鴉は舞い降りた   作:キサラギ職員

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ヴェスパー7、逃がすとニンジャスレイヤー飛んでくるのほんとすき


19、Fog shadow 霧中に潜む影

 

『次から次へと無法者……よくもまあ飽きないものだ』

 

 ヴェスパー隊の排除の依頼が入った。

 レイヴンはあくまで独立傭兵だ。相手がアーキバスのヴェスパー隊番号付きであったとしても、特に容赦はしない。基本的には、だが。

 目標、V.Ⅶ、スウィンバーン。

 

『この機体構成は、解放戦線ではない?』

 

『いいか! 私はヴェスパー第七隊長……つまり会計責任者でもあるということだ!』

 

「かいけーせきにんしゃ?」

『お金を管理する人のことですね』

「そうなんだ」

『レイヴン』

「倒すね」

 

『待て待て待て! 私は……うわーっ!?』

 

 

 とまあ、命乞いをする相手を情け容赦なく始末するというなんともつまらない任務があったりしたのだった。

 

『レイヴン。ヴェスパー隊ですが、もし』

「うん」

『ラスティが排除対象だったら』

「断るよ」

『そうですか、そうですよね』

 

 

 

 

『ある……友人からの、私的な依頼だ』

 

 まれにだが、こうしてウォルターは“友人”からの依頼を持ち込んでくることがある。レイヴンとしては受けない理由もなく、受け付けるのだった。

 ルビコン調査技研が建造した洋上都市“ザイレム”。ECMフォグで包まれたそこを調査せよというのが今回の依頼内容である。ECMフォグが展開されている以上、通信はできない。

 しかし―――。

 

『レイヴン。私の交信であればECMの干渉は受けません』

「うん」

『ロックオン距離にも影響が出ているようです。周囲に警戒を』

 

 洋上都市、ザイレム。アイビスの火の被害を受け放棄されたそこは、今は霧に包まれ、全貌を見ることすら叶わぬ魔境であった。無数に聳え立ったビルの群れはまるで墓標のように静かに、不気味に、存在している。

 かつての人の営みを象徴させるが如く車両が放棄され、さび付いた看板やらが転がっていた。

 進んでいくと、赤く光るビーコンが落ちていた。その前で機体を止める。

 

「ビーコン、見つけたよ」

『はい。マーカーを設置しておきます。これを辿って行きましょう、レイヴン』

「お菓子の家が、あるのかな?」

『確かに、ビーコンが小石に見えてきました』

 

 会話のネタが絵本であった。声しかないエアとの遊びはもっぱら本を読んだりする関係上、こうなる。

 レイヴンは、石もといビーコンを頼りに機体を操っていく。今回、機体は元に中量二脚に戻してある。不測の事態に対応するには使い慣れた機体が一番であろうという判断からだ。装備は汎用性を考慮し、アサルトライフル、ブレード、垂直プラズマミサイル二基である。

 

『不明な侵襲を確認 恒常化プロセスE』

 

 何か物体が浮いている。球体のそれが一目散に突っ込んでくる。

 迎撃開始。アサルトライフルを発射。初弾で命中打を得た、次の瞬間炸裂する。自爆型ドローンらしい。あたりに無数に浮いている。ミサイルをマルチロックしつつ、アサルトライフルで撃ち落としていく。

 

『機能が生きているようですね。あっ、ECMフォグ発生装置を発見しました。接近して停止してください』

「うん」

 

 円柱状の光るデバイスを確認。接近していくとアクセスする。機能停止。発光が止まった。

 

『次に行きましょう、レイヴン』

「うん」

 

 ビーコンを追いかけていくと、道中、円盤に足の生えたような謎の機体に出くわした。それは空中をグルグルと旋回しつつプラズマ砲を放ってくる。

 ブースト点火。小刻みに吹かして機体を左右に振りつつ、アサルトライフルを連続で叩き込んで撃墜した。

 

『機体情報が見つからない……すいませんレイヴン。あなたの経験が頼りです』

 

 さらにビーコンを辿っていくと、今度は二基目に到達。これも停止。

 三基目を辿っていくと、霧の中から照準波。警告。勘に従い前にステップ。アサルトブーストに点火すると、踊るようにビルの壁に隠れてスキャン。目標を捕捉した。

 

『狙撃型……? 反撃を』

「撃つね」

 

 プラズマミサイル連続発射。敵機が回避に入る前に着弾し、プラズマで溶解、爆散した。

 戦闘終了。先に進んでいくと、墜落しているドローンがあった。接近してみると、比較的新しく、古びたスクラップではない。

 

『ウォルターの話にあったドローンでしょうか? 情報が引き出せるかもしれません。調べてみましょう』

「うん」

 

 アクセス。ほどなくして情報が引き出せた。周辺の地形調査データと、所見である。

 

【ザイレムの機能はまだ生きている。

 惑星封鎖機構によって隠蔽されたあの場所への行き方についても手掛かりがあるはずだ。

 把握しているのは封鎖機構と、あとは……】

 

 正しくデータが読み取れない。ドローン墜落時にデータが飛んでしまったようである。

 

