忘記却憶 〜忘れた者に忘れ物、忘れぬ者に忘却を〜   作:二次元の虫

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第十三話 天より降り注いだ赤のーー

「先手はやるぞ、っと!」

 

先陣を切ったのは、ブルーフレームの方だった。

2丁のライフルを向け、僅かなチャージの直後にエネルギーの弾丸が放たれる。

追いかけてきた時のような連射ではなく、単発撃ちか。

盾があるとはいえ、よーいドンな状況で当たってやる義理はない。

軽く右へステップして弾丸を回避し、お返しのグレネードランチャーを向けた。

当然、やつは俺から見て右へ、スライドするように回避行動をとるが……。

 

「構えたら撃つ、とは限らないってな」

 

トリガーを引かないまま、ピタリとランチャーの照準だけをやつへ向け続ける。

それに気づいたブルーフレームは、反対方向の左へと切り返し、揺さぶるように上下の動きもつけながら、俺の左側に回り込む軌道を取った。

そう、左だ。

 

「プレゼントフォーユー!」

 

左肩武装のトリガーを引く。

左肩のランチャーから多少の誘導性があるミサイルが発射され、明らかに意識をグレネードランチャーの方に向けていたやつは、反応が遅れ……バリアを展開して防いだ。

全方位バリア、しかも強度も十分、とかいうチート性能。

 

「そのバリアは厄介だが……」

 

何度か展開する場面を見て気づいたことがある。

バリアを解除してから、再展開するまで時間が掛かっていた。

そもそも、即座に解除と再展開ができるのなら、攻撃する間だけ解除して、後は貼りっぱなしでいいはず。

それをしないということは……。

 

「一度貼ったら、すぐ解除はできねぇよな!」

 

追撃でグレネードランチャーを発射し、弾がバリアに接触して爆発する。

間髪入れずに、ミサイルランチャーとグレネードランチャーを絶え間なく連射!

やつにバリアを解除させる隙を与えない。

 

ーー10秒……15秒……

 

左肩武装、残弾ゼロ(empty)

グレネードランチャーもリロードが必要だ。

 

撃て、撃て(ファイア、ファイア)!』

 

そのタイミングを完全に読み切っていたニュアの命令が耳に響く。

弾切れにより途切れかけた攻勢が、後ろからの援護により継続された。

俺もグレネードランチャーをリロードし、その攻勢に加わる。

 

ーー20秒……25秒……

 

僅かな弾幕の切れ目に、やつがたまらず上空へと離脱する。

距離を取られた上に空を飛ばれていると、グレネードランチャーを当てるのはほぼ無理だ。

後ろからの援護も、距離を取れば簡単に回避される。

 

ーー30秒……

 

攻勢を振りきったブルーフレームは、バリアを解除しーーその横の空間を小さな何かが横切ったのが見えた。

 

『たいちょ! まだ当たるタイミングじゃないです、落ち着いて!』

 

『ええい、ちょこまかと!』

 

なるほど……"それ"を当てるのが勝利条件か。

しかし、一抹の不安がよぎる。

 

あいつ、狙撃なんてできたっけか?

 

ーー35秒……40秒……

 

一度離れて仕切り直しになった状況。

そこから、青い機体は重力下ということを無視した、縦横無尽な三次元機動で、俺を中心に周回するような機動をとりはじめた。

一定の距離を取って周回しながら、エネルギーの弾丸を2丁持ちライフルでばら撒いてくる。

旋回能力にも機動力にも大きな差がある俺の機体は、脚部への直撃だけ盾で防ぎながら、耐えるしかなかった。

 

ーー45秒……50秒……

 

機能不全を起こしていた右肩のミサイルランチャーに、エネルギーの弾丸が直撃して誘爆した。

右アームパーツ、応答なし(ロスト)

右腕を失い、その衝撃で体勢を崩しながら、とにかく脚だけは盾で守り続ける。

この重力下では、ケルンによる脱出機構の意味は薄い。

脚が壊れれば終わりだ、逆に言えばそれだけ避ければいい!

 

ーー55秒……

 

なんとか一瞬捉えたやつの姿を見ると、右肩に青白い光が収束しているのが分かった。

そいつをフィニッシャーにするつもりか。だが、そんな大技を使うなら……。

 

ーー60……

 

盾がついに限界を迎え、一部分が溶け落ちる。

防ぎきれなくなったエネルギー弾が脚部へと当たりはじめた。

あと、少し!

 

ーー65……

 

そして、収束した青白い光が、一瞬だけより強く閃きーー

 

ーー70

 

『狙撃の基本は?』

 

『止まったら撃つ!』

 

右肩のエネルギーキャノンを発射する、そのために機体の動きが止まった瞬間、後方から飛来してきた弾丸が命中した。

 

衝撃は僅かによろける程度だった、が、当たった瞬間、ペンキのような赤色の粘度の高い液体が撒き散らされ、青い機体を汚す。

予想外の連続にやつは驚いたのか、発射された光の奔流があらぬ方向へと外れていった。

 

走れ、走れぇ(ムーヴ、ムーヴ)!』

 

ニュアの叫びを認識した瞬間、全力でその場を離脱する。

遊び気分のやつにとっては、俺が逃げることよりも、機体を汚された事の方に気が向いているらしく、マニピュレーターで張り付いた液体を取り払おうとしていた。

 

「その遠足気分が命取りだ」

 

ニュアが俺の背中を言葉で押した後、マーキングランチャーをもってこい、と言っていた。

この状況でマーキングをする意味はーー1つしかない。

 

逃げる俺の姿にようやく気づき、やつが追ってこようとするが。

 

全弾一斉射(フルオープンファイア)! やつの足を止めろ!』

 

最後の一斉射がブルーフレームに殺到し、たまらずバリアを展開した。

その選択をした時点で、俺は確信する。

 

「『勝った』」

 

俺とあいつの声が重なった。

 

『上空からエネルギー反応、来るよ!』

 

アスターさんの警告と共に、鈍色の空、その一点に赤い光が閃きーー

 

 

ーー天より降り注いだ赤の雷(メメント・モリ)が、青い光(ブルーフレーム)を掻き消した。

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