鴉は舞い降りた   作:キサラギ職員

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ラミーはパッチ枠なので死にませんでした


13、Cleaning 掃除

 

 

「以上が依頼だよ、わかったかい?」

「うん、わかった」

「よしよし、機体の動きはひねくれてる癖に、素直でいい子じゃあないか」

 

 髪の毛をポニーテールにしたカーラは、車椅子を押しながら621ことレイヴンの頭を撫でてやった。

 旧世代型の強化人間には、まれに子供が混じっていることがある。夢破れ、多大な借金を抱えた子。売られたみなしごたち。彼ら彼女らが最終的に行きつくのは今は無き“技研”、あるいは企業だ。そこで人権を冒涜するような手術を受けて、戦場に送り出される。

 

(だがこりゃあ…………ウォルターが入れ込んでるのも、少しわかったかねぇ)

 

 幼い子。しかも、女の子だ。ウォルターは哀れなほどに優しい男だ。口調こそぶっきらぼうであるが、まるで罪滅ぼしでもするかのように、ハウンズには親身に接する。この子に限ってではないが、それにしたってリハビリまでするなんて、過剰が過ぎる。

 それはきっと、そこまで考えて思考を切り上げる。

 他者についてあれこれ詮索している余裕などないのだ。

 

「ラミー! この子を運んでやりな! 妙な気を起こしたら殺すからね!」

「へへぇーっ!」

 

 車椅子から起き上がることさえ、まだできない。

 ラミーと呼ばれた腹の出た大男が、壊れ物を扱うかのような手つきでレイヴンを抱えると、キャットウォークを上がっていく。

 

「畜生、こんなガキんちょに俺ァ負けたってのかよ……ガキだしノーカウントだろ……」

「聞こえてるよー! 早くしな!」

「はいいいっ!!」

 

 ぶつくさ文句を言うラミーに対し、カーラの激が飛ぶ。

 整備を受け、弾薬補充を終えたネームレスが直立姿勢で待っていた。ラミーはコアを上がると、レイヴンを操縦席に座らせた。そしてヘルメットを被せる。

 

「まァ……その、なんだ……頑張れや」

「ラミー、ありがとう」

「調子狂うなあ……映像見たけどお前あんな動きする癖……こんな………はぁ……」

 

 感謝の言葉で毒気を抜かれたのか、ラミーは頭をボリボリと掻いた。ヘルメットの固定具をつけてやると、コアから降りて行った。

 

『いい人達でしたね』

「そうだね」

『ドーザーだからと偏見を持っていましたが、決してそういうわけではないと思いました。コーラルを薬物に使うのはどうかと思いますが』

 

 エアの、若干の棘を感じさせる発言であった。

 

【メインシステム、戦闘モード、起動】

【Main system combat mode active.】

 

【DISPLAY LATENCY】

【OVERBOOST CAP】

【WPN FCS】

【EN RECYCLING】

 

『行きましょう、レイヴン』

「うん」

 

『そういえばレイヴン。ウォルターから以前教わったことがあると言ってましたよね』

「うん?」

『知らない人が来ても扉を開けちゃいけませんって。怒られますよ、あとで』

「……………」

 

 壮絶な沈黙があり、暫しして、

 

「だって………だって……危なくない、と思ったから……」

 

 とだってだってと自分なりに言い訳を並べるのだ。要するに、カーラを見てみたかったのだろう。何せ一番の話し相手であるエアは姿かたちも見えないのだから、好奇心が抑えきれないのだろう。

 エアがはあとため息を吐くと、くすくすと笑う。

 

『そういうところは子供っぽいんですね。機体捌きは私の見る限り、随一なのに』

 

 入り込んだ敵を排除しつつ、上層階に到達せよというミッションを帯びていた。

 

『おい! ACが出てきたぞ!』

 

 ジャンカー・コヨーテス。あんまりと言えばあんまりな名前の彼らは要するに、ドーザーで、カーラの商売敵である。

 早速四方八方からMTが現れるも、バズーカを次々叩き込んでは沈黙させていく。

 

『見たことのない機体です』

 

 エアの指摘通り、レイヴンも見たことのないMTが混じっている。

 

『うちの技師が作ったカスタムMTじゃないか。あんなのまで市場に流れてるとはね。さっさと始末してくれると助かるよ』

 

 二脚逆間接型に機関砲とナックラーをつけたようなMTが飛び寄ってくるのを、正確に、後退しつつ仕留めていく。ミサイルマルチロック。発射。やはりというか回避が鈍く、次々弾頭の餌食になる。

 跳躍。アサルトブーストで高度を稼ぐと、慣性そのまま滑空に入った。

 

『ほら、あんたもさっさと行ってきな!』

『しかしぃ!? あの動き見てくださいよボス! あの娘っ子に任せておけば……』

『そんなんだから腕前があがらないんだろう! 行ってきな! 無敵なんだろ!』

『わかりやしたって!』

 

 と無線越しに何やら揉めているので振り返ってみると、四脚型MTが出てきた。ラミーが乗っているらしい。

 

『そういえば、どうして彼を倒さなかったのですか?』

「……………なんか、かわいそうだったから……」

 

 可哀そう呼ばわりされているラミーは、えっちらおっちら四脚型で敵の元にたどり着こうとするのだが、その頃には既に処分が終わっているという塩梅である。

 

『ミサイルだ! 大型ミサイルなら!』

 

 大型のミサイルを背負ったMTが次々と射撃を開始。襲い掛かって来るそれは確かに大威力だろうが、遅く、旋回性も鋭くなく、故にアサルトブーストで突っ込むだけであっさり懐に潜り込める。

 バズーカ、発砲。一機、二機、ふわふわと小刻みにブーストを吹かし、飛んでは着地を繰り返して的を絞らせないようにしつつ、掃除を進めていく。

 

『ほらぁー! 終わってますよぉボス!』

『ほらじゃないよ! あんたブーストついてる癖に歩いてるんじゃないよ!』

 

『面白い人たちですね……』

「うん」

 

 接近。最後の一機はとんずらをはかって背中を向けたが、そこを容赦なくブレードで切り刻み、トドメにバズーカをぶち込んで沈黙させた。

 鎧袖一触以前、掃除感覚で任務を終わらせたところで、やっとラミーがやってくると、無線を繋いでくる。

 

『つえぇな………ほんとによぉ………殺さないでくれてありがとな』

「可哀そうだと思ったから」

『……その心を抉ってくるのやめてくれねぇかなぁ!?』

 

 ノーカウントだろこれはと嘆く彼を前に、エアが苦笑していた。

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