異世界に転生したのでポイント交換でゆる〜く生きてく 作:レイサン
アストが正式にドラグ王国の国王になってから二週間ほどが経過した。
とりあえず犯罪組織は撲滅され、それに加担した貴族は全員罰を受けた。
また、人質は解放されたものの、王国騎士団は本来罰するべき組織を黙認していたことに対する責任として、一度組織を解体する事になった。
国王になったアストとその妹であるラルは現在、王家として恥ずかしくないようにしっかりと教育を受けている。
忙しい日々が続くドラグ王国を後目に、なんてことの無い平穏な日々を過ごしていたユリカ達。
そんなある日のこと。
「ポイントが足りない。」
『うわぁどうしたのじゃ藪から棒に。』
「いやぁ最近戦闘と言える戦闘を行ってないからポイントが貯まらないのよ。お金も稼いでないし。」
『むぅん……最後のスキル購入は確かピクルスじゃったか?よく覚えておらんが確かに折角豊富なスキルを習得しておるのに、スキルの活用機会が無いのは何と言うか勿体ないのぉ。』
「でしょ?それに少しづつ要求ポイントも多くなってきたしさ、強敵倒したり集団戦したりで一気にポイント稼ぎたいんだよねぇ。どうしようかなぁ。」
『どうしようと言われてものぉ。妾とてお主と一体化してしまっている以上、勝利してもポイントを得られない事は修行中に検証済みじゃからのぉ。』
「都合良く強敵が現れてくれたりしたら良いんだけどなぁ。」
そんな話をしていると、丁度いいタイミングで都合のいい話が舞い込んできた。
「ユリカ様!山の麓に魔族の集団を発見しました!」
報告に来たのは先日助けたエルフ達の中でも、故郷を失い帰る場所が無かったエルフ達の一人だ。
以前アストが整地した場所に住んで畑を作ったり、森の中で様々な物を採取しているらしい。
「魔族の集団?ていうか魔族って何ぞ?」
『明確な定義は無いのじゃが、まぁ人系種族に近しい見た目と知性を持つ魔物といった所じゃな。魔人と違ってあくまでも魔物じゃが、話の通じない相手では無いはずじゃ。』
「ふーん。そんな連中がなんでウチの山に来たんだろうね?」
『謎じゃ。』
「ま、とりあえず話し合いに行くか。」
山の麓の道
ドラグ王国との行き来がしやすいようにと、ユリカの提案で作られた道だ。
山の麓から中腹の神社まで続いており、馬車がある程度安全に移動できる程度には舗装されている。
「お、見えてきたぞ。なんか小綺麗な服着てるなぁ。魔族にも貴族的な階級があるのかな?」
『一応階級のようなものはあるじゃろうが服装とは関係無いと思うぞ?妾が昔見た高位の魔族の中にも、無駄にボロボロな服を着る者もいた。』
「へー変わったのもいるんだねぇ。」
『あとは恥ずかしげもなく乳をほとんどさらけ出したはしたない女もいた。恐らく男に巡り会えずなりふり構っていられなかったのじゃろうなぁ。妾はあんな風にはなりたくないのぉ。』
「そうなんだ……お?私達に気がついたみたいだね。」
「むむ!そこの貴様さては魔人だな!という事はこの山の主も貴様で間違いないな!吾輩の目は全てお見通しだぞ!」
「何か面倒くさそうなの来ちゃった。追い返そうかな?」
「待て魔人!吾輩は魔王だそ!魔王カーネラルの名を聞いた事は無いか!?」
「無いね。」
『妾も聞いた事が無い。』
「ナンダトォ!?吾輩この五年間の魔王活動結構頑張ってたのに!」
「で、カーネラルちゃん?カーネラルくん?は私らに何か用があるの?私暇じゃないんだけど。」
『いやお主最近暇してたじゃろ。』
「単刀直入に言おう。貴様、吾輩の部下になれ。」
「え、嫌だけど。」
「ナンダトォ!?吾輩のこの五年間の魔王活動の中で初めての敗北だ!」
魔王カーネラルに勝利した。
「あぁ、カーネラル様お気を確かに!貴様、カーネラル様のお誘いを断るなど無礼極まりないぞ!我々が力ずくで分からせてやるぞ!」
そう言うと側近と思しき魔族二人が襲いかかってきた。
ユリカはその片方に顔面パンチを食らわせ気絶させた。
そしてもう一人には必殺の卍固めを食らわせた。
「イダダダダダダ!!ギブっ!!た、助けて!!あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
「こいつら雰囲気アホっぽいけど実力は確かだな。重力負荷を解除しなかったらスピードで負けてたかもしれん。」
ちなみに現在の重力負荷は50倍だった。
「貴様!吾輩のありがたい勧誘を拒否した挙句に吾輩の部下を痛めつけるとは何と言う愚かな行為!許さんぞ野良の魔人め!」
「いや先に仕掛けてきたのソッチだし…」
ブオンッ!
