忘記却憶 〜忘れた者に忘れ物、忘れぬ者に忘却を〜   作:二次元の虫

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第一章
プロローグ 〜ありきたりな犠牲のーー〜


「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 

目の前でダルマとなった同級生の機体が、青白く光るラインが神経のように張り巡らされた、曲線的なスタイルが特徴的な人型機体に遊ばれていた。

掴まれ、回され、5本指マニピュレーターの掌で弄ばれている。

それに抗う術は既にない。

周囲の固定砲台や艦隊は既に壊滅済。

残ったのは俺と目の前の級友、そして数機の味方だけ。

生存性を重視し、そもそも固定砲台や艦隊の支援抜きでの戦闘を想定されていない俺たちの機体では、どうしようもない。

ーーそう、普通なら。

 

「俺が遊び相手になる! 回収を頼んだ!」

 

ブーストを吹かして急接近し、掴みかかる。

機動力その他全てにおいて、俺たちを圧倒している敵ーーオルビドの機体は当然難なく避けるが……その拍子に手放した物を掴んだ!

 

「シアン、なにを!?」

「生き残れよっ! ニュア!」

 

掴んだのは同級生ーーニュア・キノクスのダルマになった機体。

それを全力で味方の方向へと投げ飛ばした。

その後、あえて挑発するように、敵の方を向いて手を振りながら後退していけばーー来た。

 

ここは俺たちにとっては戦場だが奴らーーオルビドにとってはただの遊び場に過ぎない。

だからこんな稚拙な挑発が通用する。

 

明らかにエネルギーがチャージされてますよというように青白く光る手のひらがこちらに向いてるのを認識した瞬間、操縦桿を動かした。

回避行動を取り、できるだけ盾になれるように腕で胴体をガードする態勢をとってーー熱と衝撃を感じる。

電磁波でメインモニタが乱れ、機体状況を確認できる画面には、両腕が機能不全になり、胴体部も熱で危険な状態になっているという警告が表示されていた。

遅れて、乱れたままのメインモニタに青い光が閃くと共に、脚部もロスト。

あっという間に、俺もダルマにされたというわけだ。

 

再びの衝撃。

ようやくまともに見えるようになった頭部カメラを通して見えるのは、俺の機体を掴む、オルビドの青い機体。

その機体の目元は青白いバイザーのような一本線で、表情を窺える訳がないのに、なんとなくやつから感じられる感情は……どう遊ぼうかというふざけたもの。

 

今ならこいつらに怒り憎しみを抱く、皆の気持ちが少しだけわかる気がした。

ーーこいつらの遊びに付き合って、両親は死んだという。

ーーこいつらの遊びに付き合って、何人、俺の知り合いはいなくなったのだろう。

周りの人々は怒り、憎しみ、いつの日か奴らを倒さんと気炎を上げる。

ただ、今まで目の前で失ったことのなかった俺は、どこか冷めた目で熱狂する人々を見つめていたが……。

流石にいざ直面すると頭にきた。

だがーー

 

「俺の勝ちだ、ザマァみろ」

 

回収報告とーーニュアが俺を呼ぶ通信を聞いて、俺は満足感を抱きながら、そんな捨て台詞を吐き、緊急用の生命維持モードを起動した。

身体を覆うように生命維持装置が装着され、それと同時に睡眠薬が注入され、意識が遠のいていく。

次目覚める時は、来世かあるいはーー。

 

「シアン! シアァァァァン!」

 

薄れていく意識の中で、ニュアの泣き叫ぶ声だけが、妙に耳に残る。

あぁ、なんだ、そんな可愛い声出せるのか、いつもはキャンキャンうるさい狂犬ちゃんなのによ。

割と脈アリだったり……吊り橋効果のせいもあるか。

もし、生き残れたらーーデートにでもーー誘ってーーからかってーー。




これはそんなありきたりな犠牲の物語ーーからはじまる物語
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