Gwyn, Lord of Cinder………アイビスの火……最初の火……狙ったか、フロムソフトウェア!
『やはり罠でした。流石はドーザー。評判通りです』
「穴、開いてる?」
やはりというべきか察していたので驚きはなかったが、腕の生えた溶鉱炉とでも称するべき物体が襲い掛かってきたのは予想していなかった。
しかし、本来は戦闘用ではない機械である。左右はチェーン・ブレードが生えているため隙がないが、正面の装甲に蓋がついており、そこから内部が丸見えになっている。なんとなくバズーカを叩きこんでみると、怯んで、硬直した。
『流石です、レイヴン。開口部を狙って内部から破壊しましょう。外部装甲は現状の装備だと貫通できない可能性があります』
接近。ブレードでその開口部を狙って刺突すれば、バチバチと各所から電流が迸った。
バックステップ。破砕アームが振りかぶられることを予測しての緊急回避だ。
『効いています。続けましょう』
システムが復帰したのか、起き上がる。スマートクリーナーはチェーン・ブレード、あるいは破砕アームを振り上げると、そのまま突進する。
ネームレスが舞い上がると、ブレードとブレードの隙間要するに正面上部へと退避、下方にバズーカの銃身を向けた。
レイヴンは、あ、と小さい声を上げた。
「穴見つけた」
『上も弱点のようですね』
バズーカを弱点であろう、上部の大穴に叩き込んでやると、また怯んだ。垂直ミサイルロックオン。撃ちまくりつつ距離を取る。
再起動。だが降り注ぐ垂直ミサイルで、システムがまた落ちる。
『やるねぇ、聞いていた以上だ』
カーラは、前評判を知っているかのような口ぶりであった。
『だがクリーナーが笑えるのはこれからさ』
スマートクリーナーが、そのスマートとは程遠い両腕を上げると、火炎を纏ったスクラップを大量にまき散らす。
『行動パターンが変わった? 危険です、レイヴン』
「………でも穴の位置、変わらないよ」
『そうですね、ええ……』
戦闘を考慮していないので仕方がないとはいえ、隙が大きすぎた。両腕を上げてくれたのでむしろやりやすい。バズーカを再び叩き込んでシステムをダウンさせると、接近する。ブレード一閃。まるで蒸気機関車よろしく上部開口部から火炎が噴出した。
ターン、アサルトブーストで距離を離すと、正面から向き合った。
「少し、おもしろいね」
『そ、そうですか? 笑えはしないと思いますよ、レイヴン』
楽し気に、朗らかに言うレイヴンとは対照的に、エアは若干引いた声になっていた。
何度も何度も的確に狙撃されて頭に来たと言わんばかりにクリーナーが突っ込んでいくものの、上方向への攻撃手段をほとんど持っていないためか、ひらりと舞い上がる機体を捕捉できない。開口部にまたもバズーカが撃ち込まれる。ダウン。すとんと真正面に着陸したネームレスがブレードを最大出力で開口部を薙ぎ払った。
『~~~~~~~~!!!』
声にならない絶叫を上げてクリーナーが爆発を起こすと、両腕をだらんと垂らして沈黙してしまった。
『敵機システムダウン。完全停止です』
『……ビジター、私たちは不幸な出会いだった。あんたとは仲良くした方が賢明みたいだね。上層に行くんだろ? 案内しようじゃないか』
『この、“灰被り”のカーラがね』
『あんたに依頼を頼みたい。うちの防衛戦力をごっそり削り取ってくれたんだ、落とし前は付けてもらうよ。もちろん駄賃は払う。悪い気はしないだろう? ビジター。補給物資はこっちで準備する』
『レイヴン。信用ならない相手です、受けるかどうかはあなたにお任せします』
そして見ていると、一機のACが姿を見せた。まるで羽のようなミサイル発射装置を備えたそれが正面で止まると、両腕の武器をだらりと下げ、おもむろにコアを開放し始める。
拡声器片手に現れた姿。セミロングの、凛々しそうな女性であった。外見は若く、整っている。ボロボロのツナギを着込んでおり、AC乗りというより技術者としての印象が強い。
「ようこそビジター。派手に暴れてくれたねぇ。このまま引き返してもいいし、うちに来てもいい。だがこっちとしてはとっとと仕事をして貰いたい。騒ぎを聞きつけた連中が押し寄せてくるからねェ」
『レイヴン、どうしますか?』
「ハッチ、開けるね」
「いい度胸だ。ここで私が攻撃したら死ぬわけだが、いいのかい?」
「でも、カーラも、ハッチ開けてるから」
言い返すと、カーラは腹を抱えて笑った。
「気に入ったよ。アジトに案内してやる。そこで休みな。出て来てツラ見せな」
「出られない……」
「ああ、そういう………ってあんた……」
コアに飛び移って来たカーラが、中を覗き込む。ヘルメットを被った小さい女の子が腰かけているのだからたまげる。
一瞬目を見開いたカーラだったが、すぐ機体の装甲をバンバンと叩きつつ、大笑いする。
「ハッ! あははははっ! こんな小さい子にクリーナーが始末されたなんて笑えるねェ! おいラミー、生きてるんだろ」
『へ、へぇ、ボス……』
カーラがつけている無線機から、ノイズの混じった声が聞こえてくる。コアを貫かなかったお陰かラミーは生きているらしかった。
「子供に捻られたんだよあんたは、少しは頭冷やしな」
『う、うおおおおおっ!』
『……レイヴン。なんだか私、この人たちが少しだけ好きになってきました』
「うん」
こうしてレイヴンは、RaDのアジトへと案内されることとなったのだった。