ユリカが言い終える前にカーネラルは殴りかかってきた。
「うおっ!!早ッ!!てか威力ヤベェ!!こいつ馬鹿そうに見えて実力は本物タイプか!!」
破滅の魔王カーネラル、世界各地に存在する魔王の中では新参者だが、その実力は他の魔王も注目する程のものである。
「吾輩をただのおバカだと思って油断したな?それがどれだけ失礼な事か、をその身を持って思い知るがよい!」
一時間後
「うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!こいつ強すぎるぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「ああ、カーネラル様が泣いてしまった!!この魔人なんて酷い事を!!」
「そうだぞ貴様!!こうなったカーネラル様は五分ぐらい泣き止まないんだぞ!!」
「これは私が悪いのか?」
『さあ?一応お主は正当防衛しただけじゃが。』
「うう……これじゃあ吾輩の計画がおジャンなのだ。戦争は負け宣言するしか無いのだ。」
「計画?戦争?ちょっと聞かせてほしいんだけどその話。」
「た、ダメだそ!情報漏洩の危険がある!」
「聞かせてくれたら私も協力するかもしれないよ?」
「本当か!なら話すのだ!」
「ちょろ過ぎだろ。」
『ピュアなんじゃなぁ。』
ユリカ村 会議室
「それで、さっき話してた計画って何?」
「ズバリ!魔王として本格的に名乗りを上げるために先輩魔王に宣戦布告しちゃおう大作戦だ!凄そうだろう?」
「そうでも無くない?」
「え?」
「いや具体的な内容聞かないと判断できないし。」
「読んで字のごとく!弱そうな魔王に戦争を挑んで吾輩の実力を誇示するのだ!」
「考える事は物騒だけど具体的な部分は見事に何も考えてないな。」
「そうでも無いぞ!狙う相手は決まっているし、攻め込む時の陣形も決まっている!」
「それは興味深いね、誰に挑むの?名前言われても知らないけど。」
「ズバリその相手は、魔王スコグバカだ〜!」
「魔王凄く馬鹿?バカみたいな名前だね。」
「凄く馬鹿じゃなくてスコグバカだぞ!直接戦闘は大したことないがとにかく大群を率いて、数の暴力で攻めてくる厄介な相手だ!」
「ふーん…というかそもそも私魔王について何も知らないんだけど。」
「はぁ?貴様そんな事で吾輩と共に魔王を目指せるのか?」
「え、私別に魔王目指すとは言ってないんだけど。」
「そんな事はどうでもいい!まずは魔王について教えてやる!」
魔王とは、魔族の中でも『覚醒』を経験しているものが、自身の支配する領地を持ち、他の魔王から魔王として認められた者に与えられる称号だ。
魔族界の国王のような地位とも言える立場だが、人間の国の王と魔王の違いを上げるとするなら、魔族の国では魔王が絶対的な存在であるという点だろう。
国の運営においての最終的な決定権は魔王にあり、魔王に従う魔族達は、偽りの無い絶対的な忠誠を誓っている。
なので、魔王が戦争すると言えば部下達は喜んで戦場に向かい、魔王が指揮を丸投げすると言えば部下達は喜んで引き受ける。
ちなみに大半の魔王は、無駄な戦争はせずに人類と平和的な関係を維持している。
人類国家(特にジリス帝国)は下手に刺激すると面倒事に巻き込まれるので、ほとんどの魔王は交易などを行って共存関係を築いている。
『という訳なのじゃよ。』
「途中からコンちゃんが説明してたね。それで、魔王になると何かいい事あるの?」
「他の魔族に自慢できる!」
「それだけ?」
「あとは魔物が言う事を聞くようになる!」
「ふーん…それだけか…。それで、作戦は考えてあるらしいけど、私はその作戦で何やれば良いのかな?」
「やってくれるのか!とりあえず貴様は吾輩と同じくらい強いからな……敵の下っ端の魔物を片っ端から消してほしいのだ!その間に吾輩は直接大将を討つ!ここまで良いな?」
「大丈夫デース。」
「では詳しい作戦を考えようではないか。まず最初に……………」
そうして魔王候補カーネラルと自称普通の人間であるユリカの作戦会議が行われた。
というか、いつの間にかユリカ自信も参加する前提で誰も疑問を抱いていないのは何故だろうか。
精神汚染等の影響では無いので、恐らくユリカ本人の気質として実力を試したいという気持ちがあるのだろう。
そして会議後、数日かけてシミュレーションを行い、当日に組む陣形も完成した。
前衛に盾を構えた大型の魔物を並べ、後方に支援魔法を使う魔物を並べたオーソドックスな陣形だ。
そしてその先頭にユリカが立っている。
本番はこの陣形を駆使して挑む予定になっている。
そして
決戦の地 薄暗平原
何故か一年中薄暗く、魔物が多く住む平原地帯。
今回の決戦場所はこの薄暗平原に決まった。
この日のために集まったのは、カーネラル率いる役1500の魔物の軍隊とユリカ率いる50人前後の小部隊からなる連合軍と、魔王スコグバカ率いる総勢2万の魔物の軍隊だ。
数では圧倒的に劣っているが、それを補うための作戦はあるのだろうか?
