敵艦隊発見の後、トア103潜はすぐさま追尾を開始。時間は既に日没を過ぎていた。
「総員、第一戦闘配置。これより、我が艦は霧の艦隊の追尾を開始する。深度このまま、第一戦速。」
「第一戦速、ヨーソロー。」
こうして、トア103潜は敵艦の行き先を暗く深い海の中、探り始めた…
同じ頃…
ートア126潜ー
「艦長、霧の潜水艦と思しき機関音を捉えました。」
「…ッ来たか。」
トア103潜とは別方向に展開していた潜水艦、トア126潜は別の目標を捕捉した。
「音紋は友軍のイ400・401・403ではありません。数は正確にはわかりませんが5〜10。」
「…敵だな…。」
指令艦橋に緊張が張り詰めた。
「落ち着け。こちらはまだ動いていないのだ。先ずは様子を探る。それに単艦でどうにかなる相手ではなさそうだ。」
「り、了解。」
(とはいえ、奴らどこに行くつもりだ…?トア103潜からの敵艦隊発見の報告はあったが、コイツらは一体…)
トア126潜の艦長は、この潜水艦隊の動向を探ると同時に、何処か胸騒ぎを感じていた。
何故ならその敵潜水艦隊の進路は南東。しかし、何故水上艦隊ではなく潜水艦隊なのか。普通であればトア103潜の方向に進むはず…もしくはこちらに水上艦隊が向かってくることも想定していた。
(いや、まさか…な。)
一瞬、艦長は感じた。彼らがいくら霧の艦隊でも少ない戦力を生贄にするとは思えなかった。だが、それが頭をよぎった瞬間。自分が間接的に味方を助けられない可能性が、脳内を占めた。
水上艦隊を犠牲に、味方潜水艦隊の退路を遮断、この眼前の艦隊が味方にトドメを刺すのではないのか…と。
(しかし、万が一に奴らが肉を切らせて骨を断つ戦法をとれば、集結している潜水艦隊は袋の鼠になってしまう。)
トア126潜の艦長は長い沈黙を破った。
「…これより敵潜水艦隊を追尾する…が、先ずは鳴門に伝えろ。取り舵ゆっくり。」
「ヨーソロー取り舵。」
「…戻せッ!」
「戻ーせッ!」
「深度150、第一戦速。」
「ヨーソロー。」
ー鳴門改ー
「トア126潜より敵潜水艦隊を探知、追跡中との報あり。」
「潜水艦か…」
「どうしますか?」
「アンツィラナナの第1対潜護衛艦隊に出撃命令を出せッ!それから付近のトア105・132・145潜を増援としてトア126潜に向かわせろ。」
「了解!」
鳴門は浮上し、その指令を発信する。とはいえ傍受を危惧して、ここでも音通でやり取りを行う。この音通は改良を加えられた新型暗号音波通信機であり、この特ア号潜隊とそれを率いる鳴門の存在を秘匿する為でもあった。
ーアンツィラナナ港ー
停泊中の護衛戦隊にその指令が届く。
「司令、『龍宮』より緊急音通。」
「読め。」
「『会合点へ向かい、鯱と共に敵を撃破せよ』です。」
鳴門・特ア号潜には符牒が使われていた。これは日本海軍の秘匿艦隊である為、同盟国にもその存在は知られてはならない。
「わかった。参謀、
「了解ッ!」
座標と音通での指令を受けて旗艦『とうこう』の内部が慌しくなる。
「出港準備ッ!錨上げろ!」
「機関始動、微速前進。」
「港を出たら、第一戦速でインド洋からティモール海へと向かう。航海長!」
「はいッ!」
「龍宮の情報を元に進路作成を頼む。」
「了解。」
「総員、くれぐれも気を抜くな。」
『了解ッ!』
第1対潜護衛戦隊の陣容は旗艦航空巡洋艦『とうこう』、有人護衛艦『あさかぜ』『しおかぜ』『しまかぜ』『ゆうなぎ』の4隻。そして無人護衛艦6隻の艦隊であり、いずれも40ノットを誇る高速艦であり、『とうこう』には『US-2P B型』4機、そして星電改を元に発展させた新型艦上偵察機である『
「航空参謀!」
「はッ!」
「US-2と彗電を出せ。」
「了解。」
「全艦、第一戦速ッ!」
「第一戦速、ヨーソローッ!」
艦隊は東へと進む。その甲板上では…
「主翼展開」
「彗電1号機、発艦位置へ。」
艦載機にしてはやや大型の機体が甲板より飛び立とうとしていた。その名は彗電。
「…ランディングギア固定。進路、良し。」
「エンジン出力上げます。」
「スロットル射出出力へ。」
「彗電、発艦する!」
「了解、無事を祈る!」
甲板より彗電は夜空へと飛び立った。彗電の性能は如何に…
色々考えるの大変ダァ…