鴉は舞い降りた   作:キサラギ職員

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3、The Encounter World めぐり合う世界
16、PCA 惑星封鎖機構


『621、そう言えば幻聴は収まったか?』

「………うん」

 

 ウォルターが戻って来た。野暮用とやらが何かまでは教えてくれなかったが、とにかく戻って来た。

 幻聴。エアの声は幻聴ではないはずだが、あるいは幻聴なのだろうか。

 

『仕事に差し支えるようなら言え。調整する』

「ありがとう……あっ、それから」

『なんだ、621』

 

 機体がヘリから投下されようとする間際の会話。直接会話してもいいのだが、言い出しにくくて保留にしていたのだ。

 

「カーラと会ったりしてごめんなさい」

『会うことを咎めているんじゃない。無防備を晒すなと言っただけだ。人間関係に関してとやかく言うつもりはない』

「うん」

『……はぁ。せめて、自力で立てるようになってからにしろ』

「がんばる」

 

 調整とリハビリの甲斐もあってか、徐々に621の肉付きはよくなってきている。最低限立てるだけの筋肉もついてきていると推測され、あとは練習次第と言ったところだろうか。相変わらず目は見えないし、味はわからず、鼻も鈍いが。

 機体が投下される。空中で戦闘モードに切り替えていく。

 

【メインシステム、戦闘モード、起動】

【Main system combat mode active.】

 

【DISPLAY LATENCY】

【OVERBOOST CAP】

【WPN FCS】

【EN RECYCLING】

 

『ミッション開始。ヒアルマー採掘場に展開中のアーキバス調査キャンプを襲撃し、調査ドローンによる調査データを回収しろ。まずは近い地点アルファから接近していけ』

 

 アサルトブースト。水平飛行に移行。

 今回は、窪地にある施設の襲撃である。そこで、垂直ミサイルをより軽量なプラズマミサイルに変更、右腕武装はリニアライフル、左はブレード、脚部を逆関節に切り替えて、空中戦を考慮した。

 任務に応じて装備や機体構成を変えるのは、アーマード・コアの強みである。

 

『なっ、侵入者か!』

『敵はAC単機。おそらくは独立傭兵か』

 

 MTと砲台が待っていた。リニアライフルを発射。激しい着弾音と共に、貫徹されたMTが崩れ落ちていく。リニアライフルは連射がアサルトライフル程効かないが、そのストッピングパワーには目を見張るものがある。

 プラズマミサイルを、上空から撃ちおろす。その為の逆関節型だ。

 あっという間に敵を片付けると、ビルの上に鎮座しているドローンにアクセスする。

 

『621、目標はデータ回収だが、障害はお前の判断で排除していけ』

「うん」

 

 報酬が出るので撃破はしたいところだが、彼女は面倒が嫌いな性質であった。とはいえアクセス中は近くにいないといけない関係上、被弾は避けられない。仕方がないのでリニアライフルで敵を沈黙させたのだ。

 

【ベリウス地方と数値は大きく変わらない アイビスの火がもたらした余燼と思われる

 不活性コーラル反応が8割 残り2割を引き続き調査していく】

 

『ルビコンの大気には今なお、かつての災害の名残が残っています』

 

 エアの声だ。

 

『氷原入りの際、あなたが上空で通過したのも、そういった残留コーラルの流れです』

 

 第二地点。ちょうど採掘場の巨大な穴の中央下方にそびえる塔の上にある。落下しつつ、戦闘ヘリをリニアライフルで適当に掃除。MT数機に対しプラズマミサイルを垂直発射。撃破した。

 ドローンに接近し、アクセスを試みる。

 

【反響の具合がおかしいところがチラホラある

 巨大な空洞でもあるのか? この分厚い氷の裏に?】

 

 地形の調査データと、所見が書かれたデータだ。

 

『興味深い内容だ。このデータはコピーを取っておこう』

「そうなんだ」

 

 レイヴンにはさっぱりわからなかったが、ウォルターが喜ぶなら悪くはなかった。

 

『地点ベータはクリアした。地点チャーリーに向かえ』

 

 跳躍。逆関節型特有の跳躍力を発揮すると、斜め上方向にアサルトブーストを実施し、穴をかけあがっていく。

 地点チャーリーに到着。二脚逆関節型MTが数機いるだけなので、パスパスとライフルを撃って掃討しつつデータを抜く。

 

【中央氷原に点在する旧世代の拠点に関する記録 封鎖機構によって建造されたものも多い】

 

『中央氷原はルビコニアンにも捨て置かれてきました。封鎖機構の手が入っているということは、やはりコーラルに関する何かがある……』

「なんだろう」

『わかりませんレイヴン。私もその、自由自在にどこにでもいられるというわけでもありませんから』

 

 何か引っかかる言い方だが、エアが言うならばそうなのだろう。

 

『621、地点デルタはこの先だ』

「うん」

 

 MTが待ち受けており、砲台もあるが、真正面からリニアライフルで撃ち抜いていく。つもりだったがやはり弾かれる。砲台はその強固な装甲もウリの一つなのだ。

 

『増援を! 増援を!』

『くそっ、このAC動きが読めない!』

 

 確かに砲台正面は装甲化されているが、上から撃ちおろせば全く問題にならない。

 跳躍し、上からリニアライフルで一台、二台と破壊。着地した。

 

『そこのAC! 我々の調査拠点で何をしている!』

『621、増援だ。ヘリごと落とせ』

 

