ALTER EGO 〜他愛のないお話し〜   作:パッチワーカー

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 半年1回くらいのペースで診断部分だけしてます。前の自分と何か考え方•捉え方が変わってないかなーって。
 まぁ実際はほとんどいっしょで、唯一双子の物語だけ変わります。なぜか迷うんですよね。


『人間失格』と『Kの昇天』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間の営みが難しく感じるときってないかしら?」

 

 ある訳ないでしょ。僕は普通に人間なんだよ?

 

「あなたはそういう人よね。でも···私には当たり前のことにやってるすべてのことが一度疑問に思うとすごく複雑に思えてくるの」

 

 君はやっぱり考えることが好きだね。でも確かに、寝てるときにどうやって呼吸してるのかって疑問に思うかも?

 

「そういう感じよ。呼吸ひとつをとっても、意識すると難しく感じるでしょ?」

 

 そうだね。感じるよ。君も感じるんだよね?

 

「そうよ。私はそう感じてたからこそ『人間失格』は楽しめた」

 

 『人間失格』って太宰治氏のだよね───僕はあんまり共感できなかったなぁ。主人公がロクでもなさすぎたし。

 

「主人公の葉蔵は確かにロクでもない人間かもね」

 

 ───いや、絶対ロクでもない人間だったって(笑)

 

「そうかしら。私は彼がわからなかっただけだと思うの」

 

 何が?何がわからなかったと思うの?

 

「人間という営みよ」

 

 ······あーそういうことね。確かにそれはそうかもしれない。彼は人が当たり前にできることを考えてじゃないとできなかったからね。

 

「そうね。彼は賢しかったから、表面上は取り繕って、道化を演じてしまっていた。いや、演じることができてしまったに近いと思うの」

 

 それが自分の首を絞めることになったのにね。僕らが何も考えずにすることを、彼は一々考えてしなきゃいけなかったからね。···そう思うと、彼はロクでもない人間ではなかったのかもね。───というよりも、

 

 

人間、失格

 

 

 そうだね。間違いなく彼は()()()()()()けど、()()()()()()()()んだろうね。

 

「本の内容よく覚えてたのね」

 

 そりゃぁ、ね。ここに来て初めて読んだ本だし覚えてるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (あなた)は気がついたら知らない場所にいた。訳の分からないまま立ってたら、自らを「エゴ王」と名乗る半分おじさんで半分おばさんの()が話しかけてきた。

 

『私とはなにか』
      

              

『見つけるのは』

『お前自身だ』

               

『あなた自身』

 

 そう言っていた。それ以外も言っていたが、何故か僕はその言葉が耳に、頭にこびりついている。

 

 

 そして、僕は黒い道を歩きながら、『人間失格』を読んだ。···二宮金次郎みたいな感じで。

 

 その途中で、図書室や書斎のような本が無数にある部屋に着いた。

 そのなかに、目つきが怖···鋭い女性がいた。

 

 それが「エス」 君だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 君は僕らの初めての会話覚えているかい?

 

「···えぇ、覚えているわ。恥ずかしいけどね」

 

 僕は鮮明に覚えているよ。「はぁ···」っていうため息から始まったしね(笑)

 

「あの時の私は···ね。エゴ王にイラついていたしね···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうだ。君は梶井基次郎氏の『Kの昇天』は読んだことある?

 

「ドッペルゲンガーや魂の昇天。そして光と影をテーマにあげた幻想文学よね。読んだことあるわ···けど、なんで?」

 

 

 いや、小説のなかの一文でさ「自分の影を見ていた、と申しました。そしてそれは阿片のごときものだ、と申しました」とあったじゃん?···自分の影を見ることが阿片のような感覚になるなんて面白くない?

 

「そうね···影を見るだけで阿片という、それだけで国一つが滅ぼせる戦争を起こしてしまうほどの麻薬に例えているのは興味深いし、現実感がないわ。でも前の私も少しこれに近い感じになるときもあった···自分の影を見て『私』という存在が影に飲み込まれてしまいそうになる感覚を感じていた」

 

 そうだよね。僕もそう感じたから、なんだかこの小説を読んでるときに君が頭にチラついたんだよ。

 

「あのときの私は···規律と衝動の狭間にいたから···少しでも影を見てると、自分が分からなくなる気がしてたわ···今はあなたがいるからならないけど」

 

 ───君はたまに、『はつ恋』のジナイーダのように僕を翻弄してくるね···ホントに心臓に悪いよ。

 

「そうかしら?···でも私はあなたのことを翻弄しようだなんて考えていないわ。···だってあなたのことが大切なんだから」

 

 ···間違えた。君はジナイーダよりも性質(タチ)が悪いよ···惑わそうという魂胆なしに、それを本気で言ってるんだもんね。

 

「そうね。隣にあなたがいたら···とか考えてしまうから···それほど、あなたのことが大切なの」

 

 そう言ってくれるのは照れくさいけど、その感情がなんなのか。僕的には整理してほしいけどね。

 

「···恋慕の情なら、あなたが私の初恋になるのよね。···何だか照れるわ。けど今はこの感情がなんなのか。私でも分からないわ···だってこんな感情初めてだもの」

 

 そうだよね···1つだけ言っておきたいけど、僕はそれが友愛であれ、親愛であれ、恋愛であれ、それが「愛情」に変わりないのなら、全て受け止めるよ。···僕も君のことが大切だからさ。

 

「···あなたも大概よ···」

 

 ···君はさ。

 

「···何かしら?」

 

 ···この本しかないこの部屋で生きていくしかないんだね。

 

「ええ。そうね。あなたが来なくなって(夢を見なくなって)しまえば···私は本当の意味でひとりぼっちになってしまって、本を読んで生きていくしかないわ」

 

 

 そうなっちゃうよね。

 ···君は「ダークルームプロブレム」って知ってる?

 

「···いえ、知らないわ」

 

 認知科学の分野だし知らなくて当然さ。まぁ簡単に言うと、刺激のある世界に飛び込むと人は必ずトラウマや傷を負うことになる。それなのになぜ皆暗い•刺激のない部屋でじっとしないのか···って感じのことだね。

 

「···それは綺麗事じゃないかしら。人間という生き物は

 

そんなものに耐えられない。だから、

 

刺激を求めて外の世界へ

 

 ちょっとハモったね(笑)僕ら人間がそんなものに耐えられる訳ないよね。

 

「僕ら?···それって···」

 

 まぁ、君をその考えしてる時点で、ね。人間だよ。僕たちは。

 

 

 

 こうやって意味がありそうでない話が。意味がなさそうでありそうな話が。エスと過ごすこんな時間が僕は好きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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