異世界に転生したのでポイント交換でゆる〜く生きてく 作:レイサン
全部国王のせいです。
ドラグ王国領土
名も無き平原
そこには十体を超えるオーガと100匹を軽く超えるゴブリンの群れがいた。
しかも普通のゴブリンやオーガでは考えられないような上等な金属の鎧を身につけていた。
その後ろで数人のエルフが弓矢……では無くクロスボウを装備している。
普通に考えればエルフ族にとって馴染みのある一般的な弓矢の方が扱いやすいはずだが、何処から調達したのかも分からないクロスボウを装備している。
そして最も恐ろしいのは、彼らを囲むように陣形を組んだ無数のゾンビやスケルトンだ。
本来このような下位のアンデッドは壊滅的に頭が悪いため陣形を組んで進行することなど有り得ないのだ。
つまり、この数え切れないほどのアンデッドは全て、何者かによって操られているという事だ。
その陣形の中心には、一人の魔人がいた。
この魔人こそが、この魔物と亜人の集団を率いるリーダーだ。
ドラグ王国城下町
王国騎士団本部
「大変です団長!緊急事態です!」
「どうした?落ち着いて報告をしろ。」
「魔物の山の方面にある無名の平原に、アンデッドの大群が接近しています!」
「なに!?アンデッドの大群だと!?そんな事が有り得るのか!?」
「副団長の予想では死霊使いの犯行との事です。」
「死霊使いだと?何が目的なんだ……。」
「と、とにかく王国の治安維持のためにも、ここは我々王国騎士団の出番ではないかと!」
「当然だ!今すぐ団員を集めろ!」
「はっ!了解しました!」
それから数時間後
再び 名も無き平原
「ユリカ様!王国騎士団がやってきました!迎撃しますか!?」
「待て待て早まるな。今回の目的は騎士団の団長を証人としてとっ捕まえる事だ。余計な事はしなくていい。」
「了解です!みんな、クロスボウを下ろして待機だ!」
『どうでも良い話じゃが…お主の「とっ捕まえる」のイントネーションおかしく無いかの?』
「その話今じゃなきゃだめ?」
『す、すまぬ。』
「さてと、ワープポイントをセットして…っと!よし、これでいつでも自陣に帰れるし、直接騎士団長に勝負挑むか!」
『ほ、本当に大丈夫かのぉ?今さら不安になってきたのじゃ。』
「大丈夫だって!コンちゃんが修行付けてくれたんだよ?王国騎士なんて余裕余裕!」
『そう言われるとますます不安じゃぁ…。』
「ユリカ様!王国騎士団がすぐそこまで迫ってきています!推定距離は約1kmほどです!」
「OK!じゃ行ってくるわ!」
スキル発動:飛翔術の使い手
ユリカは高速飛行で王国騎士団の方へと向かった。
修行の成果で飛翔術の精度が増し、以前よりかなり速度を上げてもよろけずに真っ直ぐ飛ぶことができるようになった。
そして進軍する王国騎士団の目の前に飛び降りた。
「シュタッ!!決まったな。」
「な、なんと言う事だ!この見た目、こいつは指名手配犯のユリカだ!捕まえるぞ!」
突然現れたユリカに一切動じる事無く一斉に取り抑えようと接近する騎士団の団員達。
しかし、ユリカが何も言わず片腕を振り下ろすと、その風圧だけで周辺にいた団員達はなぎ倒された。
「どけ、私は騎士団長に用がある。」
「ば、化け物だ!逃げろ、全員撤退だぁ!」
騎士団の団員達は一斉に逃げ出した。
そのまま前へ進んでいくと、団長と副団長が待ち構えていた。
「ユリカ……死刑囚の逃亡を手伝った罪で指名手配中の魔人……。」
「団長、私に任せてください。同じ魔人として、このような悪人を黙って見ていることはできません。」
「なるほど?君たちからしたら私はただの悪人ってわけだ。今日は団長に用があってわざわざ出向いたんだけど、構ってほしいなら相手してあげてもいいよ。まぁ君が今の私を倒せるとは思えないけどね。」