ともかく最初は、魔王同士が戦闘開始を宣言する事から始まる。
互いの距離が離れているので、宣言には遠隔会話魔法を用いる。
「我が名は魔王スコグバカ!魔王になるための宣戦布告を受け、それを迎え撃つために来てやったぞ!」
「吾輩の名はカーネラル!今から貴様を倒し、新たな魔王を名乗る者であるぞ!」
「魔族カーネラルよ!貴様の意思に答えてやろう!たった今、この薄暗平原にて魔王戦争を開始する事を宣言する!!」
魔王スコグバカの宣言と同時に、スコグバカの軍隊が前進を始めた。
負けじとカーネラルの軍隊も前進する。
しかし、カーネラル軍はある程度前進した後、その歩みを止めた。
先頭を歩くユリカただ一人だけが進み続けている。
それと同時に、本丸にいたカーネラルは飛行魔法で空を飛んで、スコグバカが送り出した地上の軍隊を無視して直接スコグバカの元へ向かった。
それを確認したユリカは、後方部隊に合図を送った。
次の瞬間、ユリカは重力負荷を完全に解除し、両足に1万kcal相当のエネルギーを集中させ、事前に用意しておいたオリハルコンによってメタルボディを発動。
人間一人分の質量のオリハルコンの塊と同程度の物体になったユリカは、足に集中させたエネルギーを使って前方に突進した。
言ってしまえば人間大砲だ。
この際、ユリカは一切魔力を使用していない。
「ユリカ……お前との付き合いは浅いが、吾輩はお前なら大丈夫だと信用しているからな!」
独り言を言いながら上空を通過するカーネラル。
そんな中、地上ではユリカの人間大砲タックルによって、数十体の魔物がバラバラに弾け飛んでいた。
「だいたい50体って所かな。獲得ポイント数は……1030……1580……1940ポイント……よし、ポイントは足りるな。」
ユリカは前々から購入を検討していた新規スキルを、この戦場で習得しようとしていたのだ。
「スキル購入。」
ポイント販売スキルから
属性付与 1500ポイント
を購入しました
「スキル使用:属性付与。」
ユリカを取り囲む無数の魔物が、ユリカを袋叩きにしようと一斉に接近するが、その時ユリカは新たなスキルによって新技を発動しようとしていた。
全身に氷属性魔法によって冷気を纏い、その外側に炎属性魔法によって超高温の空気を生成し、その空気を風属性魔法で全方位に一気に放出した。
ユリカ本体は熱攻撃に一切耐性がないので、自己回復と冷気による温度調節で耐えるしか無いが、全方位に放出されたその熱量は、触れた生物を瞬時に灰にする程の高温だ。
莫大な量の魔力を一気に消耗するため持続時間は1分程度だったが、その一分間で2万以上いた敵軍の魔物を、僅か3200前後まで減らす事に成功した。
「ポイント数……1230……3810……16900……94300……232870……ようやく止まった、全部合わせて672840ポイントか。思ったより多く手に入ったね。」
ユリカは凄まじい量のポイントを獲得した。
しかし、ポイントを確認したあと周囲を見渡しても、その周りには何も残っていなかった。
魔物達は灰になり、その灰は風魔法でどこか遠くへ飛んでしまった。
平原の草花も、もはや跡形がなくなり、そこにあるのは完全に水分を失った土だけだった。
「戦争とは言えこれはやり過ぎた…殺しすぎた…。」
『敵対する魔物に慈悲の心など持つ必要は無い。魔物の軍隊というのは、戦場で死ねるなら本望だという者たちの集まりじゃ。これこそ奴らの望んだ死に様なのじゃ。ユリカよ、あまり気に病む事は無い。』
「緩く生きていくつもりだったけど、魔物相手とは言え流石に骨すら残さず消してしまうのは心苦しいと言うか……。」
『じゃがこれがお主の望んだ道であろう?気を確かに持つのじゃ。良いか?お主は仮にも神である妾の力をその身に宿した現人神じゃ。そんなお主が心を病めば何かしら悪い事が起こるじゃろう。今まで通り気楽に生きれば良いのじゃ。』
「そうか……そうだよね!うん、ポイントも沢山手に入ったし、何よりこれでカーネラルも魔王になれるよね!」
その後、魔族カーネラルと魔王スコグバカの激闘は一時間も続き、見事カーネラルが勝利した。
後に、スコグバカの軍勢は量産型のゴーレムだと知らされ、ユリカは心の底から安心した。
良く考えれば熱風で骨まで無くなるのは流石に不自然だったので、ユリカの早とちりなのは明確だった。
兎にも角にも、この戦いを制したカーネラルは、正真正銘の新たな魔王として認められるのだった。
安心してください、緩い話ですよ!
タイトル的に曇らせ展開は似合わないのでヨカッタネENDになりました。
もし作品タイトルが『終末世界のサバイバル』とかだったら主人公闇堕ちイベントになってたかもしれませんね。
いつか読者の心を破壊する激重ストーリーも作りたいです。