『データが破損していますね……』

「あの場所?」

『ウォルターはいったい、何を調べているのでしょうか……ッ!? 敵性反応!』

 

 緊急回避間に合わず、敵のまるで鞭のような攻撃を受け止める羽目になる。光学迷彩で潜んでいたのか、見覚えのある機体が姿を見せた。プラズマミサイルの左側が破損、パージ。反撃にアサルトライフルを発射して、時計回りに接近、怯んだ隙を狙いブレードで掻っ捌く。

 二機目。高速道路上から狙い撃ちを図るそれに対し、跳躍、壁を蹴り飛ばして最短距離を進むや、ブレード一閃。くるりと回転しながらアサルトライフルを構え直し、ブレードで空いた穴に弾丸を一発。

 倒れ込む敵を尻目に、新たなマーカー方向へとアサルトブーストで飛翔する。

 

『回収したデータから、残るECM制御装置の座標も割り出せました。マーカーを設置します、レイヴン』

「うん」

『そういえば、ウォルター抜きで二人だけのミッションも久しぶりでしょうか」

「うん」

『制御装置も逃げはしないでしょう。ゆっくり探してください、レイヴン』

「…………遊びたいの?」

『うっ、ま、まあそういうことですよ、レイヴン』

 

 などと雑談しつつ最後の制御装置に接近、停止させた。

 

『これでウォルターとの通信も可能に……』

 

『聞こえるか、621……そちらに封鎖機構が向かっている。鉢合わせると面倒だ、早急に……』

 

 グレネードが飛んでくる。それは命中するようなものではなく、制圧射撃が目的だったのだろう。ビル壁面に突き刺さり爆発する。

 轟音を響かせ現れたのは、この惑星に降りた際に撃破したものと同じ、重武装ヘリ、そして封鎖機構のLC数機であった。

 

『一足遅かったようです』

 

 エアが言う、その時既に一機に取り掛かっている。アサルトライフルを発射。回避に入る敵に対しプラズマミサイル垂直発射。アサルトブーストで接近。プラズマ砲を放ってきたそれを、空中でブーストを吹かし急激に方向転換。肉体に襲い掛かるGは無視して、接近、一太刀浴びせかけていた。

 手負いの機体が離脱するのを無視する。直後降り注ぐプラズマミサイルが始末してくれたからだ。

 

『間に合わなかったか……まあいい、もはや正面衝突は避けられない相手だ。始末しろ、621』

『レイヴン、必要なら防衛装置にアクセスしてみてください。システムを改竄できそうです』

「うん、わかった」

 

 二人のどっちに対する返答かはさておき、砲身を背負ったカエルのような機体に接近してみる。機能が落ちているようだった。

 

『改竄完了。敵味方識別装置を改竄して、レイヴン、あなたを友軍と誤認させました』

 

 不明機体が起動すると、プラズマ砲を撃ちつつ空中に飛び上がって行った。

 

「面白いね」

『そうですかね……』

 

 たまにレイヴンのツボがわからなくなるエアであった。

 

 物陰に隠れ、防衛装置を次々起動していく。封鎖機構の機体はこれらの兵器に囲まれ、タコ殴りにされていた。哀れな敵は放置して、空中を自在に飛び回る重武装ヘリへ立ち向かっていく。

 

「弱点、ここ」

 

 ミサイルを搭載しているポッドが弱いことは、経験済みである。アサルトライフルを発射し、両翼の装備を爆発させる。ヘリが悲鳴を上げてふらついた。

 接近、そして、あとは単純にコックピットを狙う。

 

「じゃあね」

 

 一言呟き、コックピットをブレード最大出力にて薙ぎ払う。制御を失った機体が空中で急激に、コマのように回転を始めた。左右のローター回転数が合わなくなったために、トルクを抑えきれないらしい。

 機体に乗ったまま、次の標的を探す。優れた猟犬は、仕留めた獲物の息の根の止まるタイミングを熟知しているものだ。

 跳躍。コックピットに介錯の一撃をアサルトライフルで実行してやれば、アサルトブーストで飛翔、滑空、そして防衛兵器に手こずっている封鎖機構のLCに対し、背後から蹴りを見舞ってビルに埋めてしまう。

 

「………」

 

 無言で、身動きの取れないLCにアサルトライフルの弾幕を叩きこんで沈黙させた。

 

『もはや通常戦力ではお前の相手にならんな。よくやった621』

 

 

 

 

 

『レイヴン。洋上都市ザイレムとは、いったい何なのでしょう。封鎖機構が妨害にやってくる程です。何か、あると思われます。ウォルターの友人とは、いったい……』

 

 ミッション終了後、拠点であるヘリに戻った621ことレイヴンは自力で車いすを動かしていた。手が最近使えるようになってきたので、電動車椅子のレバーくらいなら動かせるのだった。

 

「わからない。ザイレム、何かあるのかな……ウォルターの友達、あってみたいな」

 

 結局話し合っても結論は出なかった。

 

「エア」

『はい』

「立ち上がる練習、するね」

『サポートします、レイヴン』

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