『621、準備はいいか』
ウォッチポイント・アルファが見えてきた。構造は、円柱状とでも称するべきで、巨大なハッチが備え付けられているのが遠方から見てもわかる。
拠点型ヘリがやってきた。後方が開くと、機体の投下準備に取り掛かる。投下。ブーストを吹かして減速しながら、漆黒の機体ネームレスが着地した。その、吹雪吹き荒れる中を。
ハッチ開放。果てしなく深い、奈落の底が口を開く。その真っただ中に飛び込んでいく。
『生きて帰る保証もない、深い探査となるだろう。だが、やり遂げられるとすれば、お前だけだ』
『コーラルに辿り着いて見せろ』
【メインシステム、戦闘モード、起動】
【Main system combat mode active.】
【DISPLAY LATENCY】
【OVERBOOST CAP】
【WPN FCS】
【EN RECYCLING】
着地。黄色の巨大なリフトの上に降りたネームレスは、リフト中央のアクセスポイントへと軽快な動きで飛び移る。
『ミッション開始だ。まずはリフトにアクセスして、降下しろ』
アクセス開始。リフトが直ちに降下を始めるが、すぐに赤色灯が輝き、警告音が響きだす。
リフトが止まった。
『脅威度未測定の侵入者を検出 防衛フェーズ1.0 対象を排除します』
高熱源反応。咄嗟に地面を蹴っ飛ばしつつ転回、自律型兵器にアサルトライフルの照準を合わせつつ射撃に持ち込む。爆発するそれを尻目に、停止したリフトの淵までやってくる。果てしない下方、異形の砲台がこちらを狙っているのが見えた。
『足場がある。遮蔽物に使え、621』
「うん」
青白い光線が放たれるコンマ数秒前にブーストを吹かす。空中でステップを踏み、右へ左へ、敵砲台の照準補正を狂わせる。エネルギーを使い切る前に、道中の足場を遮蔽物として利用して、射線を切る。
ブーストによる降下補正をカット。重力加速度に従い急激に落ちていく。
『むっ! 隔壁が閉鎖されるぞ621』
「わかった!」
そのまま着地すれば粉々は必死だ。降下補正をオンに。減速しながら、閉鎖された隔壁に降り立った。
『侵入者を隔離、対象を排除します』
執行部隊だ。複数の機動兵器を確認したレイヴンは、既に攻撃に移っている。上空からプラズマミサイルを発射しつつ、アサルトブーストを使い撹乱に入る。右へ左へ機体を疾駆させるレイヴンの戦闘機動に、防衛戦力は付いてこられず弾を無駄に吐き出す。
「もらった」
壁をキック。その勢いを利用しつつ肉薄、レーザースライサーで一機をズタズタに引き裂けば、勢いそのままスライドしていき、返す刃で二機目を溶断する。
そしてメインカメラすら向けずにアサルトライフルを向けると、崩れ落ちるまで撃ちまくった。リロード。
『侵入者の脅威度を計測 脅威度4……6……レベル6排除困難と判定 防衛フェーズ、1.5移行準備』
『片付いたか。隔壁を開く方法を探る。待機しろ、621』
「うん」
しかしそうはいっても、何もしないわけにもいかない。
「エアなら……」
エアならどうしていたかを頭の中でトレースしてみる。エアなら……。
「あそこかな?」
アクセスポイントらしきものを見つけたレイヴンは、丁度壁に空いた空間へと機体を急行させた。
アクセスポイントだ。しかし操作が分からない。
『ウォルター』
『アクセスポイントを見つけたか。よくやった、621。すぐ解除する』
『不正アクセスを検出 フェーズ1.5移行』
隔壁が開く。アサルトブーストを使い一気にその開き切っていない隙間を通過していく。落下しつつのアサルトブースト、それは脅威的な速度に達する。
高熱源反応。機体を振り、射線を掻い潜る。エネルギー切れを起こす前に、“敵機の”上に着地。死にきれず悶える狙撃砲を抱えた敵機の頭部にライフルを突き付け、撃ちまくって沈黙させた。
『ミサイルが起動している。プラズマミサイルに警戒しろ、621』
「うん」
砲撃が来る。それを遮蔽物である足場で遮り、続くミサイルをブースト捌きで乗り切る。
あとはこれを繰り返すだけだ。何しろ砲台は連射が効くとはいえ、冷却のためのクールタイムがある。その間に移動して遮蔽物に入ってしまえば、狙うことができない。所詮は機動性の低い兵器向きであったということであろうか。
飛び降りる。近すぎるせいか、砲台はその複数本生えた砲身からレーザーを放つのではなく、ミサイルで応戦してくるだけになっていた。
さらに降りていくと、砲台を支える可動部が丸見えの位置に、つまり最深部に到達できた。
「じゃあね」
アサルトライフルを撃ちまくりつつ接近し、ブーストで接近。フルチャージのレーザースライサーで切り刻む。
がくんと砲台が重量を支えきれなくなったか、頭を垂れた。爆発を起こす。部品をばら撒きつつ、内部から青い火炎を噴出し、動かなくなってしまった。
『敵性反応消失。よくやった、621。少し休め』
安全を確保したことでヘリが入ってこられるようになった。拠点型ヘリがすぐそばまでやってくるのを、レイヴンは見上げたのだった。