鴉は舞い降りた   作:キサラギ職員

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元のライセンスの持ち主なのか、あるいは…


23、Nightfall 黄昏時

 

 

『素敵だ……本当に心が躍ります……』

 

『お待ちしていますよ、ご友人』

 

『私はあなたと上手に踊れるでしょうか?』

 

「………」

 

 オーネスト・ブルートゥ。

 カーラの工房から金と物資と仕事道具を盗んでグリッド012にトンずらした狂人。その狂人が盗んだレールキャノンのプロトタイプを回収するため、本人を排除せよというミッションを開始したのはいいものの。

 まるで友人か何かに語り掛けるような優しい口調のアナウンスが流れて来る中、敵をなぎ倒して進むという、なんとも言えない状況なのだった。

 ご友人。ご友人。しかし、ご友人とはなんのことを指しているのだろうか。

 

『スロー、スロー、クイック、クイック、スロー』

 

「………………」

 

 困った。レイヴンは、自分が人の心を読む能力がないことくらいは承知しているが、ここまで読めないのは本当に困った。何が楽しくてこんなことをしているのかわからない。

 戦いは楽しい。それは確かにそうだが、この目の前でACを駆る男は戦いが楽しいのではなく構ってもらえることが楽しい、そんな印象を受けるが。

 

『ミルクトゥース……レールキャノンも啼いている……親元を離れ、カーラを恋しがっていたのでしょう』

 

「……………………」

 

『素敵なステップです、ご友人!!』

 

 

『レイヴン。私はなんだか混乱してきました』

「わかる」

『静かにしてもらえると助かります』

「すぐに、やるね」

 

 ようは狂っているのだろう。何かの為に戦うのではなく、戦うために戦っているのでもなければ、楽しいから戦うのでもなく、ここではないどこか違う現実を見て戦っているのだろう。

 レイヴンもぞっとするくらい冷たい声を出すエアに対し、しかしそこまで嫌な気持ちにならない、むしろ同調してしまったくらいで。

 

『新しいご友人……贈り物をくれるのですね………すてきだぁ……』

 

 

 

 

「きもちわるい」

『そうですね』

 

 という、ことがあったりしたのだった。

 

 

 

『あなたがルビコンの過去やコーラルについて何かしら思いを巡らせてくれたなら、私としては嬉しいです』

「エア」

『はい』

「これ、一緒におさんぽしたかったの?」

『……はい』

「楽しかったね」

『楽しかったですね』

 

 と、旧時代のデータのサルベージ任務をやったこともあった。

 もっとも帰還してウォルターに小言を言われたのだが。

 

 

『621、仕事だ。アーキバスグループから依頼が入っている』

 

 そして仕事、とにかく仕事だ。

 例の謎の巨大兵器、アイスワームを撃破するためには、レールキャノン、そして人員の手配が必須。カーラがレールキャノンを準備し、反攻の態勢を整えるまでは、ベイラム、アーキバス、独立傭兵、その他勢力が一時的に休戦しなくてはならない。全方位敵状態の封鎖機構は除くとして、だ。そしてその間、時間がある。仕事を受けて稼がねばならない。

 その為に、任務を受けては回しているのだが、かつて襲撃した旧宇宙港を防衛せよという案件を請け負ったのだ。

 

『ヴェスパー第四隊長と貴下の活躍により陥落し当社拠点となったバートラム旧宇宙港について、惑星封鎖機構の残存艦隊が奪還を企図しているとの情報を得ました。作戦内容は、その迎撃及び、当該拠点の防衛……配備されているMT部隊は友軍として貴下の支援にお役立てください』

 

 旧宇宙港近辺へと、大型の拠点型ヘリが飛翔してくると、ホバリングを開始する。

 ウォルターの声が神経接続で響いてくるので、こくんと頷き、返事をする。

 

『621、配備されているMT部隊を上手く囮に使え』

「うん、わかった。ウォルター」

『………随分喋るのがうまくなってきたぞ、621。いい傾向だ』

「ありがとう」

 

 ヘリから機体が投下される。

 システム、変更。

 

【メインシステム、戦闘モード、起動】

【Main system combat mode active.】

 

【DISPLAY LATENCY】

【OVERBOOST CAP】

【WPN FCS】

【EN RECYCLING】

 

 機体構成は、ベイラム製中量二脚フレーム、アサルトライフル、レーザースライサー、垂直ミサイル。対艦戦闘を意識しつつ、敵MTなどへの対処も可能にした構成だ。

 夕焼けの時間帯。旧宇宙港に降り立ってすぐにウォルターが違和感に気が付いた。

 

『待て、621。様子がおかしい』

「うん………誰もいないね」

 

 MT部隊がいると聞いていたはずが、あるのは煙を上げているスクラップくらいなもの。

 

『レイヴン。戦闘が既に終わっているかもしれません』

 

 エアの声がする。

 戦闘が終わったということは、帰ってもいいということだろうか。それとも、相打ち? あるいは、封鎖機構の艦隊が制圧したから静かなのだろうか?

 疑問符を浮かべたレイヴンはネームレスに命じて機体を進めることにした。かつて、アイスワームが暴れまわった余波はいまだに残っており、あちこちにクレーターが空いている。

 さらに進んでいくと、そこで待ち受けていた光景は意味不明であった。

 封鎖機構の強襲艦が地面に鎮座して燃えている。MT部隊も燃えている。全て焼き尽くされた中で、たった一つ、燃えていないものがいる。

 強襲艦の上、一機のACが背中を向けて佇んでいるではないか。敵か、味方か。

 黄昏時(ナイトフォール)、夕日を背にしたその機体が、ゆっくりと振り返る。

 通信が漏れ聞こえてくる。

 

『レイヴン、通信は聞こえている? 目標を確認したわ。あれがあなたを騙る傭兵……』

「だれ?」

 

 それは、見覚えのない機体であった。機体構成、武装、いずれも全く知らない。否、あるいはどこかで見たことがあるような気がするが、思い出せなかった。

 中量二脚型AC、『ナイトフォール』。

 振り返ったその機体は、つい今しがた戦闘をしていたことを意味する高温の蜃気楼を纏っていた。

 

『見せて貰いましょう』

 

 ナイトフォールの頭部バイザーが下りると、メインカメラを保護した。ギラギラとカメラアイが赤く輝く。

 

『借り物の翼でどこまで飛べるか』

 

 ナイトフォール、アサルトブースト。

 ネームレス、アサルトブースト。

 

 二機が交錯し、銃を向けあった。

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