鴉は舞い降りた   作:キサラギ職員

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38、funeral 弔い

 

「いってらっしゃい」

『ああ、行ってくる。戦友』

 

 RaDのアジト。格納庫。様々な機体が並んでいる中で、

 ラスティ、出撃。その様子を見送るのがどれだけ斬新だったことか。

 同じようにヘリで出撃しようとするエアと、カーラ。

 

「カーラ」

 

 レイヴンは、今まで考えないようにしていたことを聞くことにした。

 

「ウォルターは?」

 

 長い長い沈黙があり、カーラからの通信があった。

 

『あいつは捕まっちまったよ。乗ってたヘリごと落とされてね。ログからは生きてることはわかったんだけど、そこから先のトレースがうまくできない。あんたのいたところに一度移送されて、その後“ファクトリー”とかって場所に運ばれたことはわかってる』

 

 神経接続でそのログが送られてくる。なるほど、拠点型ヘリが落とされたらしいことはわかるし、ウォルターらしき姿の人が兵士に囲まれているのもわかる。

 その後。ウォルターらしい“再教育対象者”が、“被検体”としてファクトリーに移送されているログ。そこから先が不明になっている。

 

「………聞いたこと、ある。再教育センターから出たとき、逃げ出したレイヴンをファクトリーに送るためもう一度捕まえろって言ってた」

 

 大脱走劇が脳裏をよぎる。確かに兵士が、ファクトリーがどうとか言っていたのは聞いた。

 カーラが通信越しに唸る。

 

『嫌な予感しかしないねぇ。企業のやることなんてろくでもないってことくらい、わかるってもんさ。元アーキバスの坊やにも聞いたんだけど、噂話程度で実際に場所は知らないと言っていた。特定は無理だろうね』

「そう、なの………」

 

 ウォルターに、もう惑星を焼かなくてもいいということを伝えたい。焼かなくても、“篝火”として、コーラルを燃やし続ければ、災禍にならないと伝えたい。死んでいった“友人”の遺志を、無念を晴らす手段があると伝えたい。けれど、届かない。

 レイヴンは、嫌な予感がしていた。ウォルターに会うのは、遠くない将来だという予感がしているのに。

 

『とにかく』

 

 カーラが言った。

 

『企業戦力に対抗するにはあんたみたいな例外(イレギュラー)だけじゃ手が足りない。ザイレムは戦闘艦でもある。これを使わない手はないね。もっとも、企業が妨害してくるのは必須さ。……バスキュラープラントを、連中は完成させた。やがてコーラルは大気圏外に持ち出されるだろう。そうなる前に仕掛けないといけないよ、ビジター』

「うん……あ、エア」

 

 レイヴンは、カーラの護衛につくためにヘリに乗り込もうとしているエアに手を振った。エアも、機体の手を振って来る。

 

『レイヴン。行ってきます』

「うん!」

 

『さて、掌握そのものは簡単にできるだろうね。けど企業も本気モードさ。今はこちらを見くびってる。だがいずれ、ルビコン駐留艦隊に加えて、軌道上の艦隊含め降下してきて、攻撃してくるだろうね。私たちを消すために。総攻撃をかけてくるのは目に見える。手が足りない。そこで』

 

 ネットワークの表示。RaDのアジトから各地に拡散していく情報の概略図だ。

 

『ルビコン解放戦線に情報をリークさせてもらったよ。つまり世界中にだ。ルビコニアンがどれだけ立ち上がるかが鍵だ。“花火”があがったら、行動に移せって指示もね。もし……』

「立ち上がるよ。みんな」

 

 レイヴンは言い切った。あっさりと。

 カーラが苦笑する。

 

『その能天気さにはいっそ救われるよ、ビジター。それからもう一つ。“惑星封鎖機構”にも打診は送った。目標は一緒だから、動く可能性はある。あとは……運だね、私たちはともかく、全員が立ち上がらない限りは、勝機は薄い。それでも』

 

 やるかい。

 カーラが続けると、レイヴンは胸元に手をやって頷きつつ答えた。

 

「やる」

『もう後戻りはできないよ。賽は投げられた……って言葉、知ってるだろう?』

 

 ルビコン川を渡ったら、もはや引き返せない。既にカーラは賽を投げている。

 レイヴンもそれは同じだ。

 ただし、コーラルの破綻という道ではなく、共存するという道を選んだという意味でだ。

 

「もう私は投げたよ。先に進まなきゃ。後戻りは、しない」

 

 強い決意を胸に、レイヴンは、飛んでいくヘリの群れを見送ったのだった。

 

 

 

「よう」

「ラミー」

 

 アジト内部を探索して歩く練習をしていると、恰幅のいい大男ラミーがいた。彼は心底、真剣な顔をしていた。

 

「何度も助けて貰ってよぉ……助けてっていうか見逃してっていうのかよぉ……俺ァ自分がなさけねぇのよ」

「うん」

 

 ラミーははっきり言えばコーラル中毒者のどうしようもない男だ。ACは自称無敵らしいが、その辺のACどころかMTにも負ける悲惨ぷりである。

 

「コーラルちゃんと摂ってる?」

「ああって、いやお嬢ちゃんが言う台詞じゃねぇよなそれ!」

 

 摂ってると言うかキメてるとでもいうべきか。

 レイヴンの口から出てくる不穏な単語にラミーが突っ込む。

 ラミーはがくりと項垂れていた。

 

「今度の作戦、RaD全員が出るわけよ。俺も出るわけだが……はっきり言って、俺は死ぬ未来しか見えねぇわけよ」

「うん」

 

 ラミーが後生だからよと頭を下げる。己より遥かに小さいレイヴンに。

 

「少しでいい。俺によぉ、AC教えてくれねぇか。次の作戦、まあ要するに企業連中との潰し合いで、ボスの機体に乗れとか無茶ぶりされてよ。傷つけたら殺すだってよ。死ぬのかな俺」

「え。フルコース? じゃあカーラは何に乗って出撃するの」

 

 フルコースは、カーラの機体の筈だ。それを乗れとか無茶ぶりもいいところだが、何か彼女に考えでもあるのだろうか。

 まあ、ラミーくらいの腕前でも一応はACの操縦ができるのだ。MT乗りばかりしかいないRaDにおいて、ある意味では“強い”のかもしれないが。

 

 

「サーカスだ。チャティの野郎の機体だよ。弔い合戦をするそうだ」

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