鴉は舞い降りた   作:キサラギ職員

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エアとかいう貧乳にされがちな女
621をでかい女にする計画もあったんですが『でもそれっておじロリできませんよね?』というコーラル中毒者の言葉をどこかで見た気がするのでロリにしました


8、March At Dark Night 闇夜の行軍

 

『報告しておく。BAWS第2工廠調査で遭遇したあの光学迷彩搭載の機体だが、どこかに暗号通信を送っていたことは分かったが肝心の暗号化が解読できなかった。思うに、あれは連中にとっても、恐らくは不測の事態だったのではないか』

「………うん」

『ブリーフィングで呼び出したのはこれについての話だけではない。これは……ある友人からの、私的な依頼だ』

「うん」

 

 ブリーフィングモード。通常時でも、簡易的な回線を使って、621はネットワークに接続している。そうでもしないと、彼女にとって移動という作業が大仕事であるから都合が悪いのだ。

 

『ウォッチポイントと呼ばれる施設がある。地中に眠るコーラルを監視し、かつてはその流入制御も行っていた施設だ。お前には、そこを襲撃してもらう』

 

 ブリーフィングとして施設のデータが表示される。円形状の施設だ。何かに蓋でもしているような―――そんな印象を覚えさせる。敵の護衛に関する情報もある。MT部隊と、砲台。これが余程重要な施設であることがわかる。

 友人。概念としては教えてもらったので知っているが、自分にも友人ができるだろうか。621はふと、そんなことを思った。

 

『目標は……最奥にあるセンシングバルブの破壊。当該施設は惑星封鎖機構SGが警備に当たっている。企業達も表立っての手出しは避けるだろう。つまりこの仕事は……俺達だけで遂行しなければならない』

「うん」

『目標は全て消せ。増援の妨害に関しては……俺に任せろ。現地にいる連中を残さず始末しろ』

 

 機体構成を考える。流石に、初期のパーツでは心もとなくなってきた。もともとは船外活動用に作られたパーツなのだ、戦闘を考慮していない。思い切って、ここまで得てきた資金をつぎ込んで一新した。

 ベイラムのMELANDERフレームで統一。装備は、垂直ミサイルとショットガン、ブレード。近接格闘を重視した想定である。

 もとよりACは接近戦を想定した兵器である。肢体を使い殴りかかることすら可能なのだ。今回のミッションで果たして有効かは―――実際にならないとわからないであろう。

 癖がない代わりに、特化しているわけでもない。汎用性が高いとも言える。

 

『621、準備はいいか。独立傭兵が単機で仕掛けてくるとは、封鎖機構も想定していない』

 

 機体が大型ヘリの投下装置にセットされ、そのまま後部へと運ばれていく。

 機体は、夜間戦闘を想定して黒一色で塗り固められていた。

 まるで、何もかも焼き尽くされたあとのような、光を吸い込む漆黒だ。

 

『投下するぞ。気を引き締めてかかれ』

 

 機体が投下され、そのまま戦闘モードを起動していく。

 

【メインシステム、戦闘モード、起動】

【Main system combat mode active.】

 

【DISPLAY LATENCY】

【OVERBOOST CAP】

【WPN FCS】

【EN RECYCLING】

 

『ミッション開始。まずは接近していけ』

 

 ヘリが発見されると厄介なことになる。よって、ある程度離れた地点から投下した。

 水面上、障害物もとい足場になる残骸を跳躍しつつ近づいていく。スキャンを起動。電波、音波、可視光線などを利用したそれで対象を捕捉する。

 

『所属不明ACを確認した。独立傭兵か? 企業か?』

『わからん、応戦しろ!』

 

 流石に近すぎて発見される。MT達がプラズマ砲を構えるのが見えた。

 

『砲台からやれ。狙われると厄介だ』

「うん」

 

【高熱源反応検知】

 

 警告に従い緊急回避。真横をプラズマ砲弾が突き抜けていく。

 ビルを障害物に、プラズマ砲台に接近、一太刀で砲身を叩き斬り、また回避。別の砲台が狙いを付けてきている。ブースト、トップスピードで駆け抜けつつマルチロック。MT数機を垂直ミサイルで攻撃しつつ、懐に潜り込んでいく。

 プラズマ砲チャージ完了前に一閃。そのまま砲台を蹴り飛ばして跳躍すると、爆発を背景に離脱した。

 

『先に進め』

 

 やることは一緒だ。撃ち、接近し、斬り付ける。

 

『増援を! 増援を!』

 

 電波妨害がされているのだろうか、一向に繋がらない無線に封鎖機構の兵士たちは叫び続け、そして死んだ。

 砲台とMTの群れを一蹴すると、見えてくるのは橋だ。水上に見えてきた巨大な円形の施設は、まるでコロシアムであるかのような錯覚を覚えさせる。

 

『見えるか、あれがウォッチポイントの制御センターだ。目標はその内部にある。侵入しろ』

「うん」

 

 機体が飛び降りる。ブースタで減速しつつ着地すると、橋をひたすらに滑走していく。

 そして、センサが別の熱源を捉えた。

 

【敵ACを確認】

 

『ウォッチポイントを襲撃するとは……相変わらずだな、ハンドラー・ウォルター』

 

 バズーカ、パルスガン、垂直プラズマミサイル、そして特殊型ミサイル。

 中量二脚型ACがウォッチポイントの制御センター上に着地した。まるで、これから川を渡ろうとするものを、阻害するが如く。

 

『また犬を飼ったようだが、何度でも殺してやろう』

 

【照準波検知 高熱源検知】

【敵ACを確認 エンタングルです 敵はバズーカを装備 中距離、近距離での機動力を活かした戦闘スタイルと予測されます】

 