「その偉そうな態度がいつまで続くか見ものですね。」
「では早速……いや待った。そういえば君名前は?」
「良いでしょう、名前くらいは教えてあげましょう。私の名はゼータ。」
「ゼータか、それで団長の方は?」
「あなたに団長の名前を知る資格は無い。」
「ケチだなぁ。」
「無駄話はここまでです。あなたを捕らえて牢獄送りにしましょうか。」
王国騎士団副団長のゼータ。
彼女が言葉を言い終えた時、既にユリカはゼータの前から姿を消していた。
「な、消えた!?そんな馬鹿な!会話が終わる直前までは目の前にいたはず!」
「その通り!そして今は君の後ろにいるよ。」
「し、しまっ……。」
ユリカが拳を振り下ろすが、ギリギリの所で剣を構えて防がれた。
その衝撃で、金属同士をぶつけたような凄まじい衝突音が鳴り響いた。
「満足したかな?そもそも君では逃亡前の私にも勝てないよ。君達が私を取り逃がしてからの3ヶ月以上の修行期間で、もはや私の強さは以前までと比較にならないレベルに到達してるんだ。」
ウザいぐらい偉そうな発言をするユリカ。
傍から見たら完全に調子に乗っているが、間近で見てきた人物達からすれば、むしろ過小評価ともいえる発言だろう。
ユリカの言っている自分の強さとは殴り合いの強さであり、スキルや魔法を駆使した戦闘に関しては、自己評価が低い。
「なるほど、確かに分が悪いようですね。」
「そういう割には余裕そうな顔だね。」
「ええ、力で勝てないからと言って私が有利な事に変わりありませんので。」
そう言うとゼータは何らかの魔術を使用した。
「ん?あれ、何か体の動きが鈍いような……いや違う!動きが鈍いんじゃない、動けない!体が全く……動かない……!」
「動けるのはそこまでのようですね。私の拘束魔法であなたの動きを止めました。」
「ば、馬鹿なッ!この私がッ動けないだとッ!」
「フフッ、身体能力に頼りすぎた結果ですよ?精々牢屋の中で反省することですね、マヌケな犯罪者サン。」
「ち、チクショー!チクショォーーーーーーーーーーーー……なんちゃって。」
「……は?」
「勝ちを確信してニヤニヤしちゃってさぁ。私が君の拘束魔法を対策してないとでも思ってたのかな?」
そう言うとユリカの体から、紫色の光が放出された。
「自動発動型の反転魔法、ドロシアが一晩で開発してくれたよ。」
「そ、そんな馬鹿な!拘束魔法に対する反転魔法なんて並大抵の魔法使いには扱えないはず!それを自動発動だなんて不可能だ!」
「ドロシアは私の自慢の子だよ。魂の半分を失ってまで魔術研究に打ち込んでるんだ。十年そこらで身につけた魔法技術じゃ比較にならないってのは私が見を持って体験した。」
「クソッ!だが拘束魔法は身動きを封じるだけの魔法!魔法による攻撃は可能だ!」
「言っておくけど私も簡単な魔法を一つ勉強しててね。アンチマジックっていうんだけど。」
「ア、アンチマジック…だと…!?」
ユリカが右手をゼータに向けると、ゼータが青白い光に包まれた。
次の瞬間には、ゼータは魔法が使えなくなっていた。
ちなみに、アンチマジックを簡単な魔法と言っているが、これはドロシア目線で簡単という話だ。
実際は習得難易度が高いため、ユリカも3ヶ月間でこの術しか習得できなかった。
「さて、幹部一人無力化成功したけど、団長さんはどうする?私としては別に戦うつもりは無いんだけど。」
「部下が醜態を晒したのに上司である私が逃げる訳には行かないからな。私は君に決闘を挑む。」
「決闘を挑む……か…。君、名前なんだっけ?」
「我が名はカルゼン!王国騎士団の団長だ!」
