忘記却憶 〜忘れた者に忘れ物、忘れぬ者に忘却を〜 作:二次元の虫
「先手はやるぞ、っと!」
先陣を切ったのは、ブルーフレームの方だった。
2丁のライフルを向け、僅かなチャージの直後にエネルギーの弾丸が放たれる。
追いかけてきた時のような連射ではなく、単発撃ちか。
盾があるとはいえ、よーいドンな状況で当たってやる義理はない。
軽く右へステップして弾丸を回避し、お返しのグレネードランチャーを向けた。
当然、やつは俺から見て右へ、スライドするように回避行動をとるが……。
「構えたら撃つ、とは限らないってな」
トリガーを引かないまま、ピタリとランチャーの照準だけをやつへ向け続ける。
それに気づいたブルーフレームは、反対方向の左へと切り返し、揺さぶるように上下の動きもつけながら、俺の左側に回り込む軌道を取った。
そう、左だ。
「プレゼントフォーユー!」
左肩武装のトリガーを引く。
左肩のランチャーから多少の誘導性があるミサイルが発射され、明らかに意識をグレネードランチャーの方に向けていたやつは、反応が遅れ……バリアを展開して防いだ。
全方位バリア、しかも強度も十分、とかいうチート性能。
「そのバリアは厄介だが……」
何度か展開する場面を見て気づいたことがある。
バリアを解除してから、再展開するまで時間が掛かっていた。
そもそも、即座に解除と再展開ができるのなら、攻撃する間だけ解除して、後は貼りっぱなしでいいはず。
それをしないということは……。
「一度貼ったら、すぐ解除はできねぇよな!」
追撃でグレネードランチャーを発射し、弾がバリアに接触して爆発する。
間髪入れずに、ミサイルランチャーとグレネードランチャーを絶え間なく連射!
やつにバリアを解除させる隙を与えない。
ーー10秒……15秒……
左肩武装、
グレネードランチャーもリロードが必要だ。
『
そのタイミングを完全に読み切っていたニュアの命令が耳に響く。
弾切れにより途切れかけた攻勢が、後ろからの援護により継続された。
俺もグレネードランチャーをリロードし、その攻勢に加わる。
ーー20秒……25秒……
僅かな弾幕の切れ目に、やつがたまらず上空へと離脱する。
距離を取られた上に空を飛ばれていると、グレネードランチャーを当てるのはほぼ無理だ。
後ろからの援護も、距離を取れば簡単に回避される。
ーー30秒……
攻勢を振りきったブルーフレームは、バリアを解除しーーその横の空間を小さな何かが横切ったのが見えた。
『たいちょ! まだ当たるタイミングじゃないです、落ち着いて!』
『ええい、ちょこまかと!』
なるほど……"それ"を当てるのが勝利条件か。
しかし、一抹の不安がよぎる。
あいつ、狙撃なんてできたっけか?
ーー35秒……40秒……
一度離れて仕切り直しになった状況。
そこから、青い機体は重力下ということを無視した、縦横無尽な三次元機動で、俺を中心に周回するような機動をとりはじめた。
一定の距離を取って周回しながら、エネルギーの弾丸を2丁持ちライフルでばら撒いてくる。
旋回能力にも機動力にも大きな差がある俺の機体は、脚部への直撃だけ盾で防ぎながら、耐えるしかなかった。
ーー45秒……50秒……
機能不全を起こしていた右肩のミサイルランチャーに、エネルギーの弾丸が直撃して誘爆した。
右アームパーツ、
右腕を失い、その衝撃で体勢を崩しながら、とにかく脚だけは盾で守り続ける。
この重力下では、ケルンによる脱出機構の意味は薄い。
脚が壊れれば終わりだ、逆に言えばそれだけ避ければいい!
ーー55秒……
なんとか一瞬捉えたやつの姿を見ると、右肩に青白い光が収束しているのが分かった。
そいつをフィニッシャーにするつもりか。だが、そんな大技を使うなら……。
ーー60……
盾がついに限界を迎え、一部分が溶け落ちる。
防ぎきれなくなったエネルギー弾が脚部へと当たりはじめた。
あと、少し!
ーー65……
そして、収束した青白い光が、一瞬だけより強く閃きーー
ーー70
『狙撃の基本は?』
『止まったら撃つ!』
右肩のエネルギーキャノンを発射する、そのために機体の動きが止まった瞬間、後方から飛来してきた弾丸が命中した。
衝撃は僅かによろける程度だった、が、当たった瞬間、ペンキのような赤色の粘度の高い液体が撒き散らされ、青い機体を汚す。
予想外の連続にやつは驚いたのか、発射された光の奔流があらぬ方向へと外れていった。
『
ニュアの叫びを認識した瞬間、全力でその場を離脱する。
遊び気分のやつにとっては、俺が逃げることよりも、機体を汚された事の方に気が向いているらしく、マニピュレーターで張り付いた液体を取り払おうとしていた。
「その遠足気分が命取りだ」
ニュアが俺の背中を言葉で押した後、マーキングランチャーをもってこい、と言っていた。
この状況でマーキングをする意味はーー1つしかない。
逃げる俺の姿にようやく気づき、やつが追ってこようとするが。
『
最後の一斉射がブルーフレームに殺到し、たまらずバリアを展開した。
その選択をした時点で、俺は確信する。
「『勝った』」
俺とあいつの声が重なった。
『上空からエネルギー反応、来るよ!』
アスターさんの警告と共に、鈍色の空、その一点に赤い光が閃きーー
ーー天より降り注いだ