「悟!カラ!」
軋む体に鞭を打ちやっとのことで外に出る
きっと、無事なはずだ
そう信じ鳥居の前まで駆け抜ける
だが見えたのは
「は?」
「創麻‥様…」
目の前に広がるのは赤い花
そしてたった今倒れるカラの姿
「あ?もう一人のボンボンか」
この惨状を生み出したであろう元凶が喋り掛けてきているがよく聞こえない
視界がぼやける、熱中症みたいだ
悟とカラが…死んだのか?
分かっている、そういう環境だ
小さな頃から教わってきた
だがこんなにもあっさり、
なんで…なぜ?何か悪いことを僕達はしたのか?
「なにボーッとしてんだ」
目の前から凶刃が迫り来る
そうだ、お前、お前のせいだ、お前のせいで!
「許せない!」
生まれて初めて明確に知覚した殺意
ただでさえ異常な呪力がさらに膨れ上がる感覚に反吐が出そうだ
「呪う、呪ってやる!」
自身の激情に任せるまま手印を組む
「構築領域「滅穢」!」
あたり一面は急速に呪力で作られた結界で覆われる
「あ?俺にそれは効かねぇよ」
「だから創るんだよ!」
虚空から無数の槍が発射される
元々自身から離れた場所で構築など無理だ
だがこの領域内、帷に「全てのものの侵入の自由、外から視覚可能とする代わり自身の呪力は通さない」縛りをつけた
この中だけならまるで体内、自由に構築できる
どこにでも、どこからでも
そしてこいつは恐らくフィジカルギフテッド
領域による必中必殺は意味をなさない
なら物量で押し潰す!
「チッ、数が多い」
無数に槍を奴は全て切り落とす
恐るべき身体能力と動体視力
真っ向からはやってられない
ひたすらに構築する。ナイフ、槍、刀ありとあらゆる殺傷力を持つものを構築し叩きつける
巻き上がる砂埃が視界を塞いでなお逃げようのない攻撃の嵐
だが
「面倒なだけだな、荒削りだ」
「っぐ..!」
急に背後に現れた奴に背中を裂かれ、そのまま倒れる
やはりダメか...
わかっていたこと、悟ですら捉えられなかったんだ。いかに物量があるといえど当たらないことはわかっていたが...
「痛てぇな...」
ついてるのは少しの擦り傷
こんなに...こんなに遠いのか?
呪力は十分ある。まだ半分以上だ
疲れてもいない、脳が焼き切れるほど術式を回してもいない
全力は尽くした、やれることはやったと思う
それでなお届かない
「手間かけさせやがって」
奴が凶刃を振りかぶる
終わりだ、よけようがない
そういや前世の死に方もこんなんだったか?まぁいいや
ごめん、理子ちゃん、傑。
そうして瞼を閉じようとした
その目の前、僕の身代わりとして一撃を受けたカラを見るまでは
「創麻...様...!」
既に崩れかけの体に鞭をうち、這いずりながらでも進む
体が崩れているのが分かる、これはもう無理だ
「少しでも...役に立たないと...」
創麻様が戦っているのが見える
こんな時に思うことではないが非常に綺麗に見えた
人のために、救うために全力をふるう創麻様
私の大切な人
だからこそこんなとこで死ぬわけには...!
「?!」
少しずつでも進んでいると背中を裂かれる創麻様が見える
あれはどう見ても致命傷だ
まずい
創麻様が死んでしまう
「お願い、私はどうなってもいいから動いて...!」
だが現実は非情だ、体はいうことを聞かない
どうにかして、どうにかして動かないと!
お願い動いて!私の全てを捧げてもいいから!
その時私の体は動くようになっていた
あぁ、これは、この感覚は知っている
縛り、そしてその末の強化だ
多分「私の全て」を捧げる縛りだろう。根本が消えていく感覚がする
だが十分、これでいい
完治した足を使い全力で駆け出す。
そして
創麻様の盾になった
トカゲは潰れ
華は遂に咲き誇り
優しきは意義を見出し
最強は産声を上げる。