「へー、カルゼンか。なあカルゼンよ。」
ユリカはカルゼンに穏やかな口調で語りかけた。
しかしその直後、重力負荷を解除し魔力解放を行った状態でカルゼンの目の前に接近した。
咄嗟に剣を構えようとするカルゼンだったが、彼が剣を握った時点でユリカの手はカルゼンの首を握っていた。
「決闘を挑むだって?私にとって一番の驚異である副団長を完封した今、君は私にとって他の有象無象と大差ないんだ。君は自分の立場を理解した方がいい。」
カルゼンの実力はゴールドランクハンターと同格とも言われているが、ユリカは既にその一つ上であるプラチナランクハンターに匹敵する実力者だった。
「3ヶ月間の地獄のような特訓は無駄じゃ無かったってことだろうか、君の動きは遅すぎてあくびが出るよ。」
「……参った。潔く負けを認めよう。殺すなら殺してくれ。」
「へ?なんで?」
「え?」
「いや、だから戦うために来たんじゃ無いって言ったじゃん。聞きたいことがあるって。」
「そ、そうだったのか。それで、何を聞くつもりなんだ?」
「国王や貴族は裏で悪事を働いているのかどうか、君がしらないわけ無いよね?」
ようやく本題に入った。
「……しらないわけではない。だが私の口からは何も言えない。」
「負けたヤツがグダグダ言ってないでさっさと話してくれないかな?」
「私の命が尽きても絶対に言えない。諦めてくれ。」
「そんなに国王への忠義が大事なのかい?」
「違う!あの国王に忠義など微塵も無い!」
「なるほど、イヤイヤ言う事を聞かされてるわけだ。」
「しまった、私とした事が…。」
『さては人質を取られて逆らえぬのだな?』
「な、何故分かった。」
『え、ホントに人質を取られておったのか。当てずっぽうだったのじゃが。』
「じゃあ交換条件を提示しようか。私が人質を解放する手伝いをする代わりに、君は知っている事を全て話す。これで良いかな?」
「信用して良いんだな?」
「もちろん!私のこの可愛いお目目を見てごらん?嘘をつく人間に見えるかい?」
「まあ…信用はできそうだが…。」
「よし!決まりだね!あ、騎士団の人達は帰って良いよ〜じゃあね〜!」
数日後
ドラグ王国 貴族・王族評議会会場
どうやら現在、王族や貴族が集まって会議を行っているようだ。
「知っての通り、王国騎士団は指名手配犯であるユリカの捕縛に失敗した。そして騎士団長カルゼンは、そのユリカに敗北し、捕虜となってしまった。」
「く、相変わらず使い物にならない無能の集まりだ!」
「カルゼンの命など知ったことか!ユリカとかいう魔人を殺してしまえば済む話であろう!」
「問題はそこでは無いだろう。奴が捕虜になったという事は下手をすれば我々のやっている事が明るみに出てしまう。」
「どうせマヌケな平民共には何もできまい!暗黒盗賊団の連中に任せておけば勝手に消えるだろう!」
暗黒盗賊団とはドラグ王国に存在する悪い奴らの集まりだ。
エルフ族を誘拐しているのもヤクを売りさばいているのもこの組織だ。
名前に盗賊と入っているが、もはや盗賊では無いので暗黒団に改名するべきだろう。
それにしても酷い会議内容だ。
こんなろくでもない貴族と王族が好き放題している国もそうそう無いだろう。
こんな国がよく700年も続いたものだ。
ちなみにこの中にもまともな貴族は存在する。
まともな貴族の方の派閥は、ハンター等に力を借りて悪辣な貴族の方の派閥を潰せる手がかりを探している。
「とにかく目障りな魔人を始末する方法を!」
コンコンコンッ
扉をノックする音が会議室に鳴り響いた。
しかし意見を交わすことに必死になっている貴族達には聞こえていない。
ドゴォッ!!
