忘記却憶 〜忘れた者に忘れ物、忘れぬ者に忘却を〜   作:二次元の虫

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第八話 〜一番最初のーー〜

『まぁ、間に合ったのでよしとしましょう。それで、貴方は5年前にたいちょを助けていなくなった、シアン・エランご本人で間違いありませんよね?』

 

「あぁ、間違いねぇよ」

 

『あー、よかったです! これで他人の空似だったらどうしようかと』

 

「おい、今なんつった」

 

なんか確証あって連絡先渡してきたんじゃねぇのか!?

 

『世界には同じ顔の人間が3人はいるっていうじゃないですか。つまり、当たる確率は3分の1ってことです。外れてもうちがイタい女って思われるだけで、当選商品は時を超えた大ロマンスを目の前で! なーんて、分が良すぎる宝くじだと思いませんか?』

 

こ、こいつ……いや、だめだ。

こいつのペースを乗せられたら、聞きたいことも聞けなくなる!

 

「で、お前は結局何者で、ニュアのやつとはどういう関係なんだ?」

 

『うちにもご興味ありありで? いやん、欲張りさんなんだかーー「御託はいいから答えろ」ーーマジなやつですね、わかりましたよ』

 

なんとか軌道修正しつつ、カリスからニュアの現状と関係を聞き出した。

それによると、ニュアが隊長をしている独立部隊があり、カリスはその部隊に所属する隊長補佐とのこと。

 

こいつ自身は自分のことをただの行き遅れの軍属と言っているが……どうも胡散臭い。

言動もそうだが、警備隊に啖呵を切ったニュアを止めた時の、あの能面のように取り繕った表情。

それがどうも、強く印象に残っていた。

 

こいつの本質は、なんだ?

 

『とーこーろーでー、うちさっきから答えてばっかなんですけど、そろそろターン回してもらっていいですかね?』

 

「あぁ、悪ぃ。こっちの事情も……そういや、この通信はどこのを使ってんだ? コロニーに聞かれると面倒なとこもあるんだが……」

 

『もちのロン、専用の秘匿回線ですよ。やっぱロマンじゃないですか、秘密の通信手段って。渡すべき相手がいたらいつでも渡せるように、連絡先を書いた紙切れは常備してるんですよ! あ、今の連絡先はもうシアンさん専用なので安心してください。いやん、男の人専用だなんて、なんだか興奮しません?』

 

「うるっせぇ! 話題がとっ散らかっててうるせぇ! 今から話すから、黙って聞いてろよ!」

 

本当になんなんだ、この女!

 

 

 

 

で、俺が惑星で目覚めてからの出来事をかいつまんで話したところーー

 

『主人公かなにかで?』

 

「ぶち殺すぞ、脇役(モブ)ヒューマン」

 

主役補正マシマシのサイボーグパワーで捻り潰してやろうか。

 

『だってだって、そうじゃないですか! 相方救って敵の惑星に墜落してー、敵にサイボーグにされてー、命からがら脱出してー、サイボーグニンジャとして悪に天誅を下しながら、変わり果てたかつての相方を探してるなんて、かんっぜんに主人公じゃないですか!』

 

「肝心なとこ端折った上に、存在しない記憶を混ぜるなテメェ!」

 

ええい、話を脱線させないと気が済まないのかこの女。

 

『しかし、それではコロニーに戻ってくることはできなさそうですねぇ』

 

「あぁ、しかも総力戦体制だろ? 軍属のお前らと会うことも厳しくなりそうだ」

 

『そうですねぇ……うーん、困った困った……ってことではい!』

 

そう言って遠ざかる声とは別に、どこか慌てるような別の女性の声が聞こえた。

ーーまさか?

 

「ニュア……か?」

 

『ぅ……うん、わたしだよ。シアン、本当にシアンなんだよね?』

 

「あ、あぁ」

 

ーー会話が止まる。

 

どう話していいのかが、まるで分からない。

いつものように憎まれ口を叩くには、あまりにも今のこいつが弱々しくて。

そういえば、目覚めてこの方、こういう言葉に困るシチュが多いなと思い返してーー

 

 

『自分を正直に出せばいいんだよ。それで、間違ってたらごめんなさい、で改めればだいじょーぶ!』

 

 

「生きててよかった」

 

ポツリ、と口からこぼれたのは、そんなありきたりな言葉で。

それに、通信越しの声は、少し嗚咽を漏らしながら答えた。

 

『こっちのセリフだ、ばか』

 

かつての面影を残した部分に、あの出来事と5年の月日を経て変わってしまった部分。

その2つが混じり合った、その言葉に、俺は思わず涙を流した。

 

ただ、ただ変化が悲しいだけの涙じゃない。

だが、変わってないところが嬉しいだけの涙でもない。

 

俺も嗚咽を漏らしそうになりーーそこで思い出した。

一番最初の目的、生き残ったらやりたいと思っていたこと。

 

「なぁ」

 

『なに?』

 

「今度会った時、デートしようぜ」

 

『ふふっ、なんだそれ……1回命救ったくらいで、随分調子に乗ってるな?』

 

「こちとら命懸けで助けた大恩人だぞ。1回くらいいいだろ」

 

『そして地味にみみっちい』

 

「……んだと、こら」

 

『1回だけなんて言わずに、さ。何回でも付き合ってあげるから……っ。だからっ!』

 

ーー絶対に会おうね!

 


 

総力戦体制への移行から一週間後、コロニー軍は企業の協力を得て、惑星メインフレームの第六資源採掘拠点、通称エントランスへ友好を装って突入し、制圧を開始。

抵抗らしい抵抗もなく、拍子抜けするほどあっさりと制圧は成功し、即座に拠点化が開始されることとなる。

 

一旦の区切りを迎えた彼の物語が再び動き出すのは、その一ヶ月後。

拠点化がひと段落し、ついに惑星メインフレームの他地域へと、軍が目を向けはじめた頃だった。

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