 センサーロックオン距離外から飛んでくる、バズーカ砲弾。マニュアル操作で撃ってきたであろうそれを、まずは相手の足元建物方向に潜り込んで回避。続いて放たれる特殊型ミサイルを、ショットガンで叩き落す。

 型番は頭に入っている。あれは、空中で小爆発を起こしながら、相手の足を止めるための武器。一度足が止まれば、そこでバズーカをぶち込まれて死ぬという寸法である。

 

『貴様は……スッラか!?』

『そこの犬。お前には同情するぞ』

 

 反撃。垂直ミサイルを起動すると、そのまま全弾一斉発射。

 それをこともなげに左右に機体を振って躱される。牽制射撃。制圧の意味を込めてショットガンを撃ち込むも、距離が離れすぎて装甲で弾かれる。

 

『飼い主が違えばもう少し長生きできたものを』

 

 パルスガンがシャワーのようにばら撒かれる。被弾。装甲表面が軽く溶けただけであるが、それでも被弾には変わりない。

 確信する。この男、相当に強い。攻撃とは牽制、ブラフ、様々な要素を織り交ぜるものだが、そうしたことが当然のようにできている上に、機動が鋭い。

 さらに上からバズーカが撃ち込まれる。着弾と同時に拡散するそれも、足を止めることを念頭に置いたもの。硬直しようものなら次の攻撃が待っているであろう。さらに叩き込まれるプラズマミサイル。着弾した個所を中心に拡散するそれを、危なげなく躱す。

 

『C1-249 独立傭兵スッラ。第一世代の生き残りだ。やれ、621。さもなくばお前が死ぬことになる』

『619と620はどうした? 死んだか? 私が殺ったのは何番だったか……』

 

 とぼけた口調の中に見え隠れする殺意に、しかし621はかすかに眉間に皺を寄せるだけだ。

 続いて放たれるパルスガンを、ショットガンで相殺する。リロード。正面から突っ込む振りをする敵の、移動先を読んでショットガンをぶち込み、パルスガンを穴あきチーズに変える。

 スッラが軽口を叩く。

 

『この感じは第四世代かァ……上手く育てればいい猟犬になる。不憫なことだ、ここで死んでしまうとは』

『奴の言葉に構うな、集中しろ』

 

 ミサイル。回避せず、一気に接近する。こうすれば自機を巻き込むことを防ぐために信管が作動しなくなる。

 

【アサルトアーマー、起動します】

 

 コア背面上部、ロック解除。パルスガンと同等の、しかし全方位に指向性を持たせた攻撃システムが顔を覗かせる。爆発的なエネルギーが迸るや、周囲の水を蒸発させる。

 垂直ミサイルリロード。発射、右を先に、左は数秒おいて発射。回避に入ったスッラは、当然の如くアサルトアーマーを食らっていなかった。

 

『ちいっ!?』

 

 ショットガンで左腕を吹き飛ばしてやる。しかしこれは致命傷でもなんでもない。そもそもスッラが左腕に握っていたパルスガンはつい今しがたスクラップになっているからだ。

 リロード。時間を稼ぐためにアサルトブースト。離陸。蹴りを見舞おうとすると距離を取られ、プラズマミサイルが飛んでくる、それをショットガンで叩き落して起爆してやれば、スッラ機の頭部が焼け落ちた。

 メインカメラを失ってもなお、その機動に澱みはない。右へ左へ跳躍するそれに対し、今度はブレードを水面に突き立て、蒸気で一瞬の目隠しをした。

 まずいと思ったかスッラがアサルトブーストを行ったが時すでに遅く、背後から赤いカメラアイが線となって暗闇を縫い、出現。二回目の斬撃はコアを捉え、胴体をねじ切っていた。

 

『ハンドラー・ウォルター……ウォッチポイントはやめておけ……』

 

 最期の言葉を呟いた刹那、機体は爆発し、横転して永久に沈黙した。

 呼吸が苦しい。621は薄い胸を上下させていた。

 

『敵ACの撃破を確認した。やつのことは気にするな。だが、よくやった、621』

「うん………はぁっ、はぁっ……」

 

 白い肌を真っ赤にしていたが、強化された肉体はこの程度を苦にしない。

 先に進む。ゲートを潜ると、そこで一度補給シェルパで補給を受ける。

 広大な空間が広がっている。円柱状の内部は、まるで星のように緑色に電子機器が光っており、ライトを付けなくてもうっすらと目標であるセンシングバルブを確認できた。

 降下していく。センシングバルブ。バルブというより、まるで掘削装置を思わせる形状をしたそれに、ショットガンを叩きこむ。

 

『やれ、621』

 

 リロード。二発目を撃ち込むと、バルブが歪み、爆発を起こした。電源が落ちたのか構造内部の光が消える。

 

『これは……!? 退避しろ、621!』

 

 帰ろう。踵を返したところで違和感に気が付く。センシングバルブから、地面から、壁面から、赤ともピンクとも付かぬ光の粒子が漏れ始めている。

 

「あ」

 

 そして次の瞬間、ネームレスはその光に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたは……』

 

 

 

 あかい、ひかりが、みえた。

 暗闇にぽつんと、浮かんでいる。

 

 

 

 

 

 

『第四世代、旧型の強化人間……』

 

 

『あなたには、私の“交信”が届いているのですね』

 

 

『わたしは、ルビコニアンのエア』

 

「……」

 

 なのらなくては、なまえ、なまえ……。

 

「レイヴン……」

 

 

『レイヴン………目覚めてください。あなたの自己意識が、コーラルの流れに散逸する、その前に』

 

 樹状の、フラクタル構造が、赤い光を伴って、暗闇を引き裂いた。

 




次話、『Life in Ash エア』
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