 大型ヘリがやってくると、搭載されたMTを降ろそうとしている。

 アサルトブースト。ヘリのローター目掛けて蹴りを見舞うと、ヘリはバランスを失って積んでいたMTもろとも潰れて爆発した。二機目も同様にリニアライフルをフルチャージ。コックピットから高速の徹甲弾にて貫徹して、墜落に追い込んだ。

 

『G13に伝達ッ!』

 

 ウォルター曰くミシガンの物まねが得意な男というG6レッドからの通信である。

 

『貴様の襲撃を受け、アーキバス調査部隊が本部と観測データの受け渡しを開始した。現場に急行し、それを阻止してもらいたい!』

『こちら、ハンドラー・ウォルター。追加報酬を準備しておけ。621、マーカー情報を更新した。先に進め』

 

 谷に流れる強烈な風を利用した風力発電施設を抜けていく。右へ、左へ、リニアライフルを向けては、こちらに狙いを定めようとするMTを次々撃ち抜きつつ進む。

 

『621、補給シェルパを手配してある。補給しろ』

「うん」

 

 想定以上に長時間の任務になってしまった。弾数も少ないプラズマミサイルと、リニアライフルの補充を行っておく。

 補充完了。壁を跳躍で乗り越えると、重装四脚MTと通常のMTそして戦闘ヘリが待ち受けていた。

 異常な音。爆音を響かせながら、何かがやってくる。

 

『なんだこの音は!?』

 

 丁度設置してあった垂直カタパルトを使い、同時に逆関節型の跳躍力を併用して一気に上空に出る。空中戦を仕掛けようとしたところで、突如吹雪の中を細長い物体が乱入してきたではないか。

 乱入してくるとは、とんでもない奴だ。

 

『この識別信号は……惑星封鎖機構か!? 構わん、応戦しろ、621』

 

 谷の上方からやってきたそれは、空中艦であった。艦首から強力なレーザーを発射。下方にいたMT部隊はたまらずに次々と被弾、爆発していく。

 さらに二機の機動兵器が谷へと降りて来たではないか。

 

「上からやるね。あそこ、人がいるみたい」

『いい判断だ、621。艦橋を潰せ』

 

 上から撃ちおろされたのでは攻撃に集中できないと言わんばかりに、艦の甲板に着地。機関砲銃座が必死で狙って来るのを無視して、一息で艦橋へと肉薄する。艦橋にいた惑星封鎖機構の人間が恐慌状態に陥って逃げ惑うのが見えた。

 

「じゃあね」

 

 レイヴンは全く眉すら動かさずブレードで薙ぎ払った。

 制御を失った艦はふらふらと高度を下げ始める。つい今しがた抉り取った艦橋にフルチャージのリニアライフルを叩きこむと、離脱しながらプラズマミサイルを垂直発射。着弾。艦が悲鳴を上げて落ちていく。

 爆発を背景に漆黒の機体、ネームレスが空中に赤いカメラアイの残像を描き出す。

 地に足を付けぬ、卓越した機体捌き。中身が少女であるなどと誰が想像できるものか。

 

『船が! 連携で……うわあっ!?』

 

 惑星封鎖機構のLCが母艦があっという間に食われたのを見て応戦に出ようとしたが、的確に盾に叩き込まれるフルチャージリニアライフルの貫徹を許す。盾に侵入を果たした弾頭が起爆。内側をズタズタに引き裂く。姿勢を崩したところでリロードを終えたプラズマミサイルが落ちてくると、機体を蹂躙する。

 残り、1。

 

『なんなのだ……たかがAC一機で!?』

 

 接近。逃げ惑う一機は完全にパニックに陥っているようであった。しかし敵も反撃くらいはできるらしく、プラズマ砲のチャージに入った。

 発射のタイミングを見切って、アサルトブースト。ブースト点火。右にひらり躱すと、優雅にターン。腰を捻ると、そのまま逆関節型特有の強烈な蹴りを見舞う。姿勢を崩したLC機体の、その腹部をブレードで掻っ捌いて永久に沈黙させた。

 

『621、封鎖機構のLC機体もここまであっさりとやるか………また腕を上げたな。強襲艦に執行部隊。封鎖圏内では本来運用されてない戦力だが……』

 

『レイヴン。あなたはどんどんと強くなるのですね……少し、恐ろしくもあります』

 

 二人の称賛の声を聞きながら、レイヴンはふうとため息を吐いたのだった。

 ミッション完了。

 

『反応多数、上空から来ます』

『621、数が多すぎる。手出しするな』

 

 

 

 

『ルビコンに不法侵入したすべての勢力に告げる』

『あなたたちは、惑星封鎖機構の管理領域を侵犯している』

 

 

 

 

 それは艦隊であった。

 多数の強襲艦が吹雪く谷の上空を進んでいく。

 数えきれない物量を前に、流石のレイヴンも攻撃しようという気が起きず、銃を降ろした。

 

 

 

『ただちに武装解除し、封鎖圏外へと退去せよ』

『これ以上の進駐は宣戦布告と見なし、さもなければ、実力で排除する』

 

『例外はない』

 

『繰り返す、例外はない』

 

 

 

『この……艦隊は……』

 

 絶句するエアと、それを見上げるレイヴン。

 

『どうやら派手にやり過ぎたようだ。企業も、俺達もな。帰還しろ、621』




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