俺の頭が悪いって言いたいのか?」
(頭が悪くても私のマスターはあなただけよ♪)
なんか言い逃げされた気がするけどまぁいいか。
そんな話をしていると、自分の教室の方から別の話題が聞こえてきた。
「今日も転校生来るってよ」
「え~!昨日来たばっかじゃん!」
「今日はショウちゃん帰って来ただけでお腹いっぱいだっつーの」
どうやら昨日と今日の二連続で転校生が来ているらしい。
そんなことあるか?
まぁ考えても始まらないので、普通に教室に入る。
僅かに魔力の気配を感じた気がするが、気のせいか。
「はぁ~い♪授業を始める前に諸連絡するわよ~」
「今日はショウちゃんが帰ってきました~拍手~」
俺は軽く頭を下げる。
「あと、なんと、なな、なんと、昨日につづいて転校生がきました~さぁ~入って入って♪」
「南米の方から来た、デイビットくんで~す」
「デイビット・ゼム・ヴォイドだ、馴れ合うつもりはない、そうだな、名前くらいは記憶してやる」
「きゃ~イケメンよ!」
「え~!うちに来る転校生イケメンしか来ないの?」
「ふ、私のイケメンセンサーが爆発している」
確かにイケメンかもしれないが、絶対魔術師だよな。
(魔術師でしょうね)
だよな雰囲気がそれっぽいもんな。
あれ?何でこいつ俺の頭の中で考えたことわかってるみたいに返事したんだ?
「デイビットくんはショウちゃんの隣ね」
「お、おれ?」
デイビットが俺の隣の席に近づいてくる。
「ここか、お前の名前は...」
「....神楽照太郎、えっと....」
「照太郎か、よろしく」
「お、おう、よ、よろしく」
そのあとは特に何事もなく終業式が終わった。
探りを入れてやろうとも思ったが、彼には隙がなさ過ぎて断念した。
でも、手の甲に令呪らしきものが見えたので参加者で間違いないだろう。
どうせすぐ会うことになるなら今探らなくてもいいだろと考え、その日は帰った。
家に着いた頃、玄関には彼女が立っていた。
「おかえりなさい。ショウちゃん♪」
「ご飯にする?ライスにする?それとも、お・こ・め?」
「全部米じゃねぇか」
「な~に?何か期待しちゃった?」
「なんで朝は居なかったのに、夜は居るんだよ。」
「スルー!?ひどくない?」
俺は彼女をスルーして家の中に入る。
彼女はあとを追って来る。
着替えているときもずっとこっちを見ていた。
「着替えくらいは、一人でさせてくれると嬉しいんだけど......」
少しキレ気味で言った。
「見られて嫌なものなんてないでしょ?」
彼女に睨まれると、なぜだかこっちが悪いみたいな感覚になる。
「......で、さっきの質問の答えは?」
「あぁ、わたし朝は苦手なのよ」
「え?それだけ?」
「それだけよ」
「えっと、朝は苦手だから動かないってこと?」
「そうじゃなくて、実体化できないからあなたの頭の中でおとなしくしてただけよ」
「え?じゃあ、ずっと俺の頭の中にいたってこと」
「そうよ、だからしゃべりかけたり、あなたが頭で思ったことに返事したりしてたでしょ?」
え、待って、普通に怖いんですけど、頭の中のぞかれてたってことだろ。
じゃあ、あんなことやこんなことものぞかれてたってこと?
「そうよ、あなたのことなら何でも知ってる過去の記憶も全部見終わったわ」
「......ああぁぁぁーー!お前プライバシーって知らないのか?勝手に人の記憶を見るんじゃない!」
「魔術が使えるようになって自分は本物なんだって言い張ってるショウちゃんとか可愛かったわよ」
「ああぁぁぁー!!今すぐその記憶を見なかったことにしろ!」
そんなことがあって彼女と会って、一日目があっという間に過ぎた。
聖杯戦争が何も進んでないって?
この夜はどの陣営も動かなかった。
いや、正確に言えばこの一日で他の陣営は【
ある陣営は陣地を創り、ある陣営は同盟を組んだ。
今思えば、この夜に1つでも潰しておけばよかったと思ってしまう。
T「結局バーサーカーしか使ってないよね」M「清姫最強!清姫最強!!」T「え?伊吹でよくね?」M「ゆるさねえッ!あんたは今 再びッ!オレの心を『裏切った』ッ!」T「なにも裏切ってなくね?」M「ゴフッ!!」
はい、1話でした。
今回登場したのは、みんな大好きデイビットくんです。
前回聖杯戦争やってるところからマスターたちを連れてくると言ったな、あれは嘘だ!
彼が出てきたということは、みんなの周回のお供と化した、某神様も出るということです。
お楽しみに!