鴉は舞い降りた   作:キサラギ職員

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全部の戦い書くとグダること待ったなしな気がする


40、Someone is Always Moving On the Surface ルビコンの戦い

 

『ボス、俺ァ覚悟決めましたぜ』

『へえ、あんたにしちゃあ上出来な返事じゃないか。声が震えてなければよかったんだけどねェ』

 

 ザイレム上層部。ヴァンガード・オーバード・ブーストを装着し、臨時で設けられたカタパルト上に二機のAC。一機は重量二脚型、フルコース。一機は軽量タンク型、サーカス。灰被りに、コーラル中毒者。役者は揃った。楽しいサーカスの始まりだ。

 

『頭がよくねぇもんで詳しくはわかりませんけどぉ……ようは、世界を救う戦いってことで合ってるんで?』

『救うか……そうだねぇ、そうとも言える』

 

 これは、所詮延命だ。全て焼き滅ぼした方がいい可能性もある。しかしアイビスの火ですら完全に消滅させられなかったのだ、次火を起こして、完全に消滅させられなければ同じことが繰り返されるだけだ。

 永遠なんてものはなく、故にエアというルビコニアンは、レイヴンと共に生きて死ぬことを選んだ。その心意気と、チャティからの遺言が彼女に使命を捨てさせた。もとい、使命を別の形で成就させることを望ませたのだ。

 その世界を救う戦いに“コーラル中毒者”がついてくるのだ。チャティがいれば“笑った”だろう。まあそれが理由のすべてではなく、単純にRaDメンバーのAC乗りがいなかったというのもあるのだが。チャティがいれば、チャティがこの役割を担っていた。

 

『笑えよ、ラミー! こういう時こそ、笑うのさ! カーラ機、いつでもいけるよ!』

『俺ァ…………やればいいんでしょう、くそったれが! ラミー機、出撃準備よし!』

 

 ほとんど同時に、カタパルトが作動。急激にGに二人そろって意識が吹き飛びかける。

 ブースト点火。ほとんど瞬間的に最高速に到達。みるみるうちにザイレムが遠ざかる。

 ザイレム管制からの通信。

 

『ボス、わかっているとは思いますが急旋回が効かず、装備を全てミサイルに換装してますので一撃離脱を心がけてください。敵艦の弱点は、艦橋です。ご武運を!』

『わかってるとも! いくよ、ラミー!』

『こうなりゃヤケだ! ボス!』

 

 

 

 

 

 コーラルよ、ルビコンと共にあれ。

 コーラルよ、ルビコンの内にあれ。

 その賽は投げるべからず。

 

 だが賽は投げられた。延命という形で。

 

 ルビコン解放戦線は全世界に発せられた声明にすぐ反応した。

 

 

 『レイヴン』『Cパルス変異波形』『エア』『コーラルリリース』『プロジェクト・ファイアリンク』―――。

 

 

 次々明かされる世界の真実に最初解放戦線内部でも混乱が生じた。

 

『セリアよ、これでよかったのだろうか』

 

 今は聞こえぬ声に対し語り掛けながら、ルビコン解放戦線の精神的指導者であるサム・ドルマヤンは自ら機体を駆っていた。

 共生とは何か。ともに利用し合う仲なのか。寄り添うことなのか。今だ答えは出ずにいたが、映像を見て、心が動いた。

 

『私は、エアと一緒に生きたい』

 

 という願い事を口にするレイヴンという小さい少女、その実、大陸中に名をとどろかせた壁越えにしてワーム殺しの傭兵のごくわずかな言葉に衝撃を受けた。

 続けて仰天したのはルビコニアンが直接言葉を投げかけてきたことだ。レイヴンという媒体を使い、外部と通信することで、感応者でなくても声が聞こえるという理屈らしい。

 

『私は、レイヴンと共に生きて、そして死にます』

 

 素直過ぎる言葉だったが、その言葉に枯れた彼の感情が再び燃え上がるのを感じた。

 

 答えはいまだにでないけれど、それが共生というのであれば。

 永久なんてものがないとわかっていても、あがき、戦い続ける道を選び取るならば。

 

 例え、相手が強大な企業であっても。

 

 戦い続けて見せる。己の命がある限り。

 

『全支部に通達。“花火”を合図に攻撃を開始せよ』

 

 シンダー・カーラを名乗る女性からの連絡。そして、巡航ミサイルによってルビコン各地で綺麗な花火があがった。

 

『攻撃開始。賽は投げられた、繰り返す、賽は投げられた』

 

 ごく短い通信によって、世界中のルビコン解放戦線が戦端を開いた。これは、陽動に過ぎないことなど分かり切っていた。

 本命は敵艦隊の撃滅。そして、ステーションの奪取。その為には、足元を固めなければならないことなどわかりきっていた。

 各地での陽動と同時に、バスキュラープラントのある技研都市に対し、部隊を一斉投入。サム・ドルマヤンはミドル・フラットウェルと共に、技研都市の奪取に取り掛かったのであった。

 

『灰被りて、我らあり!』

 

 そう警句を唱えながら、敵を殲滅していく。その姿はまさに鬼神が如く。

 

 

 

 ザイレムにて。

 

『お前と戦うことになるとはな、フロイト』

『裏切り者の登場か。まあそんなことはどうでもいい。お前の機動を見せてくれ。興味がある』

 

 V.Ⅰ、フロイト。

 周囲のMT部隊を片っ端から平らげた彼は、気になる機体に遭遇した。軽量二脚型AC『スティールヘイズ・オルトゥス』。搭乗者へ無線通信を試みると、すぐ返事が戻って来る。

 アーキバス、ヴェスパー部隊で死亡した扱いになっていた男が、あろうことかエルカノ製の機体に乗って、レイヴンという傭兵たちと行動を共にして、企業に立ち向かって来る。

 異常とも取れる事態にしかしフロイトはどうでもよさを感じていた。

 見たことのない機体だ。そして、感じ取れるプレッシャーはかつてのV.Ⅳとは比べ物にならない。面白かった。どんな動きをするのだろう、そして、それを自分はいかに学べるだろうか。

 フロイトは感情がある意味で欠落した男だ。己の命もチップにかけられる男だった。

 

『私には守るべきものがある。フロイト、お前はどうだ』

『そんなものはないね。じゃ、やろうか』

 

 

 

 

 

 

 

『貴様は……駆除するべき害獣だ! そして横についている声の主。お前も、所詮はただの資源に過ぎない!』

 

 V.Ⅱ、スネイル。アーキバス・バルテウスの襲来。

 レイヴンと、エアはその戦いに赴く。

 

「あいつが………私を、撃った。許さない。エア、合わせて!」

『はいレイヴン。あなたを傷つけた、あいつを許すつもりは一切ありません!』

 

 

 

 全くの同じ時間帯、ルビコンという宇宙からすれば、砂の一粒、水の一滴にも満たない場所にて、命と命がせめぎ合う。

 

 ルビコンの戦い。

 単にそう称される大戦争は、たった一人の少女の目覚めから始まったのだと言う。これが、歴史の真実であった。

 そして勝者がどちらになるのかは………誰にも、わからなかった。

 混迷を極める戦場。

 ルビコンの灼けた空と、灰を被った大地の上で、勢力と勢力が激突した。

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