扉が蹴破られて粉々に砕け散った。
「だ、誰だ貴様は!」
「あ、指名手配犯の顔知らない感じなんだ。やっほ〜☆みんなのアイドル、マジカルキューティーユリカちゃんだよ☆」
「な、何をしている兵士よ!その者を捕らえろ!」
「あ、道中の兵士全員壁に埋めといたから呼んでも無駄だよ☆」
「ぐぬぬっ!き、貴様何をしに来た!」
「私の目的?それはね〜☆」
キャピキャピしたぶりっ子ボイスから一変して、今度は低音ボイスに変わったユリカが続けて言った。
「この国を終わらせに来た。」
「な、なんだと!?」
「グフフフフ、笑わせるな魔人め!お前一人で乗り込んできて何ができるのだ!」
「ひとりじゃないんだなぁこれが。騎士団長がぜーんぶ教えてくれたよ。危険薬物の栽培場所や人身売買を行う組織の本拠地、人質が捉えられてる施設の場所も調べれば一日で見つけられた。今頃私の仲間が暗黒盗賊団とやらの本拠地を潰してるんじゃなかいな。」
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暗黒盗賊団 薬物取引部門の本拠点
「へっへっへっ!やっぱヤクの取引は稼げるなぁ!しかも分前をちょいと貴族共に分けてやればお咎めなしだ!」
「フフッ、ホントいい商売よねぇ。奴隷売るより楽に稼げるもの。」
「違いねぇや!ハッハッハッ!」
幹部格であろう人物達がずいぶんと楽しそうに話をしている。
「あら、その話詳しく聞かせてくださいよ。私も興味あります。」
「あぁ?誰だてめ……うあぁぁぁぁぁぁ!!ご、ゴールドランクぅぅぅぅ!?」
「はあぁ!?な、なんで私達の拠点がバレてるのよ!」
「ここの部門は警備が手薄でしたね。大人しく捕まっておいた方が身のためですよ?」
シグマ率いるハンター達によって薬物部門の本拠点はあっさりと制圧された。
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暗黒盗賊団 奴隷売買施設
「お客さん、そんな子供のエルフを欲しがるなんて物好きだねぇ。」
「グフフフフ、ワシの言う事しか聞けないようにじっくり調教してやるわい。」
「ひぅ…。」
誘拐されたエルフ達はどうやら特殊な拘束具を付けられた状態で奴隷として売られていたようだ。
バコンッ!!
「な、何だ!?」
「グォォォォォォォ!!」
「ひいぃぃぃぃ!!ば、化け物じゃぁぁぁ!!」
「あれは…オーク…?なんでここに…?」
大勢のオークが建物に所狭しとなだれ込んできた。
そしてその後ろにはエルフ達もいた。
「みんな大丈夫!?助けに来たよ!」
「な、なんだこれは!どうなっているんだ!」
このオーク達はユリカから様々なものを貰った事がある森の住人だ。
今回はその恩を返すために協力してくれたらしい。
実はオーク族はエルフ族と仲がいいのだ。
どれくらい仲が良いのかと言うと、度々オークとエルフが結婚する事があるほどである。
「に、逃げろぉぉ!」
「逃がすと思うかクズ共が!」
「ヒイィィィ!!」
奴隷売買を行っていたもの達は全員漏れなくエルフ達にお仕置きされたそうだ。
─────────────────────
ドラグ王国 貴族・王族評議会会場
「というわけなんだよ。」
「ぐぬぬ……貴様!国王の前でそのような態度をとって許されると思っておるのか!」
「え〜?許してくれるよね〜王様。」
ユリカは自分の後ろに立っていたアストの方を見てわざとらしく体を傾けながら意見を聞いた。
「え、俺?まぁいいんじゃねぇかな。」
「だ、誰だそいつは!」
「流星の魔人……正当な王位継承者だよ。」
「な、貴様が!?」
「おう、一応アンタより俺の方が王様になる資格あるらしいぜ?世間的には。」
「だ、だがそいつは大量虐殺を行った大罪人なのだろう!?」
「その件も騎士団長から真実を教えてもらったよ。そもそもその大量虐殺自体が冤罪だったらしいじゃないか。いい加減諦めなよ、自分達の負けだってさ。」
「ぐぬぬ……だが……それは……」
結局、悪事に関わった貴族と王族は全員投獄された。
アストは相手が自分にしたのと同じように、彼らにも死刑判決を下そうとしたが、妹のラルの提案で別の罰を与えられた。
その罰の内容は……
ドラグ王国 ドラグ城の家畜小屋
元々ドラグ城に家畜小屋は存在しなかったが、つい最近新しく家畜小屋が建てられた。
豚・鶏・牛・羊など様々な家畜が飼育されており、飼育係はアストの妹であるラルの指名制である。
指名された人物は全員犯罪歴のある貴族であり、家畜小屋の飼育係に任命された理由は「悪い人は"ブタ箱送り"にされるから」だそう。
今日も貴族達の苦しむ声が、ラルを笑顔にしてくれる。
補足情報
ラル様は慈悲深いお方です。
ラル様曰く「流石に死刑は可哀想」とのことで、悪辣貴族の皆様には専用の衣装を着用して動物の世話をする姿を民衆に晒してもらってます。
ラル様が用意したとびきり可愛いお洋服を着て普通に仕事してもらってるだけなので何も恥ずかしい事は無いですね。
どんな衣装かって?
ご想像にお任せします。