鴉は舞い降りた   作:キサラギ職員

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ラスボスになり損ねた男
一応「声」は聞こえているけど耳鳴りにしか聞こえていない模様


30、G5 イグアス

 

 

『……以降の深度では広域レーダーによる支援はできん。コーラル物質による干渉のためだ』

「そうなんだ」

『621、お前の感覚に頼る形になる。気を抜くなよ』

「うん、ウォルター」

 

 出撃。拠点型ヘリから投下される。

 今度は、閉所での戦闘だ。アセンブルを、最も使い慣れている中量二脚型、右腕に実弾ショットガン、左腕レーザースライサー、そして肩には軽量型グレネードを搭載している。

 状況に応じて機体構成を切り替えてきたが、ここから先にも拠点型ヘリは入ってこられるのだろうか。疑問に思い聞いてみると、

 

「危険性は高いがやる価値はある」

 

 という返答だった。一応ヘリには自律型MTと火器も搭載しているので、地対空携行ミサイルを担いだ人間程度はあしらえるだろうが……少しだけ、不安だった。何か嫌な予感がする。

 つまりここから先の敵は全て殲滅しなければならないということだ。

 

「行ってくるね」

『ああ、行ってこい』

 

 

【メインシステム、戦闘モード、起動】

【Main system combat mode active.】

 

【DISPLAY LATENCY】

【OVERBOOST CAP】

【WPN FCS】

【EN RECYCLING】

 

 

「!」

 

 入って早々に封鎖機構の執行兵器と出くわす。ブレードを展開、斬りかかってくるのを、ショットガンで撃ち姿勢を崩す。ブースト点火。レーザースライサーを起動し、すかさず連撃を叩きこみ沈黙させた。

 進む。とにかく閉所、閉所だ。ショットガンのストッピングパワーを活かすべきだ。

 物資輸送のための線路が張り巡らされている閉所において、ACの機動性は余り活かせない。むしろ火力がものを言う可能性が高い。

 スキャン開始。物陰に敵性反応。

 

「わ、わっ」

 

 急に出て来て斬りかかって来るのを、後退しつつショットガンを叩きこみ、右肩グレネードをブチかましてスクラップに変える。さらに奥から狙撃してくる敵へ、左肩グレネードを発射、これも沈めた。

 心臓に悪い。奇襲ばかりなので、レイヴンは真っ白い頬を朱色に染めていた。

 先に進もうとして、ハッチが開かない。

 

「? あっ、図面……」

 

 図面を確認してみる。線路が続いている。しかし電源が落ちているらしい。

 スキャンモード。電源のケーブルを検出。それは少し戻った部屋にあるらしい。その部屋に入り、穴から落ちてみると、そこにいたのは……。

 作業中のMTであった。

 

『来たな! 独立傭兵レイヴン!』

『アーキバスに付くなら、死んでもらう!』

 

 どっちについたつもりもないのだが、勘違いされているらしい。

 しかし敵は所詮少数のMTだ。遮蔽物を利用して縦横無尽に駆け巡る。ショットガンを撃ち、隠れている敵には遮蔽物ごとグレネードを発射して吹っ飛ばす。

 

「………これかな?」

 

 制御盤を発見。アクセスして、リフトで戻る。そして先ほどの扉にアクセスして先に進む。

 その先の部屋は、何かの機器が並んでいる。ねつこうかんしつ、というらしいがよくわからない単語だった。あとでエアに聞いてみようと思った。

 

『待ってたぜ、ガキ!』

「イグアス?」

 

 G5、イグアス。ヘッドブリンガーがそこで待ち構えていた。

 感傷はない。容赦もない。傭兵家業というものは、そういうものだ。昨日の味方が今日の敵になることは珍しくなく、故に攻撃に躊躇はなかった。実際、相手も扉が開くや否や攻撃を仕掛けている。

 ブースト点火。敵が放つリニアライフルのチャージ射撃を小刻みなステップで回避すると、しかしばら撒かれるマシンガンが装甲を舐める。跳弾。所詮、分類でいうとサブマシンガンのそれでは抜かれぬ。

 敵機、オービット展開。なるほど閉所の戦闘を考慮していたのだろうが、しかし、

 

「ごめんね」

『謝るな! クソ、クソっお前みたいなガキと俺で何が違う!』

 

 グレネードを発射。連続発射。オービットもろとも吹っ飛ばす。軽量型グレネードとはいえ連装型。四発をばら撒けば、巻き込まれたイグアス機が姿勢を崩すのが見えた。

 

『耳鳴りが……ヤブ医者が……!』

 

 接近。

 しかし、それよりも早く体勢を戻したイグアス機がミサイルを起動。

 レイヴン、同時にショットガンの散弾で潰す。

 

『追従しきれねぇ、この動き、どうなってやがる! ガキが調子に乗りやがって……邪魔なんだよ、てめぇさえいなければ……!』

 

 接近。レーザースライサーフルチャージでイグアス機を切り刻み、蹴りを叩きこんで壁へと追い込む。トドメのショットガンで、その脚部を吹き飛ばし沈黙させた。

 

「ごめんね」

『だから謝んな………ああ、こんな………こんなはずじゃ……つぎこそは、てめぇを……』

 

 生きているのだろうか。あるいは死んだか。

 レイヴンは、それを一瞥して先に進んだ。

 先に進むと、開けた空間に出た。橋がある。橋の上では、ベイラムMT部隊が必死に上空にいる何かに射撃していたが、それが着地、プラズマ砲であっという間に壊滅させてしまう。接近すると、それはこちらをぎろりとにらみ、跳躍して逃げていく。あれも、敵か。

 

『防衛プログラム フェーズ2.0 侵入者を検出 脅威レベル7』

『……封鎖機構の執行兵器であるのは間違いないがデータがない。621、少し待て』

「うん」

 

 道がわからない。ウォルターが調べてくれるまで、周囲を探索する。しかし、わからなかった。

 

『換気ダクトがある。それを使え』

「わかった、ウォルター」

 

 換気ダクトを確認。それの内部を伝っていく。特筆するべき敵はいなかった。道を塞いでくる汎用兵器くらいだろうが、豆鉄砲のマシンガンくらいしか搭載していないので、レーザースライサーとショットガンで片っ端薙ぎ払うだけであった。

 他にも、置物よろしくハンガーに設置されていた執行兵器がいた部屋もあったのだが、とりあえず起動前にグレネードで破壊したので脅威ではなかった。

 

「…………」

 

 迷う。迷うのだが、先ほどの兵器がいないということは、通路としては繋がっているはずである。つまり通れるということだ。

 

『621、ゆっくりで構わない。確実に行け』

「うん」

 

 さらに進んでいった先。制御盤でハッチを開放させていくと、事前の調査結果におけるウォッチポイント・アルファ第二エリアの最奥部に到達した。

 

「バッタさん?」

 

 爆発。着地してきたそれをみてぽつんと声を漏らす、レイヴン。絵本で見た虫という生き物のバッタに若干似ていたのでそう言ったのだが、見ているうちに変形を重ね、あっという間に人型になった。右腕に巨大な砲を抱えており、無機質な殺意が伝わってくる。

 

『封鎖区域への侵入者を検出 防衛プログラムフェーズ3.0 強制執行モードに形態変更 対象を排除します』

「撃つね」

 

 ネームレス、グレネードを発砲。敵不明機体、同時にプラズマ砲を発砲。

 交戦開始。

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