異世界に転生したのでポイント交換でゆる〜く生きてく 作:レイサン
アストとラルをテイムしたユリカは、次の日の朝から早速修行を始めていた。
「9997…9998…9999…10000…!よし、朝の10倍重力腕立て伏せは完了!」
ユリカの体重を仮に50kgとした場合、10倍重力によって体重500kgに相当する負荷が掛かった状態での1万回の腕立て伏せである。
これを朝6時に起きて朝食を食べずに7時半までに終わらせる。
「よし!朝ごはん調達しに行くぞ!」
朝食は薄味の果物と大型モンスターの肉だ。
当然ながら、肉を食べるためには大型モンスターを狩る必要があある。
モンスターハンターユリカと言ったところだろうか。
当然武器など使わず、魔法も使わず、己の肉体だけでモンスターを狩るところまでが早朝の修行である。
ちなみにこの日はメガバードという鳥型モンスターを倒した。
これで獲得したスキルポイントは500で、昨日や一昨日等を含めれば、既に1800ポイントは手に入れているだろう。
「よし!今日はでっけぇ鳥捕まえたぞ!鶏肉は筋肉に良いってボディビルダーが言ってた気がする!」
調達した肉に以前買った調味料や山で集めた野菜を使って料理をする。
実は家を建てて以来、台所に立つ事が多くなったユリカは料理系スキルの習得も目指している。
料理系スキルは味を良くする物や調理を効率的にする物など様々あるが、ユリカが狙っているスキルはバフ効果付き料理だ。
バフ効果付き料理を食べると、一定時間筋力が上がりやすくなったり、魔力操作が安定したりなど様々なメリットがある。
ただし料理が下手すぎるとデバフ料理になってしまい、最悪腹を壊す可能性もある。
「今回の料理は…おお!バフ効果付き!さて効能は……満腹感?バフ効果は満腹による満足感で何となく能力上昇?ザックリしすぎてよく分かんないな…まあ美味しそうだし良いか!」
本日の朝食は野菜と鶏肉のサラダとフルーツ盛り合わせ。
炭水化物抜きの献立だが、どこの国にも入れない現状で炭水化物を摂取するには自力で見つけるしかない。
「おお、今日の朝ごはんはサラダか。これもユリカが作ったんだよね?料理に目覚めた感じ?」
「いやぁ別にそんなんじゃないんだけどね?料理スキルのバフ効果が欲しいから練習してるんだ。」
「おはよー!朝ごはん何?」
「お、ラルも起きてきたか。今日はサラダだよ。」
「え〜野菜キライ〜。」
「おいラル、ワガママ言うんじゃない。俺達は一応囚人だぞ?好き嫌いしないで食べるんだ。」
「は〜い…。」
「ごめんねこんな物しか無くて。」
「いや、牢屋で食う飯よりは断然こっちの方が美味いから文句は無い。」
「そう?それなら良いんだけどさ。」
アストとラルは、現在ユリカ達が暮らす神社の周辺の整地を手伝っている。
ユリカはアスト達を庇ってはいるが、あくまでも死刑から減刑するべきだと主張しただけであり、最低限の償いはさせるべきだと考えている。
そのため、現在は刑務作業の代わりとして整地作業を手伝ってもらっている。
「さてと、朝ごはん食べておなかいっぱいだし、激しい運動を避けた修行をしようか。」
次の修行は魔力操作の修行だ。
ユリカはこれまで魔法攻撃を魔法弾スキルと魔法レーザースキルに頼っていたが、これらのスキルは特定の魔力操作を自動化するスキルだ。
現状それ以外の魔力の活用方法を知らないため、魔力を持て余しているのだ。
そのことをコンちゃんに相談したところ、どうやら魔力操作による技の一つに魔力の鎧というのがあるらしい。
全身に魔力を纏うことで魔法攻撃に対する強い耐久性を得られるのだという。
オマケで物理的な耐久力も少し増加するらしいので習得しない手は無い。
『まずは体内の魔力を感じ取れ。自身の体に流れる魔力を感知できなければ、それらを操作することも不可能じゃ。まずは自身の力を理解する事に集中し、それを繰り返す事で「魔力を感知するのは当たり前」という状況を作るのじゃ。』
ユリカが目を閉じて集中すると、胸の辺りが黄色く光った。
「魔力……これか……。うん、何となく理解できたっぽい。」
『魔力操作に重要なのはイメージじゃ。筋肉を動かすように魔力を動かすのじゃ。』
「動かす……こうか?」
胸の真ん中にあった光が、今度はユリカの右手の方へとゆっくり移動した。
『よし!ではそれを手のひらの上に出すのじゃ!』
「手のひらの上に……ぐぬぬ……ンンッ!」
手のひらに小さな光の玉が出てきた。
これがユリカの魔力の一部から作られた魔法弾だ。
『ナイスじゃ!お主中々感が良いぞ!まさか3日目でここまで上達するとはのぅ!』
「でもここまではスキル使えば一秒で終わる動きなんだよなぁ。先が遠いよ…。」
『そうでも無いぞ?魔力操作の基礎を覚えれば、応用技術など案外容易に習得できる。特にお主は優秀じゃから案外すぐに上達するじゃろう。』
「コンちゃんにめっちゃ褒められてちょっと嬉しい。」
『んぬっ…勘違いするでないぞ?人間にしてはよくやっている方と言うだけじゃ。妾からすればお主など大したことは無いのじゃ。別にお主が妾にとって特別とか、そういうのは無いんじゃからな?』
「はーい!」
その後は魔力操作の反復練習を繰り返した。
昼食は朝の鶏肉と野菜の残りを使って、逃亡生活前に買っておいたパンでサンドイッチを作った。
「フルーツサンドもあるよ。」
「わたしフルーツサンドがいい!」
「あ、私もフルーツサンド食べる。」
「俺は何でもいい。」
食材加工の過程で余った野菜の皮等は、ドロシアのお友達であるモサクロが食べてくれる。
木の枝すら喜んで食べるので、果物や野菜の皮を与えるとかなりテンションが上がる。
「さあ、午後は実践練習だ!今日は試したいスキルがあったんだよね。最近自分では買ってなかったし久々に買おうか。」
ポイント販売スキルから
肉体生成 1500ポイント
ピクルス 500ポイント
を購入しました
肉体生成は、魔力と引き換えに自身の想像通りの肉体を作り出す能力で、意志を持たない分身を作り出したり、欠損した肉体を再生したりできる便利能力だ。
ピクルスは文字通りおいしいピクルスを作れるスキルだ。
ピクルスは一見ネタ系スキルに見えるが、野菜さえあれば保存食を量産できるのでかなり有用なスキルだ。
え?
アイテムボックスに入れれば腐らないから保存食はいらないって?
ピクルスはおいしい、理由はそれだけで十分だよ。
「さて、このスキルで作った分身で試したい事が一つ。」
それは、ユリカの分身をコンちゃんの封印の依代にするという実験だ。
神社から離れた山の頂上で、実際にそれを試してみることにした。
「スキル発動:肉体生成!」
メキメキッ…
「うわぁ…思ったより生々しい音鳴るんだなこれ。さて、これで私の体が複製できたわけだけども……ほうほうほう?客観的に見ると結構幼い感じだねぇ。胸は控えめだけど顔はノーメイクでこの美しさか。うん、今後は男との付き合い方に気をつけよう。」
『おい、ここに来た目的を忘れるでないぞ?』
「はいはいそんなに慌てないで。スキル発動:封印術の使い手!」
ユリカの体が光り始めた。
ユリカが自身の分身体に触れると、光は手を通って分身の中に入り込んで行った。
どういう力が働いているのかは謎だが、全裸だった分身が服をまとい、狐の耳と尻尾が生えてきた。
髪の毛も色が変わり長くなって、目付きもユリカより少しシュッとした鋭い目になった。
「おおぉぉぉぉ!!これがコンちゃんの真の姿!!和服めっちゃ似合うじゃん!」
「当たり前じゃ。妾の母も、母の母も同じ服を着ていたのじゃぞ?」
「あれ?自分の名前は忘れたのに親のこと覚えてるんだね。」
「……確かに何故覚えてるのかのぉ?父の事はほとんど覚えておらんというのに。」
「お労しや父上。」
「まぁ今はそんな事どうでも良いのじゃ。それより、実践練習と言いながら妾に肉体を与えたということはそういう事であろう?」
「組手をしようか。もちろん死なない程度に手加減してもらわないと困るけどね。」
「ふん、良かろう。仮にも神である妾が直々に稽古を付けてやるのだから、それ相応の成果を出さねば不敬であると心得よ。」
「いつもと空気感が変わった…本気のコンちゃんってこんな感じなのか…。」
「まずは構えるのだ。妾が教えた通りに魔力を纏い鎧を作れ。空を飛んでも魔法弾を放っても構わん。ただし……」
コンちゃんが両手を横に振ると、山の頂上を囲むような形の巨大な結界が形成された。
「……この結界の外へ追い出された方は負けとしよう。これなら其方も勝ち筋を見い出せるであろう?」
「優しいと思わせといて私側もフィールド狭まってるんだよなぁ。まぁ結界の外側に追い出せば勝ちってのはわかりやすいね。」
お互いに構えをとる。
「今の其方の力がどの程度のものが、妾が見定めてやろう。先手は其方に譲る。」
「ではお言葉に甘えて、最初から全力で行かせてもらうよ!」
ユリカは拳を握り、全力の打撃を繰り出した。
コンはそれを片手で受け止めた。
たった一発の攻撃で、山が揺れ、森に住む動物やモンスター達は一斉に逃げ出した。
「ほう、これが其方の全力の一撃か。力の強さは以前と比較にならないのは一目瞭然…しかし力の込め方は半人前だ。拳はぶつけるのでは無く押し込むのが基本、そして体の動きにも無駄が多く動きが遅い。淡々と蓄え続けた莫大な力を有効活用するための術を学ぶ事が、今の其方に必要な事であろう。」
「力の込め方と体の動かし方…どうすればいいの?」
「人に聞くな。実践を通して、自分にとっての最適解を導き出すのだ。」
「はい!」
いつもののほほんとしたコンちゃんとは違う、厳しい指導をしてくれる師匠のような感覚だ。
「ではそろそろ妾も動くとしよう。妾は今から容赦なく其方に攻撃を浴びせる。避けるも良し、防ぐも良し、とにかく耐えぬけ。」
「は、はい!」
ユリカが返事をすると、その直後にはコンの姿はユリカの目の前まで接近していた。
接近した事に気がつくのとほぼ同時に、自分の顔面目掛けて蹴りが放たれている事に気がついた。
ユリカのあらゆる身体強化系スキルを全発動させて、なんとか蹴りを回避することに成功した。
そんな高速の攻撃を連発してくるので、当然反撃の隙など存在しない。
一発でも喰らえば大ダメージ確定なので避けるのに必死だ。
そんな組手を1時間ほど続けた。
「うむ、今日はここまでじゃ!お主の体力もそろそろ限界のようだし、何より妾が表に出ていられる時間にも限りがあるからの。」
「ハァ…ハァ…マジでキツかった……。」
「うむ、帰って夕飯の支度をするのじゃ。久々の運動で妾も腹が減った。」
こんな修行と開拓の日々が3ヶ月以上続いた。
現在この無名の山は、アストが土地を平にした所にユリカがいくつかの家を建てて、小さな村のようになっている。
数ヶ月間の間にユリカの強さは山の周辺の力自慢達に知れ渡り、オーガ等の好戦的な魔物が腕試しとして挑み、全員がコテンパンにやられていた。
力自慢の魔物達は現在木の伐採や道の整理、さらには山の洞窟から繋がる地下空間の探索など、様々な重労働を行い、その対価としてユリカから衣食住を提供されている。
アストとラルはすっかりユリカを信用し、今では毎晩楽しく食卓を囲む家族のようになっていた。
少し前までユリカに冷たい態度を取っていたドロシアも、前に比べればかなり温和になった。
そんなある日、ユリカの家を予想外の人物達が訪れた。
「ん?この魔力は今まで感じたことの無い系統の魔力だ。また力自慢が私に挑みに来たかな?」
『待て、この気配はエルフではないかの?妾も封印前に何度か感じ取ったことのある気配じゃ。』
「え、エルフ!?エルフってあの美男美女しかいなくて森と共に生きる種族!?」
『まぁ間違ってはいないが、随分古いイメージを持っておるのぉ。森の中で生き続けるのは遠い昔に存在した純血のエルフだけと聞く。森の外の人間と交わったエルフこそが、現代に生きるハーフエルフ達じゃ。』
「は、ハーフエルフ?何か違うの?」
『まぁ純血エルフと比べると老化が多少早かったり魔術を扱えない者がいたりと、混血故か多少劣る部分はあるが概ね純血と同じじゃな。』
「でもなんでエルフが突然私の家に?」
ユリカとコンが話をしていると、外から誰かが走ってきた。
「おいユリカ!エルフが来たぞ!しかも相当疲弊してるらしい!」
「えぇ!?まさか道中で何かあったのか!?」
突如現れたエルフの集団、彼女らの目的は何なのか。
次回
予告
エルフ、
登
第十二話 場
変な次回予告シリーズはいつまで続くのか。